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御礼閑話.私の事情 Side.リリベル
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私には婚約者がいます。
お相手はこの国の第二王子、ガイナー殿下。
年頃がちょうどつり合っていたため、婚約を打診するとすぐに認められました。
やはり公爵令嬢の立場というものは強いですわね。
ちなみに大抵のご令嬢は王子妃になったら贅沢をしながら優雅でのんびりとした日々を送れると夢見ているようですが、王子妃というものはそんな甘い立場ではありません。
遊んでいる暇などないほど仕事というものがあるのです。
国の中で女性として最も忙しく仕事に生きている人。それが王妃であり、王子妃なのですわ!
私は公爵令嬢として幼い頃から王宮に出入りしているためそれを誰よりも知っていますの。
男性の中に混じって毅然としながらお仕事をこなす姿はなんて素敵なのでしょう。
男性優位のこの国において彼らに認められるほど仕事をこなす王妃様は私の憧れでした。
なので私もそんな風になりたいと子供心に憧れの気持ちを膨らませ、将来は絶対に王妃か王子妃になると誓ったものです。
ただ残念なことに王太子様とは年が離れすぎていたので、王太子妃の座は諦め、第二王子であるガイナー王子の婚約者の座を射止めました。
なのでそこに恋愛感情など皆無だったのです。
私が欲しいのは『王子妃の椅子』。ただそれだけ。
まあそれでも夫婦になるのですし、お互いに尊重し合える関係は築いていけたらなとは思っておりました。
いずれにせよ結婚なんてまだまだ先の話。
私は王子妃になったらやってみたいことをリストアップして未来に思いを馳せていました。
そんな中、不穏な話が耳に入ってまいりました。
学園でガイナー王子に言い寄っている令嬢がいると────。
すぐに調べさせますと、どうやら最近正式に引き取られた子爵令嬢とのこと。
貴族のマナーも何もわかっていないご令嬢の面倒を見るよう、先生が生徒会長であるガイナー王子に頼んだのが事の発端だった様子。
(まずいですわ)
万が一にでもこれでガイナー王子が陥落されてしまっては目も当てられません。
私の夢見る将来が全部白紙になってしまいます。
こうしてはいられないとお父様にすぐさま相談すると、しばらく様子を見てから考えようと言われてしまいました。
幸いガイナー王子とお兄様は同じクラスだし、お兄様の性格から言ってそんな理不尽な状況を放っておくはずがないと。
確かにそれはその通りですし、ここはお兄様を信じてお任せすることに。
そうして内心不安に思いながら日々を過ごしていたのですが────。
「リリベル!大変なことになった」
「お父様?も、もしやガイナー王子が子爵令嬢に…?」
ある日書斎に呼び出されたと思ったら、お父様が神妙な顔で話を切り出してきたので、最悪の事態を想定してしまいました。
けれど続く言葉に目が点に。
「ガイナー王子がジェレミーに惚れてしまった」
「…………はい?」
正直言われている意味が分かりませんでしたわ。
だってそうでしょう?
お兄様とガイナー王子は別に初対面でもなければ親しい付き合いをしていたというわけでもありません。
言ってみればただの昔からの知り合い。それだけの関係です。
今更惚れるも何も、そんなことはあり得ないのです。
なので『お父様の勘違いでは?』と口にしたのですが、お父様は重い溜息を吐きながらフルフルと首を振りました。
「いや。ガイナー王子はジェレミーを抱いたと言っていたし、お前と婚約を解消してでもジェレミーが欲しいと…」
どうやら本気のようですわ。
お兄様…子爵令嬢に取られないように身体を張ってくださったのね。
なんて妹思いなのかしら。
でも困りましたわね。
ただお兄様の色仕掛けにやられただけではなく、王子が本気になってしまったのは大誤算。
ここは慎重に行くべきですわ。
万が一にでも駆け落ちされてしまっては公爵家の後を継げる者もいなくなってしまいますし、私の王子妃になる夢も断たれてしまいます。
「…………」
「…………」
暫く沈黙が続いた後、お父様と私の出した結論は奇しくも同じでした。
「よく考えれば簡単な話ですわね」
「そうだな」
そしてお父様はさらりと返事を書いて王子へと届けさせました。
王子のお相手は赤の他人などではなくお兄様なんですから、私との結婚を条件に二人の仲を認めればそれで万事解決です。
「はぁ~…やれやれだな」
「本当に。これで全部問題は片付きましたわね」
これで私は王子妃の椅子を諦めずに済んで、王子はお兄様を諦めずに済んで、お父様は公爵家の跡継ぎを諦めずに済みました。
お兄様も王子に愛されて幸せでしょうし、全く何一つ問題はありませんわ。
しかもお兄様が王子の心をがっちりと掴んでくださっているのなら私の方は自由そのもの。
王子に気遣って余計な時間を過ごす必要もなくなりますし、一石二鳥ですわね。
跡継ぎ問題でこじれることもないですし、王子の寵愛をひけらかして変にマウントを取ろうとしてくる相手とのうんざりするような展開も皆無ですし、なんて素敵なんでしょう?
王子の好きになったお相手がご令嬢でなくて本当に本当に良かったですわ。
まさにベストな展開!
そして迎えた王子との対面。
王子は満面の笑みで幸せそうですが、お兄様は物凄く申し訳なさそうですわね。
私に申し訳ないと思っているのが丸わかりですわ。
ここはやはり安心させてあげなければ。
そう思ってきちんと大歓迎だと言ったのですが俄かには信じがたい様子。
でも本当のことなのでここは信じていただきたいところ。
お兄様が納得できるようその後も説明を重ねていると、王子がフォローを入れて後押ししてくださいます。
(べた惚れですわね)
本当に空気が甘くてたまりません。
お兄様本人に自覚はないようですけれど、完全にガイナー王子はお兄様の虜になってしまっている様子。
全身でお兄様が大好きだと語っておられます。
お兄様ったら一体どうやって落としたのかしら?謎ですわ。
ほらほら。遠慮なさらず王子と幸せになってくださいませ。
ちゃんとお兄様の役割はしっかりガッツリありますのよ?
私に気遣う必要なんてありませんし、全ては皆の幸せのため。ひいてはお兄様の幸せに繋がっていますわ。
そうしてその場にいた全員でお兄様を丸め込み、無事に望み通り私とお兄様は王子の妃として迎えていただけることになりました。
ああ、ちなみにこの国の法律では同性婚の取り扱いが少し特殊ですの。
平民は好きにすればよいのですけれど、貴族だけはそうはいかず、後継を残す観点から『第二夫人以降にのみ同性婚を認める』とあるのです。
なのでガイナー王子の妃はそのまま私となって、お兄様は形式上は第二妃扱いとなってしまいます。
でもまあ本当に形式上だけなので構わないでしょう。
お兄様はどうもこの法については知らなかったようなので、私の方からきちんとお教えしておきました。
勘違いして王子との仲が拗れてはいけませんし、結婚後にやっぱり身を引くなどと言い出されては大変ですからね。
私もその辺りは目を光らせて、適度にガイナー王子と結託しつつお兄様が逃げないよう気を付けておかないと。
お兄様にはこの先ずっと王子のお相手を任せたいと思っていますので、絶対に逃がしませんわ!
そんなこんなであっという間に三年が経ち、私も学園を卒業して結婚式を迎えました。
相変わらずお兄様にべた惚れのガイナー王子。
お兄様は私を真ん中にして式を挙げたいと言い、王子は結婚式で愛するお兄様の手を取れないのはおかしいと主張して大変でしたわ。
最終的に私が一番左側。ガイナー王子が真ん中。お兄様が右側になりましたが、お兄様は一番右側は新郎ポジションなのにとブツブツ言っております。
なんだかんだと花嫁ポジションが良かったのでしょうか?
お兄様はガイナー王子に愛されて年々色気が増しておりますし、別に新郎ポジションでも花嫁感満載で、なんら問題はないと思いますけれど…。
一応『お兄様。花嫁ポジションの方が良ければお譲り致しましょうか?』と言ってみると、そうじゃないんだと焦っておりました。
うふふ。揶揄い甲斐があって楽しいですわね。
何にせよ、無事にここまで来れて感無量です。
花嫁へのキスは、私には敬愛を込めた軽いキスを。お兄様には熱烈なキスを。
ガイナー王子のブレないところが私は案外気に入っておりますの。
きっとこの後また初夜のあれこれでお兄様とガイナー王子は揉めるのでしょうけど、先手必勝でさっさと逃げてしまいましょうか。
私の元へ行くべきだと主張するお兄様の姿が目に浮かぶようですもの。
そして披露パーティーを終え、さり気なく二人から逃げてきた私の前で、一人の人物の姿が目に留まりましたわ。
「あら、王太子殿下。どちらへ?」
ビクッと驚いたように震える様子が怪しいですわね。
「なんだ。花嫁殿か。結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
「初夜に向けて準備のため抜け出したのか?」
「まあ似たようなものですわ」
「そうか」
「王太子殿下はどちらへ?」
「俺か?俺はガイナーがリリベル嬢と初夜を迎えている間ジェレミーが寂しがるだろうと思ってな」
「つまり、お兄様の気を紛らわせに行かれると?」
「そうだ」
満面の笑みで肯定される王太子殿下。
本当に油断も隙もあったものではありませんわね。
お兄様も相手が王太子殿下であれば疑うことなくお部屋に入れてしまいそうですし、危険極まりないですわ。
「それはわざわざありがとうございます。でも今夜はガイナー王子は花婿のお相手で忙しいですわ」
「…え?」
「それもあってちょうど私、お話相手が欲しかったところですの。お時間頂けます?」
にこやかにそう口にしましたら愕然とした表情をなさっておりますわね。
これは想定外でしたか?うふふ。ごめんあそばせ。
不穏の種はしっかり摘み取って、あの二人の邪魔はさせません!
私の壮大な計画が崩れるようなことは許しませんわよ?
早速明日から王太子妃様と交流を深めてしっかり外堀を埋めにかからないと。
(さあ。ここからが、私のハッピーライフの始まりですわ!)
そう心躍らせながら、私はそっと王太子様へと手を差し出した。
****************
※嫣然と微笑むしたたか系美女、リリベルのお話でした。
お付き合いいただきありがとうございました(^^)
お相手はこの国の第二王子、ガイナー殿下。
年頃がちょうどつり合っていたため、婚約を打診するとすぐに認められました。
やはり公爵令嬢の立場というものは強いですわね。
ちなみに大抵のご令嬢は王子妃になったら贅沢をしながら優雅でのんびりとした日々を送れると夢見ているようですが、王子妃というものはそんな甘い立場ではありません。
遊んでいる暇などないほど仕事というものがあるのです。
国の中で女性として最も忙しく仕事に生きている人。それが王妃であり、王子妃なのですわ!
私は公爵令嬢として幼い頃から王宮に出入りしているためそれを誰よりも知っていますの。
男性の中に混じって毅然としながらお仕事をこなす姿はなんて素敵なのでしょう。
男性優位のこの国において彼らに認められるほど仕事をこなす王妃様は私の憧れでした。
なので私もそんな風になりたいと子供心に憧れの気持ちを膨らませ、将来は絶対に王妃か王子妃になると誓ったものです。
ただ残念なことに王太子様とは年が離れすぎていたので、王太子妃の座は諦め、第二王子であるガイナー王子の婚約者の座を射止めました。
なのでそこに恋愛感情など皆無だったのです。
私が欲しいのは『王子妃の椅子』。ただそれだけ。
まあそれでも夫婦になるのですし、お互いに尊重し合える関係は築いていけたらなとは思っておりました。
いずれにせよ結婚なんてまだまだ先の話。
私は王子妃になったらやってみたいことをリストアップして未来に思いを馳せていました。
そんな中、不穏な話が耳に入ってまいりました。
学園でガイナー王子に言い寄っている令嬢がいると────。
すぐに調べさせますと、どうやら最近正式に引き取られた子爵令嬢とのこと。
貴族のマナーも何もわかっていないご令嬢の面倒を見るよう、先生が生徒会長であるガイナー王子に頼んだのが事の発端だった様子。
(まずいですわ)
万が一にでもこれでガイナー王子が陥落されてしまっては目も当てられません。
私の夢見る将来が全部白紙になってしまいます。
こうしてはいられないとお父様にすぐさま相談すると、しばらく様子を見てから考えようと言われてしまいました。
幸いガイナー王子とお兄様は同じクラスだし、お兄様の性格から言ってそんな理不尽な状況を放っておくはずがないと。
確かにそれはその通りですし、ここはお兄様を信じてお任せすることに。
そうして内心不安に思いながら日々を過ごしていたのですが────。
「リリベル!大変なことになった」
「お父様?も、もしやガイナー王子が子爵令嬢に…?」
ある日書斎に呼び出されたと思ったら、お父様が神妙な顔で話を切り出してきたので、最悪の事態を想定してしまいました。
けれど続く言葉に目が点に。
「ガイナー王子がジェレミーに惚れてしまった」
「…………はい?」
正直言われている意味が分かりませんでしたわ。
だってそうでしょう?
お兄様とガイナー王子は別に初対面でもなければ親しい付き合いをしていたというわけでもありません。
言ってみればただの昔からの知り合い。それだけの関係です。
今更惚れるも何も、そんなことはあり得ないのです。
なので『お父様の勘違いでは?』と口にしたのですが、お父様は重い溜息を吐きながらフルフルと首を振りました。
「いや。ガイナー王子はジェレミーを抱いたと言っていたし、お前と婚約を解消してでもジェレミーが欲しいと…」
どうやら本気のようですわ。
お兄様…子爵令嬢に取られないように身体を張ってくださったのね。
なんて妹思いなのかしら。
でも困りましたわね。
ただお兄様の色仕掛けにやられただけではなく、王子が本気になってしまったのは大誤算。
ここは慎重に行くべきですわ。
万が一にでも駆け落ちされてしまっては公爵家の後を継げる者もいなくなってしまいますし、私の王子妃になる夢も断たれてしまいます。
「…………」
「…………」
暫く沈黙が続いた後、お父様と私の出した結論は奇しくも同じでした。
「よく考えれば簡単な話ですわね」
「そうだな」
そしてお父様はさらりと返事を書いて王子へと届けさせました。
王子のお相手は赤の他人などではなくお兄様なんですから、私との結婚を条件に二人の仲を認めればそれで万事解決です。
「はぁ~…やれやれだな」
「本当に。これで全部問題は片付きましたわね」
これで私は王子妃の椅子を諦めずに済んで、王子はお兄様を諦めずに済んで、お父様は公爵家の跡継ぎを諦めずに済みました。
お兄様も王子に愛されて幸せでしょうし、全く何一つ問題はありませんわ。
しかもお兄様が王子の心をがっちりと掴んでくださっているのなら私の方は自由そのもの。
王子に気遣って余計な時間を過ごす必要もなくなりますし、一石二鳥ですわね。
跡継ぎ問題でこじれることもないですし、王子の寵愛をひけらかして変にマウントを取ろうとしてくる相手とのうんざりするような展開も皆無ですし、なんて素敵なんでしょう?
王子の好きになったお相手がご令嬢でなくて本当に本当に良かったですわ。
まさにベストな展開!
そして迎えた王子との対面。
王子は満面の笑みで幸せそうですが、お兄様は物凄く申し訳なさそうですわね。
私に申し訳ないと思っているのが丸わかりですわ。
ここはやはり安心させてあげなければ。
そう思ってきちんと大歓迎だと言ったのですが俄かには信じがたい様子。
でも本当のことなのでここは信じていただきたいところ。
お兄様が納得できるようその後も説明を重ねていると、王子がフォローを入れて後押ししてくださいます。
(べた惚れですわね)
本当に空気が甘くてたまりません。
お兄様本人に自覚はないようですけれど、完全にガイナー王子はお兄様の虜になってしまっている様子。
全身でお兄様が大好きだと語っておられます。
お兄様ったら一体どうやって落としたのかしら?謎ですわ。
ほらほら。遠慮なさらず王子と幸せになってくださいませ。
ちゃんとお兄様の役割はしっかりガッツリありますのよ?
私に気遣う必要なんてありませんし、全ては皆の幸せのため。ひいてはお兄様の幸せに繋がっていますわ。
そうしてその場にいた全員でお兄様を丸め込み、無事に望み通り私とお兄様は王子の妃として迎えていただけることになりました。
ああ、ちなみにこの国の法律では同性婚の取り扱いが少し特殊ですの。
平民は好きにすればよいのですけれど、貴族だけはそうはいかず、後継を残す観点から『第二夫人以降にのみ同性婚を認める』とあるのです。
なのでガイナー王子の妃はそのまま私となって、お兄様は形式上は第二妃扱いとなってしまいます。
でもまあ本当に形式上だけなので構わないでしょう。
お兄様はどうもこの法については知らなかったようなので、私の方からきちんとお教えしておきました。
勘違いして王子との仲が拗れてはいけませんし、結婚後にやっぱり身を引くなどと言い出されては大変ですからね。
私もその辺りは目を光らせて、適度にガイナー王子と結託しつつお兄様が逃げないよう気を付けておかないと。
お兄様にはこの先ずっと王子のお相手を任せたいと思っていますので、絶対に逃がしませんわ!
そんなこんなであっという間に三年が経ち、私も学園を卒業して結婚式を迎えました。
相変わらずお兄様にべた惚れのガイナー王子。
お兄様は私を真ん中にして式を挙げたいと言い、王子は結婚式で愛するお兄様の手を取れないのはおかしいと主張して大変でしたわ。
最終的に私が一番左側。ガイナー王子が真ん中。お兄様が右側になりましたが、お兄様は一番右側は新郎ポジションなのにとブツブツ言っております。
なんだかんだと花嫁ポジションが良かったのでしょうか?
お兄様はガイナー王子に愛されて年々色気が増しておりますし、別に新郎ポジションでも花嫁感満載で、なんら問題はないと思いますけれど…。
一応『お兄様。花嫁ポジションの方が良ければお譲り致しましょうか?』と言ってみると、そうじゃないんだと焦っておりました。
うふふ。揶揄い甲斐があって楽しいですわね。
何にせよ、無事にここまで来れて感無量です。
花嫁へのキスは、私には敬愛を込めた軽いキスを。お兄様には熱烈なキスを。
ガイナー王子のブレないところが私は案外気に入っておりますの。
きっとこの後また初夜のあれこれでお兄様とガイナー王子は揉めるのでしょうけど、先手必勝でさっさと逃げてしまいましょうか。
私の元へ行くべきだと主張するお兄様の姿が目に浮かぶようですもの。
そして披露パーティーを終え、さり気なく二人から逃げてきた私の前で、一人の人物の姿が目に留まりましたわ。
「あら、王太子殿下。どちらへ?」
ビクッと驚いたように震える様子が怪しいですわね。
「なんだ。花嫁殿か。結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
「初夜に向けて準備のため抜け出したのか?」
「まあ似たようなものですわ」
「そうか」
「王太子殿下はどちらへ?」
「俺か?俺はガイナーがリリベル嬢と初夜を迎えている間ジェレミーが寂しがるだろうと思ってな」
「つまり、お兄様の気を紛らわせに行かれると?」
「そうだ」
満面の笑みで肯定される王太子殿下。
本当に油断も隙もあったものではありませんわね。
お兄様も相手が王太子殿下であれば疑うことなくお部屋に入れてしまいそうですし、危険極まりないですわ。
「それはわざわざありがとうございます。でも今夜はガイナー王子は花婿のお相手で忙しいですわ」
「…え?」
「それもあってちょうど私、お話相手が欲しかったところですの。お時間頂けます?」
にこやかにそう口にしましたら愕然とした表情をなさっておりますわね。
これは想定外でしたか?うふふ。ごめんあそばせ。
不穏の種はしっかり摘み取って、あの二人の邪魔はさせません!
私の壮大な計画が崩れるようなことは許しませんわよ?
早速明日から王太子妃様と交流を深めてしっかり外堀を埋めにかからないと。
(さあ。ここからが、私のハッピーライフの始まりですわ!)
そう心躍らせながら、私はそっと王太子様へと手を差し出した。
****************
※嫣然と微笑むしたたか系美女、リリベルのお話でした。
お付き合いいただきありがとうございました(^^)
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|д゚)チラッっとまた読みに来ました<(`・ω・´)
癒やしを求めて徘徊中((( _( _'ω')_ ((( _( _'ω')_ コソコソ
ありがとうございます(*´∇`*)
王子必死すぎ可愛いです☺️
リリベルも好きですb
ありがとうございます♪
王子とリリベルを気に入っていただけて嬉しいです(´∀`*)
ありがとうございます♪
王太子は元々ジェレミーのこと気に入ってましたからね。
三令嬢も言わずもがな。
そんな四人を横目にジェレミーを掻っ攫っていくガイナー王子はある意味勇者です(笑)
ちなみに例の玩具は書記のヤリチンくんが渡しました(´艸`*)
「男は初めて抱いたが……凄く良かった」
「え?会長、それって大丈夫ですか?ちゃんと後始末してあげました?ダメですよ?そのままにしてたら腹壊すんですから。ほらこれ。こういうのを使ってちゃんと掻き出してあげないと。え?どうやって購入するか?アハハ。また今度新品買ってお渡ししますね♪」
こんな感じ(^^)