147 / 189
第8章 地の果て
第215話 夢の残響
しおりを挟む
第215話 夢の残響
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
フィストの落下は地上からはるか上で止まりました。
空飛ぶ夢の国の住人が、フィストを空中で受け止めたのです。
地上で見ていた8人は驚きました。
フィストを受け止めた大きな影はサンタクロースのソリではなかったのです。
フィストは巨大な竜の背の上にいました。
空飛ぶ竜はフィストを背で受け止めた後、大きく旋回して飛びながら下降して、8人の前に降りました。
フィストが竜の背から飛び降りました。
8人が一斉に駆け寄ります。
ジャンヌ「ぶ、無事!?怪我してない!?」
フィスト「う、うん、大丈夫……」
妖精のモモはフィストの髪の毛にしがみついたまま目を回しています。
ブラド「よかったぁ……でも助けてくれたのって、火吹き竜?」
マリン「森に住んでる悪い竜だよね?」
リーフ「なんでフィストを助けてくれたんだろ?」
フィスト「へへへ、それはね……」
フィストが言いながら竜に目を向けると、竜は地に伏せました。
その背中から、お姫さまが降りてきたのです。
サリー「お、お姫さま!?王子さまが助けてくれたの?」
フィスト「違うよお。この竜はね、悪い竜じゃないの」
姫「その通りです。私はメルコット王国の姫。アールベル王国の王子との政略結婚が仕組まれていました。しかし私は、国一番の騎士、リッターと秘かに愛し合っていたのです。それを知ったあの国の王子は、国の魔女を使い、リッターを竜に変えてしまったのです」
キャッツ「え、なに、その話……」
マリア「つまり、姫は自分から竜の元に行っていて、王子は姫を無理矢理自分の元に置こうとしていたってこと?」
竜「そういうことだ……あらゆるものを焼き尽くす火吹き竜などと噂を流して、ご丁寧なことだが……私は何としても元の姿に戻ってみせる」
ブラド「え、ステキ」
ジャンヌ「まぁあの王子はちょっと胡散臭かったもんね」
ローズ「ジャンヌ、結構浮かれてたよね?」
姫「あの王子のことは、別にどうでもよいのですよ……魔術を解く旅に2人で行こうとしたときに、彼女が落ちていたのが見えたので、彼がとっさに受け止めたんです」
ブラド「なんか、えらく出来すぎた話に聞こえるけど、これってやっぱり……」
フィスト「そ!私の夢!多分オーブの力で叶ったの!」
フィストは両手にオーブを抱えて、満面の笑みで答えました。
フィスト「竜とお姫さまの物語、こっちの方がいいじゃん!」
ジャンヌ「同感ね……で、無事オーブは手に入れたのね」
フィスト「う、うん、多分。私は夢中だったからわからないけど、太陽のときとは違った光りかたしてるよね?」
モモ「…………ん、お、おお、無事だったのね」
ローズ「あ、目を覚ました」
リーフ「モモさん、フィストと一緒にいてくれてありがとう!」
モモ「あー、いいのいいの。とにかく、無事でよかったわ……でも」
サリー「?でも?」
モモ「もうお別れよ」
マリン「!?どういう」
マリンの言葉の途中で、フィストの手の中のオーブは、形を変え始めました。
妖精の口から出た「お別れ」という言葉の意味も気になりましたが、9人はオーブの変化に目を奪われたのです。
オーブは大きな球体のままですが、その表面には無数の突起が出てきました。
オーブは両手で抱えられるほど大きな、黄色いこんぺいとうになったのです。
そしてそのこんぺいとうは徐々に小さくなっていき、指でつまめるほどの大きさになると、フィストのキューブの中に吸い込まれていきました。
そして次の瞬間に、異変が訪れました。
何の前触れもなく、9人は完全な闇に包まれたのです。
フィスト「えっ」
ジャンヌ「な、なにこれ?」
9人はそれぞれ困惑の声を出しました。
その声は、最初はお互いに聞こえていましたが、だんだんとハッキリ聞こえなくなってきました。
聴覚だけでなく、徐々に9人の意識が不明瞭になっていきます。
先ほどのモモの言葉がフラッシュバックしました。
「もうお別れよ」
そのとき、暗闇に包まれた9人の頭の中に、モモの声が響きはじめました。
モモ『忘れないで……あなたたちが夢見た時間を……お菓子の家も、サンタクロースも、竜とお姫さまも……世界中の人たちが夢見る世界の住人のことを』
サリー「わ、忘れません!!」
モモ『誰だって大人になったら、「そんなのありっこない」って思ってしまうわ……でも、それでいいの…………』
フィスト「モモさん!」
フィストの声は虚しく闇に薄まります。
モモ『世界中の子どもが大人になって、いつか自分や誰かの子どもに、夢のような話をするときには、どうか心の片隅にあることを感じてほしいの…………「見たことはない、ありっこないってわかってるけど、この世界のどこかには、もしかしたらあるのかもしれない」という、微かな夢の残響が、大人たちの心の中にもあることを……』
フィスト「モモさん!!待って!!」
9人の意識は完全に途絶えました。
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
フィストの落下は地上からはるか上で止まりました。
空飛ぶ夢の国の住人が、フィストを空中で受け止めたのです。
地上で見ていた8人は驚きました。
フィストを受け止めた大きな影はサンタクロースのソリではなかったのです。
フィストは巨大な竜の背の上にいました。
空飛ぶ竜はフィストを背で受け止めた後、大きく旋回して飛びながら下降して、8人の前に降りました。
フィストが竜の背から飛び降りました。
8人が一斉に駆け寄ります。
ジャンヌ「ぶ、無事!?怪我してない!?」
フィスト「う、うん、大丈夫……」
妖精のモモはフィストの髪の毛にしがみついたまま目を回しています。
ブラド「よかったぁ……でも助けてくれたのって、火吹き竜?」
マリン「森に住んでる悪い竜だよね?」
リーフ「なんでフィストを助けてくれたんだろ?」
フィスト「へへへ、それはね……」
フィストが言いながら竜に目を向けると、竜は地に伏せました。
その背中から、お姫さまが降りてきたのです。
サリー「お、お姫さま!?王子さまが助けてくれたの?」
フィスト「違うよお。この竜はね、悪い竜じゃないの」
姫「その通りです。私はメルコット王国の姫。アールベル王国の王子との政略結婚が仕組まれていました。しかし私は、国一番の騎士、リッターと秘かに愛し合っていたのです。それを知ったあの国の王子は、国の魔女を使い、リッターを竜に変えてしまったのです」
キャッツ「え、なに、その話……」
マリア「つまり、姫は自分から竜の元に行っていて、王子は姫を無理矢理自分の元に置こうとしていたってこと?」
竜「そういうことだ……あらゆるものを焼き尽くす火吹き竜などと噂を流して、ご丁寧なことだが……私は何としても元の姿に戻ってみせる」
ブラド「え、ステキ」
ジャンヌ「まぁあの王子はちょっと胡散臭かったもんね」
ローズ「ジャンヌ、結構浮かれてたよね?」
姫「あの王子のことは、別にどうでもよいのですよ……魔術を解く旅に2人で行こうとしたときに、彼女が落ちていたのが見えたので、彼がとっさに受け止めたんです」
ブラド「なんか、えらく出来すぎた話に聞こえるけど、これってやっぱり……」
フィスト「そ!私の夢!多分オーブの力で叶ったの!」
フィストは両手にオーブを抱えて、満面の笑みで答えました。
フィスト「竜とお姫さまの物語、こっちの方がいいじゃん!」
ジャンヌ「同感ね……で、無事オーブは手に入れたのね」
フィスト「う、うん、多分。私は夢中だったからわからないけど、太陽のときとは違った光りかたしてるよね?」
モモ「…………ん、お、おお、無事だったのね」
ローズ「あ、目を覚ました」
リーフ「モモさん、フィストと一緒にいてくれてありがとう!」
モモ「あー、いいのいいの。とにかく、無事でよかったわ……でも」
サリー「?でも?」
モモ「もうお別れよ」
マリン「!?どういう」
マリンの言葉の途中で、フィストの手の中のオーブは、形を変え始めました。
妖精の口から出た「お別れ」という言葉の意味も気になりましたが、9人はオーブの変化に目を奪われたのです。
オーブは大きな球体のままですが、その表面には無数の突起が出てきました。
オーブは両手で抱えられるほど大きな、黄色いこんぺいとうになったのです。
そしてそのこんぺいとうは徐々に小さくなっていき、指でつまめるほどの大きさになると、フィストのキューブの中に吸い込まれていきました。
そして次の瞬間に、異変が訪れました。
何の前触れもなく、9人は完全な闇に包まれたのです。
フィスト「えっ」
ジャンヌ「な、なにこれ?」
9人はそれぞれ困惑の声を出しました。
その声は、最初はお互いに聞こえていましたが、だんだんとハッキリ聞こえなくなってきました。
聴覚だけでなく、徐々に9人の意識が不明瞭になっていきます。
先ほどのモモの言葉がフラッシュバックしました。
「もうお別れよ」
そのとき、暗闇に包まれた9人の頭の中に、モモの声が響きはじめました。
モモ『忘れないで……あなたたちが夢見た時間を……お菓子の家も、サンタクロースも、竜とお姫さまも……世界中の人たちが夢見る世界の住人のことを』
サリー「わ、忘れません!!」
モモ『誰だって大人になったら、「そんなのありっこない」って思ってしまうわ……でも、それでいいの…………』
フィスト「モモさん!」
フィストの声は虚しく闇に薄まります。
モモ『世界中の子どもが大人になって、いつか自分や誰かの子どもに、夢のような話をするときには、どうか心の片隅にあることを感じてほしいの…………「見たことはない、ありっこないってわかってるけど、この世界のどこかには、もしかしたらあるのかもしれない」という、微かな夢の残響が、大人たちの心の中にもあることを……』
フィスト「モモさん!!待って!!」
9人の意識は完全に途絶えました。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる