虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第8章 地の果て

第214話 雲を掴む

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第214話 雲を掴む
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********


フィスト「昨日言ったでしょ?最初っからこんなのは『雲を掴むような話だ』って」

フィストはツルを蹴って跳び上がり、手近な雲を掴みました。
跳んだ勢いは死なず、雲にぶら下がったまま太陽まで近づいていきました。

豆の木の下にいて、空を見上げていたブラドが気づきました。

ブラド「!?ちょっと!みんな、あれ!」

ブラドの指差す方を7人が見ます。
人影が空を飛んでいます。
その飛び方は鳥のそれとはちがって、不自然でした。
手足を動かすことなく、体そのものが真横にスライドするように移動しています。

ジャンヌ「あ、あれ……フィスト!?」

キャッツ「な、なんか、横にスーッて動いてない?」

マリア「なにかしらね……リーフ、見える?」

マリアが目の良いリーフに問います。

リーフ「うーんと……見間違いじゃなかったら、だけど…雲を掴んで、ぶら下がってるみたい……」

マリン「なによそれ……ほんとにメチャクチャね、夢の国」

ローズ「雲を掴むような話で、ほんとに掴んじゃったんだね」

サリー「なんか、すごいね、夢って……魔法なんか使えないのに、魔法なんかより、ずっとすごいことができる。しかも、夢を信じる心があれば、誰でも……」

ジャンヌ「夢の国だからね、なんでもありよ。でもサリーが身につけた魔法も、『魔法使いになりたい』っていう、サリーの夢の賜物でしょ?夢を現実にしようとしてきたサリーだから、すごい魔法を身につけてるし、それで私たちがどれだけ助けられたか」

リーフ「うん!ほんと!ジャンヌの言うとおりだよ!」

ブラド「特に私が助かってるね。命に関わるレベルで」

サリー「フフッ、ありがと」

マリア「さて、夢が物言うこの国で、あの子はこれからどうするのかしら……」

8人は上空の人影に目を向けます。
人影は太陽に手を伸ばしていました。



フィスト「んぐぐぐぐ……あとちょっと」

フィストは片手で雲を握り、そしてもう片方の手を太陽に伸ばしました。
そして指先が太陽に触れ、ついには手で掴むことができました。

フィスト「よっしゃぁぁぁー!」

フィストは片手で力強く太陽を握り、もう片方の雲を掴んでいた方の手を離し、素早く太陽を両手で掴み、ぶら下がりました。

フィスト「や、やった!」

そのとき、太陽が放つ光は、強く輝く星のような光から、宝珠が放つような柔らかい光へと変わりました。

そしてフィストの手の中でオーブとなったそれは、空からパキンッと外れました。

フィスト「えっ」



地上で見ていた8人も声を上げました。

ジャンヌ「えっ」

「「「「えっ」」」」



モモ「えっじゃないわよ。当たり前でしょうが」

フィストはモモの冷静な指摘を受けながら、支えがなくなった空から落ちていきました。

フィスト「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!!こわいいぃぃぃぃぃーー!!!」

落ちるフィストを追いかけるように飛びながら、モモが話しかけます。

モモ「こわいー!じゃなくてね、あんたの手の中に今あるのはなに?夢見る心なんでしょ?」

フィスト「そ、そっか」

フィストが恐怖を抑えて目を閉じます。
フィストが両手で胸の前で抱えたオーブが黄色い光を放ちます。



地上では8人が慌てています。

マリア「ね、ねぇ!あれ!フィスト、落ちてるよね!?」

リーフ「な、なにかクッションになるもの!」

ローズ「ジャンヌ!受け止める!?」

ジャンヌ「え、ちょっと自信ないけど……が、がんばる!」

マリン「がんばらないで!2人とも大怪我するでしょ!」

サリー「術が使えたら、なんとかなるのに……」

ブラド「だ、誰か助けてくれへんかな?夢の国やん?」

キャッツ「そ、そうだよ、空飛ぶ……」

「「「「サンタクロース!!!」」」」

ドサッ

フィストの落下は地上からはるか上で止まりました。
空飛ぶ夢の国の住人が、フィストを空中で受け止めたのです。
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