121 / 189
第7章 砂漠の国
第189話 王の気持ち
しおりを挟む
第189話 王の気持ち
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
ローズ「世界の遺産の図鑑みたいな本を昔読んだことがあるんだけど、この聖杯とか宝飾品みたいな細工があるのはなかったから、多分、と思って」
リーフ「4000年前って、すごいね」
女王「た、確かにそう言われてみれば、わが国の歴史にも当てはまらん装飾がほどこされておる」
フィスト「え?女王様も知らんかったん?」
ローズ「無理ないよ。女王様は、王家の墓の財宝のことは、調べることも含めて、できるだけ手に触れない、人目に触れないようにしてきたんだもの」
女王「……なぜそんなことがわかる」
ローズ「財宝なんか見たら、売ってお金に変えたくなるからです。おなかをすかせた国民たちのために、ね。そうでしょう?」
女王「……その通りだ」
ローズ「そうなんです。そして、それは、女王様のご先祖様たちも、その通りだったんじゃないですか?」
女王「……なんじゃと?」
ローズ「だって、治水工事や、耕作地の拡大事業は、頓挫したって言ってましたよね。つまり、着手はしたんですよ!でも、土地が豊かじゃないから、遅々として進まなかった。だから、歴代の国王様たちは、財宝をお金に変えるしかなかったんですよ!飢えていく国民を見捨てることなんてできなかったから!」
女王「……」
ローズ「そしてあなたは、歴代の王様の気持ちがわかるから、ことさらに蔑視してたんです……今までと同じ方法はできないから。王家の墓に眠る財宝にだけは、手を付けてはいけないと心に決めていたから。『歴代国王たちのやり方は愚の骨頂だ』と言い続けなければ、あなたも、いずれ国民を見捨てられず、国の財宝を手放してしまいそうだから」
女王「……なるほどな。だが、それだけわかっていて、なぜお主は最初に『墓と財宝を売りに出す』などと言った?」
ローズ「売りに出すと売り出すは違いますよ、女王様」
王女「……なに?」
ローズ「見せるだけでお金とるんです。だって、4000年前のものってわかったんですよ?博物館を作って、周りのほかの国の人に見せてあげるんです。王家の墓も公開調査したら、外国からいろんな学者さんが来てくれるかもしれません。遺跡の装飾を施した木彫りとか焼き物とかも売れるかもしれませんよ」
王女「……絵にかいた餅じゃな。歴史的価値があるからと言って、それが心惹かれるものとは限らんじゃろ」
ローズ「そんなことないですよ。ね?」
ローズは視線を3人の子どもに移しました。
事の成り行きを見守っていた3人でしたが、長男のアラーは興奮を隠せなくなりました。
アラー「な、なぁ……4000年前って、マジ?」
サリー「えっと、マジよ」
アラー「すっっげぇぇぇぇぇ!!!!王朝ができる前からのもの!?」
マリア「恐らく前王朝を滅ぼしたときの戦利品を、王家の墓に保管していたんでしょうね。だからこの国の歴史よりも古いものがあるし、文献にも載ってない……女王さまが知らないのも無理ないわ」
シイ―「でも、そんなすごいものが、あの地下にあったなんて……」
ハカー「すごいね……」
ローズ「ね?女王様、こんなに小さい子どもたちでも、胸をときめかせるんです。4000年という時間の重みは。あなたが祭壇で、いつまでも忘れないようにしている、つながってきた重みのある時間です」
マリン「?なにそれ?」
ローズは女王に向けていた顔を、謁見の間の隅の方に移します。
そこには、オレンジ色の花があふれんばかりに手向けられている祭壇がありました。
ローズ「死者を丁重に見送るためのお花、マリーゴールドですね」
女王「その通りじゃ」
**********
ジャンヌ:騎士団長
フィスト:近衛兵長
サリー:魔法使い
マリン:海の冒険者
ブラド:吸血鬼の姫
ローズ:貴族令嬢
キャッツ:トレジャーハンター
マリア:シスター
リーフ:エルフ
**********
ローズ「世界の遺産の図鑑みたいな本を昔読んだことがあるんだけど、この聖杯とか宝飾品みたいな細工があるのはなかったから、多分、と思って」
リーフ「4000年前って、すごいね」
女王「た、確かにそう言われてみれば、わが国の歴史にも当てはまらん装飾がほどこされておる」
フィスト「え?女王様も知らんかったん?」
ローズ「無理ないよ。女王様は、王家の墓の財宝のことは、調べることも含めて、できるだけ手に触れない、人目に触れないようにしてきたんだもの」
女王「……なぜそんなことがわかる」
ローズ「財宝なんか見たら、売ってお金に変えたくなるからです。おなかをすかせた国民たちのために、ね。そうでしょう?」
女王「……その通りだ」
ローズ「そうなんです。そして、それは、女王様のご先祖様たちも、その通りだったんじゃないですか?」
女王「……なんじゃと?」
ローズ「だって、治水工事や、耕作地の拡大事業は、頓挫したって言ってましたよね。つまり、着手はしたんですよ!でも、土地が豊かじゃないから、遅々として進まなかった。だから、歴代の国王様たちは、財宝をお金に変えるしかなかったんですよ!飢えていく国民を見捨てることなんてできなかったから!」
女王「……」
ローズ「そしてあなたは、歴代の王様の気持ちがわかるから、ことさらに蔑視してたんです……今までと同じ方法はできないから。王家の墓に眠る財宝にだけは、手を付けてはいけないと心に決めていたから。『歴代国王たちのやり方は愚の骨頂だ』と言い続けなければ、あなたも、いずれ国民を見捨てられず、国の財宝を手放してしまいそうだから」
女王「……なるほどな。だが、それだけわかっていて、なぜお主は最初に『墓と財宝を売りに出す』などと言った?」
ローズ「売りに出すと売り出すは違いますよ、女王様」
王女「……なに?」
ローズ「見せるだけでお金とるんです。だって、4000年前のものってわかったんですよ?博物館を作って、周りのほかの国の人に見せてあげるんです。王家の墓も公開調査したら、外国からいろんな学者さんが来てくれるかもしれません。遺跡の装飾を施した木彫りとか焼き物とかも売れるかもしれませんよ」
王女「……絵にかいた餅じゃな。歴史的価値があるからと言って、それが心惹かれるものとは限らんじゃろ」
ローズ「そんなことないですよ。ね?」
ローズは視線を3人の子どもに移しました。
事の成り行きを見守っていた3人でしたが、長男のアラーは興奮を隠せなくなりました。
アラー「な、なぁ……4000年前って、マジ?」
サリー「えっと、マジよ」
アラー「すっっげぇぇぇぇぇ!!!!王朝ができる前からのもの!?」
マリア「恐らく前王朝を滅ぼしたときの戦利品を、王家の墓に保管していたんでしょうね。だからこの国の歴史よりも古いものがあるし、文献にも載ってない……女王さまが知らないのも無理ないわ」
シイ―「でも、そんなすごいものが、あの地下にあったなんて……」
ハカー「すごいね……」
ローズ「ね?女王様、こんなに小さい子どもたちでも、胸をときめかせるんです。4000年という時間の重みは。あなたが祭壇で、いつまでも忘れないようにしている、つながってきた重みのある時間です」
マリン「?なにそれ?」
ローズは女王に向けていた顔を、謁見の間の隅の方に移します。
そこには、オレンジ色の花があふれんばかりに手向けられている祭壇がありました。
ローズ「死者を丁重に見送るためのお花、マリーゴールドですね」
女王「その通りじゃ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魔法少女になれたなら【完結済み】
M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】
とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。
そこから少女の生活は一変する。
なんとその本は魔法のステッキで?
魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。
異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。
これは人間の願いの物語。
愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに――
謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
百合ハーレムが大好きです!〜全ルート攻略開始〜
M・A・J・O
大衆娯楽
【大衆娯楽小説ランキング、最高第7位達成!】
黒髪赤目の、女の子に囲まれたい願望を持つ朱美。
そんな彼女には、美少女の妹、美少女の幼なじみ、美少女の先輩、美少女のクラスメイトがいた。
そんな美少女な彼女たちは、朱美のことが好きらしく――?
「私は“百合ハーレム”が好きなのぉぉぉぉぉぉ!!」
誰か一人に絞りこめなかった朱美は、彼女たちから逃げ出した。
……
ここから朱美の全ルート攻略が始まる!
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる