虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

文字の大きさ
上 下
12 / 189
第2章 旅立ちの塔

第56話~第59話

しおりを挟む
**********
第56話 特技・遊撃


フィスト「私が行く……ここをお願い」

キャッツ「行くって、どうやって行くのよ!塔の中の端から端なのよ!」

フィスト「だから都合いいのよ。こう見えてもね、建物の中では戦い慣れてるの。近衛兵だからね」

ジャンヌ「みんな、大丈夫よ!フィストに任せて」

フィスト「ありがと、ジャンヌ。サリー、浮遊石の結晶あるんだよね?あれで私の体、軽くできるよね?」

サリー「う、うん、でも術者から離れたら効果なくなるから、浮かせるのも無理だし、10秒くらいしか続かない……ほかの影を避けながら10秒であそこに行くなんて」

フィスト「浮かせるのは無理でも、サリーから離れて10秒は体が軽くなるのね?十分よ。武器は持たない方が良さそうね」

マリア「ジャンヌちゃん、ほんとに大丈夫なの?」

ジャンヌ「大丈夫、素手で戦えるのはフィストくらいよ」

フィスト「じゃ、サリー!お願い!」

サリー「う、うん…………リテ・ラトバリタ・ウルス……アリアロス・バル・ネトリール……」

フィスト「おぉ、かるっ!」

フィストはそう言うと、真横に駆け出します。
なんとフィストは塔の壁を走っていったのです。
塔の壁、曲面を蹴り続けています。

マリン「と、塔の反対側が都合がいいってそういうこと?!」

みんなの驚きを置き去りにするスピードで、フィストは反対側まで走りきりました。

奥の影の前に降り立つと、フィストの声が響きます。
「哈ァッッッ!!!」

パァァァァンッッッ!!
フィストの正拳突きが、影を霧散させました。

キャッツ「すっご……」

ジャンヌ「強いでしょー?フィストって。さ、あとはバラバラに動くやつらを片付けるだけね、みんなでもうひと息、頑張りましょ」

遠くでフィストが叫びます。

フィスト「こっちも助けてよねー!」



**********
第57話 力の試練・突破


空を飛ぶ鳥の影を、リーフの放った矢が消し去りました。
これですべての影が、消えてなくなりました。
フィストもみんなのところに戻って来れました。

マリン「つ、つかれた……」

キャッツ「お、終わったの……よね?」

マリア「みんなおつかれさまー!」

サリー「みんな、待ってて。今回復の術を」

ジャンヌ「待って、サリー」

サリー「?」

ジャンヌ「術、無限に使えるわけじゃないんでしょ?」

サリー「う、うん……」

ジャンヌ「……これから何があるかわかんないんだから、温存してて。今はとにかく、ひと息つけるわけだから、休んで体力を回復させましょ。ごめんね、みんな」

キャッツ「いや、私たちはいいけど……」

マリン「うん……」

フィスト「自分が一番疲れてるくせに……サリー、ひとりぶんなら、全員分より負担はないでしょ?ジャンヌに回復の術、かけてあげて」

ブラド「だったら、フィストとふたりぶんやん」

リーフ「うん!そうだね!」

サリー「わかった!じゃ、じっとしててね」

マリア「ほかのみんなは、怪我してない?今のうちに手当てしとこ」

ローズ「あ!私もやる!」

『力の試練……よくぞ乗り越えた』

キャッツ「忘れてた、いたね」

マリン「塔を守る者だっけ? ねー!まだ試練はつづくんでしょ?それはいいんだけど、しばらく休ませてくれない?」

『休ませるつもりはないが、次の試練が始まるまで時間がかかる。それまでは好きにしていろ……』

マリア「時間がかかるって、何か準備するの?」

『お前たちの次の試練の場所への移動だ……』

そのとき、地響きが聞こえました。
地面が揺れています。

ジャンヌ「!?なに?地震?」

フィスト「見て!塔の壁が……下がってる??」

ブラド「違う……床が、せり上がってるのよ」

ローズ「そっか、この塔、こうやってのぼるんだね」



**********
第58話
第2回反省会


せりあがる塔の床の上で、座ったり立っていたり、9人が話しています。

サリー「……………………よし。ジャンヌちゃん、フィストちゃん、回復、終わったよ」

ジャンヌ「ありがとね、サリー」

フィスト「すごい……傷だけじゃなくて、体力も回復してる……疲れがどっかいっちゃった……」

マリア「リーフ、指は大丈夫?かなり弓矢使ったでしょ」

リーフ「う、うん、でも大丈夫。少し休ませれば、平気」

ブラド「4人とも、ほんとありがとう。ごめんね、1番危ない役をさせて」

キャッツ「なに言ってんのよ!ブラドが使い魔で敵を撹乱してくれたでしょ?あれすごい助かったのよ!」

マリン「うん、ほんと。隙を作ってくれるだけでほんと助かったわ。使い魔くんたちにお礼言っといて」

ブラド「ありがと!そうするわ」

ジャンヌ「でも、私とフィストは軍人だから、戦闘は慣れてるけど、キャッツとマリン、かなりしんどかったでしょ?」

マリン「ううん、大丈夫よ、私は、やったことないわけじゃないし」

キャッツ「そうなのー?私は疲れた……ひとりで旅してるときは、基本的に逃げたり隠れたり、『敵はやり過ごす』のが鉄則だったからさー」

ローズ「そっか、遺跡とかの調査は、敵に勝つことが目的じゃないもんね」

キャッツ「そう、いちいち相手するだけ、時間と体力のムダだからねー。『こいつら全員倒せ』なんていうのはほんと勘弁してほしい(笑)だからローズとリーフにはめっちゃ感謝」

ローズ「わたし!?」
リーフ「わたし!?」

ジャンヌ「ほんとにそうね、助かったわ」

フィスト「ローズが指示役の存在に気付いて、リーフがそれを特定して……ほんと、あれがなかったら全滅してたかも」

リーフ「そ、そうかな」

ローズ「リーフは、うん、すごかったけど、私は別に……見つけたわけじゃないし……なんか、ほんとに私………………………………………………」

マリン「?」

キャッツ「どしたの?」

ローズ「……………………」

マリア「このメンバーにふさわしいのかな?ってこと?」

ローズ「……………………うん」



**********
第59話 仲間の資格


ローズ「……………………」

マリア「このメンバーにふさわしいのか、か……わかるわ、気持ち」

マリン「マリア!?何言ってんのよ!」

マリア「だって、私も、今のところ、ご飯でしか役に立ってないのよ?(笑)」

ブラド「だから!それはこれからの旅で不可欠なんだってば!ここまだ旅立ちの塔だよ?旅立ってもないのよ?」

ジャンヌ「ブラドの言うとおりね。戦うことが得意な人だけじゃ、旅は続けられないんだよ?」

リーフ「マリアちゃんのご飯でお腹いっぱいになってたから、みんなしっかり戦えたんじゃないの?」

キャッツ「そう!それよ!リーフ!」

マリア「…………そう……かな?……うん、ありがと」

ローズ「でも私は……戦い以外でも役に立つとこ、ないんだよね(笑)」

フィスト「やめてよー!役に立つとか立たんとかじゃないじゃん!」

声が響きます。

『それくらいにしておくんだな……そろそろ次の試練が始まる……』

マリン「うっさいわね!あとにしなさい!!」

『あ、あとに???』

ローズ「マ、マリンちゃん……」

マリン「大事な話してんのよ!」

『……試練よりもお前たちの話の方が大切だとでも?』

マリン「私たちの気持ち以上に大切なものなんてないわ!」

ブラド「マリン……」

マリン「私たち、これから世界をひとつにするのよ?その私たちの気持ちがひとつになってなきゃ、世界をひとつにするなんて、できるわけないじゃん!」

マリア「…………そうね」

ジャンヌが宙に向かって問いかけます。

ジャンヌ「ねえ、試練、あとにできる?」

『…………お前たちには試練を後回しにする権利も、必要もない』

マリン「ふざっけんじゃないわよぉぉー!!」

ずっと続いていた床の動きが止まりました。

しおりを挟む

処理中です...