虹の騎士団物語

舞子坂のぼる

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第2章 旅立ちの塔

第50話~第52話

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第50話 旅立ちの塔


昼食を終えた9人は、再び街道を歩きはじめ、2時間後、旅立ちの塔にたどり着きました。

フィスト「ここね」

リーフ「おっきい……」

ブラド「デカすぎ!てっぺん見えへんやん!」

マリア「ほんとねー。雲より高いわね」

マリン「キャッツ、一応聞くんだけど、来たことある?私はないけど」

キャッツ「ないよ。だってこの塔、特に宝物の噂とか聞かないもん」

ローズ「ジャンヌちゃんも来たことないの?」

ジャンヌ「ううん、私はあるよ。国内の見回りとかもするからね。でも、この塔って、ほとんどの人が近寄らないのよ」

サリー「どうして?」

ジャンヌ「用がないって言っちゃえばそれまでだけど、誰も入り方を知らないから、入れないのよ。まぁ、だからこそ、用がないってことになるんだけどね」

フィスト「宝物の噂がないのも当然ね」

リーフ「人間が作るものってすごいのね」

マリン「いや、リーフ、それ多分違うよ」

リーフ「そうなの?人間ってこういうの作れるんじゃないんだ?」

マリア「普通ここまでは無理ねー」

ローズ「私、本で読んだことある。この塔も、大昔からあるんだって。だから、虹と同じように、神様が作ったんじゃないかって言われてるらしいよ」

ジャンヌ「ま、このサイズは、その方が納得できるわね」

ブラド「でもさー、ローズってほんとにいろんな本読んでるんだね」

キャッツ「ローズの家、あれだけおっきいお屋敷だもん、本もたくさんあったでしょうね」

ローズ「うん、お父様とお母様が言ってたの。『知識はこの屋敷にも勝る財産だ。誰にも奪われることがなく、いくら分け与えても減ることがない。それをしっかりと蓄えるのが、今のあなたの務めだよ』って」

キャッツ「立派なご両親ね……ご両親があなたに託した想い、大切にね!」

ローズ「うん!」

マリン「泥棒に入っといてなに言ってんのよ」

キャッツ「盗んでないわよ!食べ物は、わけてもらったけど……」

フィスト「無断で、ね」

サリー「ねえ、あれ見て!」

ジャンヌ「?!」

9人は塔の扉に近づきました。



**********
第51話 塔のなかへ


9人が扉の前に立つと、扉に文字が浮かび上がりました。

ジャンヌ「なに?これ」

マリア「不思議、文字がひとりでに……」

フィスト「なになに……『この塔より旅立たんとする者、その許しを受けた証を示せ』

9人は目を見合わせました。
そして直後、同時に、自分の首から下げているキューブに目をやりました。

9人はキューブを扉にかざします。
不思議と誰も言葉を発しません。
未知の世界への期待か、思わぬ罠への警戒か。

9人それぞれ違った思考を経て、たどり着いた思いはひとつでした。
「ここまで来たら、進むしかない」

そのとき、キューブが激しく輝き、扉が重い音を立てて、開きました。

ジャンヌ「行きましょう……」

8人が無言で、しかし力強くうなずきます。
全員が塔の中へと歩いて行きました。
9人の足音が、カビの匂いがする空間に響きます

リーフ「なんにも、ないね……」

サリー「で、でも……不思議な波動を感じる……この塔、本当に神様が作ったのかも……」

フィスト「ずいぶん殺風景ね」

キャッツ「神様って飾りっ気ないのね。こんなにおっきな塔を立てられるんだから、もっといろいろつけたらいいのに」

ブラド「まぁ、誰も来ないしね(笑)」

マリア「でもほんとに、すごくがらんとしてるね」

ローズ「待って、ほんとに、なんにもない……」

マリン「だからそう言ってるじゃない」

ローズ「えっと、そうじゃなくて」

ジャンヌ「ローズ、言いたいこと、わかるわ。なにもない……いえ、なさすぎるのよね……」

ローズ「うん……」

サリー「た、確かに言われてみれば、階段もないなんて……」

フィスト「壁はほぼ円形ね。外からみたサイズとほとんど同じくらいか」

マリア「これじゃ塔っていうより、おっきな筒よね」

キャッツ「のぼりようがないじゃん!」

『何者だ……』

突然響いた声に、9人は驚きました。



**********
第52話 響く声


『何者だ……』

マリン「なに?この声」

フィスト「私たち以外に、誰もいないのに……」

サリー「ただの音じゃない……直接、脳に届いてる……」

『私はこの塔を守る者……お前たちは何者だ。なぜこの塔に入ってきた……』

ブラド「なんでって、なんで?」

ローズ「え(笑)、私に訊かないで(笑)」

マリア「なんていうか、成り行き上、仕方なくよね?」

キャッツ「そ、この虹のカケラっていうキューブが、この塔を指したから、ここに来たのよ。それ以上の理由なんか知らないわ」

『……お前たちは何者だ』

フィスト「何者かって訊かれてもね、このキューブのおかげで、私たちにもわかんなくなってきたわ」

リーフ「ほんとにそう……虹のカケラに選ばれたけど、なんで選ばれたのかもわからないし」

ジャンヌ「逆に教えてほしいわね。私たちは何者なの?」

『お前たちは虹のカケラに選ばれた、世界をひとつにできる9人だ……虹のカケラを所有していること、そしてこの塔の中に入ることができたことが、何よりの証……』

キャッツ「じゃあなんでさっき『何者だ』なんて訊いたのよ」

『…………』

マリン「わかってたんなら訊かないでよ」

ブラド「二度手間やん」

『…………お前たちには試練が与えられる……そしてその試練の先に、お前たちの旅立ちが用意されている……まずは最初の「論破の試練」よくぞ打ち破った……』

フィスト「今考えたでしょそれ」

マリア「ということは、まだ試練は続くのよね?」

『その通り……今からはお前たちが、厳しい道行きを乗り越えられるのか、試させてもらう……心してかかれ』

9人が息を呑みました。

『始めよう……力の試練』

響いた声の後に、壁から、床から、いくつもの黒い影が湧き出てきました。

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