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第2章 旅立ちの塔
第50話~第52話
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**********
第50話 旅立ちの塔
昼食を終えた9人は、再び街道を歩きはじめ、2時間後、旅立ちの塔にたどり着きました。
フィスト「ここね」
リーフ「おっきい……」
ブラド「デカすぎ!てっぺん見えへんやん!」
マリア「ほんとねー。雲より高いわね」
マリン「キャッツ、一応聞くんだけど、来たことある?私はないけど」
キャッツ「ないよ。だってこの塔、特に宝物の噂とか聞かないもん」
ローズ「ジャンヌちゃんも来たことないの?」
ジャンヌ「ううん、私はあるよ。国内の見回りとかもするからね。でも、この塔って、ほとんどの人が近寄らないのよ」
サリー「どうして?」
ジャンヌ「用がないって言っちゃえばそれまでだけど、誰も入り方を知らないから、入れないのよ。まぁ、だからこそ、用がないってことになるんだけどね」
フィスト「宝物の噂がないのも当然ね」
リーフ「人間が作るものってすごいのね」
マリン「いや、リーフ、それ多分違うよ」
リーフ「そうなの?人間ってこういうの作れるんじゃないんだ?」
マリア「普通ここまでは無理ねー」
ローズ「私、本で読んだことある。この塔も、大昔からあるんだって。だから、虹と同じように、神様が作ったんじゃないかって言われてるらしいよ」
ジャンヌ「ま、このサイズは、その方が納得できるわね」
ブラド「でもさー、ローズってほんとにいろんな本読んでるんだね」
キャッツ「ローズの家、あれだけおっきいお屋敷だもん、本もたくさんあったでしょうね」
ローズ「うん、お父様とお母様が言ってたの。『知識はこの屋敷にも勝る財産だ。誰にも奪われることがなく、いくら分け与えても減ることがない。それをしっかりと蓄えるのが、今のあなたの務めだよ』って」
キャッツ「立派なご両親ね……ご両親があなたに託した想い、大切にね!」
ローズ「うん!」
マリン「泥棒に入っといてなに言ってんのよ」
キャッツ「盗んでないわよ!食べ物は、わけてもらったけど……」
フィスト「無断で、ね」
サリー「ねえ、あれ見て!」
ジャンヌ「?!」
9人は塔の扉に近づきました。
**********
第51話 塔のなかへ
9人が扉の前に立つと、扉に文字が浮かび上がりました。
ジャンヌ「なに?これ」
マリア「不思議、文字がひとりでに……」
フィスト「なになに……『この塔より旅立たんとする者、その許しを受けた証を示せ』
9人は目を見合わせました。
そして直後、同時に、自分の首から下げているキューブに目をやりました。
9人はキューブを扉にかざします。
不思議と誰も言葉を発しません。
未知の世界への期待か、思わぬ罠への警戒か。
9人それぞれ違った思考を経て、たどり着いた思いはひとつでした。
「ここまで来たら、進むしかない」
そのとき、キューブが激しく輝き、扉が重い音を立てて、開きました。
ジャンヌ「行きましょう……」
8人が無言で、しかし力強くうなずきます。
全員が塔の中へと歩いて行きました。
9人の足音が、カビの匂いがする空間に響きます
リーフ「なんにも、ないね……」
サリー「で、でも……不思議な波動を感じる……この塔、本当に神様が作ったのかも……」
フィスト「ずいぶん殺風景ね」
キャッツ「神様って飾りっ気ないのね。こんなにおっきな塔を立てられるんだから、もっといろいろつけたらいいのに」
ブラド「まぁ、誰も来ないしね(笑)」
マリア「でもほんとに、すごくがらんとしてるね」
ローズ「待って、ほんとに、なんにもない……」
マリン「だからそう言ってるじゃない」
ローズ「えっと、そうじゃなくて」
ジャンヌ「ローズ、言いたいこと、わかるわ。なにもない……いえ、なさすぎるのよね……」
ローズ「うん……」
サリー「た、確かに言われてみれば、階段もないなんて……」
フィスト「壁はほぼ円形ね。外からみたサイズとほとんど同じくらいか」
マリア「これじゃ塔っていうより、おっきな筒よね」
キャッツ「のぼりようがないじゃん!」
『何者だ……』
突然響いた声に、9人は驚きました。
**********
第52話 響く声
『何者だ……』
マリン「なに?この声」
フィスト「私たち以外に、誰もいないのに……」
サリー「ただの音じゃない……直接、脳に届いてる……」
『私はこの塔を守る者……お前たちは何者だ。なぜこの塔に入ってきた……』
ブラド「なんでって、なんで?」
ローズ「え(笑)、私に訊かないで(笑)」
マリア「なんていうか、成り行き上、仕方なくよね?」
キャッツ「そ、この虹のカケラっていうキューブが、この塔を指したから、ここに来たのよ。それ以上の理由なんか知らないわ」
『……お前たちは何者だ』
フィスト「何者かって訊かれてもね、このキューブのおかげで、私たちにもわかんなくなってきたわ」
リーフ「ほんとにそう……虹のカケラに選ばれたけど、なんで選ばれたのかもわからないし」
ジャンヌ「逆に教えてほしいわね。私たちは何者なの?」
『お前たちは虹のカケラに選ばれた、世界をひとつにできる9人だ……虹のカケラを所有していること、そしてこの塔の中に入ることができたことが、何よりの証……』
キャッツ「じゃあなんでさっき『何者だ』なんて訊いたのよ」
『…………』
マリン「わかってたんなら訊かないでよ」
ブラド「二度手間やん」
『…………お前たちには試練が与えられる……そしてその試練の先に、お前たちの旅立ちが用意されている……まずは最初の「論破の試練」よくぞ打ち破った……』
フィスト「今考えたでしょそれ」
マリア「ということは、まだ試練は続くのよね?」
『その通り……今からはお前たちが、厳しい道行きを乗り越えられるのか、試させてもらう……心してかかれ』
9人が息を呑みました。
『始めよう……力の試練』
響いた声の後に、壁から、床から、いくつもの黒い影が湧き出てきました。
第50話 旅立ちの塔
昼食を終えた9人は、再び街道を歩きはじめ、2時間後、旅立ちの塔にたどり着きました。
フィスト「ここね」
リーフ「おっきい……」
ブラド「デカすぎ!てっぺん見えへんやん!」
マリア「ほんとねー。雲より高いわね」
マリン「キャッツ、一応聞くんだけど、来たことある?私はないけど」
キャッツ「ないよ。だってこの塔、特に宝物の噂とか聞かないもん」
ローズ「ジャンヌちゃんも来たことないの?」
ジャンヌ「ううん、私はあるよ。国内の見回りとかもするからね。でも、この塔って、ほとんどの人が近寄らないのよ」
サリー「どうして?」
ジャンヌ「用がないって言っちゃえばそれまでだけど、誰も入り方を知らないから、入れないのよ。まぁ、だからこそ、用がないってことになるんだけどね」
フィスト「宝物の噂がないのも当然ね」
リーフ「人間が作るものってすごいのね」
マリン「いや、リーフ、それ多分違うよ」
リーフ「そうなの?人間ってこういうの作れるんじゃないんだ?」
マリア「普通ここまでは無理ねー」
ローズ「私、本で読んだことある。この塔も、大昔からあるんだって。だから、虹と同じように、神様が作ったんじゃないかって言われてるらしいよ」
ジャンヌ「ま、このサイズは、その方が納得できるわね」
ブラド「でもさー、ローズってほんとにいろんな本読んでるんだね」
キャッツ「ローズの家、あれだけおっきいお屋敷だもん、本もたくさんあったでしょうね」
ローズ「うん、お父様とお母様が言ってたの。『知識はこの屋敷にも勝る財産だ。誰にも奪われることがなく、いくら分け与えても減ることがない。それをしっかりと蓄えるのが、今のあなたの務めだよ』って」
キャッツ「立派なご両親ね……ご両親があなたに託した想い、大切にね!」
ローズ「うん!」
マリン「泥棒に入っといてなに言ってんのよ」
キャッツ「盗んでないわよ!食べ物は、わけてもらったけど……」
フィスト「無断で、ね」
サリー「ねえ、あれ見て!」
ジャンヌ「?!」
9人は塔の扉に近づきました。
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第51話 塔のなかへ
9人が扉の前に立つと、扉に文字が浮かび上がりました。
ジャンヌ「なに?これ」
マリア「不思議、文字がひとりでに……」
フィスト「なになに……『この塔より旅立たんとする者、その許しを受けた証を示せ』
9人は目を見合わせました。
そして直後、同時に、自分の首から下げているキューブに目をやりました。
9人はキューブを扉にかざします。
不思議と誰も言葉を発しません。
未知の世界への期待か、思わぬ罠への警戒か。
9人それぞれ違った思考を経て、たどり着いた思いはひとつでした。
「ここまで来たら、進むしかない」
そのとき、キューブが激しく輝き、扉が重い音を立てて、開きました。
ジャンヌ「行きましょう……」
8人が無言で、しかし力強くうなずきます。
全員が塔の中へと歩いて行きました。
9人の足音が、カビの匂いがする空間に響きます
リーフ「なんにも、ないね……」
サリー「で、でも……不思議な波動を感じる……この塔、本当に神様が作ったのかも……」
フィスト「ずいぶん殺風景ね」
キャッツ「神様って飾りっ気ないのね。こんなにおっきな塔を立てられるんだから、もっといろいろつけたらいいのに」
ブラド「まぁ、誰も来ないしね(笑)」
マリア「でもほんとに、すごくがらんとしてるね」
ローズ「待って、ほんとに、なんにもない……」
マリン「だからそう言ってるじゃない」
ローズ「えっと、そうじゃなくて」
ジャンヌ「ローズ、言いたいこと、わかるわ。なにもない……いえ、なさすぎるのよね……」
ローズ「うん……」
サリー「た、確かに言われてみれば、階段もないなんて……」
フィスト「壁はほぼ円形ね。外からみたサイズとほとんど同じくらいか」
マリア「これじゃ塔っていうより、おっきな筒よね」
キャッツ「のぼりようがないじゃん!」
『何者だ……』
突然響いた声に、9人は驚きました。
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第52話 響く声
『何者だ……』
マリン「なに?この声」
フィスト「私たち以外に、誰もいないのに……」
サリー「ただの音じゃない……直接、脳に届いてる……」
『私はこの塔を守る者……お前たちは何者だ。なぜこの塔に入ってきた……』
ブラド「なんでって、なんで?」
ローズ「え(笑)、私に訊かないで(笑)」
マリア「なんていうか、成り行き上、仕方なくよね?」
キャッツ「そ、この虹のカケラっていうキューブが、この塔を指したから、ここに来たのよ。それ以上の理由なんか知らないわ」
『……お前たちは何者だ』
フィスト「何者かって訊かれてもね、このキューブのおかげで、私たちにもわかんなくなってきたわ」
リーフ「ほんとにそう……虹のカケラに選ばれたけど、なんで選ばれたのかもわからないし」
ジャンヌ「逆に教えてほしいわね。私たちは何者なの?」
『お前たちは虹のカケラに選ばれた、世界をひとつにできる9人だ……虹のカケラを所有していること、そしてこの塔の中に入ることができたことが、何よりの証……』
キャッツ「じゃあなんでさっき『何者だ』なんて訊いたのよ」
『…………』
マリン「わかってたんなら訊かないでよ」
ブラド「二度手間やん」
『…………お前たちには試練が与えられる……そしてその試練の先に、お前たちの旅立ちが用意されている……まずは最初の「論破の試練」よくぞ打ち破った……』
フィスト「今考えたでしょそれ」
マリア「ということは、まだ試練は続くのよね?」
『その通り……今からはお前たちが、厳しい道行きを乗り越えられるのか、試させてもらう……心してかかれ』
9人が息を呑みました。
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響いた声の後に、壁から、床から、いくつもの黒い影が湧き出てきました。
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