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しおりを挟むあまりにも眩しく、煌びやかなその空間はまるで異国のようであった。異国といえば、誠は家の書庫に迷い込んだ異国の小さな少年をかくまって住まわせていたことがあった。それは住まわせていたというよりも、飼っていたという方が近かった。偏屈で頭のおかしい父を持ち、しかし、そのような父を誠はそれでも尊敬していた。父は博識であったが女村にあこがれている変な性癖の学者であったが、本の所蔵は本当にすばらしかったのだ。そして誠はずっと本を読んで過ごした。家で読むこともあったが、家にいれば父の悪い噂ばかりを耳にしてしまい気が滅入るのもあって、書庫に逃げるようになった。ある時、書庫で過ごしていると、毛むくじゃらの薄汚れた猫のような生き物が入って来た。よく見ると、それは人間だった。汚くなった薄い色の髪は長くのばしっぱなしだった。父が変わっているために、友達もいなかった誠は書庫によく食べ物を持ち込んでいたから、それをその子供に分けてやった。子供はうまくしゃべれないらしく、文字も読めないようであったので、誠は少年にいろいろと教えてやった。いつもバカにされている誠にとって、それはまるで自分が誇らしいひとになったかのようでうれしいばかりだった。
それにしても、誰も話しかけてこない。一体どういうことなのだと思ってあたりを見回してみるものの、何やら緊急事態のようであった。誠は首をかしげる。客に対して何も言ってこないどころか人がいない。もしかして営業時間ではなかったかと不安になった。
「お、おまたせ、いたしました! あの、こちらでございますがぁ」
と戻って来た店の者であろう男が娘を選ぶファイルを開いた。そこには一番初めに顔を隠した美しい金髪の男が映っていた。それはあの懐かしい猫のような少年を思い出させた。汚い毛をきれいに洗ってやると、少年はとても美しい金髪の異国の子供だったのだ。目は青く、色はとても白かった。写真の男はきらきらとした耳飾りをつけ、高貴な雰囲気であった。金は問題ないはずである。
次のページも一応見ようかと手を添えると、
「きょ、今日は、こちらのび、紊來(びんらい)さま、のみとなります」
「え、一人? え?」
「は、はい! 今宵の夢がよろしいものでございますように!」
ちりーんちりーんと決定された鐘を鳴らされる。完全にフライングである。あ、ま、待ってとは誠がいう隙はなく、あれよあれよと、最上階の部屋へと通されてしまったのであった。
誠は狐につままれたかのような気持ちであった。まるですべてが今日ここに来るべくしてきた。いや、来なければならなかったのではないだろうかと思いそうになる不思議さであった。
「こちらの部屋にございます、どうぞどうぞ」
そそそそと店の者が下がっていく。どうにも不思議な者である。不慣れでいるようなのに手際が良い。なんともちぐはぐとしていた。誠は不思議に思いながらも、部屋に中へと入って行った。どちらにしよ、何もする気はないのだ。むしろ、できないことが問題なのだ。
部屋の中は不思議な香りが漂っていた。頭がどうもぼんやりするような香りであった。
「このような場所に来ようとは、どういうことなのだ」
その声はあまりにも品のあるように誠には思われた。なんと美しい声なのだ。あまりにも高貴な方の顔なぞ見てはならないかのような、そんな厳かさを感じた。
「それは、妻との離縁のためにやって来たのでございます」
「ほう、それはどのような理由であろうか」
「妻と離縁することになりそうなのです、その際に、妻により多く金を持たせてやりたいのです」
「それならば、持たせてやればよいではないか、こんなところに来なくとも」
「ええ、そうですが」
なぜ、攻められているのだろうかと誠は不思議に思った。それは妻側の理屈のようにかんじたのだ。それにしても、頭の奥がずきずきと痛む。ずんと重くよろりと座り込んだ。
「具合が」
「まったく、予定とは変わってしまったが、良かろう!」
そう言って、その男は誠に近づくと、そろりと抱き寄せた。誠は頭が重くてうまく考えることができなかった。目の前には金髪のそれはそれは美しい異国の青年がいた。顔が近づいてきて、誠の唇と重なった。
「ん、ん?」
するりと男は誠のいつもしょげている熱に触れる。そこはいるも、少しも反応しないところですから、と言おうとしてうまく言葉にならなかった。
「ひ、あ、ああ」
熱を持っていたのだ。
「なぜ」
「なぜ、か。私に口づけをされたからであろう」
「は、あ、うん、ん」
そんなバカなと誠は思ったが、するするとなでられるその場所は確かに熱を持ち、反応していた。
「あ、あ、ああ」
誠はうれしくて、気持ちよくて、震わせると、先からとぽりと溢れさせたのだった。
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