悠太と仁と、夏の空

もちもち

文字の大きさ
上 下
7 / 7
第7章 青い空

青い空

しおりを挟む
翌朝。


この日も、とても澄んだ青空が広がっていた。




みんなで朝食を済ませ、お父さんの運転する車で、お寺へと向かった。
お寺の住職さんに挨拶を済ませ、みんなでお墓の掃除をしていると、おばあちゃんが悠太を呼んだ。



「悠太ぁ、こっちおいでぇ。」
「・・・・・・・・・・うん」


おばあちゃんがいたのは、一つのお墓の前だった。
『山田家の墓』ときざまれている。

悠太は、ギュッと手をにぎりしめた。






そんな悠太を見て、おばあちゃんは、ゆっくりと話し始めた。


「仁は、病気のくせにとっても明るくてなぁ。体も楽じゃないだろうに、何だかんだとおちゃらけたこといっては、いっつもみんなを笑わせてたんだぁ」



「そんな子だったから。お盆で帰ってきたら。悠太がひとりぼっちでいたから。ついつい一緒に遊んでみたくなったんだろうよ」


「楽しそうだ!ってな」

と、パチン!と、おばあちゃんはウインクした。




「ふふっ」

悠太は笑った。




悠太は、一生懸命、仁のお墓を掃除した。









セミが鳴いている。
今日もとっても暑い。



まぶしいほどに澄んだ青空が、なんだか目にしみて。
ちょっとだけ涙があふれてきた。




「仁、またくるね」

そう言って、悠太は、仁のお墓を後にした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

バロン

Ham
児童書・童話
広大な平野が続き 川と川に挟まれる 農村地帯の小さな町。 そこに暮らす 聴力にハンデのある ひとりの少年と 地域猫と呼ばれる 一匹の猫との出会いと 日々の物語。

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

白銀の狼と暁の国

石河 翠
児童書・童話
雪に閉ざされた王国を救うため、お姫さまは森に住む狼のもとに嫁ぐことになりました。愛を知らないお姫さまと、人間に仲間を殺されたひとりぼっちの狼。彼らはひと冬をともに過ごし、やがて本当の家族になるのです。ところがある時、彼らに予想もしない出来事が訪れ……。愛する家族を守るため、お姫さまと狼はそれぞれの大切なものを差し出すのでした。 ※この作品は、『月は夢など見るはずもなく』の第7話「十三夜」の中で、ヒロイン月玲(ユエリン)がヒーローに聞かせた昔話です。 ※イラストは、さお様に描いていただきました。本当にありがとうございました。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しております。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

あなただけを見つめる

雪原歌乃
児童書・童話
男勝りな女の子・葵の隣には、女の子のように華奢な男の子・陽太がいつもいた。 当たり前のように一緒にいて、離れることは決してないと思っていたけれど……。 温かくて少しほろ苦い、幼き日の小さな初恋のお話。

紅薔薇と森の待ち人

石河 翠
児童書・童話
くにざかいの深い森で、貧しい若者と美しい少女が出会いました。仲睦まじく暮らす二人でしたが、森の周辺にはいつしか不穏な気配がただよいはじめます。若者と彼が愛する森を守るために、少女が下した決断とは……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、夕立様に描いて頂きました。

迷宮階段

西羽咲 花月
児童書・童話
その学校にはある噂がある 「この学校は三階建てでしょう? だけど、屋上に出るための階段がある。そこに、放課後の四時四十四分に行くの。階段の、下から四段目に立って『誰々を、誰々に交換』って口に出して言うの。そうすれば翌日、相手が本当に交換されてるんだって!」 そんな噂を聞いた主人公は自分の人生を変えるために階段へ向かう そして待ち受けていたのは恐怖だった!

あほうぎ

降守鳳都
児童書・童話
ある国に伝わる昔話です。 ある国がどこなのかは定かではありません。 どこかで聴いたような話ですが、 まだ広く知られていない話のようでもあります。

処理中です...