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再臨譚
49、頼りになるのは自分たちの使鬼
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作為的に引き起こされようとしている滅亡を止める。
その決意を胸にオフィスビルへと入った護たちの顔は、緊張でこわばっていた。
彼らのいる場所は魔法陣の中心。
言ってみれば、敵勢力のど真ん中ということになる。
――まぁ、リラックスしる人間がいるとしたら、そいつは地雷原でタップダンスしててもおかしくないな
だがあいにくと、この場にいる全員の神経はそんな芸当ができるほど太くはない。
護と月美はもとより、こういった場面に慣れているはずの光と満すら、表情に余裕はなく、緊張でこわばっている。
当然、会話を交わしている余裕もないため、一行の間には沈黙が流れていた。
だが、その沈黙は突然、破られる。
「人間だっ!」
「バフォメットが言っていた連中だ!始末しろ!!」
「しまったっ!」
「迎撃態勢!」
光の号令と同時に、満は襲撃してきた妖や悪魔に銃口を向け、発砲する。
それを皮切りに。
「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」
「祓いたまひ、清めたまふ!」
護と月美が霊力を込めた呪文を襲撃してきた妖たちにぶつけ、一気に突入する。
だが、自分たちの最終目標を忘れているわけではない。
「「「オン、マリシエイソワカ!」」」
妖たちの攻撃を回避しながら、護たちは互いの背中を預けるような位置取りになった。
すると突然、護と満、光がまるで示し合わせたかのように、一秒のずれもなく、摩利支天の真言を口にする。
「どこいった?!」
「消えただと?!」
「探せ、探せ!!」
妖たちの目には、護たちの姿が突然、消えたように感じたのだろう。
急に周囲を見回しはじめ、あたふたとその場から離れ、護たちを追いかけ始めた。
妖たちの姿が見えなくなると護たちは隠形術を解除し、階段を上がり、上へと向かう。
「危なかったな」
「あぁ。危うく、無駄に戦うところだった」
「さすがに、魔法陣の中心が近づくにつれて特殊生物たちの数が増えてくるか」
「とはいっても、いつまでも隠形術を使っていても霊力を消費し続けるけど?どうするの?」
術を使って隠れ続ければ、確実に逃げることはできる。
だが、桶に貯められた水を流し続ければいつか空になるように、術を使い続けていれば霊力も体力も完全になくなってしまう。
魔法陣までの距離によっては、戦闘を続けるよりも隠形術で隠れ続けている方が、消耗は少ないかもしれない。
だが、ここはまだ二階。
目的の場所まではまだ距離があるため、どれだけの消耗することになるかわからない。
「結局、どちらがましか、ということになるんだろうが……」
「正直、ゴールが見えないのに使いたくないぞ」
「それはそうだな」
「結界の中で休みながら進むっていうのは?」
「いや、それも現実的ではないな。どこかで霊力の補給ができればいいんだが」
さすがに、ゲームのように薬で霊力や魔力を補給するということはできない。
水晶や翡翠のような、霊的な力をまといやすい希少石ならば話は別なのだろうが、あいにくと、護たちは現在、そういったものの持ち合わせていなかった。
「かといって、このまま遭遇しないように行動するのは無理があるな」
「たしかにそうだ。時間がかかりすぎる」
「でも、さっきの数から考えても、戦いながら進むなんて無理なことじゃないかな?」
「霊力的にも体力的にも、確かに難しいことだな」
「とはいえ、いつまでもここでじっとしているわけにもいかないしな」
体力的にも精神的にも、人間は妖に劣っている。
数も不利であるため、持久戦に持ち込まなければ太刀打ちできないのだが、その戦術を選択することはできない。
どうしたものか、四人が考えていると。
「なぁなぁ、お前さんら。誰かを忘れちゃいませんかい?」
「正確には自分たちの勢力を自分たちで見誤っちゃいませんか?」
「うにゃん!」
「え?」
突然、四人のいずれのものでもない声が聞こえてきた。
振り返ると、こちらにジトっとした視線を向けながら座っている狐が五匹。
ほかにも、美しいながらもぞっとする何かを感じさせる日本人形や、尾の先が二つに分かれた黒猫、修験者のような衣装をまとい、鴉の面をかぶっている人間がいる。
言わずもがな、護たちに仕える使鬼たちだ。
「あ……」
「あ……じゃねぇよ! なんで俺らのことを忘れんだよ!!」
「にゃ~!! ぐるな~っ!!」
「いや、正直すまん」
「すまない。忘れていたというわけではないんだが」
「いや、俺たちを使うっていう選択肢が出てこない時点で忘れてるだろ!」
「断固として抗議させてもらうぞ!!」
普段から自分たちに助力を頼んでくるため、今回も自分たちに助力を乞うだろうと準備していたというのに、自分たちの存在を忘れたかのような戦略を立てている始末。
その姿に、自分たちが用無しであると言外に告げられたような気がして、腹が立って仕方がないらしい。
むろん、主人である護たちは謝罪したのだが、やはり納得できない様子だ。
とはいえ。
「見えたな、道筋」
「あぁ。少しばかり、こいつらの負担が大きいけど」
「だが、我々の負担を減らす方法もこれ以上有効な手段もない」
何より、時間も残されていない。
自分たちの目の前にいる使鬼たちに活躍してもらう。
護たちはそれ以外に、ほかの戦略を練る時間はなかった。
その決意を胸にオフィスビルへと入った護たちの顔は、緊張でこわばっていた。
彼らのいる場所は魔法陣の中心。
言ってみれば、敵勢力のど真ん中ということになる。
――まぁ、リラックスしる人間がいるとしたら、そいつは地雷原でタップダンスしててもおかしくないな
だがあいにくと、この場にいる全員の神経はそんな芸当ができるほど太くはない。
護と月美はもとより、こういった場面に慣れているはずの光と満すら、表情に余裕はなく、緊張でこわばっている。
当然、会話を交わしている余裕もないため、一行の間には沈黙が流れていた。
だが、その沈黙は突然、破られる。
「人間だっ!」
「バフォメットが言っていた連中だ!始末しろ!!」
「しまったっ!」
「迎撃態勢!」
光の号令と同時に、満は襲撃してきた妖や悪魔に銃口を向け、発砲する。
それを皮切りに。
「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」
「祓いたまひ、清めたまふ!」
護と月美が霊力を込めた呪文を襲撃してきた妖たちにぶつけ、一気に突入する。
だが、自分たちの最終目標を忘れているわけではない。
「「「オン、マリシエイソワカ!」」」
妖たちの攻撃を回避しながら、護たちは互いの背中を預けるような位置取りになった。
すると突然、護と満、光がまるで示し合わせたかのように、一秒のずれもなく、摩利支天の真言を口にする。
「どこいった?!」
「消えただと?!」
「探せ、探せ!!」
妖たちの目には、護たちの姿が突然、消えたように感じたのだろう。
急に周囲を見回しはじめ、あたふたとその場から離れ、護たちを追いかけ始めた。
妖たちの姿が見えなくなると護たちは隠形術を解除し、階段を上がり、上へと向かう。
「危なかったな」
「あぁ。危うく、無駄に戦うところだった」
「さすがに、魔法陣の中心が近づくにつれて特殊生物たちの数が増えてくるか」
「とはいっても、いつまでも隠形術を使っていても霊力を消費し続けるけど?どうするの?」
術を使って隠れ続ければ、確実に逃げることはできる。
だが、桶に貯められた水を流し続ければいつか空になるように、術を使い続けていれば霊力も体力も完全になくなってしまう。
魔法陣までの距離によっては、戦闘を続けるよりも隠形術で隠れ続けている方が、消耗は少ないかもしれない。
だが、ここはまだ二階。
目的の場所まではまだ距離があるため、どれだけの消耗することになるかわからない。
「結局、どちらがましか、ということになるんだろうが……」
「正直、ゴールが見えないのに使いたくないぞ」
「それはそうだな」
「結界の中で休みながら進むっていうのは?」
「いや、それも現実的ではないな。どこかで霊力の補給ができればいいんだが」
さすがに、ゲームのように薬で霊力や魔力を補給するということはできない。
水晶や翡翠のような、霊的な力をまといやすい希少石ならば話は別なのだろうが、あいにくと、護たちは現在、そういったものの持ち合わせていなかった。
「かといって、このまま遭遇しないように行動するのは無理があるな」
「たしかにそうだ。時間がかかりすぎる」
「でも、さっきの数から考えても、戦いながら進むなんて無理なことじゃないかな?」
「霊力的にも体力的にも、確かに難しいことだな」
「とはいえ、いつまでもここでじっとしているわけにもいかないしな」
体力的にも精神的にも、人間は妖に劣っている。
数も不利であるため、持久戦に持ち込まなければ太刀打ちできないのだが、その戦術を選択することはできない。
どうしたものか、四人が考えていると。
「なぁなぁ、お前さんら。誰かを忘れちゃいませんかい?」
「正確には自分たちの勢力を自分たちで見誤っちゃいませんか?」
「うにゃん!」
「え?」
突然、四人のいずれのものでもない声が聞こえてきた。
振り返ると、こちらにジトっとした視線を向けながら座っている狐が五匹。
ほかにも、美しいながらもぞっとする何かを感じさせる日本人形や、尾の先が二つに分かれた黒猫、修験者のような衣装をまとい、鴉の面をかぶっている人間がいる。
言わずもがな、護たちに仕える使鬼たちだ。
「あ……」
「あ……じゃねぇよ! なんで俺らのことを忘れんだよ!!」
「にゃ~!! ぐるな~っ!!」
「いや、正直すまん」
「すまない。忘れていたというわけではないんだが」
「いや、俺たちを使うっていう選択肢が出てこない時点で忘れてるだろ!」
「断固として抗議させてもらうぞ!!」
普段から自分たちに助力を頼んでくるため、今回も自分たちに助力を乞うだろうと準備していたというのに、自分たちの存在を忘れたかのような戦略を立てている始末。
その姿に、自分たちが用無しであると言外に告げられたような気がして、腹が立って仕方がないらしい。
むろん、主人である護たちは謝罪したのだが、やはり納得できない様子だ。
とはいえ。
「見えたな、道筋」
「あぁ。少しばかり、こいつらの負担が大きいけど」
「だが、我々の負担を減らす方法もこれ以上有効な手段もない」
何より、時間も残されていない。
自分たちの目の前にいる使鬼たちに活躍してもらう。
護たちはそれ以外に、ほかの戦略を練る時間はなかった。
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