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再臨譚
14、厄介事の種は突然やってくる
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正月三が日が過ぎ、参拝客も落ち着いてきた頃になると、ようやく護たちものんびりと過ごすことができるようになっていた。
だが、護と月美は高校生で、今は冬休み中。当然、冬休みの課題が出されているため、それを片付けなければならない。
それに加えて、普段の修行も再開されるのだから、余計にのんびりしている暇などないのだ。
暇などないのだが。
《なぁなぁ》
「うっさい、黙れ。つか切るぞ、電話」
突然、清から電話がかかってきた。
最初こそ、新年のあいさつだけだったのだが、話題が徐々に、そして勝手に広がっていき、関係のない話にまで発展。
いい加減、課題の邪魔になってきた上に、苛立ちが限界に達していたため、通話を切ることを宣言した。
その一言に、清は当然、反論してくる。
《えぇっ?!いいじゃんかよ!!》
「よくないから言っている。つか邪魔だから切るぞ」
《いや、まじで待ってくれ!ちょっと相談、てか聞きたいことがあるんだよ!!》
問答無用で通話を終わらせようとした護だったが、普段の軽薄さのないその様子に、ひとまず話だけでも聞いてやろうと、通話を切らないことにした。
「で、なんだよ。くだらねぇことだったら有無を言わずに切るからな」
《わかってるっての!》
護の一言に必死の様子で返しながら、清は話を始めた。
曰く、正月のあいさつにやってきた親戚の一人が、急な体調不良で帰宅してしまったらしい。
ひとまず、快復に向かっているようではあるが、お見舞いということで、何か贈りたいのだが、何がいいだろうか。
ということだった。
「……なぁ、それ俺である必要があるか?」
《いやぁ、だってよぉ。お前、ハーブとか漢方の知識、結構あるだろ?だからさぁ》
「……生姜湯でも贈ってやりゃいいじゃねぇか。つか、それ以外に何がある」
《いや、生姜湯ってのもなんかと思ってさぁ……その人、辛いのが嫌いだし》
「だったら緑茶でも贈れ。あれにも消毒効果があるから」
《ならそうするかなぁ。あ、ちなみにほかに何かあるか?辛くないやつで》
いやにしつこく意見を求めてくる清に、護は何かいつもと違う様子に。
「……その人、女か?あれか、お前、その人のこと狙ってるのか?」
と、思わずからかった。
その言葉に、清は慌てる様子もなく。
《いんや。その人、昔はよく遊んでくれた人なんだよ。だから、ちょっと年の離れた姉貴みたいな感じだな》
と、あっけらかんと返してきた。
一方、普段やられているぶん、仕返しができると思っていた護は、当てが外れたためか、ふてくされたように。
「そうかよ。ならもういいよな?切るぞ」
《待てよ!肝心のハーブのことを聞いてないだろがぃ!!》
「……ちっ」
通話を切ろうとしたが、まだ用件が済んでいなかった清が叫びながら止めてきた。
こうなっては一方的に通話を切っても、再びかけてくることは目に見えている。
護は諦めて、さっさと伝えることを選んだ。
「一度しか言わんからな?」
《おう!ばっちこい!!》
「エキナセア、エルダーフラワー、シベリアンジンセング、セージ、ブルウマロー、ペパーミント、マーシュマロウ、マレイン、ローズヒップ……まぁ、こんなもんだろ。妊娠中は使用を控えるように注意喚起されているものもあるから、気を付けろよ?」
《まじか……ちなみに、種類を教えてくれたりは》
「するか馬鹿。てめぇで調べろそれくらい」
《お、おう……了解だ。ありがとな!!》
そう言って、清は一方的に通話を切った。
――お前が切るのはいいのかよ……つか、そんなことだったら自分で調べりゃいいのによぉ……
護は重々しくため息をつきながらも、何かふと気になるものを感じていた。
普段の清との会話ではほぼありえないその感覚に突き動かされ、護は課題を進める手を止め、式盤を取り出し、占いを始めた。
その行動を、自分でもばかげているとは思っている。
だが、なぜか占いをしなければならないという気持ちが沸き上がってくるのだ。
――理屈じゃない。完全に俺の勘でしかない。けれど、なぜか胸騒ぎがする……
新年早々、あまり大事は起きてほしくないという想いもあってか、この勘が外れていることを願いながら、護は式盤を動かした。
カラカラと、乾いた木の音が響く。
カタリ、と静かな音がすると、護は式盤に出た結果を見て、深くため息をついた。
「……これは、いったい……?」
そこに出ていた結果を紐解くが、まったく見通すことができない。
別にこれが初めてというわけではない。だが、この結果はまるで目隠しでもさせられているかのようだ。
ここしばらく、占いをしてこなかったこともあるためなんとも言えないが、何か大きな力が占いを邪魔している。
そんな気がしてならないのだ。
「……なにか、妙なことが起こらないといいんだけど……」
嫌な予感を覚えつつ、護は気分を変えるために残っている課題に取り掛かった。
その心中で。
――厄介事の種持ってきやがって……新学期になったらまずは清の奴、ぶん殴る。絶対ぶん殴ってやる……
と、厄介事の種を持ち込んできた清に対するストレスを燃やしていたことは言うまでもない。
そして、その呟きの通り、新学期早々、通学路で清と遭遇した護は、新年のあいさつと一緒に、握り拳を清の頬にお見舞いしたのであった。
だが、護と月美は高校生で、今は冬休み中。当然、冬休みの課題が出されているため、それを片付けなければならない。
それに加えて、普段の修行も再開されるのだから、余計にのんびりしている暇などないのだ。
暇などないのだが。
《なぁなぁ》
「うっさい、黙れ。つか切るぞ、電話」
突然、清から電話がかかってきた。
最初こそ、新年のあいさつだけだったのだが、話題が徐々に、そして勝手に広がっていき、関係のない話にまで発展。
いい加減、課題の邪魔になってきた上に、苛立ちが限界に達していたため、通話を切ることを宣言した。
その一言に、清は当然、反論してくる。
《えぇっ?!いいじゃんかよ!!》
「よくないから言っている。つか邪魔だから切るぞ」
《いや、まじで待ってくれ!ちょっと相談、てか聞きたいことがあるんだよ!!》
問答無用で通話を終わらせようとした護だったが、普段の軽薄さのないその様子に、ひとまず話だけでも聞いてやろうと、通話を切らないことにした。
「で、なんだよ。くだらねぇことだったら有無を言わずに切るからな」
《わかってるっての!》
護の一言に必死の様子で返しながら、清は話を始めた。
曰く、正月のあいさつにやってきた親戚の一人が、急な体調不良で帰宅してしまったらしい。
ひとまず、快復に向かっているようではあるが、お見舞いということで、何か贈りたいのだが、何がいいだろうか。
ということだった。
「……なぁ、それ俺である必要があるか?」
《いやぁ、だってよぉ。お前、ハーブとか漢方の知識、結構あるだろ?だからさぁ》
「……生姜湯でも贈ってやりゃいいじゃねぇか。つか、それ以外に何がある」
《いや、生姜湯ってのもなんかと思ってさぁ……その人、辛いのが嫌いだし》
「だったら緑茶でも贈れ。あれにも消毒効果があるから」
《ならそうするかなぁ。あ、ちなみにほかに何かあるか?辛くないやつで》
いやにしつこく意見を求めてくる清に、護は何かいつもと違う様子に。
「……その人、女か?あれか、お前、その人のこと狙ってるのか?」
と、思わずからかった。
その言葉に、清は慌てる様子もなく。
《いんや。その人、昔はよく遊んでくれた人なんだよ。だから、ちょっと年の離れた姉貴みたいな感じだな》
と、あっけらかんと返してきた。
一方、普段やられているぶん、仕返しができると思っていた護は、当てが外れたためか、ふてくされたように。
「そうかよ。ならもういいよな?切るぞ」
《待てよ!肝心のハーブのことを聞いてないだろがぃ!!》
「……ちっ」
通話を切ろうとしたが、まだ用件が済んでいなかった清が叫びながら止めてきた。
こうなっては一方的に通話を切っても、再びかけてくることは目に見えている。
護は諦めて、さっさと伝えることを選んだ。
「一度しか言わんからな?」
《おう!ばっちこい!!》
「エキナセア、エルダーフラワー、シベリアンジンセング、セージ、ブルウマロー、ペパーミント、マーシュマロウ、マレイン、ローズヒップ……まぁ、こんなもんだろ。妊娠中は使用を控えるように注意喚起されているものもあるから、気を付けろよ?」
《まじか……ちなみに、種類を教えてくれたりは》
「するか馬鹿。てめぇで調べろそれくらい」
《お、おう……了解だ。ありがとな!!》
そう言って、清は一方的に通話を切った。
――お前が切るのはいいのかよ……つか、そんなことだったら自分で調べりゃいいのによぉ……
護は重々しくため息をつきながらも、何かふと気になるものを感じていた。
普段の清との会話ではほぼありえないその感覚に突き動かされ、護は課題を進める手を止め、式盤を取り出し、占いを始めた。
その行動を、自分でもばかげているとは思っている。
だが、なぜか占いをしなければならないという気持ちが沸き上がってくるのだ。
――理屈じゃない。完全に俺の勘でしかない。けれど、なぜか胸騒ぎがする……
新年早々、あまり大事は起きてほしくないという想いもあってか、この勘が外れていることを願いながら、護は式盤を動かした。
カラカラと、乾いた木の音が響く。
カタリ、と静かな音がすると、護は式盤に出た結果を見て、深くため息をついた。
「……これは、いったい……?」
そこに出ていた結果を紐解くが、まったく見通すことができない。
別にこれが初めてというわけではない。だが、この結果はまるで目隠しでもさせられているかのようだ。
ここしばらく、占いをしてこなかったこともあるためなんとも言えないが、何か大きな力が占いを邪魔している。
そんな気がしてならないのだ。
「……なにか、妙なことが起こらないといいんだけど……」
嫌な予感を覚えつつ、護は気分を変えるために残っている課題に取り掛かった。
その心中で。
――厄介事の種持ってきやがって……新学期になったらまずは清の奴、ぶん殴る。絶対ぶん殴ってやる……
と、厄介事の種を持ち込んできた清に対するストレスを燃やしていたことは言うまでもない。
そして、その呟きの通り、新学期早々、通学路で清と遭遇した護は、新年のあいさつと一緒に、握り拳を清の頬にお見舞いしたのであった。
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