蒼のタチカゼ

しゃか

文字の大きさ
上 下
19 / 32

第15章 ー決着ー

しおりを挟む
がる。


タチカゼは何でもないという顔で「もう気ぃ、済んだか?」と盾ごと相手の鎌を押し返した。まるで邪魔な虫を追い払うように軽くだ。クロウはその押し出された勢いに地面を削りながらなんとか止まる事ができた。

オンジも、タチカゼに何が起きているのか分からないまま唖然と戦いを見守る。


クロウはフゥゥゥゥ―――――と長い息を吐いた。


「お前を包んでいるその霧はなんだ!?」

「これか?これは俺の体内から放出されたナノキューブだ。体内のナノキューブだけじゃ増殖速度が足りなくて、ちょっと上空のナノキューブを拝借したけどな。」

「馬鹿な!!ナノキューブは細胞と完全に一体化している、外に放出するのは不可能だ!!!」


クロウは柄にもなく捲し立ててきた、さっきまでの余裕の笑みは完全に消えていた。


「そうだね・・・君達の技術じゃ『体内のナノキューブの精密操作』が手一杯だったねぇ。いや、それでもすばらしい進歩だ!・・・でもそれはまだDr.キューブの目指したニンゲンヘイキの完成形じゃない・・・。俺は成れたんだよ・・・その完成されたニンゲンヘイキにね!!!」

「そんな非現実的な事が起こってたまるか!?我がイドの最先端技術を持ってしてもキューブシステムは解析できていないんだぞ!?」

「じゃあ・・・自分で確かめて見ればどうだい?さぁ、どうぞ。」


タチカゼは両腕を広げて、かかって来いとばかりに挑発してみせた。

クロウの顔が今までになく歪み、何倍にも膨れ上がった腕の筋肉が怒りを表すかのように脈打って蠢いた!


「キィエエエエエエエエエエエエ――――――!!!!!」


もうそこからは滅茶苦茶だった。勢い任せでなりふり構わず上から、横から、斜めから、大鎌をガンガン振り回し続けた。それを何くわぬ顔で六角形の盾で受け続ける。しかもタチカゼはその場から微動だに動いてない。遂にはタチカゼはその鎌をナノキューブで包まれた手で掴んで止めた。


「ウギッ!!ウギギ!!」何とか鎌を離させようとするがビクともしない。

「もういいか?いい加減飽きたぜ。」


バキッッッ!!!


そう言った後、タチカゼは大鎌の鎌の部分を折ってみせた。そのまま鎌の刃をその辺に捨てる。


「!?!?!?」最早、クロウは声にならない声を上げた。


「さて、次は俺の番だな。」と、そこで初めてカタナを抜いた。そして左手を前に出すとそこに

立方体の束が集まってきて、真っ白いカタナの形に変わった。


クロウは逃げようと背を向けた。が、タチカゼが地面を蹴るといつの間にかクロウの前に立ち、行く手を阻んでいた。


「ひぃいい!!」もう完全にクロウは戦意を喪失していた。

「おいおい、今更逃げるなんて無しだろう。俺にも遊ばせろよ!」


タチカゼは右手のカタナを手を伸ばし構え、左手の白いカタナを逆手で持った。


「初めて使う技だが、まぁ今の俺なら出来るだろ・・・『不知火流、絶技二刀・千華万来・麒麟きりんの舞』!!」


そこからはもう見ている方は目が追いつかず、訳が分からなかった。クロウの周りを何か黒い影がビュンビュン飛び周り、クロウの体がズタズタに斬り裂かれていく・・・その一瞬、タチカゼの動きが止まった様に見えた。そして、クロウの耳元で囁く。


「僕はイド帝国に戻ります。先輩いいウォーミングアップになりました、ありがとうございます。せめて安らかにお休み下さい・・・例えニンゲンヘイキでも・・・ね」

「クゥ・・・ア・・・ガ」


その後は惨むごたらしいものだった。クロウはもう完全に動かなくなっていた。それでもタチカゼは手を緩めない。クロウがただの肉塊になるまで一分とかからなかった。

そしてタチカゼの攻撃の手は止まった。左手のカタナは立方体となり消え、右手のカタナを鞘に納めた。体中を纏っていたナノキューブは水蒸気の様に霧散して消えていった。


オンジが右手を押さえながらようやく木の陰から出て来た。最早、何が何だか分からないという

複雑な表情を浮かべながら。


「タチカゼ・・・お前は・・・一体何が・・・!?」


タチカゼはオンジの方を見て、とびっきりの笑顔を見せた。


「さて、迷子の姫様と愉快な仲間達を迎えに行きますか!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...