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第13章 ー表と裏ー
しおりを挟む「そりゃそうさ・・・蒼い眼のニンゲンヘイキは『6体』しか存在しないからね!」
「!?・・・6・・・体・・・!?」
キューブは切っ先をタチカゼに向けた。
「ここまで言えばわかるよね?君の体の中にあるのがオリジン・キューブの一つさ!」
「それは可笑しいだろ!?俺がそのオリジン・キューブの所有者ってんなら、何故再生能力しか
使えないんだ!?俺はオッサンみたいな怪力もセツナみたいな発達した五感や精密計算も出来やしねぇぞ!」
「そこなんだよねぇ・・・」キューブは切っ先を下ろし、ため息をついた。
「オリジン・キューブの移植には成功したんだけど、何故か全員再生能力しか顕現けんげんしなかった・・・そこで技術者達は試行錯誤を始めた訳だ。」
キューブはタチカゼの周りをゆっくりと歩き始める。
「君には、『普通のニンゲンヘイキと同じように、自我を破壊し戦場に送り込む』という実験が行われる事になった。ものは試しってやつさ!けどその頃からニンゲンヘイキの中から自我が芽生えるモノ、君達の言う所の『覚醒者』が現れ始めた・・・。君がもし、自我を芽生えさせ逃げられでもしたら大変だろ?現に君は、今こうして対イド帝国ゲリラ特務部隊『蒼の風』の頭領をやっている・・・。技術者達はこうなった時の為に『保険』をかけていたんだ。」
「保険?」タチカゼは尋ねた。
キューブは足を止めた。
「君に謝らなければいけない事がある。僕が君の『行動サポートプログラム』と言うのは嘘なんだ。いや、半分は真実なのかもしれないね。君と共に戦場を駆け回る日々は中々悪くなかった・・・。
僕は君が自我に目覚めた時の監視役、後付けの別人格プログラムなんだよ。そして・・・」
キューブが目深に被っていたフードをゆっくりと下ろす・・・そこにはタチカゼと瓜二つな顔があった。ただ一つ違うのは、彼の左眼が緋色に輝いている事だった。
「な!?・・・オ・・・レ・・・!?」
「君が外でナノキューブの体を成長させいる間、僕が中でキューブコアとマザーキューブの解析を続けて来た。君と僕は表と裏・・・表裏一体という訳さ。これにて真実の話はお終いだ!
さて、じゃあ最後の仕上げといこうか。カタナを抜き給え、勝った方が真のニンゲンヘイキとして目覚める!!」
キューブが左手を前に出すとそこに立方体の束が集まり鞘になった。そこにカタナを収め、
得意の『あの技』の態勢をとった。
タチカゼは少し間があった後、カタナを正眼に構え少し切っ先を下げた・・・。
「それでいい。先に礼を言っておこう・・・ここまでこの体を育て上げてくれた事に感謝するよ」
その言葉が合図かのように二人同時に地面を蹴った。
『不知火流、絶技・千華万来!!!』
『不知火流、抜刀・一閃!!!』
二人が一瞬交差し、そのまま駆け抜けた。
・・・手からカタナが零れ落ち、顔は天を仰いだ。そしてそのままうつ伏せに倒れた。
キューブのカタナは立方体の束となって消えた。
すると闇の奥から何本もの鎖がタチカゼ目掛けて飛んできて体中に巻き付いた。
そのままずるずると床を擦こする金属音をたてながら、タチカゼ諸共漆黒の中へ消えていった。
「さよならだ、タチカゼ。君に会う事はもうないだろう・・・君の相棒をするのもそう悪くはなかったよ・・・」
キューブはそう言いながら、タチカゼとは真逆の眩い光の差す方へと消えていった。
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