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プロローグ ―それは蒼の歴史の物語―
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「はぁ~ぁ…」
部屋一面にどんよりとした重いため息がたち込める。
相対している机の斜め前の壁にある窓から外をチラッと見てみる。
カラッと晴れ上がったいい天気じゃねーか、この野郎!
「あーぁ…なんで俺がこんな事を…文才があるように見えるのかね?この俺が??」
彼はこの国の『国王』である。(性格には国とは少し違うのだが)
「だいたい、これは国の主たる者がわざわざやるべき事か!?普通はお付きの秘書とか、大臣とか、歴史学専門の先生が書くべきなんじゃねぇーのか!?」
1人苦悶する国王の作業部屋に大きな足音で近づく者がいる。足音を聞くだけで分かる、こいつは…
「国王!国王様!!」
作業部屋の扉が勢いよく開けられる。
そこには顔に立派な白髭を生やし、いかにもな高貴な装飾に飾られた服を纏った小柄なご老体が立っていた。
彼のは左大臣、名を『オモイカネ』という。
「国王様!ご報告がございまする!!」
「…おい、オモイカネ左大臣」
「は、なんでございましょう?国王様?」
「声がデケェよ!!!俺は芝居を観に来てるんじゃねぇ!!!お前に普通にしゃべるっていう能力はねぇのか!?」
「は?芝居…ですか?」
「あと俺を『国王』と呼ぶんじゃねぇ!!『お頭』か『頭領』って呼べっていってんだろ!!」
「そうでした!これは失礼しました、『こくお…頭領』!
海向こうのアラガント大陸エルベ王国よりぜひ我が国の視察をさせていただきたいとの願書が届いております。」
「ふーん、視察…ねぇ」
「頭領、いかがいたします?」
「出来て半年も経たない国の何を視察するってんだよ?
ようは『キューブシステム』の情報を開示しろってんだろ。まったく何国目だよ?情報だだもれ過ぎだろーが。」
「…まぁ、この小さな島国であれだけ大きな戦争が起きたんです。他国に知れ渡るには十分でしょう」
「戦争ねぇ…虐殺の間違いじゃねぇか?」
「…していかようにお返事を?」
「うん?…構わねぇよ!視察」
「は?よろしいのですか!?」
「もちろん!この国には戦争の残骸も沢山残ってるが自然もまだまだ十分に残ってる。シラカミ大森林帯ではハンティングも楽しめるし、イザナギ山嶺には天然温泉が湧いてる!戦時中の要の1つともなったアギトの砦なんかい~い
『視察観光』になると思うんだよにゃー…それで帰ってもらえば?」
「それで納得していただけるとは…」
「だろうねぇ…だけど、『キューブシステム』だけは世にだしちゃいけねぇんだよ。『キューブシステム』の役目はもう終わったんだ…Dr.キューブのホントの願いは叶わないまま…な。」
「……」
「エルベの国王に伝えてくれ。視察観光なら喜んで歓迎いたしますが、それ以上の『何か』をご所望のようでしたらこの『イド特別自由自治区」の土を踏ませる訳にはいかないってな!」
「完全に喧嘩売ってますよ!下手すれば戦争に…」
「戦争はしねぇ!!!」
頭領は強い口調で言い放つ。
「戦争はしねぇ、だけどそれで話しがつかねぇなら『ケンカ』なら買ってやる!俺が1人で『ニンゲンヘイキ』としてな!!」
「…完全に恐喝ですな。はぁー、わかりました!先方にはそう伝えましょう」
「おう!よろしくな。」
オモイカネ左大臣は背中に深い哀愁と疲労を漂わせながら部屋を出ていった。
「さて、やりたくないがやりますかぁ~」
と、気だるげにやる気ありますアピールをしていると、
「タチカゼ」
扉の方から声が聞こえた、オモイカネ左大臣と入れ違いで入ってきたようだ
「う、セツナ…」
そこには小柄の鋭い目をした少女にもみえる女性が立っている。
彼女は俺の秘書的な役割もこなしてくれるセツナ右大臣だ。
「何?また、どっかの国から視察のお願い?」
「お、おう!最近増えたよな。」
「あんたがあんだけ戦争中暴れまわればね。」
「くっ…そ、そんな事より俺の事は『お頭』か『頭領』と呼べと…!」
「それでタチカゼ?」
「は、はい!!」
セツナは怖い、とにかく怖いのだ。
「少しは進んだの?イド帝国との戦争からこの国が建国されるまでの歴史書。」
「…いや、セツナさん。こういうのはやはり歴史学の専門の方にまとめていただいた方が…」
「あ?」
「ひぎぃ!」
セツナはスパルタ、とにかくスパルタなのだ。
「あんたがこの戦争の中心にいたんだから、あんたが書くのが1番適任なのよ」
「だ、だからって…そもそも俺は国の王になんてなりたくな…」
「あ?」
セツナは鬼神、とにかく鬼の神なのだ!
「は、はーい!書きまーす」
セツナは「はぁ」と軽くため息をつくと
「これでも期待してるんだから。しっかりこの国の礎となる歴史書書いてよ、この国の未来を歩くこども達のために…ね」
「上手い言い方するねぇ、さすがうちの優秀な秘書様!
そう言われたらしっかりと書かねぇとな!!」
「なら、一週間以内に仮原本書き上げてね」
「い、一週間以内!?」
「まぁ、出来るっしょ!んじゃ、よろすこー。」
「あ!ちょっ!?」
セツナはタチカゼに一瞥もなく部屋を出ていった
タチカゼはまた、外を眺めた。
いい天気だ。
「…まぁ、書くか。未来のために…ね。何から書くか。永くなりそうだな」
タチカゼは「はぁ」と軽く息をはく。
そう、これは永い永い『蒼い風』の戦いの記録だ。
部屋一面にどんよりとした重いため息がたち込める。
相対している机の斜め前の壁にある窓から外をチラッと見てみる。
カラッと晴れ上がったいい天気じゃねーか、この野郎!
「あーぁ…なんで俺がこんな事を…文才があるように見えるのかね?この俺が??」
彼はこの国の『国王』である。(性格には国とは少し違うのだが)
「だいたい、これは国の主たる者がわざわざやるべき事か!?普通はお付きの秘書とか、大臣とか、歴史学専門の先生が書くべきなんじゃねぇーのか!?」
1人苦悶する国王の作業部屋に大きな足音で近づく者がいる。足音を聞くだけで分かる、こいつは…
「国王!国王様!!」
作業部屋の扉が勢いよく開けられる。
そこには顔に立派な白髭を生やし、いかにもな高貴な装飾に飾られた服を纏った小柄なご老体が立っていた。
彼のは左大臣、名を『オモイカネ』という。
「国王様!ご報告がございまする!!」
「…おい、オモイカネ左大臣」
「は、なんでございましょう?国王様?」
「声がデケェよ!!!俺は芝居を観に来てるんじゃねぇ!!!お前に普通にしゃべるっていう能力はねぇのか!?」
「は?芝居…ですか?」
「あと俺を『国王』と呼ぶんじゃねぇ!!『お頭』か『頭領』って呼べっていってんだろ!!」
「そうでした!これは失礼しました、『こくお…頭領』!
海向こうのアラガント大陸エルベ王国よりぜひ我が国の視察をさせていただきたいとの願書が届いております。」
「ふーん、視察…ねぇ」
「頭領、いかがいたします?」
「出来て半年も経たない国の何を視察するってんだよ?
ようは『キューブシステム』の情報を開示しろってんだろ。まったく何国目だよ?情報だだもれ過ぎだろーが。」
「…まぁ、この小さな島国であれだけ大きな戦争が起きたんです。他国に知れ渡るには十分でしょう」
「戦争ねぇ…虐殺の間違いじゃねぇか?」
「…していかようにお返事を?」
「うん?…構わねぇよ!視察」
「は?よろしいのですか!?」
「もちろん!この国には戦争の残骸も沢山残ってるが自然もまだまだ十分に残ってる。シラカミ大森林帯ではハンティングも楽しめるし、イザナギ山嶺には天然温泉が湧いてる!戦時中の要の1つともなったアギトの砦なんかい~い
『視察観光』になると思うんだよにゃー…それで帰ってもらえば?」
「それで納得していただけるとは…」
「だろうねぇ…だけど、『キューブシステム』だけは世にだしちゃいけねぇんだよ。『キューブシステム』の役目はもう終わったんだ…Dr.キューブのホントの願いは叶わないまま…な。」
「……」
「エルベの国王に伝えてくれ。視察観光なら喜んで歓迎いたしますが、それ以上の『何か』をご所望のようでしたらこの『イド特別自由自治区」の土を踏ませる訳にはいかないってな!」
「完全に喧嘩売ってますよ!下手すれば戦争に…」
「戦争はしねぇ!!!」
頭領は強い口調で言い放つ。
「戦争はしねぇ、だけどそれで話しがつかねぇなら『ケンカ』なら買ってやる!俺が1人で『ニンゲンヘイキ』としてな!!」
「…完全に恐喝ですな。はぁー、わかりました!先方にはそう伝えましょう」
「おう!よろしくな。」
オモイカネ左大臣は背中に深い哀愁と疲労を漂わせながら部屋を出ていった。
「さて、やりたくないがやりますかぁ~」
と、気だるげにやる気ありますアピールをしていると、
「タチカゼ」
扉の方から声が聞こえた、オモイカネ左大臣と入れ違いで入ってきたようだ
「う、セツナ…」
そこには小柄の鋭い目をした少女にもみえる女性が立っている。
彼女は俺の秘書的な役割もこなしてくれるセツナ右大臣だ。
「何?また、どっかの国から視察のお願い?」
「お、おう!最近増えたよな。」
「あんたがあんだけ戦争中暴れまわればね。」
「くっ…そ、そんな事より俺の事は『お頭』か『頭領』と呼べと…!」
「それでタチカゼ?」
「は、はい!!」
セツナは怖い、とにかく怖いのだ。
「少しは進んだの?イド帝国との戦争からこの国が建国されるまでの歴史書。」
「…いや、セツナさん。こういうのはやはり歴史学の専門の方にまとめていただいた方が…」
「あ?」
「ひぎぃ!」
セツナはスパルタ、とにかくスパルタなのだ。
「あんたがこの戦争の中心にいたんだから、あんたが書くのが1番適任なのよ」
「だ、だからって…そもそも俺は国の王になんてなりたくな…」
「あ?」
セツナは鬼神、とにかく鬼の神なのだ!
「は、はーい!書きまーす」
セツナは「はぁ」と軽くため息をつくと
「これでも期待してるんだから。しっかりこの国の礎となる歴史書書いてよ、この国の未来を歩くこども達のために…ね」
「上手い言い方するねぇ、さすがうちの優秀な秘書様!
そう言われたらしっかりと書かねぇとな!!」
「なら、一週間以内に仮原本書き上げてね」
「い、一週間以内!?」
「まぁ、出来るっしょ!んじゃ、よろすこー。」
「あ!ちょっ!?」
セツナはタチカゼに一瞥もなく部屋を出ていった
タチカゼはまた、外を眺めた。
いい天気だ。
「…まぁ、書くか。未来のために…ね。何から書くか。永くなりそうだな」
タチカゼは「はぁ」と軽く息をはく。
そう、これは永い永い『蒼い風』の戦いの記録だ。
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