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総撃編
第56話 大国の終焉
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宇都見国 王都 王宮
斎国との同時侵攻から始まった皇国との戦は、宇都見国王の元王の予想とは違う結果に向かっていた。
当初、自軍を囮として皇国領へと侵入した斎国軍によって、決して抜けることが出来なかった千羅城を越え、仁楽での惨劇の借りを返そうとした。
しかし、緋ノ国を打ち倒し新たに建国された皇国は違った。自国領へと侵入した斎国軍を滅し、属国であった斎国の宇都見国への従属を解き、皇国の同盟として迎え入れた。
あろうことか、宇都見国から独立した胡ノ国とも手を組み結成された連合軍が、今まさに王都の周囲まで迫っていたのだ。
「王、ぜ、前線からの報告がございます…」
「述べよ」
「はっ、はいっ。すでに敵連合軍は5つある砦を全て占領、または崩落させ、ぼ、防衛にあたる本軍は、と、当初の半数以下に…」
明らかに機嫌を損ねている元王を前に、報告を行う文官は恐怖のあまり言葉を詰まらせる。すでに元王の王座の周囲には血だまりができ、そこには彼の機嫌を損ねた者たちの亡骸が転がり、凄惨な光景を作り出していた。
武官たちですら、表情には出ないものの脚が震える状況だった。
「すでに、王都周囲は敵連合軍に、ほ、包囲されております」
「策は?」
この時ほど文官は、目の前の王を恨んだことはない。戦略は文官ではなく武官の仕事であり、文官である彼にそれを問うたところで、それは素人が考えた身の無い話となる。本来であれば、この状況になれば彼を助けるべく武官たちが報告を行うが、皆自分たちの保身のために彼を見捨て黙り込んでいた。
「さ、策、策でございます、か。わ、私は、い、一介の文官であるため…」
「策を申せ」
「王都防衛を担う、王都防衛軍は、しゅ、周囲を取り囲む連合軍に対し、あ、圧倒的士気があり、王都民の中にも、侵略者と戦う意志のある者が、お、大勢兵の志願を…」
苦し紛れにこの文官が放った言葉は、王の機嫌をとるための嘘であった。圧倒的な戦力に包囲された防衛軍の士気は崩壊しかけ、民たちは我先と包囲から抜け出そうと、王都を囲む城壁の門へと殺到している状況だったのだ。
この嘘が、元王の怒りを買う結果となった。
「褒美をやろう。ここへ」
「い、いえ。褒美を戴けるようなことは…」
「ここへ」
文官を目の前に跪かせた元王は、褒美として文官の頭に近くに置かれていた鋼鉄製の像を叩きつけた。元王によって像を叩きつけられた文官の頭は、まるでザクロの身の様に潰れてしまった。
「咲耶波は何処にいる?」
「彼女であれば、つい先ほど部下から死んだと報告を受けましたよ。元王様」
そう口にしたのは、黒装束を身に纏い、黒の頭巾で顔を隠した謎の人物。声の質からか女と思われるが、その場にいた誰もが固まるような事を、謎の女は恐るの欠片すらなく、平然と口にした。謎の女はいつの日からか彼のそばに現れ、彼に意見を述べる様になっていた。
「彼女は自分の兵を連れて、船で皇国へ上陸したみたいですが、皇国皇率いる軍勢に敗れ、一騎討ちの末に討ち取られたようです」
「嘘ではあるまいな」
「ふふ、この状況で、私が嘘をつくとでも?」
その言葉を聞いた元王は王座から立ち上がると、側に置かれていた剣を手にする。
「血祭りにあげてくれるわ」
◇
宇都見国の王都周辺を四つの陣で包囲した仁率いる連合軍は、最後の戦いを前に緊張感に包まれていた。
それもそのはずである。これまでに連合軍が占領した5つの砦は、西の防衛の要とはいえ主力級の敵は存在していなかった。宇都見国の主力部隊は、半分が咲耶波に率いられて皇国本土へ。もう半分が宇都見国の喉元であるこの王都の防衛を担っているからだ。圧倒的な強さを誇る宇国軍とはいえ、主力以外の大半は建国以来から宇都見国に占領された土地の者たちの寄せ集めとなっている。
宇都見国の敗色が濃厚になるにつれ、元々占領された土地の兵士たちは士気が低下し、次々と連合軍に投降していた。宇国軍の強さのからくりは、絶対的な実力を持つ中央の存在があるゆえ。砦が残り2つとなった時から、そのからくりが崩れ去る様相は顕著に現れ始めていた。
「しかし、ここまで来るとはなぁ。仁、あたしはあんたを少し見くびっていたよ」
「当初の予定を大幅に上回る期間で、宇都見国の王都まで来ることが出来ました。私自身も驚いていますよ」
連合軍の本陣では、相変わらず戦中であっても酒を愉しむ凶月と、総指揮を務める仁が話をしていた。
「予想外だったのは、斎国の奴らだよ。奴ら、今まで宇都見国から受けた腹いせと言わんばかり、鬼の様に戦いよる」
「彼らも常に、絶対的な支配者のために血を流すことを強いられ続けてきましたからね。その気持ちは、理解できなくもないです」
「知った様な口ぶりだが、仁もその経験があるのかい?」
「いえ、何でもありませんよ」
すると、前線から早馬が一騎、2人の前へと現れる。宇都見国に出した降伏勧告の結果を運んできたのだ。
「侍大将、宇国からの返答にございます」
「どうでしたか?」
「はい。宇都見国は我らに下る気はないとのこと。元王初め全国民が、武器を手に我らを皆殺しにすると」
「降伏は拒否されましたか。無駄な血は流したくないのですが、致し方ありません…」
「売られた喧嘩を買うのが戦の華ってもんさ。何をそんなに悩んでいるのさ」
「私たちは他国を滅するために戦を仕掛けた訳ではありません。凶月、それをお忘れなく」
「お堅いねぇ、皇国の侍大将さんは。で、どうするんだい?」
「開戦です。なお、戦う相手は兵士のみ。武器を持たない宇都見国の民に剣を向けることは許しません」
仁は立ち上がり采配を手にする。
「これより宇都見国王、元王に引導を渡します!全軍、前進!」
仁の側にいた兵士が法螺貝を吹く。その音を聞いた連合軍の兵士たちが、攻城兵器と共に城壁へと前進を始めた。
「あたしもそろそろ自分とこに戻るとするよ。さっさと終わらせて、酒盛りでもしようや」
「承知しました。では凶月、ご武運を」
その言葉に背を向けながら片手を上げることで応えた凶月は、南門付近に展開する胡ノ国軍の陣に戻っていく。
総大将である仁の号令と共に攻撃を開始した連合軍は、王都を取り囲む城壁へと前進する。その中には、連合軍が途中の砦で拿捕した攻城兵器である移動式の攻城櫓が見られた。
宇都見国は皮肉にも、自分たちが創り出した攻城兵器によって、今まさに王都の城壁を攻略される結果となった。
城壁上に展開した弓兵部隊が、移動する攻城櫓に対して火矢を放つ。しかし、燃えにくい種の木材で作られた上、水を染み込ませた攻城櫓は、火矢が幾ら命中しようとも燃え上がることはなかった。
「他は梯子を掛け城壁を攻略せよ!弓兵はうるさい城壁の敵を黙らせるんだ!」
城壁上、そして地上から放たれる矢が交差し、矢を受けた両軍の兵士たちが倒れていく。
まさに一進一退の攻防であった。しかし、内側から押しかける王都民のせいで、宇国兵達は満足のいく力を出せずにいた。
それもそのはずだ。守るべき民が、我先に王都から脱出しようとしている。兵士にとって、守るべき対象である民の後押しがあってこそ、本来の力が発揮できる。その後押しがない上に、戦わずに逃げると言う選択肢を選んだ民を、兵士たちは命を掛けてでも守るべきなのか疑問を抱き始めていた。
門に殺到する自国民を押しとどめながら、城壁へと接近する敵と戦う。ここで宇国兵たちは、片方が自国民であっても両方から圧を受ける挟撃の様な状況に陥ってしまっていた。
そこに、攻城櫓が迫ってくることにより、宇国兵の恐怖心は限界にまで膨らむ事となった。
「か、勝ち目なんか、ないぞ…」
「負ければ、俺たちも…」
「おいそこ!手を緩めるな!敵に狙われるぞ!?」
連合兵たちは城壁上に展開する宇国兵の中で、特に攻城櫓の正面に対して集中的に攻撃の狙いを定めた。
「弾幕薄いぞ!何やって、ぐっ!?」
「た、隊長が!」
「も、もう駄目だ…」
士気の低下した宇国兵たちは、城壁に接着された攻城櫓から侵入された連合兵に、瞬く間に蹂躙される。侵入した連合兵たちは城壁上に拠点を作り、後続の兵士たちが次々と城壁上へ侵入する。
「まさか、敵として再び王都を眺めることになるとはねぇ」
「盾兵前に!奴らを城壁から叩き落としてやれ!」
「くくく、呑み足らん。早く終わらせて、たらふく酒を呑んでやるとするかい」
瓢箪から口を離した凶月は、不敵な笑みを浮かべながら右手の拳に力を込める。そして、城壁の地面を渾身の力で殴りつける。殴りつけた場所から衝撃波が起こり、凶月に向かっていた盾兵たちが吹き飛ぶ。
「仁よ。褒美の酒を用意して待ってな」
凶月のいる西壁は胡ノ国軍が侵入に成功したが、他はそう簡単にはいかなかった。特に皇国軍の担当する南壁は精鋭が守護しており、皇国軍は少なくない出血を強いられていた。
南の城壁上には投石機と弩砲が配置されており、すでに攻城櫓は投石機によって車輪が破壊され使い物にならなくなっていた。
「このままじゃ一方的にやられる!?」
「しかし、あの高さは櫓なしでは打つ手が!」
「嶺!私たちが道を開く!翔鶴!」
「何だ!!」
「門を破る!手伝いなさい!」
宝華は馬を降りると、後方に配置していた攻城兵器の一つ、破城槌を動かした。矢の雨が降り注ぐ中、強固な南門に向けて巨木をつなぎ合わせた破城槌が激突する。
「盾兵は密集して破城槌を守れ!」
「宝華!」
宝華に向かって落とされた投石を、翔鶴が金棒で粉砕する。
「し、死ぬかと思った。ありがと翔鶴」
「油断するな。次が来るぞ」
破城槌によって何度も打ち付けられた門は、衝撃で錠が外れ、内側で支えていた兵士もろとも吹き飛ばして開放される。
「嶺!」
「任された!」
門が開かれると同時に、嶺の率いる騎馬隊が門内へと侵入する。防衛についていた兵士たちを、馬の脚の速さで圧倒していく。
「ここは通さんぞ!侵略者共め!」
「俺が行く」
翔鶴が盾兵を蹴散らし、その間を縫って宝華が二刀流で敵を翻弄する。門内の防御陣を突破した皇国軍は、中心部にある王宮を目指して突破を繰り返していく。
しかし、王宮の南側を目の前にして、彼らの進行を阻む者たちが現れた。赤備えの鎧を身に纏った兵士たちは、王宮の守護を担う精鋭の近衛部隊であった。
「突破するぞ!嶺!翔鶴!」
宝華たちは宇国軍の近衛軍と激突する。その実力は宝華たちがいる上で五分五分。双方の兵士たちが折り重なり合い、血の海と亡骸の山が築かれていく。
しかし、宝華たちは少しずつ前へと進む。一歩、また一歩と。
「奴らを叩き潰せ!」
「怯むな!こちらも押し返すぞ!」
やがて、宝華たちは犠牲を払いつつも近衛部隊を殲滅し、王宮へと踏み入る。すでに王宮はほとんどの者が逃げ出していたのか、もぬけの殻となっていた。
謁見の間を除いて。
「うっ」
「ひ、酷い…」
謁見の間はかろうじて形を保っている人の亡骸が散乱し、壁や床に血飛沫や肉片が飛び散る凄惨な光景が広がっていた。
その中心に1人、血に濡れた剣を手に王座に腰をかける者がいた。
「宝華、まさかあれが…」
「えぇ、おそらく。宇都見国の王、首刈り大王の元王」
「お、俺が取ってやる。取ってやるぞ!」
「覚悟しろ元王!」
「ま、待てお前たち!」
この戦最大の敵である元王を目の前にして、舞い上がった2人の皇国兵が元王に向かって剣を振り上げる。
「死罪だ。王に対する侮辱だ」
「か、はっ」
「えっ…」
元王に斬りかかった2人の皇国兵の首が、一瞬にして刎ねられ宙を舞う。対する元王は、玉座に座ったままで刎ねた動きすら辛うじて宝華たちが感じるほどであった。
「余の王宮に土足で踏み入ったのだ。貴様ら、生きてここから出られると思うな」
「い、一瞬で2人の首を…」
「見えなかった。何て速さなのよ…」
目にも留まらぬ速さの斬撃を目にした宝華たちは、その場から動けなかった。
「退いてな。あいつはあんた達じゃ到底敵う相手じゃないよ」
「あ、あなたは、咲洲将軍!?」
現れたのは、西壁を攻めていた胡ノ国将軍の凶月であった。凶月は宝華達の間から元王の前に出ると、腰に携えていた瓢箪を手にして酒を口にする。
「久方ぶりだね元王様」
「今更何の用だ、裏切り者が」
「あんたに引導を渡しに来たのさ。もうあんたの時代は終わったんだよ」
「戯言を抜かすな。時代が終わった?何を勝手なことを言っている。余を討ち取らん限り、宇都見国という大国に終焉など訪れぬわ」
「昔はもっと可愛げのある子だったが、何があってこうも変わっちゃったものかねぇ。その時は虫も殺せないくらい優しい子だったのに、今じゃ首刈りなんて名までついて…」
凶月はそう言うと、両腕に夜空を連想させる模様の入った籠手を着ける。対してその様子を見た元王は、剣を手に王座から立ち上がる。
「さぁ、元王。心ゆくまで死合おうじゃないか」
◇
血塗れの謁見の間で相対する元王と凶月。凶月は足元の肉片に足を取られない様、一歩ずつ元王へと近づく。
最初に攻撃を始めたのは、凶月。右手を大きく振り上げると同時に、一瞬のうちに元王の懐近くまで潜り込んだ。
しかし、元王は振り上げられた拳を避けると、右手に把持していた剣で凶月を斬ろうとする。
凶月は剣を把持する元王の右手を掴むと、片手だけで元王を壁へと吹き飛ばした。
「軽い」
王座を巻き込み、壁へと吹き飛ばされた元王は、壊れ落ちた瓦礫の山からゆっくりと這い出る。
「凄い、あの巨躯を片手だけで…」
「俺たちがどうにか出来る相手ではないな。殲滅の凶月、味方ながら恐ろしい人物だ…」
「しかし、元王にはまるで効いていないぞ…」
宝華たちが戦いを見守る中、凶月と元王はなおも白兵戦を続ける。元王の剣が凶月の首を捉えようとするが、腕に装着していた強固な籠手が斬撃を防ぐ。
「これでどうだい」
凶月の渾身の一撃が、元王の胴に入った。その衝撃は凄まじく、元王の剣を受けて傷つかなかった籠手にひびが入るほどだった。
「かはっ!」
一撃を受けた元王は口から血を吐き、後方へと倒れる。肺を破壊され、呼吸ができなくなり倒れる元王の元に、凶月は歩み寄る。
凶月は元王の側で膝をつくと、両手で顔を優しく掴み上げる。すでに呼吸が出来なくなり、苦しむ元王の首の骨を折った。
◇
東での戦いを終え、皇都に戻っていた私の元に、北の連合軍総大将である仁から報が届いた。
『連合軍勝利、王都陥落』
たった一文であったが、理解するにはその内容で十分だった。つまり、皇国と宇都見国の戦いは終結し、東の大国はこの時をもって終焉を迎えた。
肩の荷が下りたせいか、どっと疲れがこみ上げてくる。政務室でその文を見た私は、様々な感情が混じりすぎたため、逆に何も口にすることなく、座椅子の背もたれにもたれ掛かった。
「ふぅ…」
簪を取り、纏めていた髪を元に戻す。先の戦いで自慢だったあの長い髪は、肩までの長さに切り落としてしまった。凛たちには残念がられたが、おかげで邪魔にならずにすんだし、髪などまた伸ばせば良い。
それよりも、今日は私の人生の中で最も意味のある日となる。自分自身が、大御神であることを皇民の前で表明するのだ。
そのために、今日まで幾度となく練習を繰り返してきたのだ。
「瑞穂、そろそろ行こうか」
「うん」
政務室を訪ねてくれた御剣の後に続いて、皇宮の中を歩く。女中たちに身だしなみを整えられ、皇宮の南側にある台に続く階段を上る。
階段には、私の到着を待つ巫女や近衛兵たちが整然と並んでいた。私が階段を上ると、彼らはゆっくりと頭を下げてくる。
階段を上がった先は、皇城の城壁上だった。そこに立った私は、青空の下、広場を埋め尽くさんとする多数の皇民たちが集まる光景を見渡す。
私の姿が見えた瞬間、皇民たちから歓声が上がる。
「瑞穂之命様、皆お待ちです」
「えぇ」
"さぁ、始めましょう…"
「親愛なる豊葦原瑞穂皇国の民よ、よくこの場に集まってくれた!まずは、此度の宇都見国との戦は、皇国、胡ノ国、そして斎国の三国による連合軍によって、宇都見国王都陥落と当代の王である元王を討ち取ったことで、皇国の勝利を持って終結したことを宣言する!」
戦の勝利宣言に湧き立つ観衆が静かになるのを待つ。その場にいる全員の目が、私に向いたのを感じた。
「この戦いは、私と其方ら皇国の民が、戦のない平和な世を共に創るために、その命を掛けて戦った戦だということを。そして、大切な家族を失った者がいることを、私たちは絶対に忘れてはならない。この乱世の世において真の平和を勝ちとるには、ただ声を上げるだけでは為し得ることはできない。戦い、私たちの行手を阻む者を圧倒する。しかし、私の意思が本当に正しいのか、疑問に思う者もいるだろう」
私は力を解放する。大御神の、自分自身の本当の姿へと。
「な、何という神々しいお姿…」
「皇様、あれが我らの皇様なのか…」
民達は私の姿を見るやいなや、次々と跪き首を垂れる。年老いた者達の中には、祈りを捧げる者もいた。
「私はこの地を守護する太陽の大神、大御神である。彼の大戦で大和からこの地を護りし大御神、カミコの生まれ変わりとしてこの世に生を受けた。今ここで、親愛なる皇国の民の前で、私が大御神である事を宣言する!」
当初は戸惑う者もいたが、大神の眠る地とされる神居古潭のヤシロ、同じ場で大神であることを明かしたシラヌイや、斎ノ巫女である千代の言葉が決め手となり、人々は私が大御神であるということを受け入れてくれた。今日、この日をもって私は大御神として生き、皇国は大御神の国として生まれ変わることになった。
「立派になったわね。瑞穂…」
「何をしている。行くぞ」
その様子を物陰から見ていた者たちがいたことは、その時誰も気付くことはなかった。
斎国との同時侵攻から始まった皇国との戦は、宇都見国王の元王の予想とは違う結果に向かっていた。
当初、自軍を囮として皇国領へと侵入した斎国軍によって、決して抜けることが出来なかった千羅城を越え、仁楽での惨劇の借りを返そうとした。
しかし、緋ノ国を打ち倒し新たに建国された皇国は違った。自国領へと侵入した斎国軍を滅し、属国であった斎国の宇都見国への従属を解き、皇国の同盟として迎え入れた。
あろうことか、宇都見国から独立した胡ノ国とも手を組み結成された連合軍が、今まさに王都の周囲まで迫っていたのだ。
「王、ぜ、前線からの報告がございます…」
「述べよ」
「はっ、はいっ。すでに敵連合軍は5つある砦を全て占領、または崩落させ、ぼ、防衛にあたる本軍は、と、当初の半数以下に…」
明らかに機嫌を損ねている元王を前に、報告を行う文官は恐怖のあまり言葉を詰まらせる。すでに元王の王座の周囲には血だまりができ、そこには彼の機嫌を損ねた者たちの亡骸が転がり、凄惨な光景を作り出していた。
武官たちですら、表情には出ないものの脚が震える状況だった。
「すでに、王都周囲は敵連合軍に、ほ、包囲されております」
「策は?」
この時ほど文官は、目の前の王を恨んだことはない。戦略は文官ではなく武官の仕事であり、文官である彼にそれを問うたところで、それは素人が考えた身の無い話となる。本来であれば、この状況になれば彼を助けるべく武官たちが報告を行うが、皆自分たちの保身のために彼を見捨て黙り込んでいた。
「さ、策、策でございます、か。わ、私は、い、一介の文官であるため…」
「策を申せ」
「王都防衛を担う、王都防衛軍は、しゅ、周囲を取り囲む連合軍に対し、あ、圧倒的士気があり、王都民の中にも、侵略者と戦う意志のある者が、お、大勢兵の志願を…」
苦し紛れにこの文官が放った言葉は、王の機嫌をとるための嘘であった。圧倒的な戦力に包囲された防衛軍の士気は崩壊しかけ、民たちは我先と包囲から抜け出そうと、王都を囲む城壁の門へと殺到している状況だったのだ。
この嘘が、元王の怒りを買う結果となった。
「褒美をやろう。ここへ」
「い、いえ。褒美を戴けるようなことは…」
「ここへ」
文官を目の前に跪かせた元王は、褒美として文官の頭に近くに置かれていた鋼鉄製の像を叩きつけた。元王によって像を叩きつけられた文官の頭は、まるでザクロの身の様に潰れてしまった。
「咲耶波は何処にいる?」
「彼女であれば、つい先ほど部下から死んだと報告を受けましたよ。元王様」
そう口にしたのは、黒装束を身に纏い、黒の頭巾で顔を隠した謎の人物。声の質からか女と思われるが、その場にいた誰もが固まるような事を、謎の女は恐るの欠片すらなく、平然と口にした。謎の女はいつの日からか彼のそばに現れ、彼に意見を述べる様になっていた。
「彼女は自分の兵を連れて、船で皇国へ上陸したみたいですが、皇国皇率いる軍勢に敗れ、一騎討ちの末に討ち取られたようです」
「嘘ではあるまいな」
「ふふ、この状況で、私が嘘をつくとでも?」
その言葉を聞いた元王は王座から立ち上がると、側に置かれていた剣を手にする。
「血祭りにあげてくれるわ」
◇
宇都見国の王都周辺を四つの陣で包囲した仁率いる連合軍は、最後の戦いを前に緊張感に包まれていた。
それもそのはずである。これまでに連合軍が占領した5つの砦は、西の防衛の要とはいえ主力級の敵は存在していなかった。宇都見国の主力部隊は、半分が咲耶波に率いられて皇国本土へ。もう半分が宇都見国の喉元であるこの王都の防衛を担っているからだ。圧倒的な強さを誇る宇国軍とはいえ、主力以外の大半は建国以来から宇都見国に占領された土地の者たちの寄せ集めとなっている。
宇都見国の敗色が濃厚になるにつれ、元々占領された土地の兵士たちは士気が低下し、次々と連合軍に投降していた。宇国軍の強さのからくりは、絶対的な実力を持つ中央の存在があるゆえ。砦が残り2つとなった時から、そのからくりが崩れ去る様相は顕著に現れ始めていた。
「しかし、ここまで来るとはなぁ。仁、あたしはあんたを少し見くびっていたよ」
「当初の予定を大幅に上回る期間で、宇都見国の王都まで来ることが出来ました。私自身も驚いていますよ」
連合軍の本陣では、相変わらず戦中であっても酒を愉しむ凶月と、総指揮を務める仁が話をしていた。
「予想外だったのは、斎国の奴らだよ。奴ら、今まで宇都見国から受けた腹いせと言わんばかり、鬼の様に戦いよる」
「彼らも常に、絶対的な支配者のために血を流すことを強いられ続けてきましたからね。その気持ちは、理解できなくもないです」
「知った様な口ぶりだが、仁もその経験があるのかい?」
「いえ、何でもありませんよ」
すると、前線から早馬が一騎、2人の前へと現れる。宇都見国に出した降伏勧告の結果を運んできたのだ。
「侍大将、宇国からの返答にございます」
「どうでしたか?」
「はい。宇都見国は我らに下る気はないとのこと。元王初め全国民が、武器を手に我らを皆殺しにすると」
「降伏は拒否されましたか。無駄な血は流したくないのですが、致し方ありません…」
「売られた喧嘩を買うのが戦の華ってもんさ。何をそんなに悩んでいるのさ」
「私たちは他国を滅するために戦を仕掛けた訳ではありません。凶月、それをお忘れなく」
「お堅いねぇ、皇国の侍大将さんは。で、どうするんだい?」
「開戦です。なお、戦う相手は兵士のみ。武器を持たない宇都見国の民に剣を向けることは許しません」
仁は立ち上がり采配を手にする。
「これより宇都見国王、元王に引導を渡します!全軍、前進!」
仁の側にいた兵士が法螺貝を吹く。その音を聞いた連合軍の兵士たちが、攻城兵器と共に城壁へと前進を始めた。
「あたしもそろそろ自分とこに戻るとするよ。さっさと終わらせて、酒盛りでもしようや」
「承知しました。では凶月、ご武運を」
その言葉に背を向けながら片手を上げることで応えた凶月は、南門付近に展開する胡ノ国軍の陣に戻っていく。
総大将である仁の号令と共に攻撃を開始した連合軍は、王都を取り囲む城壁へと前進する。その中には、連合軍が途中の砦で拿捕した攻城兵器である移動式の攻城櫓が見られた。
宇都見国は皮肉にも、自分たちが創り出した攻城兵器によって、今まさに王都の城壁を攻略される結果となった。
城壁上に展開した弓兵部隊が、移動する攻城櫓に対して火矢を放つ。しかし、燃えにくい種の木材で作られた上、水を染み込ませた攻城櫓は、火矢が幾ら命中しようとも燃え上がることはなかった。
「他は梯子を掛け城壁を攻略せよ!弓兵はうるさい城壁の敵を黙らせるんだ!」
城壁上、そして地上から放たれる矢が交差し、矢を受けた両軍の兵士たちが倒れていく。
まさに一進一退の攻防であった。しかし、内側から押しかける王都民のせいで、宇国兵達は満足のいく力を出せずにいた。
それもそのはずだ。守るべき民が、我先に王都から脱出しようとしている。兵士にとって、守るべき対象である民の後押しがあってこそ、本来の力が発揮できる。その後押しがない上に、戦わずに逃げると言う選択肢を選んだ民を、兵士たちは命を掛けてでも守るべきなのか疑問を抱き始めていた。
門に殺到する自国民を押しとどめながら、城壁へと接近する敵と戦う。ここで宇国兵たちは、片方が自国民であっても両方から圧を受ける挟撃の様な状況に陥ってしまっていた。
そこに、攻城櫓が迫ってくることにより、宇国兵の恐怖心は限界にまで膨らむ事となった。
「か、勝ち目なんか、ないぞ…」
「負ければ、俺たちも…」
「おいそこ!手を緩めるな!敵に狙われるぞ!?」
連合兵たちは城壁上に展開する宇国兵の中で、特に攻城櫓の正面に対して集中的に攻撃の狙いを定めた。
「弾幕薄いぞ!何やって、ぐっ!?」
「た、隊長が!」
「も、もう駄目だ…」
士気の低下した宇国兵たちは、城壁に接着された攻城櫓から侵入された連合兵に、瞬く間に蹂躙される。侵入した連合兵たちは城壁上に拠点を作り、後続の兵士たちが次々と城壁上へ侵入する。
「まさか、敵として再び王都を眺めることになるとはねぇ」
「盾兵前に!奴らを城壁から叩き落としてやれ!」
「くくく、呑み足らん。早く終わらせて、たらふく酒を呑んでやるとするかい」
瓢箪から口を離した凶月は、不敵な笑みを浮かべながら右手の拳に力を込める。そして、城壁の地面を渾身の力で殴りつける。殴りつけた場所から衝撃波が起こり、凶月に向かっていた盾兵たちが吹き飛ぶ。
「仁よ。褒美の酒を用意して待ってな」
凶月のいる西壁は胡ノ国軍が侵入に成功したが、他はそう簡単にはいかなかった。特に皇国軍の担当する南壁は精鋭が守護しており、皇国軍は少なくない出血を強いられていた。
南の城壁上には投石機と弩砲が配置されており、すでに攻城櫓は投石機によって車輪が破壊され使い物にならなくなっていた。
「このままじゃ一方的にやられる!?」
「しかし、あの高さは櫓なしでは打つ手が!」
「嶺!私たちが道を開く!翔鶴!」
「何だ!!」
「門を破る!手伝いなさい!」
宝華は馬を降りると、後方に配置していた攻城兵器の一つ、破城槌を動かした。矢の雨が降り注ぐ中、強固な南門に向けて巨木をつなぎ合わせた破城槌が激突する。
「盾兵は密集して破城槌を守れ!」
「宝華!」
宝華に向かって落とされた投石を、翔鶴が金棒で粉砕する。
「し、死ぬかと思った。ありがと翔鶴」
「油断するな。次が来るぞ」
破城槌によって何度も打ち付けられた門は、衝撃で錠が外れ、内側で支えていた兵士もろとも吹き飛ばして開放される。
「嶺!」
「任された!」
門が開かれると同時に、嶺の率いる騎馬隊が門内へと侵入する。防衛についていた兵士たちを、馬の脚の速さで圧倒していく。
「ここは通さんぞ!侵略者共め!」
「俺が行く」
翔鶴が盾兵を蹴散らし、その間を縫って宝華が二刀流で敵を翻弄する。門内の防御陣を突破した皇国軍は、中心部にある王宮を目指して突破を繰り返していく。
しかし、王宮の南側を目の前にして、彼らの進行を阻む者たちが現れた。赤備えの鎧を身に纏った兵士たちは、王宮の守護を担う精鋭の近衛部隊であった。
「突破するぞ!嶺!翔鶴!」
宝華たちは宇国軍の近衛軍と激突する。その実力は宝華たちがいる上で五分五分。双方の兵士たちが折り重なり合い、血の海と亡骸の山が築かれていく。
しかし、宝華たちは少しずつ前へと進む。一歩、また一歩と。
「奴らを叩き潰せ!」
「怯むな!こちらも押し返すぞ!」
やがて、宝華たちは犠牲を払いつつも近衛部隊を殲滅し、王宮へと踏み入る。すでに王宮はほとんどの者が逃げ出していたのか、もぬけの殻となっていた。
謁見の間を除いて。
「うっ」
「ひ、酷い…」
謁見の間はかろうじて形を保っている人の亡骸が散乱し、壁や床に血飛沫や肉片が飛び散る凄惨な光景が広がっていた。
その中心に1人、血に濡れた剣を手に王座に腰をかける者がいた。
「宝華、まさかあれが…」
「えぇ、おそらく。宇都見国の王、首刈り大王の元王」
「お、俺が取ってやる。取ってやるぞ!」
「覚悟しろ元王!」
「ま、待てお前たち!」
この戦最大の敵である元王を目の前にして、舞い上がった2人の皇国兵が元王に向かって剣を振り上げる。
「死罪だ。王に対する侮辱だ」
「か、はっ」
「えっ…」
元王に斬りかかった2人の皇国兵の首が、一瞬にして刎ねられ宙を舞う。対する元王は、玉座に座ったままで刎ねた動きすら辛うじて宝華たちが感じるほどであった。
「余の王宮に土足で踏み入ったのだ。貴様ら、生きてここから出られると思うな」
「い、一瞬で2人の首を…」
「見えなかった。何て速さなのよ…」
目にも留まらぬ速さの斬撃を目にした宝華たちは、その場から動けなかった。
「退いてな。あいつはあんた達じゃ到底敵う相手じゃないよ」
「あ、あなたは、咲洲将軍!?」
現れたのは、西壁を攻めていた胡ノ国将軍の凶月であった。凶月は宝華達の間から元王の前に出ると、腰に携えていた瓢箪を手にして酒を口にする。
「久方ぶりだね元王様」
「今更何の用だ、裏切り者が」
「あんたに引導を渡しに来たのさ。もうあんたの時代は終わったんだよ」
「戯言を抜かすな。時代が終わった?何を勝手なことを言っている。余を討ち取らん限り、宇都見国という大国に終焉など訪れぬわ」
「昔はもっと可愛げのある子だったが、何があってこうも変わっちゃったものかねぇ。その時は虫も殺せないくらい優しい子だったのに、今じゃ首刈りなんて名までついて…」
凶月はそう言うと、両腕に夜空を連想させる模様の入った籠手を着ける。対してその様子を見た元王は、剣を手に王座から立ち上がる。
「さぁ、元王。心ゆくまで死合おうじゃないか」
◇
血塗れの謁見の間で相対する元王と凶月。凶月は足元の肉片に足を取られない様、一歩ずつ元王へと近づく。
最初に攻撃を始めたのは、凶月。右手を大きく振り上げると同時に、一瞬のうちに元王の懐近くまで潜り込んだ。
しかし、元王は振り上げられた拳を避けると、右手に把持していた剣で凶月を斬ろうとする。
凶月は剣を把持する元王の右手を掴むと、片手だけで元王を壁へと吹き飛ばした。
「軽い」
王座を巻き込み、壁へと吹き飛ばされた元王は、壊れ落ちた瓦礫の山からゆっくりと這い出る。
「凄い、あの巨躯を片手だけで…」
「俺たちがどうにか出来る相手ではないな。殲滅の凶月、味方ながら恐ろしい人物だ…」
「しかし、元王にはまるで効いていないぞ…」
宝華たちが戦いを見守る中、凶月と元王はなおも白兵戦を続ける。元王の剣が凶月の首を捉えようとするが、腕に装着していた強固な籠手が斬撃を防ぐ。
「これでどうだい」
凶月の渾身の一撃が、元王の胴に入った。その衝撃は凄まじく、元王の剣を受けて傷つかなかった籠手にひびが入るほどだった。
「かはっ!」
一撃を受けた元王は口から血を吐き、後方へと倒れる。肺を破壊され、呼吸ができなくなり倒れる元王の元に、凶月は歩み寄る。
凶月は元王の側で膝をつくと、両手で顔を優しく掴み上げる。すでに呼吸が出来なくなり、苦しむ元王の首の骨を折った。
◇
東での戦いを終え、皇都に戻っていた私の元に、北の連合軍総大将である仁から報が届いた。
『連合軍勝利、王都陥落』
たった一文であったが、理解するにはその内容で十分だった。つまり、皇国と宇都見国の戦いは終結し、東の大国はこの時をもって終焉を迎えた。
肩の荷が下りたせいか、どっと疲れがこみ上げてくる。政務室でその文を見た私は、様々な感情が混じりすぎたため、逆に何も口にすることなく、座椅子の背もたれにもたれ掛かった。
「ふぅ…」
簪を取り、纏めていた髪を元に戻す。先の戦いで自慢だったあの長い髪は、肩までの長さに切り落としてしまった。凛たちには残念がられたが、おかげで邪魔にならずにすんだし、髪などまた伸ばせば良い。
それよりも、今日は私の人生の中で最も意味のある日となる。自分自身が、大御神であることを皇民の前で表明するのだ。
そのために、今日まで幾度となく練習を繰り返してきたのだ。
「瑞穂、そろそろ行こうか」
「うん」
政務室を訪ねてくれた御剣の後に続いて、皇宮の中を歩く。女中たちに身だしなみを整えられ、皇宮の南側にある台に続く階段を上る。
階段には、私の到着を待つ巫女や近衛兵たちが整然と並んでいた。私が階段を上ると、彼らはゆっくりと頭を下げてくる。
階段を上がった先は、皇城の城壁上だった。そこに立った私は、青空の下、広場を埋め尽くさんとする多数の皇民たちが集まる光景を見渡す。
私の姿が見えた瞬間、皇民たちから歓声が上がる。
「瑞穂之命様、皆お待ちです」
「えぇ」
"さぁ、始めましょう…"
「親愛なる豊葦原瑞穂皇国の民よ、よくこの場に集まってくれた!まずは、此度の宇都見国との戦は、皇国、胡ノ国、そして斎国の三国による連合軍によって、宇都見国王都陥落と当代の王である元王を討ち取ったことで、皇国の勝利を持って終結したことを宣言する!」
戦の勝利宣言に湧き立つ観衆が静かになるのを待つ。その場にいる全員の目が、私に向いたのを感じた。
「この戦いは、私と其方ら皇国の民が、戦のない平和な世を共に創るために、その命を掛けて戦った戦だということを。そして、大切な家族を失った者がいることを、私たちは絶対に忘れてはならない。この乱世の世において真の平和を勝ちとるには、ただ声を上げるだけでは為し得ることはできない。戦い、私たちの行手を阻む者を圧倒する。しかし、私の意思が本当に正しいのか、疑問に思う者もいるだろう」
私は力を解放する。大御神の、自分自身の本当の姿へと。
「な、何という神々しいお姿…」
「皇様、あれが我らの皇様なのか…」
民達は私の姿を見るやいなや、次々と跪き首を垂れる。年老いた者達の中には、祈りを捧げる者もいた。
「私はこの地を守護する太陽の大神、大御神である。彼の大戦で大和からこの地を護りし大御神、カミコの生まれ変わりとしてこの世に生を受けた。今ここで、親愛なる皇国の民の前で、私が大御神である事を宣言する!」
当初は戸惑う者もいたが、大神の眠る地とされる神居古潭のヤシロ、同じ場で大神であることを明かしたシラヌイや、斎ノ巫女である千代の言葉が決め手となり、人々は私が大御神であるということを受け入れてくれた。今日、この日をもって私は大御神として生き、皇国は大御神の国として生まれ変わることになった。
「立派になったわね。瑞穂…」
「何をしている。行くぞ」
その様子を物陰から見ていた者たちがいたことは、その時誰も気付くことはなかった。
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