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2章
2話目 中編 採掘
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「んじゃま、気を取り直して採掘を再開しますかね」
そう言い出した時は何もしようとしない二人だったが、俺が作業をし始めると二人も同じように採掘し始めた。カルガモの子供か、お前らは。
そしてさらに時間が経った頃。
「……こうして見ると結構採ったな」
俺たちは採った鉱石をフィッカーには入れず、地面に置いていた。もちろん目的の鉱石らしい石と分けて。
「ずいぶん集まったんじゃないか?ちょっとフィッカーに入れてみるか」
フィッカーを山積みにした琥珀色の石に近付ける。
これだけあるのだから、五キロなんてもういってるだろ……と思っていたが、フィッカーは鉱石を難なく全て吸い込んでしまった。
……そういや、この黒い石を変えたから、五キロって目安がわからなくなっちまったんだのな……何キロまで吸い込めるんだろ、これ?
「……とりあえずこっちも入れとくか」
琥珀じゃない鉱石の山にも近付けたが、それらも全部吸い込み切ってしまう。
あの量、軽く見積もっただけでも十キロ以上はあったはずなんだがな……ってことは、アイカさんの言ってた赤い石よりもレアな落し物ってことだよな?
大丈夫かな、俺……明日急に事故に遭って死んだりしないよね?
あっ、もう死んでましたね。これは失礼……
「……念の為、もう少し集めるか?これで帰って二度手間にはなりたくないな……」
この依頼、一応急ぎではないらしいので期限などは設けられてないが、だからといって往復するのはさすがに面倒なので一回で済ませたい。
「幸い、まだ日はちょっと傾いてるくらいだ。二度手間になるんだったらもう少し粘ろうぜ」
俺がそう提案すると、ララは頷いてくれたので続行しようとする。しかし……
「シィィィィィィィィ……」
人を不快にさせる機械音のようなものが聞こえてきた。
その音の発生源を辿って見ると、そこにはさっきと同じ人型の魔物がいた。しかしそいつは頭に角のような形状が入っていて、さらに顔に当たる部分に「歯」が剥き出しになっているのが見えていた。
何だあいつ……気持ち悪っ!
なんであんなグロテスクな外見してるの?俺ってホラー系はそんな得意じゃないんだけど……!
「シ……シィィィァァァァァァァッ!」
自分のことを棚に上げて気味悪るがっていると、武器を構えているとソレは金切り声を上げ、俺たちは思わず耳を塞いでしまう。
「なんっ……だこれっ……!?」
頭の中を直接掻き乱してくるような感覚に吐き気を覚える。
横ではララがすでに嘔吐してしまっていて、イクナもうずくまって動けずにいふようだった。
【シャドウリーダーから精神へ直接ダメージを与えられました。混乱のデバフ効果をレジストします】
頭に直接聞こえてきたアナウンス。その直後に頭にあった不快感が消えてかなり楽になった。
あの声が何なのかは未だにわかってない。
この世界に来てから今までも、俺の体に異常がある時に聞こえてきた。それがただのお知らせか、それとも俺を助けてくれているのかはわからないが……
痛みを感じなくなったこの体と合わさり、ゲームのような感覚に思えていた。
まぁ一応、さっきの不快感のおかげでこれが現実なのだと実感できるけど。
「ふっ……!」
俺は足に力を入れて武器を抜いて走り出す。魔物の方も僅かに動く。
――パァンッ!
何かが弾ける音がし、そして俺はいつの間にか天井を見ていた。
「……あ?」
体もふわりと浮いた感覚になり、最初は何が起きたのかわからなかった。
しかし体の背面に衝撃が走り、俺は地面に寝ている状態なのだと理解する。
上半身を起こすと、そこにはさっきまで後ろにいたはずのララとイクナが心配そうな表情で俺を見ていた。
攻撃されて吹き飛んだのか……?
ララたちのさらに奥では、俺を吹っ飛ばしたであろう魔物が腕を凄まじい勢いで振り回した。
どれだけの速さかって?……もう目に見えないくらいだよ。
頭のアナウンスでシャドウリーダーと呼ばれた魔物は腕をしならせ、無駄に周囲へ腕を叩き付けて威嚇してくる。
実際、攻撃速度が速過ぎて割って入る余裕がない。
「シィィィィィィィ……」
そしてシャドウリーダーはまたも不快な鳴き声を出す。まさか俺以外にも存在するだけで人を不快にさせる奴がいるとは……過去のいじめてくれた奴らににこいつをぜひぶつけてやりたいぜ。
とまぁ、そんな昔の私怨は置いといて。
「ちょっとヤバいんじゃないか……?」
「キュルルルルルルルゥ……」
シャドウリーダーとは違う、最初に出てきた普通の形状をした影の魔物までもが現れてしまった。
しかも数がさっきの比じゃない。
十か二十か……数え切れない数の影がシャドウリーダーの後方からぞろぞろとやってくる。
「石を引っくり返して大量の虫が出てきた時を連想しちまうじゃねえか……こりゃダメだな」
あのシャドウリーダー……いや、もうリーダーでいいや。
あいつ一匹なら最悪特攻すれば……なんて考えもあったけれど、これだけの数を相手にララたちを守りながらなんて無理だ。
俺一人を犠牲にしたところでどうにもならないなら、もう逃げるしかない。
「ララ、イクナ、一旦離脱だ!こんな数をまともに相手できるわけ――は?」
彼女たちに話しかけた時、ララの様子がおかしかったことにすぐに気付いた。
自らの体を抱き締めてカタカタと震えて後ろを見ている。
つられて俺も見ると、俺たちが入ってきた入り口の方からも影の魔物が迫ってきていた。
今昼間なんだから闇属性っぽいお前らは活動的になるなよ……というか、吸血鬼みたいに日光浴びたら灰になって消えるみたいな特性ないの?
……いや、そんなしょーもないことを考えてる場合じゃねえ。
ララとイクナは相変わらず行動不能といった感じで動けずにいるようだった。
こいつらを傷付けずにどうこの状況を打破するか……腹を括るしかねえよな。
「ララ、イクナ背負ってもう少し頑張ってくれるか?」
俺がララの肩に手を置いてうずくまっているイクナに視線を向けながらそう言うと、彼女が怯えた表情をして振り向く。
その顔には「何をする気だ?」と問いかけてきているようにも感じた。
「俺たちが来た出入り口の方なら俺でも倒せるレベルの奴らだ。だからちょっと……ゴリ押しする!」
そう言い出した時は何もしようとしない二人だったが、俺が作業をし始めると二人も同じように採掘し始めた。カルガモの子供か、お前らは。
そしてさらに時間が経った頃。
「……こうして見ると結構採ったな」
俺たちは採った鉱石をフィッカーには入れず、地面に置いていた。もちろん目的の鉱石らしい石と分けて。
「ずいぶん集まったんじゃないか?ちょっとフィッカーに入れてみるか」
フィッカーを山積みにした琥珀色の石に近付ける。
これだけあるのだから、五キロなんてもういってるだろ……と思っていたが、フィッカーは鉱石を難なく全て吸い込んでしまった。
……そういや、この黒い石を変えたから、五キロって目安がわからなくなっちまったんだのな……何キロまで吸い込めるんだろ、これ?
「……とりあえずこっちも入れとくか」
琥珀じゃない鉱石の山にも近付けたが、それらも全部吸い込み切ってしまう。
あの量、軽く見積もっただけでも十キロ以上はあったはずなんだがな……ってことは、アイカさんの言ってた赤い石よりもレアな落し物ってことだよな?
大丈夫かな、俺……明日急に事故に遭って死んだりしないよね?
あっ、もう死んでましたね。これは失礼……
「……念の為、もう少し集めるか?これで帰って二度手間にはなりたくないな……」
この依頼、一応急ぎではないらしいので期限などは設けられてないが、だからといって往復するのはさすがに面倒なので一回で済ませたい。
「幸い、まだ日はちょっと傾いてるくらいだ。二度手間になるんだったらもう少し粘ろうぜ」
俺がそう提案すると、ララは頷いてくれたので続行しようとする。しかし……
「シィィィィィィィィ……」
人を不快にさせる機械音のようなものが聞こえてきた。
その音の発生源を辿って見ると、そこにはさっきと同じ人型の魔物がいた。しかしそいつは頭に角のような形状が入っていて、さらに顔に当たる部分に「歯」が剥き出しになっているのが見えていた。
何だあいつ……気持ち悪っ!
なんであんなグロテスクな外見してるの?俺ってホラー系はそんな得意じゃないんだけど……!
「シ……シィィィァァァァァァァッ!」
自分のことを棚に上げて気味悪るがっていると、武器を構えているとソレは金切り声を上げ、俺たちは思わず耳を塞いでしまう。
「なんっ……だこれっ……!?」
頭の中を直接掻き乱してくるような感覚に吐き気を覚える。
横ではララがすでに嘔吐してしまっていて、イクナもうずくまって動けずにいふようだった。
【シャドウリーダーから精神へ直接ダメージを与えられました。混乱のデバフ効果をレジストします】
頭に直接聞こえてきたアナウンス。その直後に頭にあった不快感が消えてかなり楽になった。
あの声が何なのかは未だにわかってない。
この世界に来てから今までも、俺の体に異常がある時に聞こえてきた。それがただのお知らせか、それとも俺を助けてくれているのかはわからないが……
痛みを感じなくなったこの体と合わさり、ゲームのような感覚に思えていた。
まぁ一応、さっきの不快感のおかげでこれが現実なのだと実感できるけど。
「ふっ……!」
俺は足に力を入れて武器を抜いて走り出す。魔物の方も僅かに動く。
――パァンッ!
何かが弾ける音がし、そして俺はいつの間にか天井を見ていた。
「……あ?」
体もふわりと浮いた感覚になり、最初は何が起きたのかわからなかった。
しかし体の背面に衝撃が走り、俺は地面に寝ている状態なのだと理解する。
上半身を起こすと、そこにはさっきまで後ろにいたはずのララとイクナが心配そうな表情で俺を見ていた。
攻撃されて吹き飛んだのか……?
ララたちのさらに奥では、俺を吹っ飛ばしたであろう魔物が腕を凄まじい勢いで振り回した。
どれだけの速さかって?……もう目に見えないくらいだよ。
頭のアナウンスでシャドウリーダーと呼ばれた魔物は腕をしならせ、無駄に周囲へ腕を叩き付けて威嚇してくる。
実際、攻撃速度が速過ぎて割って入る余裕がない。
「シィィィィィィィ……」
そしてシャドウリーダーはまたも不快な鳴き声を出す。まさか俺以外にも存在するだけで人を不快にさせる奴がいるとは……過去のいじめてくれた奴らににこいつをぜひぶつけてやりたいぜ。
とまぁ、そんな昔の私怨は置いといて。
「ちょっとヤバいんじゃないか……?」
「キュルルルルルルルゥ……」
シャドウリーダーとは違う、最初に出てきた普通の形状をした影の魔物までもが現れてしまった。
しかも数がさっきの比じゃない。
十か二十か……数え切れない数の影がシャドウリーダーの後方からぞろぞろとやってくる。
「石を引っくり返して大量の虫が出てきた時を連想しちまうじゃねえか……こりゃダメだな」
あのシャドウリーダー……いや、もうリーダーでいいや。
あいつ一匹なら最悪特攻すれば……なんて考えもあったけれど、これだけの数を相手にララたちを守りながらなんて無理だ。
俺一人を犠牲にしたところでどうにもならないなら、もう逃げるしかない。
「ララ、イクナ、一旦離脱だ!こんな数をまともに相手できるわけ――は?」
彼女たちに話しかけた時、ララの様子がおかしかったことにすぐに気付いた。
自らの体を抱き締めてカタカタと震えて後ろを見ている。
つられて俺も見ると、俺たちが入ってきた入り口の方からも影の魔物が迫ってきていた。
今昼間なんだから闇属性っぽいお前らは活動的になるなよ……というか、吸血鬼みたいに日光浴びたら灰になって消えるみたいな特性ないの?
……いや、そんなしょーもないことを考えてる場合じゃねえ。
ララとイクナは相変わらず行動不能といった感じで動けずにいるようだった。
こいつらを傷付けずにどうこの状況を打破するか……腹を括るしかねえよな。
「ララ、イクナ背負ってもう少し頑張ってくれるか?」
俺がララの肩に手を置いてうずくまっているイクナに視線を向けながらそう言うと、彼女が怯えた表情をして振り向く。
その顔には「何をする気だ?」と問いかけてきているようにも感じた。
「俺たちが来た出入り口の方なら俺でも倒せるレベルの奴らだ。だからちょっと……ゴリ押しする!」
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