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3章

9話目 後編 強くなるには

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「あのイケメンみたいに滅茶苦茶強いのか?俺みたいに殺されても死なないのか?」
「そ、それは……」
「何もできないのなら何もしない方がいい。俺だって死なないってだけで戦うことなんてできないんだから、そういうのはあいつに任せたんだ。余計なことをすると無駄死にするだけだし、むしろ足でまといにだってなる」

 それで何も感じないかと言われればそんなわけない。
 何もできない歯痒さ、悔しさはあるに決まってる。
 でも自分には何もできないことも自覚している。
 元々そういう性格だったこともあるかもしれないが、すでに三十路を過ぎるほど歳を食ったせいか無謀な挑戦もする気も起きない。
 何が言いたいかってのをまとめると……

「面倒事は他の奴に任せようぜ!」
「わかりやした!流石旦那ですね!」
「おーい、君たちー?聞こえてるよー?」

 グロロと戦ってるマルスの声が遠くから聞こえてくる。
 こっちの会話に加わる余裕があるのだから心配はしなくても大丈夫だろう。
 ……さて、俺もそろそろ動き出すとするか。

「マルス!」
「何か気が付いたことでも?」

 察しのいいマルスはそう言って耳を傾けてくる。

「そいつは恐らく核を移動させて戦ってる!だからいくら色んなところを斬っても意味は無いんだ!」
「そうかな?だったら移動させるよりも速く斬ってしまえばいい……《一閃連斬》!」

 マルスが前にウルクさんが言葉にしていた技名のようなものを口にしてグロロに向けて剣を振り下ろた次の瞬間、彼の正面にいたグロロが木っ端微塵になってしまった。
 えぇー強過ぎぃ……というかその技を最初から使ってればさっさと決着付いたんじゃないの?
 しかしバラバラになったはずのグロロはしばらくしてまた動き出し、復活しようとしていた。

 「これだけやって核が見つからないなんて……まさか核がない?」

 さすがのマルスもそう予想し、焦りを感じ始めたようだ。
 だが俺はそれを見越していたけどな!

「いや、そんなことはないぞ!」

 全員の意識がグロロに向けられる中、俺は一人だけ別行動をしていた。
 俺がさっき切り刻んだグロロの一部、そこに奴の核が隠れていたのに気付いていた。
 だがそこで言葉に出してマルスに伝えようとするとグロロが言葉を理解して逃げられる可能性もあったから「予想」として伝えたのだ。
 敵を騙すにはまずは味方からとよく言うしな。
 そんなことを思いながら地面に飛び散ってもなお蠢いている半流動体の一つに短剣を突き立てた。

「キィヤアァァァァッ!?」
「「っ!?」」

 ガキンッと金属音が周囲に鳴り響き、グロロとして動いていたスライムの流動体が今にも弾けそうなほどの激しい動きをして鼓膜が破けるのではと思うくらいの金切り声を周囲に響かせた。
 その場にいた全員が耳を塞いだ。
 さすがの俺も「うるさい音」には敵わない。うるさいものはうるさいのだから。
 でも……

「でもこれが弱点ってのは合ってるみたいだな!」

 だけど突いた核らしい玉は未だに割れてない。
 本当なら一回で済ませたかったんだけど……だったら!
 だから俺は短剣を振り上げ、もう一度突き立てようとした。
 しかしさすがにそう上手くいかないようで、スライム体が膨張して俺の腕を掴む。
 岩にでも挟まれたかのように動かなくなる。
 しまった――そう思った時には俺の腹部に衝撃が走り、吹き飛ばされていた。

「ヤタ君!」
「旦那!?」

 二人の声が聞こえる。
 その二人の姿を見ようとしたが更なる衝撃が俺の体を襲い、吹き飛んだ先の壁に磔にされていた。
 グロロは声とも判別できない音を発し、みるみる姿を変えていく。
 見たこともないからその「ナニカ」を言葉で表現できない。
 だがコレを呼ぶとするなら正真正銘……「化け物」なのだろう。
 どうやら本気で怒らせたようだ。
 勝てる勝てないじゃない。一方的に捕食される立場ってこういうことを言うんだなと思い知った。
 グロロは唸り声のようなものをあげながら目の前まで詰め寄ってくる。
 そう、本当に少し首を動かせば顔が届くくらいに。

「……ハハッ、近過ぎだぜ?」

 俺は薄ら笑いを浮かべ、近付いてきていたグロロの一部を噛み千切った。

【グロロの一部を捕食しました。捕食対象がより強者であったためウイルスのレベルが3から5へ向上します。レベルが上がったことでステータスの全てのポイントを2ずつ上げました。レベルが上がったことにより特殊技能「気配遮断」が追加され、身体の一部を変化させることにより強力な捕食が可能となりました】

 「より強力な捕食」と聞いてすぐに試したくなったが、その機会はすぐに失われた。
 ――ズドンッ!
 凄まじい勢いで俺の前――つまりグロロの上に何かが降ってきたのである。
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