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強引に到着
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結論から言うと職業を変えるための町、ベルグラスには辿り着けた。その代わりに俺以外が全滅している状態となってしまったが。
予想通りと言えば予想通りで、この町へ辿り着くまでに出てくる敵は段飛ばしで強くなっていき、中間地点を過ぎた辺りでルルアたちの攻撃が通りにくくなり、相手の攻撃で彼女たちのHPゲージがあっという間になくなってしまうほど強力になっていたほどだ。
まぁ、彼女たちも戦闘面のセンスが良いおかげでそこで死ぬことはなかったけれど、ヘルグラス周辺の敵は全てヴェルネたちにとって一撃必殺を持った奴ばかりな上、搦め手を使ってくる面倒な敵まで出てきた。で、見事に全滅。
唯一の救いはHPが無くなっても誰かが生きていれば一緒に先へと進めるらしい。そして死んだら某ゲームのように棺桶の姿になって残りの味方……今は俺の後ろに勝手に付いて来る仕様のようだ。
その間は彼女たちは一切喋ることがないのでただひたすらに俺が無言で敵を倒して棺桶を引き連れているという酷い絵面が出来上がってしまっていた。
そして町に入って最初に行ったのが宿屋での休憩だった。
「なんだか……凄い経験をした感じがするわ……」
不思議な音楽が鳴ると共に俺の後ろで棺桶姿だったヴェルネたちが眩い光を帯びて元通りになる。しかしその顔はデバフか状態異常でも食らったんじゃないかってくらいゲッソリしていた。
「本当に……痛みはないけど衝撃があるから本当に死んだと思っちゃった」
「俺も……何が起きたかわからないうちに死んじまったよ」
「レトナのは凄かったな。暗闇と麻痺と猛毒の状態異常食らってたみたいだし」
虫系の敵が出てきた時にレトナが倒れ、緑のゲージバーの上に三つのマークが付いており、「グラサン」「雷」「紫色の泡」のアイコンでヘルプで見た限りそれぞれの状態異常を示していたようだった。
父さんからよく聞いた話だが、状態異常の技を多彩に放ってくる敵って下手なボスより強いらしいが、レトナのはそれがよくわかる例だったってわけだ。
「にしても……宿で死んだ奴を蘇らせられるのね、この世界は」
「たしかに。死人をそんな簡単に蘇らせられるのも驚きだけど、それがそこら辺にある宿屋でってとは思うよね」
ヴェルネとルルアが言ったことに俺も「そういえば」と思い出すように疑問を持つ。
知ってるゲームでは倒れた仲間を教会で蘇らせられると聞いたことがあるが、最近のゲームでは宿屋でも当然のようにゼロになったHPや毒や火傷のような状態異常も回復できてしまったりするのが多い。普通に考えればなんで宿で一晩休んだだけで何もなかったかのように回復するんだよってなる。
だが逆に言えばそこもゲームらしいといえばらしいからそこまで現実的に考えなくてもいいと思うけれど……
「まぁ、そこは遊ぶためのゲームなわけだし、あまり気にし過ぎず割愛ってことで。俺らがやってたゲームなんて死の概念自体が薄いしな」
「死が軽薄に……慣れるには時間がかかりそうね」
「いや、慣れる必要なんてないだろ」
むしろ死に対する危機感が薄くなることに慣れを感じるのはよくないんだがなぁ……特にこういうようなあまりにも現実味があり過ぎると現実世界に戻ってもゲームと同じ感覚になってしまうだろう。
……あぁ、だったらここは良い鍛錬場になるかもしれないじゃないか?
「ここでも現実と同じように死ぬ気で敵を倒した方がいい。ゲームと現実の境目を曖昧にすると危ないからな」
「そんなもんかしらね……」
「でもここに慣れ過ぎたらヴェル姉ちゃんとか戻った時に別の魔法を撃とうとしちゃったりとかはしそうではあるけどな!」
レトナは「自分は大丈夫」と言いたげにケラケラと他人事のように笑う。こういう奴に限ってやらかすんだよなぁ……ヴェルネも同じようなことを思っていそうな表情でレトナを見ていた。
「レトナも元の世界で応援してバフかけようとして応援しそうじゃない?」
「あ~……それは結構恥ずかしいな」
自分がそうなったらと想像したのか、頬を染めて恥ずかしがるレトナ。俺もその光景が容易に想像できてしまうからちょっと笑えてしまえる。
「それはそれである意味元気出たりするバフ効果がありそうな気がするがな」
「男の部分的な意味で?」
ルルアがニヤニヤといやらしい笑いでそう言ってくる。
……こんな何気ないところでも下ネタをぶっこんでくる彼女にこういうところで若干年齢の差を感じそうになっていた。
少し前にテレビとかで年齢が三十代を越えるとどこかのタガが外れて下ネタを口にしやすくなると聞いたことがあるけど、ルルアのそれはその類のような気がする……
「……そんなことよりさっさとレトナの職業を変えに行くぞ。そのためにこの町に来たんだからよ」
俺が話題を変えようとそう言うと全員が「はーい」と返事をする。
予想通りと言えば予想通りで、この町へ辿り着くまでに出てくる敵は段飛ばしで強くなっていき、中間地点を過ぎた辺りでルルアたちの攻撃が通りにくくなり、相手の攻撃で彼女たちのHPゲージがあっという間になくなってしまうほど強力になっていたほどだ。
まぁ、彼女たちも戦闘面のセンスが良いおかげでそこで死ぬことはなかったけれど、ヘルグラス周辺の敵は全てヴェルネたちにとって一撃必殺を持った奴ばかりな上、搦め手を使ってくる面倒な敵まで出てきた。で、見事に全滅。
唯一の救いはHPが無くなっても誰かが生きていれば一緒に先へと進めるらしい。そして死んだら某ゲームのように棺桶の姿になって残りの味方……今は俺の後ろに勝手に付いて来る仕様のようだ。
その間は彼女たちは一切喋ることがないのでただひたすらに俺が無言で敵を倒して棺桶を引き連れているという酷い絵面が出来上がってしまっていた。
そして町に入って最初に行ったのが宿屋での休憩だった。
「なんだか……凄い経験をした感じがするわ……」
不思議な音楽が鳴ると共に俺の後ろで棺桶姿だったヴェルネたちが眩い光を帯びて元通りになる。しかしその顔はデバフか状態異常でも食らったんじゃないかってくらいゲッソリしていた。
「本当に……痛みはないけど衝撃があるから本当に死んだと思っちゃった」
「俺も……何が起きたかわからないうちに死んじまったよ」
「レトナのは凄かったな。暗闇と麻痺と猛毒の状態異常食らってたみたいだし」
虫系の敵が出てきた時にレトナが倒れ、緑のゲージバーの上に三つのマークが付いており、「グラサン」「雷」「紫色の泡」のアイコンでヘルプで見た限りそれぞれの状態異常を示していたようだった。
父さんからよく聞いた話だが、状態異常の技を多彩に放ってくる敵って下手なボスより強いらしいが、レトナのはそれがよくわかる例だったってわけだ。
「にしても……宿で死んだ奴を蘇らせられるのね、この世界は」
「たしかに。死人をそんな簡単に蘇らせられるのも驚きだけど、それがそこら辺にある宿屋でってとは思うよね」
ヴェルネとルルアが言ったことに俺も「そういえば」と思い出すように疑問を持つ。
知ってるゲームでは倒れた仲間を教会で蘇らせられると聞いたことがあるが、最近のゲームでは宿屋でも当然のようにゼロになったHPや毒や火傷のような状態異常も回復できてしまったりするのが多い。普通に考えればなんで宿で一晩休んだだけで何もなかったかのように回復するんだよってなる。
だが逆に言えばそこもゲームらしいといえばらしいからそこまで現実的に考えなくてもいいと思うけれど……
「まぁ、そこは遊ぶためのゲームなわけだし、あまり気にし過ぎず割愛ってことで。俺らがやってたゲームなんて死の概念自体が薄いしな」
「死が軽薄に……慣れるには時間がかかりそうね」
「いや、慣れる必要なんてないだろ」
むしろ死に対する危機感が薄くなることに慣れを感じるのはよくないんだがなぁ……特にこういうようなあまりにも現実味があり過ぎると現実世界に戻ってもゲームと同じ感覚になってしまうだろう。
……あぁ、だったらここは良い鍛錬場になるかもしれないじゃないか?
「ここでも現実と同じように死ぬ気で敵を倒した方がいい。ゲームと現実の境目を曖昧にすると危ないからな」
「そんなもんかしらね……」
「でもここに慣れ過ぎたらヴェル姉ちゃんとか戻った時に別の魔法を撃とうとしちゃったりとかはしそうではあるけどな!」
レトナは「自分は大丈夫」と言いたげにケラケラと他人事のように笑う。こういう奴に限ってやらかすんだよなぁ……ヴェルネも同じようなことを思っていそうな表情でレトナを見ていた。
「レトナも元の世界で応援してバフかけようとして応援しそうじゃない?」
「あ~……それは結構恥ずかしいな」
自分がそうなったらと想像したのか、頬を染めて恥ずかしがるレトナ。俺もその光景が容易に想像できてしまうからちょっと笑えてしまえる。
「それはそれである意味元気出たりするバフ効果がありそうな気がするがな」
「男の部分的な意味で?」
ルルアがニヤニヤといやらしい笑いでそう言ってくる。
……こんな何気ないところでも下ネタをぶっこんでくる彼女にこういうところで若干年齢の差を感じそうになっていた。
少し前にテレビとかで年齢が三十代を越えるとどこかのタガが外れて下ネタを口にしやすくなると聞いたことがあるけど、ルルアのそれはその類のような気がする……
「……そんなことよりさっさとレトナの職業を変えに行くぞ。そのためにこの町に来たんだからよ」
俺が話題を変えようとそう言うと全員が「はーい」と返事をする。
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