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ご本人登場
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☆★☆★
~他視点~
「ッ」
カズが目を覚ます。
彼が彼自身の体を見ると子供になる前の姿になっていた。そして記憶も……
「元の姿に記憶も元通りか……しかしこの光景はなんだ?」
カズがいたのは部屋全体が光っていると感じるほどの真っ白な部屋だった。
ヴェルネたちが住む屋敷の内部にこのような部屋はないことを知っていたカズは警戒を強めた。
「子供になった時の記憶はある。だがこんな場所で寝た覚えはない……」
「当然です。ここは私の領域であり、今のあなたは精神と魂のみが存在してるだけなので」
カズの疑問に答える女性の声に彼は思わず飛び退いた。
今までに経験をしたことがない感覚の「無さ」に、カズの中では異常なまでに警報を鳴らす。
彼が寝ていたベッドに腰かけて微笑む彼女は異常なまでに長い金色の長髪を垂らし、白い布で目を隠した女性。彼女は彼に背を向けていたが、それでも視界で確認できるほどの特徴的な大きな乳房をしていた。
一見害意も敵意もない彼女だが、カズにとってはその「何も感じない存在」を警戒した。
「いつの間に……⁉」
「存在の次元自体が違いますから。あなたがあらゆる生物の存在を知覚するのはそこに『生命』が宿っているから」
「まるであんたにはその生命がないとでも言いたげだな?」
「その通りです」
カズは警戒をそのままに正体不明の女性と会話を交わす。その額には珍しく汗が流れていた。
「そう警戒せずともよろしいですよ……と言っても無理な話でしょうが、もしあなたが暴力を振るえば私は簡単に消えてしまえる、その程度の存在ですよ?」
「『その程度の存在』、ね……まさかあんた、自分が神様とでも言うつもりか?」
「あなたの定める神の定義がどうかにもよりますが、あなたがやってきたあの世界を創った者のことを示しているのだとしたらそうなります」
彼女がさりげなく肯定の返答をするとカズは目を丸くして驚いた。
すると彼女は姿勢を直し、ベッドの上でカズに向かって正面に正座をして頭を両手と共に深々と下げる。
「改めまして、カズ様がお住まいになられた地球とは別の次元にある星、『リウ・アトラズ』を管理していますウルストラと申します」
「……どうも。それでその管理者様が今更何のようで?」
カズが異世界に来てから一度も接触がなかった「神」とされる存在。しかし彼もタイミング的に心当たりがあった。
「もしかしてあんたを崇拝してた宗教団体を滅茶苦茶にしたから怒ったとか?」
「いいえ……その件であることには違いありませんが、むしろそれを含めてこちらが謝らなくてはならないことが最低でも二つありましたのでこうやってお呼びさせていただきました」
一度頭を下げてからそのまま会話しようとするウルストラにカズは警戒しているのがバカらしくなって気を緩めた。
「えっと、少なくとも宗教団体の連中の行動はあんたにとって悪い行動だったってことか?」
「もちろんです。そもそも人間があそこまで獣人や魔族を嫌うというのが想定外でして……ある程度なら仕方ないことと諦めて傍観するつもりでしたが……」
「それも我慢の限界だったと?」
カズがそう聞き返すとウルストラはずっと下げていた頭をようやく上げて頷く。
「私が何も言わないことを良いことに他種族へ度重なる侵攻、さらにはその全てを私の名を騙って行う所業。いくら私たちが直接手を下さないというルールを自分へ課せているとはいえ許せる限度を超えていました」
「……争いや侵攻ってのは生きてる上で必ず起きるもんだと思ってるけど、人間はそれが行き過ぎたと?」
「そうです。ほとんどの動物が己が生きるために互いに争って命を奪い合うのはもはや生物の運命とも言うべき在り方ですが、彼ら人間は獣人や魔族が自分たちとは違う見た目というだけで嫌悪し、排除しようとしました。それはあり方としたは歪んでいるのでダメです。ダメダメです」
「ダメダメ……」
ウルストラの可愛い言い方にカズの気がさらに抜ける。
「そうです、ダメダメです。なので私は一つの案を思い付き、実行しました。それが二つ目に謝罪しなければならないことです」
「……まさか俺をこの世界に呼んだのは……?」
カズが異世界へ移動した原因……それがこのウルストラにあると予想した。そして彼女はそれに頷く。
「はい、私です。他の世界で最も力が強く適応力がある者を選んだ結果、あなたを呼ぶことになりました。方法が特殊だったため突然呼び出す形になってしまい混乱させてしまったと思いましたが……ですがこれまでのあなたの行動を観察し続けて確信しました。あなたを選んで正解だったと」
「サラッとストーカーみたいなことしやがってんな?もしかして風呂やトイレの時も覗いてんじゃ……」
「…………」
ウルストラは微笑んだまま何も答えず、それを肯定と取ったカズは「マジかよ」と呆れ気味に言って苦虫を嚙み潰したような表情を彼女に向ける。
するとウルストラは微笑みながらも少しだけ申し訳なさそうな顔をして豊満な胸の前で両手の五本の指を合わせた。
「これからはやめます。あなたの強さも確認できましたし、アトラズでの生活も問題なさそうですので……と、そろそろ起きる時間ですね。最後に一つ。謝罪の意味を込めてあなたにプレゼントをしたいと思いますが、何か欲しいものはありますか?」
「欲しいもの?」
「はい。お金、名声、地位、人々が『超術』と呼んでる強力な能力でもいいですよ?それこそあなた方が『チート』と呼ぶ反則的な力を用意することもできます。何を望みますか?」
彼女の誘惑とも取れる言葉にカズはしばらく悩んだ。そしてハッとする。
「魔族の町で死んだ奴らの蘇生はできるのか?」
「…………」
死者の蘇生。もちろんそれは肉体と魂を元通りにしてほしいという要求にウルストラの表情から笑みが消える。
しかしそれも束の間、彼女は再び笑みを浮かべた。
「できますよ!もうすでに火葬を済ませて肉体もない状態ですが、それでも元通りにできる方法はちゃんとあります。それこそ世界を乱す力が。それを選択しますか?」
「ああ」
ウルストラの問いに迷わず答えたカズ。その迷いのない目を見た彼女が頷き、彼の両手を優しく包むように掴む。
「わかりました。彼らの魂は全員まだあの町を彷徨っています。なので目が覚めたらすぐに遺族の元へ向かってください」
「わかった……ありがとうな、神様よ」
カズはそう言うと白い光となって消えた。すると少しして彼らがいた豪華な部屋も消えて何もない白い空間が広がった。
そして誰もいなくなった空間でウルストラは椅子がなくとも空中で座る体勢で浮く。
「その力は災いを呼ぶ。その力は秩序を乱す。その力は他の怒りを買う。彼の世界には『力を持つ者には責任が伴う』という言葉があるようですが、この場合は代償……『力を使う者には代償を支払う』となりましょう」
不穏な言葉を口にする彼女の表情は狂気的な笑みを浮かべる。
「ですがそれでも好きに生きなさい我が愛しい人。肉体が朽ちて変わっても不変的なあなたの魂は誰にも想像できないことを成してくれるでしょう……あなたはどう思いますか?」
ウルストラが誰もいない空間に問う。するとまたもや何もない空間から一人の人間の男が落とされるように姿を現す。
ウルストラ教会「元」教皇グルータス・ウィンター。その姿は光の輪で体を拘束されており、生前の教皇としてではなくボロボロの布のような服を着させられていた。
~他視点~
「ッ」
カズが目を覚ます。
彼が彼自身の体を見ると子供になる前の姿になっていた。そして記憶も……
「元の姿に記憶も元通りか……しかしこの光景はなんだ?」
カズがいたのは部屋全体が光っていると感じるほどの真っ白な部屋だった。
ヴェルネたちが住む屋敷の内部にこのような部屋はないことを知っていたカズは警戒を強めた。
「子供になった時の記憶はある。だがこんな場所で寝た覚えはない……」
「当然です。ここは私の領域であり、今のあなたは精神と魂のみが存在してるだけなので」
カズの疑問に答える女性の声に彼は思わず飛び退いた。
今までに経験をしたことがない感覚の「無さ」に、カズの中では異常なまでに警報を鳴らす。
彼が寝ていたベッドに腰かけて微笑む彼女は異常なまでに長い金色の長髪を垂らし、白い布で目を隠した女性。彼女は彼に背を向けていたが、それでも視界で確認できるほどの特徴的な大きな乳房をしていた。
一見害意も敵意もない彼女だが、カズにとってはその「何も感じない存在」を警戒した。
「いつの間に……⁉」
「存在の次元自体が違いますから。あなたがあらゆる生物の存在を知覚するのはそこに『生命』が宿っているから」
「まるであんたにはその生命がないとでも言いたげだな?」
「その通りです」
カズは警戒をそのままに正体不明の女性と会話を交わす。その額には珍しく汗が流れていた。
「そう警戒せずともよろしいですよ……と言っても無理な話でしょうが、もしあなたが暴力を振るえば私は簡単に消えてしまえる、その程度の存在ですよ?」
「『その程度の存在』、ね……まさかあんた、自分が神様とでも言うつもりか?」
「あなたの定める神の定義がどうかにもよりますが、あなたがやってきたあの世界を創った者のことを示しているのだとしたらそうなります」
彼女がさりげなく肯定の返答をするとカズは目を丸くして驚いた。
すると彼女は姿勢を直し、ベッドの上でカズに向かって正面に正座をして頭を両手と共に深々と下げる。
「改めまして、カズ様がお住まいになられた地球とは別の次元にある星、『リウ・アトラズ』を管理していますウルストラと申します」
「……どうも。それでその管理者様が今更何のようで?」
カズが異世界に来てから一度も接触がなかった「神」とされる存在。しかし彼もタイミング的に心当たりがあった。
「もしかしてあんたを崇拝してた宗教団体を滅茶苦茶にしたから怒ったとか?」
「いいえ……その件であることには違いありませんが、むしろそれを含めてこちらが謝らなくてはならないことが最低でも二つありましたのでこうやってお呼びさせていただきました」
一度頭を下げてからそのまま会話しようとするウルストラにカズは警戒しているのがバカらしくなって気を緩めた。
「えっと、少なくとも宗教団体の連中の行動はあんたにとって悪い行動だったってことか?」
「もちろんです。そもそも人間があそこまで獣人や魔族を嫌うというのが想定外でして……ある程度なら仕方ないことと諦めて傍観するつもりでしたが……」
「それも我慢の限界だったと?」
カズがそう聞き返すとウルストラはずっと下げていた頭をようやく上げて頷く。
「私が何も言わないことを良いことに他種族へ度重なる侵攻、さらにはその全てを私の名を騙って行う所業。いくら私たちが直接手を下さないというルールを自分へ課せているとはいえ許せる限度を超えていました」
「……争いや侵攻ってのは生きてる上で必ず起きるもんだと思ってるけど、人間はそれが行き過ぎたと?」
「そうです。ほとんどの動物が己が生きるために互いに争って命を奪い合うのはもはや生物の運命とも言うべき在り方ですが、彼ら人間は獣人や魔族が自分たちとは違う見た目というだけで嫌悪し、排除しようとしました。それはあり方としたは歪んでいるのでダメです。ダメダメです」
「ダメダメ……」
ウルストラの可愛い言い方にカズの気がさらに抜ける。
「そうです、ダメダメです。なので私は一つの案を思い付き、実行しました。それが二つ目に謝罪しなければならないことです」
「……まさか俺をこの世界に呼んだのは……?」
カズが異世界へ移動した原因……それがこのウルストラにあると予想した。そして彼女はそれに頷く。
「はい、私です。他の世界で最も力が強く適応力がある者を選んだ結果、あなたを呼ぶことになりました。方法が特殊だったため突然呼び出す形になってしまい混乱させてしまったと思いましたが……ですがこれまでのあなたの行動を観察し続けて確信しました。あなたを選んで正解だったと」
「サラッとストーカーみたいなことしやがってんな?もしかして風呂やトイレの時も覗いてんじゃ……」
「…………」
ウルストラは微笑んだまま何も答えず、それを肯定と取ったカズは「マジかよ」と呆れ気味に言って苦虫を嚙み潰したような表情を彼女に向ける。
するとウルストラは微笑みながらも少しだけ申し訳なさそうな顔をして豊満な胸の前で両手の五本の指を合わせた。
「これからはやめます。あなたの強さも確認できましたし、アトラズでの生活も問題なさそうですので……と、そろそろ起きる時間ですね。最後に一つ。謝罪の意味を込めてあなたにプレゼントをしたいと思いますが、何か欲しいものはありますか?」
「欲しいもの?」
「はい。お金、名声、地位、人々が『超術』と呼んでる強力な能力でもいいですよ?それこそあなた方が『チート』と呼ぶ反則的な力を用意することもできます。何を望みますか?」
彼女の誘惑とも取れる言葉にカズはしばらく悩んだ。そしてハッとする。
「魔族の町で死んだ奴らの蘇生はできるのか?」
「…………」
死者の蘇生。もちろんそれは肉体と魂を元通りにしてほしいという要求にウルストラの表情から笑みが消える。
しかしそれも束の間、彼女は再び笑みを浮かべた。
「できますよ!もうすでに火葬を済ませて肉体もない状態ですが、それでも元通りにできる方法はちゃんとあります。それこそ世界を乱す力が。それを選択しますか?」
「ああ」
ウルストラの問いに迷わず答えたカズ。その迷いのない目を見た彼女が頷き、彼の両手を優しく包むように掴む。
「わかりました。彼らの魂は全員まだあの町を彷徨っています。なので目が覚めたらすぐに遺族の元へ向かってください」
「わかった……ありがとうな、神様よ」
カズはそう言うと白い光となって消えた。すると少しして彼らがいた豪華な部屋も消えて何もない白い空間が広がった。
そして誰もいなくなった空間でウルストラは椅子がなくとも空中で座る体勢で浮く。
「その力は災いを呼ぶ。その力は秩序を乱す。その力は他の怒りを買う。彼の世界には『力を持つ者には責任が伴う』という言葉があるようですが、この場合は代償……『力を使う者には代償を支払う』となりましょう」
不穏な言葉を口にする彼女の表情は狂気的な笑みを浮かべる。
「ですがそれでも好きに生きなさい我が愛しい人。肉体が朽ちて変わっても不変的なあなたの魂は誰にも想像できないことを成してくれるでしょう……あなたはどう思いますか?」
ウルストラが誰もいない空間に問う。するとまたもや何もない空間から一人の人間の男が落とされるように姿を現す。
ウルストラ教会「元」教皇グルータス・ウィンター。その姿は光の輪で体を拘束されており、生前の教皇としてではなくボロボロの布のような服を着させられていた。
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