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証明するためなら

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「それで……どうしようか、これ……?」

 子供の姿になってしまったらしい柏木 和と名乗った少年を見てヴェルネが困った様子で言う。
 ジークもマヤルもヴェルネと同様に困り果て、当の本人であるカズは物珍しそうに周囲を見渡していた。

「スゲーな、こういう屋敷ってテレビでしか見たことねーや」

 そう言ってケラケラと笑い、しかしすぐに彼から楽観的な雰囲気が消えて威圧的なものに変わる。

「……で、僕の家族はどこ?」

「「「ッ……!!」」」

 余裕の笑みを浮かべつつ放つ威圧にヴェルネたちはそこに含まれる僅かな殺意に冷や汗を流す。
 カズは今、記憶をなくしたせいで自分が置かれている状況が掴めず、ヴェルネたちを敵と判別するかどうか見極めようとしていた。

「いや、あたしたちは――」

「おかしいよね、さっきまで家族と一緒にいたのに誰もいないのって。見た感じお姉さんたちって不思議な感じはするけど凄く強い感じはしないし……家族の監視を掻い潜って僕を誘拐できたわけじゃないでしょ?でも周りは知らない建物ばかりだし、お父さんもお母さんもいないしー?」

 ヴェルネの言葉を遮って話すカズ。その間も彼は隙を見せずにいた。

「この隙を見せない立ち振る舞い……やはりカズ様ですね」

「……ねぇ、カズ」

「ずいぶん図々しく呼んでくるけど……何?誰?」

「本当に何も覚えてないの?」

 ヴェルネが悲しそうな表情でそう言うと少年のカズは困惑してたじろぐ。

「な、なんだよ……俺何か悪いことしたか?」

「したわよ、っていうかしてるわよ!あたしたちを助けてくれたと思ったらこんな子供になっちゃって、しかも記憶もなくなってるなんて……そんなの酷いじゃない……!」

 記憶も失い子供になったカズに対してヴェルネが本気で悲しみ抱き締める。もうその時にはカズはヴェルネたちに対する警戒が薄くなっていた。

「記憶って……何言ってるの?」

「僭越ながら私めがご説明させていただきます」

 ジークが近付いて会釈する。

「私はジークフリート、近しい者からはジークと呼ばれています。こちらのメイドがマヤル、今あなたに抱き着いておられる方が私たちの主であるヴェルネ様でございます。そしてここはカズ様がいる世界とは全くの別世界です」

「えぇ……お爺さん大丈夫?その年でコスプレしてる時点で変だとは思ってたけど、もしかしてもう頭が……」

 カズが可哀想なものを見る目をジークに向けてマヤルが吹き出してしまうが、ジークは首を横に振る。

「残念ながら私たちの姿はカズ様が仰るこすぷれ……というような変装ではなく、そのままの姿なのです。試しにヴェルネ様の角を触ってみてはいかがでしょう?」

「ちょっ……何言ってんのジーク⁉」

 ジークの提案にヴェルネが顔を真っ赤にして声を荒げる。

「頭の角?そんなん触ったら簡単に外れちゃうじゃ……」

 カズが疑問に思いつつも言われた通りにヴェルネの角を無遠慮に触る。

「あぁんっ⁉」

「ッ⁉」

 触った瞬間にヴェルネが艶めかしい声を上げ、カズが驚いて手を離す。

「な、なんだよ急に変な声出して⁉」

 ヴェルネの意外な反応にカズも顔を赤くしてしまっていた。
 そして同じように顔を赤くしていたヴェルネがジークを睨む。

「ヴェルネ様、今のカズ様に信じてもらうにはそうしてもらう他ありません。カズ様も……私たちは人間ではなく魔族という種族です。あなたが住む世界には人間以外の種族はいないと聞いていますので体から生えている尻尾や角の根本を確認していただければと……」

「でも……今触ったらこの人凄い声出したんだけど……」

「…………」

 先程の反応を見たカズがそう言って躊躇するが、ヴェルネは彼に自らの頭を差し出す。

「あんたなら別にいいわよ……」

「ッ……!」

 互いに恥ずかしそうにして固まってしまうヴェルネとカズ。
 カズがゆっくりと手を伸ばして再びヴェルネの頭を触る。

「んっ……」

「ッ……お、おい、これ本当に大丈夫なのかよ……?」

「一応繊細な場所なので気を付けて優しくお触りください」

 カズが本当に続けるのかという意味で聞いたが、ジークはアドバイスだけして親指を立ててグッドサインをする。
 仕方ないとカズは早々に諦めてさっさと確認しようとした。

「……あ、良い匂い」

「え?」

「あ、いや、なんでもない!」

 ヴェルネの頭部から漂う匂いを偶然嗅いでしまったカズがつい感想を漏らしてしまう。
 そんな彼らを見てマヤルがいやらしい笑みを浮かべる。

「……何を考えてる、マヤル?」

「フフフ……いえね、いつ戻るかわからないカズ様の少年時代、この時から性癖が歪めちゃったらどうなっちゃうんだろうって♪」

「相変わらず……あなた自身が色々と歪んでますね」

 照れる要素のないはずの彼の言葉にマヤルは「それほどでも~」と照れる。そんな彼女にジークは「褒めてません」と苦笑いする。

「……本当だ、根元から生えてる。これが作り物だったら凄い技術だって感心するよ」

「というか、女の頭を直接まさぐっておきながら嘘だの偽物だの言うのならそれこそ怒ってたわよ」

 恥ずかしさが消えず顔を赤くしたままのヴェルネがそう言うとカズが眉間にシワを寄せる。

「だっていきなり僕は元々大人だったとか他の世界にいますなんて漫画みたいなこと言われても信じられるわけないだろ……新手の宗教の勧誘かと思うじゃんか?……まぁ、こんなブカブカな服を着させられておかしいとは思うけどさ」

「それはそうかもだけど……あ」

 少年のカズが大人の時に着ていた大き過ぎる服に不満そうにしているのを見てヴェルネがあることを思い出す。

「スマホ!」

「え……?」
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