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中毒緩和
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「制圧完了しました、アニキ!」
最後の一人となった魔狼族をジルが倒して頭を踏み付けて得意げに言う。
他の魔狼族も動ける者は一人もおらず、ルルアたちや猫族も軽く負傷した者はいても死傷者はいなかった。というのも、ほとんどの数をルルアとジルが倒したからだろう。
そんな彼らに俺はふざけた労いの言葉を言ってみる。
「うむ、ご苦労」
「……それで、カズが椅子にしてるその魔狼族ってどうなってるんだ?」
レトナが俺が椅子にして座っていたソレを見て苦虫を嚙み潰したような顔をする。
ソレは複数人の魔狼族の奴らの関節を複雑に絡み合わせ、その上で椅子のように乗っていた。
「結構エグイ絵面になってますね」
「でも何気に似合ってるのなんなんだ……」
「お兄ちゃんって人骨でできた椅子も似合いそうだよね」
若干引き気味の二人とからかうようにケラケラと笑うルルア。俺が強く言い返さないのをいいことに言いたい放題だな、コイツら……
……と、ひとまずリヤウと話し合うか。
「殺さず戦闘不能にしてみたが、コイツらの処遇はどうする?」
「そうじゃな……」
猫族からすれば全員殺したいと思うだろう。どうするとは聞いてみたが、正直ジルの同族を見殺しにっていうのも……いや、そういえば――
「ジル」
「はい?」
「お前の家族はこの中にいるのか?全員息をしてるから最悪の事態にはなってないと思うけど……」
「あー……」
ジルは何やら気まずそうに半笑いで目を逸らし、だがその意識は申し訳なさそうに俺の方に向けていた。
……え、まさか?
「俺の両親二人とも、今アニキが椅子にしてる中にいます……」
……なんということでしょう。
――――
―――
――
―
「ううん……」
「あ、目が覚めた」
魔狼族の一人の女性が声を漏らし、目を覚ます。
寝ていた彼女が上半身を起こし、意識を朦朧とさせながらも俺に視線を向けてくる。
ジルの母親。灰色の髪と金色の獣の瞳をし、ジルの面影が見える。
さて、これで正気に戻ってなければまた気絶させなきゃならないけど……
「人……間……?」
ポツリと漏らす。そんな彼女にジルが近付いて腰を下げて目線を合わせる。
「無事でよかった、母さん……」
「ジル……ジル?夢でも見てるのかしら……なんだか頭もボーッとするし……」
「夢じゃないよ。父さんもおかしくなってたし……しっかりしてよ」
ジルがそう言うと彼の母親がハッとする。
「本当にジル⁉ それに人間や猫族がいるこの状況は一体……?」
「覚えてないの?母さんたち、なんだかおかしくなって猫族を根絶やしにするとか言って攻めてきたんだよ?」
「そんな……何も覚えてないわ。最後に覚えてるのは……凄く良い匂いを感じた時、かしら……」
頭を抱えて思い出そうとするも、まだ完全に覚めていないその頭では物を考えられないらしい。それどころか――
「そう、あの良い匂いが……あは、アハハハハ‼」
「「ッ⁉」」
突然笑い声を上げる彼女の変化に、その場にいた全員が驚く。
「よいしょっと」
「アハッ☆」
彼女の後頭部に衝撃を与えて気絶させた。
「あ、アニキ……」
「少し待ってろ」
スマホの画面を開き、見かけてはいたがあまり使っていなかった「健康診断」というアプリを起動する。
他と同様に写真を撮ってその状態を確認する。
――「強制快楽中毒」……脳から快楽物質となるドパミンが何かしらの原因で強制的に放出されている状態。この状態は自然になることはなく、魔流視を使用した治療のみで正常に戻ることができる。しかし時間が経ちし過ぎると治療が不可能となってしまう。
などなどとその詳細と治療法が載っており、手遅れになる前にその治療法を試す。
「誰か手を貸してくれるか?少し汚い仕事になるが」
「助けるんですよね?なら俺がやります」
ジルが二つ返事でそう言ってくれる。
「それじゃあ、俺が体を支えるから頭を上に持ち上げてくれ」
「はい!」
俺が左腕で彼女の鎖骨辺りを支えて右手を背中の中心に当て、ジルが言った通りに顔を空に向ける。
俺が右手を当てたところは魔力を取り入れやすい箇所の一つであり、そこへ闇の魔法を使う要領で魔力を流し込む。
体全体に回った毒素を押し込むようにまずは下の方へ流し、そして徐々に上の方へ……
「ッ……ア゛ッ⁉」
すると彼女の口から黒い霧が大量に放出され、空へと消えていく。
その間、ジルの母は体をガクガクと揺らし、全部出し切るとと再び脱力してぐったりしてしまう。
「……アニキ、母さんは?」
「もう大丈夫なはずだ。見た限り、さっきまであった毒素は全部取り除かれてる」
「そう、ですか……」
母親が完全に治ったと聞かされたジルはホッと胸を撫で下ろす。しかしまだ終わっていない。
「一息吐くにはまだ早いぞ。お前の父親もまだ同じ状態だし、他の魔狼族もできる限り治すぞ」
「了解です!」
治したのはまだ一人目。もし総数が千以上はいるであろう全員を救おうとするのであれば急がなければならない。
魔狼族との戦いが終わった次は時間との闘いってわけだ……
最後の一人となった魔狼族をジルが倒して頭を踏み付けて得意げに言う。
他の魔狼族も動ける者は一人もおらず、ルルアたちや猫族も軽く負傷した者はいても死傷者はいなかった。というのも、ほとんどの数をルルアとジルが倒したからだろう。
そんな彼らに俺はふざけた労いの言葉を言ってみる。
「うむ、ご苦労」
「……それで、カズが椅子にしてるその魔狼族ってどうなってるんだ?」
レトナが俺が椅子にして座っていたソレを見て苦虫を嚙み潰したような顔をする。
ソレは複数人の魔狼族の奴らの関節を複雑に絡み合わせ、その上で椅子のように乗っていた。
「結構エグイ絵面になってますね」
「でも何気に似合ってるのなんなんだ……」
「お兄ちゃんって人骨でできた椅子も似合いそうだよね」
若干引き気味の二人とからかうようにケラケラと笑うルルア。俺が強く言い返さないのをいいことに言いたい放題だな、コイツら……
……と、ひとまずリヤウと話し合うか。
「殺さず戦闘不能にしてみたが、コイツらの処遇はどうする?」
「そうじゃな……」
猫族からすれば全員殺したいと思うだろう。どうするとは聞いてみたが、正直ジルの同族を見殺しにっていうのも……いや、そういえば――
「ジル」
「はい?」
「お前の家族はこの中にいるのか?全員息をしてるから最悪の事態にはなってないと思うけど……」
「あー……」
ジルは何やら気まずそうに半笑いで目を逸らし、だがその意識は申し訳なさそうに俺の方に向けていた。
……え、まさか?
「俺の両親二人とも、今アニキが椅子にしてる中にいます……」
……なんということでしょう。
――――
―――
――
―
「ううん……」
「あ、目が覚めた」
魔狼族の一人の女性が声を漏らし、目を覚ます。
寝ていた彼女が上半身を起こし、意識を朦朧とさせながらも俺に視線を向けてくる。
ジルの母親。灰色の髪と金色の獣の瞳をし、ジルの面影が見える。
さて、これで正気に戻ってなければまた気絶させなきゃならないけど……
「人……間……?」
ポツリと漏らす。そんな彼女にジルが近付いて腰を下げて目線を合わせる。
「無事でよかった、母さん……」
「ジル……ジル?夢でも見てるのかしら……なんだか頭もボーッとするし……」
「夢じゃないよ。父さんもおかしくなってたし……しっかりしてよ」
ジルがそう言うと彼の母親がハッとする。
「本当にジル⁉ それに人間や猫族がいるこの状況は一体……?」
「覚えてないの?母さんたち、なんだかおかしくなって猫族を根絶やしにするとか言って攻めてきたんだよ?」
「そんな……何も覚えてないわ。最後に覚えてるのは……凄く良い匂いを感じた時、かしら……」
頭を抱えて思い出そうとするも、まだ完全に覚めていないその頭では物を考えられないらしい。それどころか――
「そう、あの良い匂いが……あは、アハハハハ‼」
「「ッ⁉」」
突然笑い声を上げる彼女の変化に、その場にいた全員が驚く。
「よいしょっと」
「アハッ☆」
彼女の後頭部に衝撃を与えて気絶させた。
「あ、アニキ……」
「少し待ってろ」
スマホの画面を開き、見かけてはいたがあまり使っていなかった「健康診断」というアプリを起動する。
他と同様に写真を撮ってその状態を確認する。
――「強制快楽中毒」……脳から快楽物質となるドパミンが何かしらの原因で強制的に放出されている状態。この状態は自然になることはなく、魔流視を使用した治療のみで正常に戻ることができる。しかし時間が経ちし過ぎると治療が不可能となってしまう。
などなどとその詳細と治療法が載っており、手遅れになる前にその治療法を試す。
「誰か手を貸してくれるか?少し汚い仕事になるが」
「助けるんですよね?なら俺がやります」
ジルが二つ返事でそう言ってくれる。
「それじゃあ、俺が体を支えるから頭を上に持ち上げてくれ」
「はい!」
俺が左腕で彼女の鎖骨辺りを支えて右手を背中の中心に当て、ジルが言った通りに顔を空に向ける。
俺が右手を当てたところは魔力を取り入れやすい箇所の一つであり、そこへ闇の魔法を使う要領で魔力を流し込む。
体全体に回った毒素を押し込むようにまずは下の方へ流し、そして徐々に上の方へ……
「ッ……ア゛ッ⁉」
すると彼女の口から黒い霧が大量に放出され、空へと消えていく。
その間、ジルの母は体をガクガクと揺らし、全部出し切るとと再び脱力してぐったりしてしまう。
「……アニキ、母さんは?」
「もう大丈夫なはずだ。見た限り、さっきまであった毒素は全部取り除かれてる」
「そう、ですか……」
母親が完全に治ったと聞かされたジルはホッと胸を撫で下ろす。しかしまだ終わっていない。
「一息吐くにはまだ早いぞ。お前の父親もまだ同じ状態だし、他の魔狼族もできる限り治すぞ」
「了解です!」
治したのはまだ一人目。もし総数が千以上はいるであろう全員を救おうとするのであれば急がなければならない。
魔狼族との戦いが終わった次は時間との闘いってわけだ……
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