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ぶっ壊れ装備

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☆★☆★
~カズ視点~

 パ~パラパ~パ~パ~パ~♪

 ……不思議で軽快な音楽がどこからか突然鳴った。しかし俺は特にそれに対して驚くことはなく、目の前で粉々に割れて消えていくモンスターを眺めていた。
 恐らく本来であればゲームのラスボスを倒した後に現れる裏ボスだったであろうモンスター。そして代わりに凝った外見の装備や大量のお金が落ちる。
 それがそこら辺で出会う弱めのモンスターと何ら変わらない消え方をしていると思うと、少し呆気なさと物足りなさを感じた。
 ……そういえば少し前に父さんも似たようなことを言ってた気がするな。

――――
―――
――


「んー……?」

 いつものように父さんとのゲームに付き合っていたある日、何か納得がいかないように首を傾げていた。

「父さん?やめろよ、まだやり込み要素があるから付き合えとか言うのは。もう八時間はやってるじゃねえか」

「いやいや、違う違う。やりたいことは大体終わったからそれは別にいいんだよ。ただ今倒した裏ボスなんだけどさ、倒して強い武器とか防具を貰えるのはいいんだけど倒した後がアッサリし過ぎっていうか、せめて何か会話の一つくらいほしかったなぁ……って」

「いや……わからんわ……」

――――
―――
――


 あの時に父さんが言っていたことが今、ほんの少し理解できた気がした。どうせならゲームらしく何かしらのストーリーが欲しいとは思ったり……と。
 とはいえ、まだ本筋であるストーリーもやってないのだから、この気持ちになるには時期尚早だろう。

「そんじゃま、やることもやったしヴェルネたちと合流するかな」

 気持ちを切り替えて踵を返してこの場を去ろうとすると、ピロンという音と共に文字が書かれたウインドウが表示される。

 ――【現在のダンジョンが攻略されました。外へ脱出しますか?※「はい」を選んだ場合、二度とこのダンジョンに入ることができせん】

 ……ずいぶん躊躇させるような文章だな。まるでまだ何かを隠しているかのように。
 レトナとの勝負……もといヴェルネたちとの合流が少し遅れるかもしれないが、もう少し探れるだけ探ってみるか。
 そうして選択肢を「いいえ」にすると別の文章が表れる。

 ――【任意に脱出したい場合は「脱出」と声に出してください。わからないことがあった場合は「ヘルプ」と声に出してください】

「え……『ヘルプ』?」

 俺が不意に気になった言葉をそのまま口に出すと、目の前に大量の項目が並んだウインドウが出てきた。
 「フィールドの移動」「戦闘」「装備」などなどの項目が並び、一つである「装備」の欄をタッチしてみると更に別の項目が表示される。
 また「武器と防具を装備するには」という項目をタッチして広げてみると「イベントリと言い――」と俺たちが手探りでやっていたことが簡単に説明されていた。
 アレ、これって俺たちの苦労って……いや、考えるのをやめよう。なんだか悲しくなりそうだ……
 それはそれとして。この部屋の探索を始める。
 このゲームをやっていてわかったことが一つ。ゲームとはいえ現実と相違ない「感覚」を感じることができる。
 何が言いたいのかというと、部屋の中に隠し部屋があれば空気の流れや空洞による音がわかったりするわけで、特別な知識がなかったり謎解きのようなギミックを解かずともその部屋のを在り処を探れてしまえるのだ。

「ここか」

 部屋の一角で立ち止まり、一見何の変哲もない壁を触る。壁を触った感触はなく、俺の手は壁をすり抜けていた。
 幻覚の壁ってやつか……わずかに流れる空気がここだけおかしかったから何か仕掛けがあると思ったが、まさか壁そのものが幻影だとは思わなかったな。
 ちょうど人一人が通れそうな間隔で、中に入ってみると複数の宝箱が置かれていた。いわゆるボーナス部屋ってやつか。
 宝箱をいくつか開けてみると、中には名前が似た防具一式が入っていた。説明文を見るとどうやら全て揃えて着れば特殊な効果を発揮する「セット装備」ってやつらしい。
 全て着てみると若干中二病が入った黒ずくめの服と両耳にイヤリング二つが付けられた。

 ――【「真王」セット効果が発動します】

 すると目の前にウインドウでそう表示され、ステータスのウインドウを出して内容を確認してみると「全てのステータス五十%アップ」「デバフ、状態異常無効」「無敵貫通」「即死回避」、さらには「HPが30%以下でステータスを追加で200%アップ」などなど。
 なんかこれでもかってくらい色々詰め込まれた能力強化の内容が表示されていた。
 これはいくらなんでもやり過ぎ……と思ったが、そもそも俺が今倒したのは本来ストーリーを全て終わらせてから倒す相手であり、ソイツを倒して手に入れた装備なのだから当然とも言えるのだけれども……

「……こりゃ、ストーリー楽しみたい人からすれば要らない装備だな」

 クリア後に好きに暴れてくれと言わんばかりの好き放題に能力を盛った装備なんて序盤で手に入ったところで……まぁ、「俺つえ~」して進めたい人が使うようなもんだな。あとは……
 まだ開けてない最後の宝箱一つ。順番的に言えば武器か盾が出るかだと思うんだが……恐らくまたおかしな性能のものが出るのだろうけれども、内容はともかくその中身を確認する時の何が出るんだろうかというワクワク感は俺でも感じるので楽しみではある。
 そんな楽しみを感じつつ宝箱を開けてみると、中から出てきたのは「銃」と「刀」だった。しかしそれぞれが別なのではなく、二つで一つといったものらしい。

「……銃といいこの武器といい、ファンタジーな世界観には不釣り合いなもんがちょいちょい出てくるな」

 まぁ、ゲームだし、元の場所でもダンジョンで近未来的なガトリングや長身の刀が出てきたりもしたわけだし……絶対に出てこないっていうのはただの「そうであってほしい」という偏見と願望なのかもしれないけれども。
 それはそれとして、早速新しい武器も装備してみる。

「しかし銃と刀に黒ずくめの服ね……勇者どころかアニメや漫画の主人公にでもなったみたいな気分だな」

 なんて感慨に浸っていると、目の前にまたウインドウが出現した。

 ――【特殊武器を装備しました。特殊武器を装備していることで固有のスキルが使えるようになります】

 そう説明文には書いてあり、「コマンド」と口にして使えるようになったスキルというのを確認してみる。
 するとスキルが三つほど追加されており、「血の斬撃」「チャージバレット」「ブラッディレイン」があった。
 ……ストーリーを簡単に進めるわけにはいかないけど、この技や性能はちょっと試してみたいかもしれない。
 そう思いはしたものの、レトナたちをあまり待たせるわけにもいかないのでこの辺りで「脱出」と口にして洞窟を出た。
 そしてアップデートの通知が来たのはその後すぐだった。
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