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「あー、倒した倒した!これで俺たちの勝ちだ!いくらカズがバカみたいに強くてもスタートが同じでこっちが三人もいればこうなるよな!」
ゲドルを倒したことでレトナが胸を張って言う。
「とはいえ、『ゲーム』に関する知識は向こうの方が上だったと思いますし、勝てたのはやっぱり運が良かったからじゃないでしょうか?」
「いや、俺も父親に付き合ってやってはいたけど、言ってそこまでゲームの知識はないぞ?」
「そうなの?それは――」
聞き覚えのある声、しかしついさっきまではいなかったはずの男の声がヴェルネのすぐ横に立って発せられていた。
突然現れた存在にヴェルネの反応はもちろん……
「うひゃうっ⁉」
「あら可愛い悲鳴」
「あ、お兄ちゃん」
驚きのあまりその場で尻餅を突いてしまったヴェルネにカズが微笑みながら手を差し伸べる。
「お、追い付いたんなら声かけなさいよね⁉」
「ああ、すまん。なんか楽しそうに戦ってたから手を出さずに見てたわ」
「え、戦ってた時からいたの?マジで?」
レトナの疑問にカズが「マジでマジで」と適当に返す。
「なんだよ~、それじゃあ俺たちの負けじゃん!これならカズに勝てると思ったのになぁ……っていうかなんか凄い恰好してない?めっちゃカッコイイ服着てんじゃん!」
羨ましそうにするレトナにカズは「そうか?」と聞き返して自分の姿を見る。
「向かったところで色々拾って片っ端から着てただけなんだけどな……ああでも、そこのボス倒したらセット装備みたいなの貰えたから今それ着てるな」
「ねぇ、そのボスってあたしらがさっき倒した奴より強かったりしない」
「うん、アイツと比べれば強かった。でもまぁ……ゲームだからもう少し楽しめると思ったんだけど、普通に倒せちまった」
「……そう。あんたの『普通』……ね」
少々残念そうにするカズにヴェルネが懐疑的な眼差しを向ける。
「あんたからしたらさぞ無傷で倒せるような退屈な相手だったんでしょね。きっとあたしたちじゃ手も足も出ないような化け物だったとしても」
「そりゃあまぁ……」
――――
―――
――
―
『カズはレベルが5上がった!』
「あ、またレベルアップ。すぐにレベルが上がるな……経験値が多く貰えるのか、ここ?」
ヴェルネたちと別れたカズは町の近くで強敵が潜むとされている洞窟に潜っていた。
彼は道中でも遭遇した敵を全て倒し、凄まじいスピードでレベルを上げて進めている中で呟く。そしてたった今倒したモンスターに何かを期待するような視線を向ける。
「それにまた何か装備が落ちたな。ストーリーもやってないのに色々飛ばして強くなってる気がするけど、これって後々このゲームが楽しめなくなったりしないか?……ま、レトナたちが楽しめればいっか」
カズは自分のことを後回しにするつもりにし、拾った装備を確認する。
「女性用……そういうのも出てくるのか。性能も良さそうだし、一応拾っといて後でヴェルネたちに渡すか」
そう言って使いこなし始めたゲームのシステムで手荷物になりそうな装備をしまう。
その後もカズは襲ってくる高レベルのモンスターを倒し続けた。
身体的なステータス的にはこのゲームの中では下がっているはずなのカズだが、唯一本来のゲームと違うのはコントローラーではなく自由に動ける体があることと反射神経が差異なく発揮できることだった。
それがカズがこのゲームにおいて現実と変わらないアドバンテージで戦闘を行えている理由である。
さらには例え相手が千ほどあるHPを持つモンスターだったとして、カズが一しかダメージを与えられなかったとしても、現実と変わらず動けるカズからすれば「千回攻撃を与えれば倒せる相手」でしかなく、レベルが上がり装備が整ってきたカズが相手に与えられるダメージは十や二十と徐々に増えていったため、手応えを感じなくなってしまっていた。
「一撃で倒されるデメリットがあっても結局は当たらなければどうということはない、って話だしな……もういっそボスとエンカウントしないか、っと?」
カズが適当な扉を開くと広い部屋の中央に宝箱が二つ置いてあった。
「……ゲームとはいえ、あからさま過ぎるだろ」
知識があるカズはこの状態が罠であることを察した。すると宝箱を無視して部屋の壁、地面、天井を調べ始める。
しかししばらく隅から隅まで探るカズだったが、終わった辺りで首を傾げた。
「……何もない?」
罠があると踏んでいた自分の思惑が外れたカズは納得できずに腕を組んで悩んだ。
「ただのボーナス部屋だったか……まぁ、罠が無いならないであったらあったでその時に対処するとしよう」
モヤモヤしたままのカズがそう言いながら宝箱に近付き、開けようと触る。
するとその瞬間、違和感に気付いた彼はその場から消えるように後方へ飛び退き、同時にカズがたった今いた場所に大きな手が振り下ろされた。もしカズが避けなければその手に潰されて死んでいたであろう威力。
「なるほど、こういう『罠』か。ゲームの世界ならではって感じのやつだな」
そう言って変わらず余裕のカズが見る視線の先には細長い手足を生やした宝箱が二体立っていた。
「たしか……ミミックって名前だったか?基本強敵らしいけど、他の奴よりどれだけの差があるやらな……」
カズが余裕を見せてミミックの出方を窺っていると、ミミック二体は予備動作がない素早い動きでカズに襲い掛かる――
ゲドルを倒したことでレトナが胸を張って言う。
「とはいえ、『ゲーム』に関する知識は向こうの方が上だったと思いますし、勝てたのはやっぱり運が良かったからじゃないでしょうか?」
「いや、俺も父親に付き合ってやってはいたけど、言ってそこまでゲームの知識はないぞ?」
「そうなの?それは――」
聞き覚えのある声、しかしついさっきまではいなかったはずの男の声がヴェルネのすぐ横に立って発せられていた。
突然現れた存在にヴェルネの反応はもちろん……
「うひゃうっ⁉」
「あら可愛い悲鳴」
「あ、お兄ちゃん」
驚きのあまりその場で尻餅を突いてしまったヴェルネにカズが微笑みながら手を差し伸べる。
「お、追い付いたんなら声かけなさいよね⁉」
「ああ、すまん。なんか楽しそうに戦ってたから手を出さずに見てたわ」
「え、戦ってた時からいたの?マジで?」
レトナの疑問にカズが「マジでマジで」と適当に返す。
「なんだよ~、それじゃあ俺たちの負けじゃん!これならカズに勝てると思ったのになぁ……っていうかなんか凄い恰好してない?めっちゃカッコイイ服着てんじゃん!」
羨ましそうにするレトナにカズは「そうか?」と聞き返して自分の姿を見る。
「向かったところで色々拾って片っ端から着てただけなんだけどな……ああでも、そこのボス倒したらセット装備みたいなの貰えたから今それ着てるな」
「ねぇ、そのボスってあたしらがさっき倒した奴より強かったりしない」
「うん、アイツと比べれば強かった。でもまぁ……ゲームだからもう少し楽しめると思ったんだけど、普通に倒せちまった」
「……そう。あんたの『普通』……ね」
少々残念そうにするカズにヴェルネが懐疑的な眼差しを向ける。
「あんたからしたらさぞ無傷で倒せるような退屈な相手だったんでしょね。きっとあたしたちじゃ手も足も出ないような化け物だったとしても」
「そりゃあまぁ……」
――――
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『カズはレベルが5上がった!』
「あ、またレベルアップ。すぐにレベルが上がるな……経験値が多く貰えるのか、ここ?」
ヴェルネたちと別れたカズは町の近くで強敵が潜むとされている洞窟に潜っていた。
彼は道中でも遭遇した敵を全て倒し、凄まじいスピードでレベルを上げて進めている中で呟く。そしてたった今倒したモンスターに何かを期待するような視線を向ける。
「それにまた何か装備が落ちたな。ストーリーもやってないのに色々飛ばして強くなってる気がするけど、これって後々このゲームが楽しめなくなったりしないか?……ま、レトナたちが楽しめればいっか」
カズは自分のことを後回しにするつもりにし、拾った装備を確認する。
「女性用……そういうのも出てくるのか。性能も良さそうだし、一応拾っといて後でヴェルネたちに渡すか」
そう言って使いこなし始めたゲームのシステムで手荷物になりそうな装備をしまう。
その後もカズは襲ってくる高レベルのモンスターを倒し続けた。
身体的なステータス的にはこのゲームの中では下がっているはずなのカズだが、唯一本来のゲームと違うのはコントローラーではなく自由に動ける体があることと反射神経が差異なく発揮できることだった。
それがカズがこのゲームにおいて現実と変わらないアドバンテージで戦闘を行えている理由である。
さらには例え相手が千ほどあるHPを持つモンスターだったとして、カズが一しかダメージを与えられなかったとしても、現実と変わらず動けるカズからすれば「千回攻撃を与えれば倒せる相手」でしかなく、レベルが上がり装備が整ってきたカズが相手に与えられるダメージは十や二十と徐々に増えていったため、手応えを感じなくなってしまっていた。
「一撃で倒されるデメリットがあっても結局は当たらなければどうということはない、って話だしな……もういっそボスとエンカウントしないか、っと?」
カズが適当な扉を開くと広い部屋の中央に宝箱が二つ置いてあった。
「……ゲームとはいえ、あからさま過ぎるだろ」
知識があるカズはこの状態が罠であることを察した。すると宝箱を無視して部屋の壁、地面、天井を調べ始める。
しかししばらく隅から隅まで探るカズだったが、終わった辺りで首を傾げた。
「……何もない?」
罠があると踏んでいた自分の思惑が外れたカズは納得できずに腕を組んで悩んだ。
「ただのボーナス部屋だったか……まぁ、罠が無いならないであったらあったでその時に対処するとしよう」
モヤモヤしたままのカズがそう言いながら宝箱に近付き、開けようと触る。
するとその瞬間、違和感に気付いた彼はその場から消えるように後方へ飛び退き、同時にカズがたった今いた場所に大きな手が振り下ろされた。もしカズが避けなければその手に潰されて死んでいたであろう威力。
「なるほど、こういう『罠』か。ゲームの世界ならではって感じのやつだな」
そう言って変わらず余裕のカズが見る視線の先には細長い手足を生やした宝箱が二体立っていた。
「たしか……ミミックって名前だったか?基本強敵らしいけど、他の奴よりどれだけの差があるやらな……」
カズが余裕を見せてミミックの出方を窺っていると、ミミック二体は予備動作がない素早い動きでカズに襲い掛かる――
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