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またもや面倒な客
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☆★☆★
~カズ視点~
受けた依頼は完遂し、その町のギルド責任者からは驚きと称賛のリアクションを貰った。
内容が内容なだけにその日に難易度の高い依頼を終わらせて帰ったことへの驚きと、ほぼ無傷で確保したブラッターの死骸を提出したことにさらに感謝されたり。
何よりもジルを連れながら無傷で生還したことに感心され、「今度は護衛の依頼を指名したいものだ」とまで言われてしまった。
とはいえ今はヴェルネのいる町から離れる予定はないから、受ける依頼は対処できない魔物の討伐のみに絞らせてもらうがな。
そして依頼も終えて屋敷に帰ると、中の方が何か騒がしくなっていた。
「――だから!あんたの言ってる意味が理解できないの!」
玄関の方からヴェルネの怒号に似た声が聞こえ、視線の先には彼女とルルアがおり、二人と向き合ってる二人の女性の後ろ姿があった。
その相手の後ろ姿にはどちらも見覚えがある気がする。
「理解できなくてもいいですわ。ただ彼に合わせてほしくて……そしてできれば私の親密な従者として雇いたいのです!」
「何、その『親密な』従者って。絶対下心あるじゃん!……やっぱりあの時の忠告だけじゃ足りなかった?」
ヴェルネは困惑、ルルアは敵意剥き出しで彼女たちと相対している。そしてその妙な客人の正体は……
「何しに来たルディ・エリアル。それとペナ……だったか?」
彼女たちの名を呼ぶとこっちに振り返る。
裏ギルドにて知り合ったルディとペナ。その彼女たちがなぜ白昼堂々とここに……?
なんて思っていると、ルディが恍惚とした表情をしてこちらに駆け寄って来て、そのまま抱き着こうとダイブしてきた。
……ので、それをひらりと避ける。
「ズアァァァァッ⁉」
何とも素っ頓狂な悲鳴っぽい声を上げて地面に突っ込み、顔からスライディングしてしまう。
「わ、私の愛を避けるなんて……ですが冷たくあしらわれるそれもまた良い!」
「貴様!ルディ様の抱擁を避けるなど失礼な奴……このお方の女神のようなお肌が汚れてしまったではないか!傷が付いたらどうしてくれる⁉」
ペナはよくわからないところで噛み付いてくる。なんで避けたら怒るんだよ、普通逆だろ……
「そんなことよりなんか騒いでたみたいだけど、何があったんだ?」
「まぁ、よくある話よ、ヘッドハンティングってやつ。あんたの強さをどっかで知って自分のものにしたいって話よ」
そんな単純な話じゃないんだが、ヴェルネは俺とコイツの関係を知らないから仕方ないだろう。
「フフフ、簡単な話そういうことです。しかしただの仕事仲間としてのお誘いでなく、女性としてのお誘いでもあります」
「……はぁ?」
ルディの告白じみた言葉にヴェルネの顔がさらに怪訝なものになる。そしてその睨むような目を俺に向けてくる。
「またたぶらかしたのか」と言いたいのか、それとも「また面倒な奴と知り合いやがって」と言いたいのか……どちらにしろ嫉妬というよりも呆れが表情に強く出てる。俺のせいじゃないと言いたいんだが……なんかすまん。
「断るけどな。そうそう簡単に心変わりすると思うなよ?」
「えぇ、わかっていますとも。ですが私も諦めないと言ったはずです。一度惚れた女がそう簡単に諦めるとも思わないでくださいな?ギルドの責任者としてのスカウトはもちろんですが、そうでなくともワタクシはあなたを生涯の伴侶としていつかきっとあなたの心を射抜いてみせますから!そう……」
そう言うとルディは自信に満ちた表情でヴェルネに視線を向ける。
「例え今現在夢中になっているお相手がいようともこのエリアル家長女ルディ、その愛を奪ってみせます!」
「……ふーん、そういうこと?」
ルディから挑発されたヴェルネは怒りなどの感情でなく、むしろ笑みを浮かべてやる気に満ちた顔をしてルディと向き合う。
「コイツは女ったらしではあるけど、そこら辺の男と違って簡単に落とせる奴じゃないわよ?そんな男がもうすでにあたしに夢中になってるハンデがあるし……」
ヴェルネがそう言いながら俺を引っ張って腕に抱き着いてくる。するとなぜかルルアもどさくさに紛れてそこに便乗するように反対側の腕に抱き着いてきた。
それを見て流石に悔しさを覚えたのか、ルディがあからさまに不機嫌そうにムッとする。
「それくらいのハンデなんてあって無いようなものですから。たしかにワタクシの体に対して僅かにも欲情してくださらないのは残念ですが、単純な『好き』という感情で負けてるつもりもありませんから!こんな風に――」
と、ルディが唇を尖らせてこっちに向かってダイブして再び抱き着こうとしてくる。
俺はそれに答える気が無いので、腕に抱き着いたヴェルネとルルアをそのまま持ち上げてまたひらりと避ける。
「ズアァァァァッ⁉ また避けられましたッ!!」
「お嬢様ァァァッ⁉」
何ともまた面倒で騒がしそうな人物と知り合ってしまった、その時ルディたちを見た俺は心の中でそう思ってしまった。
「あ、そうです。カズ様にワタクシから急ぎの依頼があるんですが」
「……依頼?」
「はい、ワタクシが住む町の近くでモンスターパレードが起こりそうなんですの。災害や災厄級の魔物が出るかはわかりませんが、手伝っていただければ幸いです」
「「そういうことは先に言えよ!!」」
さっきまでの情熱はどこへやら、どうでもよさそうに依頼内容を淡々と伝えるルディに俺とヴェルネが声を揃えてツッコミを入れた。
~カズ視点~
受けた依頼は完遂し、その町のギルド責任者からは驚きと称賛のリアクションを貰った。
内容が内容なだけにその日に難易度の高い依頼を終わらせて帰ったことへの驚きと、ほぼ無傷で確保したブラッターの死骸を提出したことにさらに感謝されたり。
何よりもジルを連れながら無傷で生還したことに感心され、「今度は護衛の依頼を指名したいものだ」とまで言われてしまった。
とはいえ今はヴェルネのいる町から離れる予定はないから、受ける依頼は対処できない魔物の討伐のみに絞らせてもらうがな。
そして依頼も終えて屋敷に帰ると、中の方が何か騒がしくなっていた。
「――だから!あんたの言ってる意味が理解できないの!」
玄関の方からヴェルネの怒号に似た声が聞こえ、視線の先には彼女とルルアがおり、二人と向き合ってる二人の女性の後ろ姿があった。
その相手の後ろ姿にはどちらも見覚えがある気がする。
「理解できなくてもいいですわ。ただ彼に合わせてほしくて……そしてできれば私の親密な従者として雇いたいのです!」
「何、その『親密な』従者って。絶対下心あるじゃん!……やっぱりあの時の忠告だけじゃ足りなかった?」
ヴェルネは困惑、ルルアは敵意剥き出しで彼女たちと相対している。そしてその妙な客人の正体は……
「何しに来たルディ・エリアル。それとペナ……だったか?」
彼女たちの名を呼ぶとこっちに振り返る。
裏ギルドにて知り合ったルディとペナ。その彼女たちがなぜ白昼堂々とここに……?
なんて思っていると、ルディが恍惚とした表情をしてこちらに駆け寄って来て、そのまま抱き着こうとダイブしてきた。
……ので、それをひらりと避ける。
「ズアァァァァッ⁉」
何とも素っ頓狂な悲鳴っぽい声を上げて地面に突っ込み、顔からスライディングしてしまう。
「わ、私の愛を避けるなんて……ですが冷たくあしらわれるそれもまた良い!」
「貴様!ルディ様の抱擁を避けるなど失礼な奴……このお方の女神のようなお肌が汚れてしまったではないか!傷が付いたらどうしてくれる⁉」
ペナはよくわからないところで噛み付いてくる。なんで避けたら怒るんだよ、普通逆だろ……
「そんなことよりなんか騒いでたみたいだけど、何があったんだ?」
「まぁ、よくある話よ、ヘッドハンティングってやつ。あんたの強さをどっかで知って自分のものにしたいって話よ」
そんな単純な話じゃないんだが、ヴェルネは俺とコイツの関係を知らないから仕方ないだろう。
「フフフ、簡単な話そういうことです。しかしただの仕事仲間としてのお誘いでなく、女性としてのお誘いでもあります」
「……はぁ?」
ルディの告白じみた言葉にヴェルネの顔がさらに怪訝なものになる。そしてその睨むような目を俺に向けてくる。
「またたぶらかしたのか」と言いたいのか、それとも「また面倒な奴と知り合いやがって」と言いたいのか……どちらにしろ嫉妬というよりも呆れが表情に強く出てる。俺のせいじゃないと言いたいんだが……なんかすまん。
「断るけどな。そうそう簡単に心変わりすると思うなよ?」
「えぇ、わかっていますとも。ですが私も諦めないと言ったはずです。一度惚れた女がそう簡単に諦めるとも思わないでくださいな?ギルドの責任者としてのスカウトはもちろんですが、そうでなくともワタクシはあなたを生涯の伴侶としていつかきっとあなたの心を射抜いてみせますから!そう……」
そう言うとルディは自信に満ちた表情でヴェルネに視線を向ける。
「例え今現在夢中になっているお相手がいようともこのエリアル家長女ルディ、その愛を奪ってみせます!」
「……ふーん、そういうこと?」
ルディから挑発されたヴェルネは怒りなどの感情でなく、むしろ笑みを浮かべてやる気に満ちた顔をしてルディと向き合う。
「コイツは女ったらしではあるけど、そこら辺の男と違って簡単に落とせる奴じゃないわよ?そんな男がもうすでにあたしに夢中になってるハンデがあるし……」
ヴェルネがそう言いながら俺を引っ張って腕に抱き着いてくる。するとなぜかルルアもどさくさに紛れてそこに便乗するように反対側の腕に抱き着いてきた。
それを見て流石に悔しさを覚えたのか、ルディがあからさまに不機嫌そうにムッとする。
「それくらいのハンデなんてあって無いようなものですから。たしかにワタクシの体に対して僅かにも欲情してくださらないのは残念ですが、単純な『好き』という感情で負けてるつもりもありませんから!こんな風に――」
と、ルディが唇を尖らせてこっちに向かってダイブして再び抱き着こうとしてくる。
俺はそれに答える気が無いので、腕に抱き着いたヴェルネとルルアをそのまま持ち上げてまたひらりと避ける。
「ズアァァァァッ⁉ また避けられましたッ!!」
「お嬢様ァァァッ⁉」
何ともまた面倒で騒がしそうな人物と知り合ってしまった、その時ルディたちを見た俺は心の中でそう思ってしまった。
「あ、そうです。カズ様にワタクシから急ぎの依頼があるんですが」
「……依頼?」
「はい、ワタクシが住む町の近くでモンスターパレードが起こりそうなんですの。災害や災厄級の魔物が出るかはわかりませんが、手伝っていただければ幸いです」
「「そういうことは先に言えよ!!」」
さっきまでの情熱はどこへやら、どうでもよさそうに依頼内容を淡々と伝えるルディに俺とヴェルネが声を揃えてツッコミを入れた。
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