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おや……親?
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「第二ラウンド……ってなる前に終わりそうだな。あ、せっかくの鎧なんだから一回くらい攻撃受けてみればよかったか」
そう呟くとブラッターが自らの尻尾を鞭のようにしなやかに振ってきた。
口から吐き出す酸を除けば今日一番の強力な攻撃だろう。しかしそんな威力の攻撃をまともに受けたにも変わらず、体が横にスライドするように吹き飛んだだけで痛みは全く感じない。
「受け身も取ってないのにノーダメージとは恐れ入った。魔法って力は本当に……依存性が高くて嫌になるね」
努力していないのに手に入る力、人体が出すには過ぎた力……俺の世界で科学が発展して便利になったように、魔法があるこの世界も依存性が高いものが多い。
魔法があれば力が増し、魔法があれば怪我を防げ、魔法があれば簡単に治療ができてしまう。そんな便利さに慣れてしまったらと考えると……とはいえ、いっそのこと魔法の力も武器と同じように体の一部として使いこなせれるようになれれば一番良いんだけど。
「だがやることをこれからも変えなければいい。『使えるもんは全部使う。だが最後まで頼りになるのは自らの肉体のみ』。強力な力も借り物の道具もあれば使い、無ければ無いで必要としない。それが俺らの戦い方だったよな、爺さん」
俺が幼い頃から戦い方を一から教えてくれた爺さんの教えの一つだった。だから俺たちはどんなものも使って利用し、何も頼りにはしない。
「この鎧もだ。性能はたしかに良いけど、あくまであったら面白い玩具程度に考えておかないとな」
そんな感じで色々と考え事をしながらブラッターのやりたい放題な攻撃を放置していた。その全ての攻撃のダメージはなく、さらには吐いた酸を試しに腕に喰らってみたのだが溶かされることすらなかった。
そして成す術がないと悟ったブラッターはついに力尽きてその場でぐったりと倒れてしまう。
「終わりか。まぁ、少し強ければ良いと思ってたのにここまで攻撃を無効にできるとは思ってもみなかったし、しょうがないか。あぁ、もう少し実験してみたかったな……」
そこで自分が悲観した声を出したことにハッと気付く。
……前々から気付いてはいたけれど、俺はもっと対等に渡り合える敵と戦いたいのか。自分の鍛えた力と技を思う存分発揮できる相手と。
最近では家族以外の相手と戦ってもスリルの一つすら感じなくなってしまっただけに、手加減が必要の無い相手を欲することはよくあった。
しかも向こうでは色んな達人と手合わせしてただけに、こっちでは発散不足なところも感じている。
そろそろディールとだけでは物足りなくなってきたのかもしれないな。
「……とりあえずコイツを討伐して帰るか――」
「アニキッ!」
ブラッターにトドメを刺そうと近付くと、ジルの声が聞こえてきた。そしてほぼ同時に後ろで爆発が起きる。
後ろへ振り返ると一応見えるところで結界に守られたジルがおり、その更に向こうで森の中から「ソレ」が姿を見せた。
「……アレってお前の親か?」
ブラッターのような蛇の頭、それが八本。
それぞれ赤、青、黄、緑、茶、黒、白、そして紫の合計八種類の色をしていた。色はともかく、まるでどこかで聞いたような八岐大蛇みたいだった。
さらにはその威圧感……今までの災害だとか言われていた魔物とは存在そのものの違いがわかるほどだ。
「アニ、キ……」
その威圧感に耐えられないらしく、結界の中のジルは苦しそうにしながら倒れていた。しかも八本首の蛇との距離も近く、結界ごと圧し潰されそうな勢いだったため、急いで駆け寄って結界を解いてジルを背負いつつその場を離れた。
すると蛇その全ての口を開き、俺を標的として魔法のようなものを吐いてきた。
赤い首の蛇は炎を、青色の蛇は凄まじい勢いの水を、緑はかまいたち、黄色は雷、茶色は土砂……ソイツらの攻撃は一つ一つが自然災害のような威力で広範囲に広がる。
その中でも黒白紫の首はこちらの様子を観察するように何もしなかった。まずは小手調べってか?
だが丁度よかった。さっきのブラッターより丈夫そうな相手が出てきたのなら、もっと強い魔法を試せるな。
幸いここら辺には被害が出るような建物や人はいないから、コイツや俺が派手に暴れたところで問題はないだろう。
「ジル、ここからちょっと社会体験してもらうけど構わないな?」
「社会体験……?わからないですけど……俺はアニキを信じます!」
「じゃ、しっかりと掴まってろよ」
ジルを背負い、ソラギリを取り出しつつ火の魔法を連続で無造作に撃ち込む。
ブラッターの時は悲鳴が上がってダメージが目に見えて入っていたが、今度のコイツは当たっても痛がるどころか動じた様子がなかった。つまり全く効いてないってことか……
ならばと別の魔法を試してみる。圧縮した水刃、雷撃、地面を大きく尖らせたりなど、通常の生物であればそれ一つで死に至らしめることができるはずの威力。
だが結果はソレの体に少しだけ傷を与えることができただけだった。
しかもその傷はすぐに完治してしまい、ダメージにもなっていない。
「なるほど……もう少し強いもんをぶつけなきゃ、まともなダメージが入らないか?」
俺は八首の蛇よりも高く跳躍し、手にバチバチと音が鳴る雷の槍を作り出してソイツに向けて思いっ切り投げた。
魔力を多めに込めて作ったものだから、さっきの攻撃よりも高い威力があるはず。
だが俺が飛ばした魔法の前に黄色の頭が庇うように前に出て自ら浴びる。
するとその槍が直撃したにも関わらず無傷……それどころかむしろ攻撃を吸収したようだった。
そう呟くとブラッターが自らの尻尾を鞭のようにしなやかに振ってきた。
口から吐き出す酸を除けば今日一番の強力な攻撃だろう。しかしそんな威力の攻撃をまともに受けたにも変わらず、体が横にスライドするように吹き飛んだだけで痛みは全く感じない。
「受け身も取ってないのにノーダメージとは恐れ入った。魔法って力は本当に……依存性が高くて嫌になるね」
努力していないのに手に入る力、人体が出すには過ぎた力……俺の世界で科学が発展して便利になったように、魔法があるこの世界も依存性が高いものが多い。
魔法があれば力が増し、魔法があれば怪我を防げ、魔法があれば簡単に治療ができてしまう。そんな便利さに慣れてしまったらと考えると……とはいえ、いっそのこと魔法の力も武器と同じように体の一部として使いこなせれるようになれれば一番良いんだけど。
「だがやることをこれからも変えなければいい。『使えるもんは全部使う。だが最後まで頼りになるのは自らの肉体のみ』。強力な力も借り物の道具もあれば使い、無ければ無いで必要としない。それが俺らの戦い方だったよな、爺さん」
俺が幼い頃から戦い方を一から教えてくれた爺さんの教えの一つだった。だから俺たちはどんなものも使って利用し、何も頼りにはしない。
「この鎧もだ。性能はたしかに良いけど、あくまであったら面白い玩具程度に考えておかないとな」
そんな感じで色々と考え事をしながらブラッターのやりたい放題な攻撃を放置していた。その全ての攻撃のダメージはなく、さらには吐いた酸を試しに腕に喰らってみたのだが溶かされることすらなかった。
そして成す術がないと悟ったブラッターはついに力尽きてその場でぐったりと倒れてしまう。
「終わりか。まぁ、少し強ければ良いと思ってたのにここまで攻撃を無効にできるとは思ってもみなかったし、しょうがないか。あぁ、もう少し実験してみたかったな……」
そこで自分が悲観した声を出したことにハッと気付く。
……前々から気付いてはいたけれど、俺はもっと対等に渡り合える敵と戦いたいのか。自分の鍛えた力と技を思う存分発揮できる相手と。
最近では家族以外の相手と戦ってもスリルの一つすら感じなくなってしまっただけに、手加減が必要の無い相手を欲することはよくあった。
しかも向こうでは色んな達人と手合わせしてただけに、こっちでは発散不足なところも感じている。
そろそろディールとだけでは物足りなくなってきたのかもしれないな。
「……とりあえずコイツを討伐して帰るか――」
「アニキッ!」
ブラッターにトドメを刺そうと近付くと、ジルの声が聞こえてきた。そしてほぼ同時に後ろで爆発が起きる。
後ろへ振り返ると一応見えるところで結界に守られたジルがおり、その更に向こうで森の中から「ソレ」が姿を見せた。
「……アレってお前の親か?」
ブラッターのような蛇の頭、それが八本。
それぞれ赤、青、黄、緑、茶、黒、白、そして紫の合計八種類の色をしていた。色はともかく、まるでどこかで聞いたような八岐大蛇みたいだった。
さらにはその威圧感……今までの災害だとか言われていた魔物とは存在そのものの違いがわかるほどだ。
「アニ、キ……」
その威圧感に耐えられないらしく、結界の中のジルは苦しそうにしながら倒れていた。しかも八本首の蛇との距離も近く、結界ごと圧し潰されそうな勢いだったため、急いで駆け寄って結界を解いてジルを背負いつつその場を離れた。
すると蛇その全ての口を開き、俺を標的として魔法のようなものを吐いてきた。
赤い首の蛇は炎を、青色の蛇は凄まじい勢いの水を、緑はかまいたち、黄色は雷、茶色は土砂……ソイツらの攻撃は一つ一つが自然災害のような威力で広範囲に広がる。
その中でも黒白紫の首はこちらの様子を観察するように何もしなかった。まずは小手調べってか?
だが丁度よかった。さっきのブラッターより丈夫そうな相手が出てきたのなら、もっと強い魔法を試せるな。
幸いここら辺には被害が出るような建物や人はいないから、コイツや俺が派手に暴れたところで問題はないだろう。
「ジル、ここからちょっと社会体験してもらうけど構わないな?」
「社会体験……?わからないですけど……俺はアニキを信じます!」
「じゃ、しっかりと掴まってろよ」
ジルを背負い、ソラギリを取り出しつつ火の魔法を連続で無造作に撃ち込む。
ブラッターの時は悲鳴が上がってダメージが目に見えて入っていたが、今度のコイツは当たっても痛がるどころか動じた様子がなかった。つまり全く効いてないってことか……
ならばと別の魔法を試してみる。圧縮した水刃、雷撃、地面を大きく尖らせたりなど、通常の生物であればそれ一つで死に至らしめることができるはずの威力。
だが結果はソレの体に少しだけ傷を与えることができただけだった。
しかもその傷はすぐに完治してしまい、ダメージにもなっていない。
「なるほど……もう少し強いもんをぶつけなきゃ、まともなダメージが入らないか?」
俺は八首の蛇よりも高く跳躍し、手にバチバチと音が鳴る雷の槍を作り出してソイツに向けて思いっ切り投げた。
魔力を多めに込めて作ったものだから、さっきの攻撃よりも高い威力があるはず。
だが俺が飛ばした魔法の前に黄色の頭が庇うように前に出て自ら浴びる。
するとその槍が直撃したにも関わらず無傷……それどころかむしろ攻撃を吸収したようだった。
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