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奥さん登場
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フェイの言葉に周囲の雰囲気がピリついたものとなる。
「戦争とはまたゾッとしないな」
カズはそんな彼らを見渡しながら軽く笑って言う。
「そこに実行犯である俺を連れて『やらかしたのは人間なので私たちは関係ありません』って主張しようってことか」
「身も蓋もない言い方だが、端的に言ってしまえばそういうことだ。あとはそれで各代表が納得するかだが……それよりも一番の問題がある」
「……カズの処分ね?」
ライネルが深刻な表情をして言葉を詰まらせると、その続きをヴェルネが口にして「処分」という不穏な単語にカズ以外が重い空気になる。
「何、俺ってば処されちゃうの?」
「人的な被害が無いとはいえ、見方によっては種族同士の争いを誘発させようとしたとして罪を着させられる可能性がある」
「私たちが力になれればいいのだけれど……何もできなくてごめんなさい……」
フェイが暗い表情で謝るが、カズは微笑んで首を横に振る。
「自業自得だから仕方ないさ。まぁ、なるようになると思って行ってみるさ」
「でももし吊るし首とか死刑宣告でもされてしまったら……!」
「んー……それでもどうにかするしかないよな。俺だって死にたくないし、大人しく殺されるつもりもない」
「……いや、だからって暴れるのはやめてよ?そうならないためにあたしがいるわけなんだし、多分ダイス様も味方になって擁護してくれるはずだから。あんたがするべきは『勝てる相手にも暴力は振るわない』『余計なことは言わずにできるだけ「はい」か「いいえ」で答える』……この二つだけよ、わかった?」
念を押すように言うヴェルネにカズは頷きつつ「まるで大事な場面にアドバイスをする母親のようだな」と密かに思うのであった。
そして雑談もそこそこにヴェルネがその扉を開き、ジークを残してカズと共に部屋の中へと二人が踏み入れる。
扉の先には大きく広がった空間があり、中央の円卓をすでに先に来ていた数人が囲んで椅子に座っていた。
そしてその中にはカズたちの顔見知りも。
「やぁ、カズ君」
「おっす、ダイス」
顔見知りと出会い、フレンドリーに声をかけるカズの横腹をヴェルネが肘を打ち込む。
「今日はよろしくお願いいたします、ダイス様」
「ヴェルネ君にも苦労をかけてしまったね。ここまでの道のりも長かっただろう?とりあえず座って体だけでも休んでおきなさい」
ダイスがそう言って近くの椅子に手をかざすと、横に並んでいた空いている椅子二つが独りでに後ろに下がる。
ヴェルネが軽く会釈してダイスから一つ空けた椅子に座り、カズは躊躇無くその二人の間に座る。
「ところで会議が始まる前に一つ聞きたいことがあるんだがよろしいかね、カズ君」
「……え」
ダイスの異様な雰囲気に嫌な予感がしたカズが引きつった笑いで聞き返す。
「……我が娘、レトナは今どうしてるかな、と」
予想通りの質問に引きつった口がピクピクと痙攣する。
「どう……と言っても普通に暮らしてるぞ?まぁ、城にいた時にどんな生活してたかは知らんけど、料理や家事洗濯を手伝ってもらってるよ」
「ほう、あの面倒臭がり娘がそんなことを……城を出た時はどうなるかと心配するあまりに顎が取れてしまったけれど、成長してくれているのならよかったのかもしれないな」
ダイスがそう言って満足そうに笑い、カズもホッとして釣られて乾いた笑いをする。
しかしダイスはスッと笑うのを止め――
「で、君とレトナとの関係はどうなっている?」
――圧。
カズは今までいくつもの戦場や死線をくぐり抜けて、滅多なことでは怯まなくなっていた。
しかし感じたことのないタイプの威圧感にカズの顔に冷や汗が垂れる。
「……えっと?」
「あの子はああ見えて人見知りなんだ。一応話すことはできても心を許した相手でなければ自分から近付くことはしない。なのにあの子が今まで興味を示さなかった恋愛に興味を持つということは、つまり気になる相手が近くにいたと予測するんだが……ヴェルネ殿の家には男性は二人しかいない。だとしたらレトナが特殊な趣味でない限り興味を持つ男は君しかいないわけだが……違うかね?」
当たらずとも遠からずと言った彼の考察にカズは苦い顔をする。
「まぁ、レトナが何を思ったのかはわからないが……あぁ、白状しよう。俺とレトナは恋人の関係だ。つまり……うん、付き合ってる」
珍しく動揺したカズの姿を見たヴェルネがクスクスと笑い、ダイスは真顔で彼を見つめた後に溜め息を零す。
「カズ君……カズ君かぁ……まぁ、カズ君ならまだ……いやだが……」
ダイスが片手で頭を押さえてブツブツと呟き続け、そんな彼の様子にカズとヴェルネが顔を見合わせる。
そんな中、カズが最初に入って来た扉がパンッと勢いよく開き、嬉しそうに笑ったピアがそこにいた。
そして彼女は周囲を見渡し、ダイスを見つけるといやらしい笑いに変わり、宙を浮いた状態で円卓を飛び越えてダイスに抱き着きに行った。
「ダイちゃーんッ!」
「ぐほぉっ⁉」
ピアが抱き着いた勢いでダイスが椅子ごと後ろに倒れてしまった。
「「えぇ……」」
突然の出来事にカズとヴェルネが困惑し、円卓に座っていた他の者たちも目を丸くしてダイスたちに注目していた。
しかしそんなことを意にも返さないピアはダイスと共に倒れたまま愛おしそうに彼の顔に頬擦りしていた。
「ぴ、ピア……?珍しいな、退屈嫌いなお前がこの会議に出るなんて……」
「あはは、愛し合った相手と久しぶりに会ったっていうのに、最初に言うことがそれ?」
クスクスと笑いながらダイスから離れて起き上がるピア。彼女の言葉にカズが首を傾げる。
「『愛し合った相手』……?」
「ああ、そうだ」
カズの疑問にダイスが肯定しながらピアを浮かせ、お姫様抱っこして立ち上がる。
「彼女はピア。サキュバスの女王という立場にいる魔族であり、私の妻だ」
「ハァイ、骨ちゃんの奥さんでーす♪あなたは……ずいぶん怪しい仮面を被ってるけど、もしかして噂の人間かしら?」
ダイスの腕に抱かれたままの状態で問答するピアにカズは戸惑いながらも頷いて仮面を取る。
「あら、イケメン♪」
「そりゃどうも。色々やらかした人間のカズだ」
カズの答えにピアは一瞬キョトンとし、すぐにクスクスと笑う。
「思っていた通り、面白い人間さんみたいね♪ ……ねぇ、あなた――」
ピアが悪戯な笑みを浮かべ、ダイスの腕から離れる。
彼女が何をしようとしていたのか……それを知っていたようにダイスが「待て!」と慌てて止めようとしたが、すでにピアはカズの両頬に手を添えて至近距離で目を合わせていた。
「――私のものになるつもりはない?」
そう口にした彼女の眼の色が強い赤色に染まる。
「戦争とはまたゾッとしないな」
カズはそんな彼らを見渡しながら軽く笑って言う。
「そこに実行犯である俺を連れて『やらかしたのは人間なので私たちは関係ありません』って主張しようってことか」
「身も蓋もない言い方だが、端的に言ってしまえばそういうことだ。あとはそれで各代表が納得するかだが……それよりも一番の問題がある」
「……カズの処分ね?」
ライネルが深刻な表情をして言葉を詰まらせると、その続きをヴェルネが口にして「処分」という不穏な単語にカズ以外が重い空気になる。
「何、俺ってば処されちゃうの?」
「人的な被害が無いとはいえ、見方によっては種族同士の争いを誘発させようとしたとして罪を着させられる可能性がある」
「私たちが力になれればいいのだけれど……何もできなくてごめんなさい……」
フェイが暗い表情で謝るが、カズは微笑んで首を横に振る。
「自業自得だから仕方ないさ。まぁ、なるようになると思って行ってみるさ」
「でももし吊るし首とか死刑宣告でもされてしまったら……!」
「んー……それでもどうにかするしかないよな。俺だって死にたくないし、大人しく殺されるつもりもない」
「……いや、だからって暴れるのはやめてよ?そうならないためにあたしがいるわけなんだし、多分ダイス様も味方になって擁護してくれるはずだから。あんたがするべきは『勝てる相手にも暴力は振るわない』『余計なことは言わずにできるだけ「はい」か「いいえ」で答える』……この二つだけよ、わかった?」
念を押すように言うヴェルネにカズは頷きつつ「まるで大事な場面にアドバイスをする母親のようだな」と密かに思うのであった。
そして雑談もそこそこにヴェルネがその扉を開き、ジークを残してカズと共に部屋の中へと二人が踏み入れる。
扉の先には大きく広がった空間があり、中央の円卓をすでに先に来ていた数人が囲んで椅子に座っていた。
そしてその中にはカズたちの顔見知りも。
「やぁ、カズ君」
「おっす、ダイス」
顔見知りと出会い、フレンドリーに声をかけるカズの横腹をヴェルネが肘を打ち込む。
「今日はよろしくお願いいたします、ダイス様」
「ヴェルネ君にも苦労をかけてしまったね。ここまでの道のりも長かっただろう?とりあえず座って体だけでも休んでおきなさい」
ダイスがそう言って近くの椅子に手をかざすと、横に並んでいた空いている椅子二つが独りでに後ろに下がる。
ヴェルネが軽く会釈してダイスから一つ空けた椅子に座り、カズは躊躇無くその二人の間に座る。
「ところで会議が始まる前に一つ聞きたいことがあるんだがよろしいかね、カズ君」
「……え」
ダイスの異様な雰囲気に嫌な予感がしたカズが引きつった笑いで聞き返す。
「……我が娘、レトナは今どうしてるかな、と」
予想通りの質問に引きつった口がピクピクと痙攣する。
「どう……と言っても普通に暮らしてるぞ?まぁ、城にいた時にどんな生活してたかは知らんけど、料理や家事洗濯を手伝ってもらってるよ」
「ほう、あの面倒臭がり娘がそんなことを……城を出た時はどうなるかと心配するあまりに顎が取れてしまったけれど、成長してくれているのならよかったのかもしれないな」
ダイスがそう言って満足そうに笑い、カズもホッとして釣られて乾いた笑いをする。
しかしダイスはスッと笑うのを止め――
「で、君とレトナとの関係はどうなっている?」
――圧。
カズは今までいくつもの戦場や死線をくぐり抜けて、滅多なことでは怯まなくなっていた。
しかし感じたことのないタイプの威圧感にカズの顔に冷や汗が垂れる。
「……えっと?」
「あの子はああ見えて人見知りなんだ。一応話すことはできても心を許した相手でなければ自分から近付くことはしない。なのにあの子が今まで興味を示さなかった恋愛に興味を持つということは、つまり気になる相手が近くにいたと予測するんだが……ヴェルネ殿の家には男性は二人しかいない。だとしたらレトナが特殊な趣味でない限り興味を持つ男は君しかいないわけだが……違うかね?」
当たらずとも遠からずと言った彼の考察にカズは苦い顔をする。
「まぁ、レトナが何を思ったのかはわからないが……あぁ、白状しよう。俺とレトナは恋人の関係だ。つまり……うん、付き合ってる」
珍しく動揺したカズの姿を見たヴェルネがクスクスと笑い、ダイスは真顔で彼を見つめた後に溜め息を零す。
「カズ君……カズ君かぁ……まぁ、カズ君ならまだ……いやだが……」
ダイスが片手で頭を押さえてブツブツと呟き続け、そんな彼の様子にカズとヴェルネが顔を見合わせる。
そんな中、カズが最初に入って来た扉がパンッと勢いよく開き、嬉しそうに笑ったピアがそこにいた。
そして彼女は周囲を見渡し、ダイスを見つけるといやらしい笑いに変わり、宙を浮いた状態で円卓を飛び越えてダイスに抱き着きに行った。
「ダイちゃーんッ!」
「ぐほぉっ⁉」
ピアが抱き着いた勢いでダイスが椅子ごと後ろに倒れてしまった。
「「えぇ……」」
突然の出来事にカズとヴェルネが困惑し、円卓に座っていた他の者たちも目を丸くしてダイスたちに注目していた。
しかしそんなことを意にも返さないピアはダイスと共に倒れたまま愛おしそうに彼の顔に頬擦りしていた。
「ぴ、ピア……?珍しいな、退屈嫌いなお前がこの会議に出るなんて……」
「あはは、愛し合った相手と久しぶりに会ったっていうのに、最初に言うことがそれ?」
クスクスと笑いながらダイスから離れて起き上がるピア。彼女の言葉にカズが首を傾げる。
「『愛し合った相手』……?」
「ああ、そうだ」
カズの疑問にダイスが肯定しながらピアを浮かせ、お姫様抱っこして立ち上がる。
「彼女はピア。サキュバスの女王という立場にいる魔族であり、私の妻だ」
「ハァイ、骨ちゃんの奥さんでーす♪あなたは……ずいぶん怪しい仮面を被ってるけど、もしかして噂の人間かしら?」
ダイスの腕に抱かれたままの状態で問答するピアにカズは戸惑いながらも頷いて仮面を取る。
「あら、イケメン♪」
「そりゃどうも。色々やらかした人間のカズだ」
カズの答えにピアは一瞬キョトンとし、すぐにクスクスと笑う。
「思っていた通り、面白い人間さんみたいね♪ ……ねぇ、あなた――」
ピアが悪戯な笑みを浮かべ、ダイスの腕から離れる。
彼女が何をしようとしていたのか……それを知っていたようにダイスが「待て!」と慌てて止めようとしたが、すでにピアはカズの両頬に手を添えて至近距離で目を合わせていた。
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