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お互い様?

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「えっと……『治療を行うには魔力の流れを視認する力、「魔流視」が使えるのが前提である』……魔流視?」

 治療するための説明文の中に聞き覚えのない単語が出てきて困惑する。

「魔力の流れを目で直接見ることができるやつだな。一応専用の魔道具があるらしいが、高い上に使い切りっていう燃費が悪いから、そういう能力を持ってる奴は重宝されるんだ」

「それって鍛えれば会得できるものか?」

「そんな話は聞いたことないな。でなければ貴重であるはずがないだろうし、方法があったとしてもかなり難しいんじゃないか?」

 それはマズイ。初っ端からその魔流視が使えなくて詰みというのだけはやめてほしい。
 スマホの画面を少しだけ下にスクロールすると「魔流視の使い方」と項目があったので早速タップしてみた。

 ――「身体能力の一部強化の要領で目に魔力を流して強化する。※魔力が多過ぎると失明や眼球破裂の恐れがあるため最初は微量で慣らしていく必要がある」

 ……眼球破裂ってこっわ。
 しかし一応その方法もわかったので前のページに戻り、病気の治療法の続きを見る。

 ――「魔力多量漏洩の根本的な治療は原因となっている身体の一部に外部から接触し、魔力を注入して魔力回路を正常な形へと戻す。その際に魔流視と同様、神経をなぞるように慎重に流し込まなくてはならない」

 つまりまずは目を強化する技術を磨いていけば治療が可能になるってことか?なのだとすれば俺でも治療が可能ということになる。
 よかった、魔法じゃ治療できないような難病じゃなくて……
 ホッとしているのも束の間、ユースティックたちが期待の目を俺に向けてきていた。

「それで……治療法はなんて書いてあるんだ?」

 かなり必死な様子のユースティックと前のめりにスマホをガン見してくるアイラ。

「まぁ……それほど難しいことは書いてない。とりあえず魔流視ってのを持っているのが前提の治療法みたいだ。ユースティックの知り合いにできる奴はいるか?」

「いや、いない。元々俺の知り合いが少ないというのもあるが、持ってる奴が珍しいくらいだしな。そもそもその魔流視で治せる病気があること自体が誰も知らない情報だと思うぞ?」

 首を横に振って答えるユースティック。そんなもんかと溜め息が零れる。

「だとすれば……俺がその魔流視ってやつを習得するしかない、と」

「できるのか?やってくれるのか⁉」

 興奮が収まらないユースティックが再び俺の両肩を掴んで前後に揺らす。やめい。

「お兄ちゃん、落ち着いて!まずはその人逃がさないようにドア塞いで!」

 妹の方はまともだと思ってたのになんでそんな犯罪的な発想するの?むしろこっちの方が猟奇的でちょっと怖いんだけど……

「落ち着け二人とも。治療があるならちゃんとやってやるから……魔流視の会得は俺の頑張り次第だけど、完全に習得するまで少し待っててくれ」

「もちろんだ!」

 ユースティックはそう言うと今まで見せたことの無い笑みを浮かべてアイラの方へ向き、互いに抱き合った。

「医者にもサジを投げられた病気が治るなんて……こんなにも嬉しかったことがあるか!」

「よかった……よかったよぉ、お兄ちゃんっ……!」

 涙を流して喜び合う二人。そんな光景を見せられて俺も「失敗してしまうかも」なんて考えてる場合じゃないと感じてしまう。
 ……でもちょっと責任重大過ぎやしない?

――――
―――
――


「ふーん、魔流視……」

 ユースティックたちとは一度別れ、ルルアと合流してデートを開始して直前までの経緯を話した。
 その中でも魔流視に興味を持ったようだった。

「ああ、それがあれば相手が魔法を使おうとしているのが目に見えてわかるらしい。今回のこともそうだが、治療にも使えることがわかった。技術としてあって損はないものだ」

「どんな見え方するのかちょっと気になるね?」

「……だからって試すなよ?」

 先に釘を刺すとバレたかとでも言いたげにベッと舌を出すルルア。失敗すればどうなるかってのも言ったはずなのになんで率先してやろうとするのか……

「でもお兄ちゃんはやるんでしょ?」

「まぁな。いざとなれば魔法で回復させればいいし」

「それならルルアがやってもよくない?」

 ルルアにそう言い返されて何も言えなくなる。
 たしかに回復できてしまうなら自分も、と言われればそれまで。それ以上はただの過保護になる。いや、過保護が悪いわけじゃないんだけど……やっぱりどうしても自分の子供のように心配してしまう。

「まずは俺からってことでな」

「まぁ、やっちゃうんだけどね」

「え?」

 軽い感じでルルアがそう言い、彼女を見ると片目を閉じてそこから血を流していた。

「ちょっ……」

「結構難しいし痛いね、これ」

 焦る俺を他所にルルアはあまり気にした様子もなく、閉じていた目を開けると真っ赤に充血していた。
 下手なホラーより心臓に悪いからやめてほしいんだが……なんて思っているとルルアの目の赤さがみるみるうちに引いていく。

「……勝手に治った?」

「吸血鬼ってそれぞれによるけど自然治癒がかなり高いんだよ。ルルアの場合は魔力がある限り不老不死に近い状態なんだ。だから怪我はそんなに心配しなくてもいいんだよ……子供みたいに泣くわけでもないしね。ルルアは見た目通りのか弱い女の子じゃないんだよ♪」

 そう言って自慢げに笑いウィンクするのだった。治るとしても痛みは感じるだろうに……
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