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どこまでも広いダンジョン

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「「や、あぁぁぁぁぁっ⁉」」

 巨大な竜の姿になったヤトの背中に乗ったヴェルネとモモが悲鳴っぽい声を上げていた。
 二人共風圧の影響を受けて今にも吹き飛ばされそうな勢いだ。
 一応これでもクロニクから事前に教えてもらった風の魔法で風圧を軽減してるのだが、それでも風が強く感じる。もし魔法を使ってなかったらヴェルネたちは吹き飛ばされてるんじゃないかと思う。
 そしてクロニクとラウはというと、竜化したヤトの横にピッタリくっ付いて飛んでいた。

「……スゲー好かれてんな」

「誠に遺憾だ……我は子供なんぞを娶る趣味はない」

「なんだかすまない…」

 相手に興味がないことを示すヤトだが、ラウは気にせずすり寄っていた。
 人間に例えると「将来おじさんと結婚する!」と言うような……まるで娘や姪のようだ。
 しかしそれらを置いておくとしても、この砂漠地帯には本当に何もない。
 魔物がいるかと思いきや本当に何もなく、草木や岩すらないまっ平らな平地だった。にも関わらず驚くほど何も見付からない。
 何の障害物もないこの場所なら、数キロ先までしっかり視認できる程度の視力を持っている。それでも何もないことが確認できるのだ。

「まさに現実的じゃない、か。ダンジョンらしいと言えばらしいが……」

 まさかすでに異世界に来てるこの身でさらに現状を非現実的だと感じるとは思わなかったよ……
 あるいは俺が見逃してる何かがあるのか……?

「ヤトは何か感じるか?」

「特別な気配は何も。砂中に潜んでいる魔物の気配はいくつかあるが、どれも普通の魔物だ。超術のような特殊な力を持つ者がいれば我が気付くがそれもない」

 ヤトは自分の能力に自信があるように言う。だがすでに俺の何千倍かもあるかわからない年数をこの世界で生きている竜の言葉は信用していいだろう。

「そうか……なら次の階に進むか?」

「その案には賛成だが、こんな広大な砂漠でどうやって次の扉を探す?この感じなら次に進むための扉も地面にあると考えていいと思うが……事前に誰かが挑戦していなければ、扉は砂に埋もれているぞ?」

 クロニクの言葉から考察するなら扉のあるなしで誰がどこまで侵入したかがわかるってことだ。
 そして見渡す限りでわかるのは、入口付近以外で扉の出現の確認はできなかった。つまりそれ以上は誰も進んでいないということにもなる。

「我も扉がどこにあるか自体は察知できるが区別がつかん。どうする、この辺り一帯全部吹き飛ばすか?」

「それはやめ……いや、それもありか?どうせ人の気配がないんだし。魔物倒して扉も現れて一石二鳥ってことで」

「今回に限ってはそれでいいとあたしも思うわ。でもこの広さだし、せめて場所の目星を付けておけないかしら……ねぇ?」

 ヤトが速度を緩めたため、話す余裕が出てきたヴェルネがそう言い、何かを期待した目を俺に向けてきた。
 あー……これはアレを期待してる目だな。

「たたらたったら~、ス~マ~ホ~♪」

「何そのリズム……」

 口ずさんだ道具を出す時の定番なリズムをヴェルネにツッコミを入れられるが、それを流しつつスマホの画面を見る。
 するとなぜかスマホの画面はすでに点いており、マップとコンパスが表示されていた。

「……なんかちょいちょい勝手に画面が表示されることがあるな。不調か……?」

 おいおい、こんな携帯会社のない異世界で勘弁してくれよ……?
 だが……不調にしては必要な画面が勝手に表示されてる気がする。まるでスマホに意思があってオススメされてるような……?

「……こっちに来てから不思議な体験ばかりだったからそんな気がしちまうのかね」

「何が?」

 俺の呟きにヴェルネが反応したが「いや、なんでもない」と返してスマホの情報をヤトに伝えて移動する。

「ねぇ、他の扉とかは探索しないの?私ダンジョンって宣伝はするけど、入るのは初めてだから色々見てみたいんだけど」

 なんてモモが呑気なことを口にする。

「お前なぁ……狙われてるかもしれないって自覚はあるのか?」

「わかってる!でも気になるものは気になるんだからしょうがないじゃない!それにせっかくこんな強そうなメンバーが集まってるんだし、ちょっとくらいそう思ってもよくない⁉」

 自分が危ない目にあったというのに、まるで他人事のモモの発言にクロニクが溜め息を吐いて呆れていた。

「ヴェルネはどう思う?」

「正直さっさと犯人ぶっ飛ばしてゆっくりしたい……涼しいところで寝たい……」

 一応周囲が砂漠なこともあって、その猛暑に負けそうになっていたヴェルネ。そんな彼女に水と風を合わせた冷風を放ち涼ませる。
 ついでな感じでモモもヴェルネの横に移動してその恩恵を受けようとし、さらに彼女たちは魔法で水の球を作り出して飲み物のように口に入れて飲んでいた。

「……どちらにしろ、あまり長居できる場所でもなさそうだしな。さっさと進むか」

「さんせー……扉の中だったら今よりマシにはなるでしょ」

 モモが完全にこの場から逃げたい一心でそう口にし、ヴェルネとクロニクも頷いて同意した。
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