165 / 331
どこまでも広いダンジョン
しおりを挟む
「「や、あぁぁぁぁぁっ⁉」」
巨大な竜の姿になったヤトの背中に乗ったヴェルネとモモが悲鳴っぽい声を上げていた。
二人共風圧の影響を受けて今にも吹き飛ばされそうな勢いだ。
一応これでもクロニクから事前に教えてもらった風の魔法で風圧を軽減してるのだが、それでも風が強く感じる。もし魔法を使ってなかったらヴェルネたちは吹き飛ばされてるんじゃないかと思う。
そしてクロニクとラウはというと、竜化したヤトの横にピッタリくっ付いて飛んでいた。
「……スゲー好かれてんな」
「誠に遺憾だ……我は子供なんぞを娶る趣味はない」
「なんだかすまない…」
相手に興味がないことを示すヤトだが、ラウは気にせずすり寄っていた。
人間に例えると「将来おじさんと結婚する!」と言うような……まるで娘や姪のようだ。
しかしそれらを置いておくとしても、この砂漠地帯には本当に何もない。
魔物がいるかと思いきや本当に何もなく、草木や岩すらないまっ平らな平地だった。にも関わらず驚くほど何も見付からない。
何の障害物もないこの場所なら、数キロ先までしっかり視認できる程度の視力を持っている。それでも何もないことが確認できるのだ。
「まさに現実的じゃない、か。ダンジョンらしいと言えばらしいが……」
まさかすでに異世界に来てるこの身でさらに現状を非現実的だと感じるとは思わなかったよ……
あるいは俺が見逃してる何かがあるのか……?
「ヤトは何か感じるか?」
「特別な気配は何も。砂中に潜んでいる魔物の気配はいくつかあるが、どれも普通の魔物だ。超術のような特殊な力を持つ者がいれば我が気付くがそれもない」
ヤトは自分の能力に自信があるように言う。だがすでに俺の何千倍かもあるかわからない年数をこの世界で生きている竜の言葉は信用していいだろう。
「そうか……なら次の階に進むか?」
「その案には賛成だが、こんな広大な砂漠でどうやって次の扉を探す?この感じなら次に進むための扉も地面にあると考えていいと思うが……事前に誰かが挑戦していなければ、扉は砂に埋もれているぞ?」
クロニクの言葉から考察するなら扉のあるなしで誰がどこまで侵入したかがわかるってことだ。
そして見渡す限りでわかるのは、入口付近以外で扉の出現の確認はできなかった。つまりそれ以上は誰も進んでいないということにもなる。
「我も扉がどこにあるか自体は察知できるが区別がつかん。どうする、この辺り一帯全部吹き飛ばすか?」
「それはやめ……いや、それもありか?どうせ人の気配がないんだし。魔物倒して扉も現れて一石二鳥ってことで」
「今回に限ってはそれでいいとあたしも思うわ。でもこの広さだし、せめて場所の目星を付けておけないかしら……ねぇ?」
ヤトが速度を緩めたため、話す余裕が出てきたヴェルネがそう言い、何かを期待した目を俺に向けてきた。
あー……これはアレを期待してる目だな。
「たたらたったら~、ス~マ~ホ~♪」
「何そのリズム……」
口ずさんだ道具を出す時の定番なリズムをヴェルネにツッコミを入れられるが、それを流しつつスマホの画面を見る。
するとなぜかスマホの画面はすでに点いており、マップとコンパスが表示されていた。
「……なんかちょいちょい勝手に画面が表示されることがあるな。不調か……?」
おいおい、こんな携帯会社のない異世界で勘弁してくれよ……?
だが……不調にしては必要な画面が勝手に表示されてる気がする。まるでスマホに意思があってオススメされてるような……?
「……こっちに来てから不思議な体験ばかりだったからそんな気がしちまうのかね」
「何が?」
俺の呟きにヴェルネが反応したが「いや、なんでもない」と返してスマホの情報をヤトに伝えて移動する。
「ねぇ、他の扉とかは探索しないの?私ダンジョンって宣伝はするけど、入るのは初めてだから色々見てみたいんだけど」
なんてモモが呑気なことを口にする。
「お前なぁ……狙われてるかもしれないって自覚はあるのか?」
「わかってる!でも気になるものは気になるんだからしょうがないじゃない!それにせっかくこんな強そうなメンバーが集まってるんだし、ちょっとくらいそう思ってもよくない⁉」
自分が危ない目にあったというのに、まるで他人事のモモの発言にクロニクが溜め息を吐いて呆れていた。
「ヴェルネはどう思う?」
「正直さっさと犯人ぶっ飛ばしてゆっくりしたい……涼しいところで寝たい……」
一応周囲が砂漠なこともあって、その猛暑に負けそうになっていたヴェルネ。そんな彼女に水と風を合わせた冷風を放ち涼ませる。
ついでな感じでモモもヴェルネの横に移動してその恩恵を受けようとし、さらに彼女たちは魔法で水の球を作り出して飲み物のように口に入れて飲んでいた。
「……どちらにしろ、あまり長居できる場所でもなさそうだしな。さっさと進むか」
「さんせー……扉の中だったら今よりマシにはなるでしょ」
モモが完全にこの場から逃げたい一心でそう口にし、ヴェルネとクロニクも頷いて同意した。
巨大な竜の姿になったヤトの背中に乗ったヴェルネとモモが悲鳴っぽい声を上げていた。
二人共風圧の影響を受けて今にも吹き飛ばされそうな勢いだ。
一応これでもクロニクから事前に教えてもらった風の魔法で風圧を軽減してるのだが、それでも風が強く感じる。もし魔法を使ってなかったらヴェルネたちは吹き飛ばされてるんじゃないかと思う。
そしてクロニクとラウはというと、竜化したヤトの横にピッタリくっ付いて飛んでいた。
「……スゲー好かれてんな」
「誠に遺憾だ……我は子供なんぞを娶る趣味はない」
「なんだかすまない…」
相手に興味がないことを示すヤトだが、ラウは気にせずすり寄っていた。
人間に例えると「将来おじさんと結婚する!」と言うような……まるで娘や姪のようだ。
しかしそれらを置いておくとしても、この砂漠地帯には本当に何もない。
魔物がいるかと思いきや本当に何もなく、草木や岩すらないまっ平らな平地だった。にも関わらず驚くほど何も見付からない。
何の障害物もないこの場所なら、数キロ先までしっかり視認できる程度の視力を持っている。それでも何もないことが確認できるのだ。
「まさに現実的じゃない、か。ダンジョンらしいと言えばらしいが……」
まさかすでに異世界に来てるこの身でさらに現状を非現実的だと感じるとは思わなかったよ……
あるいは俺が見逃してる何かがあるのか……?
「ヤトは何か感じるか?」
「特別な気配は何も。砂中に潜んでいる魔物の気配はいくつかあるが、どれも普通の魔物だ。超術のような特殊な力を持つ者がいれば我が気付くがそれもない」
ヤトは自分の能力に自信があるように言う。だがすでに俺の何千倍かもあるかわからない年数をこの世界で生きている竜の言葉は信用していいだろう。
「そうか……なら次の階に進むか?」
「その案には賛成だが、こんな広大な砂漠でどうやって次の扉を探す?この感じなら次に進むための扉も地面にあると考えていいと思うが……事前に誰かが挑戦していなければ、扉は砂に埋もれているぞ?」
クロニクの言葉から考察するなら扉のあるなしで誰がどこまで侵入したかがわかるってことだ。
そして見渡す限りでわかるのは、入口付近以外で扉の出現の確認はできなかった。つまりそれ以上は誰も進んでいないということにもなる。
「我も扉がどこにあるか自体は察知できるが区別がつかん。どうする、この辺り一帯全部吹き飛ばすか?」
「それはやめ……いや、それもありか?どうせ人の気配がないんだし。魔物倒して扉も現れて一石二鳥ってことで」
「今回に限ってはそれでいいとあたしも思うわ。でもこの広さだし、せめて場所の目星を付けておけないかしら……ねぇ?」
ヤトが速度を緩めたため、話す余裕が出てきたヴェルネがそう言い、何かを期待した目を俺に向けてきた。
あー……これはアレを期待してる目だな。
「たたらたったら~、ス~マ~ホ~♪」
「何そのリズム……」
口ずさんだ道具を出す時の定番なリズムをヴェルネにツッコミを入れられるが、それを流しつつスマホの画面を見る。
するとなぜかスマホの画面はすでに点いており、マップとコンパスが表示されていた。
「……なんかちょいちょい勝手に画面が表示されることがあるな。不調か……?」
おいおい、こんな携帯会社のない異世界で勘弁してくれよ……?
だが……不調にしては必要な画面が勝手に表示されてる気がする。まるでスマホに意思があってオススメされてるような……?
「……こっちに来てから不思議な体験ばかりだったからそんな気がしちまうのかね」
「何が?」
俺の呟きにヴェルネが反応したが「いや、なんでもない」と返してスマホの情報をヤトに伝えて移動する。
「ねぇ、他の扉とかは探索しないの?私ダンジョンって宣伝はするけど、入るのは初めてだから色々見てみたいんだけど」
なんてモモが呑気なことを口にする。
「お前なぁ……狙われてるかもしれないって自覚はあるのか?」
「わかってる!でも気になるものは気になるんだからしょうがないじゃない!それにせっかくこんな強そうなメンバーが集まってるんだし、ちょっとくらいそう思ってもよくない⁉」
自分が危ない目にあったというのに、まるで他人事のモモの発言にクロニクが溜め息を吐いて呆れていた。
「ヴェルネはどう思う?」
「正直さっさと犯人ぶっ飛ばしてゆっくりしたい……涼しいところで寝たい……」
一応周囲が砂漠なこともあって、その猛暑に負けそうになっていたヴェルネ。そんな彼女に水と風を合わせた冷風を放ち涼ませる。
ついでな感じでモモもヴェルネの横に移動してその恩恵を受けようとし、さらに彼女たちは魔法で水の球を作り出して飲み物のように口に入れて飲んでいた。
「……どちらにしろ、あまり長居できる場所でもなさそうだしな。さっさと進むか」
「さんせー……扉の中だったら今よりマシにはなるでしょ」
モモが完全にこの場から逃げたい一心でそう口にし、ヴェルネとクロニクも頷いて同意した。
0
お気に入りに追加
396
あなたにおすすめの小説
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
「君を愛せない」と言った旦那様の様子がおかしい
白羽鳥(扇つくも)
恋愛
「すまない、僕はもう君の事を愛してあげられないんだ」
初夜にそう言われた私はカッとなって旦那様を部屋から叩き出した。
そっちがその気なら、私だって嫌いになってやるわ! 家の事情で二年は離婚できないけれど、後からどれだけ謝って優しくしてくれたって許してあげないんだから!
そうして二年後に白い結婚が認められ、以前からアプローチしてくれた王子様と再婚した私だったが、まさかその後、旦那様と二度と会えなくなるなんて――
※「君を愛せない」系のアンチテーゼ。バッドエンドですがこういうケースもあり得るかなと。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる