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決勝戦の相手

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【開始からどれほど時間が経っただろうか?仮面男VS荒くれ者どもの激しい攻防は未だに続いているッ!いや、攻防とは言えないほど一方的な攻撃を参加者たちが行っている。がしかし、仮面の男は防戦一方というよりわざと攻撃していないように見えるぞ!時間稼ぎか~?】

 参加者だけでなくカズにも挑発的な実況で煽るグルド。
 しかしそれを聞いたカズは何かに気付いたかのようにハッとする。

「あっ、そうだった。いつの間にかいつもやってるジルとの組手をしてた時の感覚になってたな……よし」

 そう言うとカズは飛び蹴りをしてきた一人の女性のその足を掴み、勢いを付けて放り投げた。
 悲鳴を上げる女性が飛ばされた先には魔法を放つ者が数人おり、落下と同時に彼らが巻き込まれてしまい、全員消えてリタイアする。
 その後すぐに他の参加者たちが取り囲むが、カズは自分の足元を地団駄をするかのように強く蹴った。

「――崩脚」

 蹴られた地面はヒビ割れ、地震のように大きく揺れる。

【は……ハアァァァァァッ⁉ え、地面が揺れ……アイツ今、地面を蹴っただけ揺らしたか?なんだその化け物じみた技は⁉ 会場にいるお客様は手元におかしやジュースがある場合は零さないよう気を付けてくれよ!】

 驚き動揺しているかと思えば注意喚起を促すグルド。
 その間に地面の揺れでバランスを崩した者たちをカズが殴って吹き飛ばし、次々とリタイアさせていく。
 肘、膝、足払い、発勁、浸透勁、貫手、熊手、そして相手の体に指を突き刺して硬直させるなどあらゆる技を用いて参加者たちの数を減らしていった。

【呆気無い!実に呆気無い!否、勘違いなさるな観客お客様の皆様よ!呆気無く見えるのはそれほど仮面の男が強過ぎるからだッ!ほとんど万全だった荒くれ者どもの数も半分を切っている!あの男を止める猛者はいないのか!?】

 グルドはそう実況するも挑む者たちは敗れていき、結果……

【あぁ、ついに……ついに仮面男に挑む奴ら全員が場外へッ!ステージに立っているのは仮面男のみとなってしまったァァァァッ!開始からたった数十分で完全決着ゥゥゥッ!!】

 グルドの勝利宣言に会場全体が震えるほど沸き立った。
 その勝利に驚き喜ぶ者、八百長だと野次を飛ばす者、強さに魅入られ黄色い歓声を飛ばす者など様々。
 その声援に対してカズは頬を掻いて「なんだかなー」と少し照れ臭そうにする。

【さぁ、少々早めに終わってしまったが、まだ今回の目玉が残ってるぜぇ!みんなお待ちかね、最終決勝ステージ……VSホワイトドラゴンだァァァッ!!!!】

 グルドが音割れするほどの声を上げると観衆も今まで以上の興奮で盛り上がる。
 そしてカズ以外がいなくなったステージ上で大きな扉が開き、そこから白い竜が姿を現す。

「ヴヴゥ……!」

 竜と言ってもヤトが奴隷商人のところにいた時のような大きさではなく、人の姿になってからヴェルネたちに見せた時ほどの小ささでしかなかった。
 しかし竜を初めて見る者からすれば見上げるほどあり、それが威圧的に感じてしまうだろう。
 加えて竜の気迫というのは例え幼くとも対峙した者に畏怖などを与え、気絶させたりしてしまうほどである。
 そんな竜が周囲をキョロキョロと見渡し、標的であるカズを見据えると上を見上げて咆哮を発した。
 竜の咆哮は大気を震わせ、観衆はそれを恐れるどころか喜びさらに熱狂して盛り上がる。

【何度見ても見惚れてしまうほど美しく力強いその姿!そこにいるだけで震えてしまう威圧感!並みの魔物とは訳が違うのは一目瞭然!それもそうだろう、それが竜という生き物であり、本来であれば魔物とは一線を画さなければならない存在!少し前までは竜は架空の生物と言われ神格化までされていたが、最近では目撃されることが報告されているほど活発に行動するようになり、こうやって人前に出てくるようにまでなった!それが今、バトルトーナメントの決勝戦という形で登場したホワイトドラゴン!本来一対一で勝てるような相手ではなく、これまでも数多の参加者たちの優勝を阻んできたが、今回は常識外れの実力者が挑む!これほど熱い展開は今後ないだろうと誰もが予想するよな⁉ ってなわけでバトルトーナメント決勝戦……開始ィィィッ!!】

 グルドの合図と同時に白竜がカズに向かってステージ半分を覆うほどの火を口から噴いたのだった。
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