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横取りしたものは横取りされる
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ギギギと動く人型をした機械の魔物。
アウタルがその魔物に向けて腕から何かを放ち、それが胴体を貫いた。
さらに先端部が釣竿の「返し」のように開いて引っ掛かる。
「フッ!」
アウタルは強引に引っ張り、機械ごと引き寄せて殴った。
普通機械とか硬いものを殴れば手を痛めるはずだけど、逆に機械の方が粉々に砕けてしまう。脳筋もここまでくると清々しいよね。
俺たちはボス部屋を後にして奥に進んでいた。もちろんミミィたちとは何も言わずオサラバしている。
宝箱を全て開くと部屋の奥に下り階段が出現したので、今はその降りたところにいる。
「……『コレ』凄くいい。カズの言う通りにしてよかった」
アウタルは腕に着けてあるものを見ながら言う。
彼女の腕に付いてるソレはさっき開けた六つ目の宝箱から出てきたもの。
――「フックショット……腕に着ける機械仕掛けのブレスレッド。遠くに飛ばして先端部を開いて引っ掛けることにより空中での移動が可能になり、逆に物を引き寄せることもできる。先端部のフックと繋ぐ紐は特殊な素材によりかなりの伸縮性があると共に強靭であり、引き千切れることはそうそうない。先端部は微量の魔力によって傘のように開閉することができ、射出時の貫通力は高く攻撃へ転用することも可能」
……と、少し長めの説明文だが要約すれば移動兼攻撃や攻撃補助することができる有能な道具……いや、もう立派な武器とも言えるな。
何より「微量の魔力によって」という文を見て、魔力を多く持たない特徴を持つ獣人でも扱えるんじゃないかと思ったのだ。
そしてその考えは的中したようで、身体能力が高いアウタルは早速使いこなせてるようだった。
「喜んでくれたようで何よりだ。それより時間があるならもう少し進んでもいいか?さっき一つは貰ったけど、せめてもう一つくらいはお土産にしたいからな」
「あぁ、付き合うぞ。こういう特別な間柄の男と女が出歩くことを「でーと」というのだろう?」
どこで覚えたのか微妙に違った知識を口にするアウタル。人の価値観によっては違うとも言い難いが、少なくとも俺はこんな殺伐としたダンジョンの中を探索することをデートとは呼びたくない。
アウタルがまた出てきた機械の魔物をワンパンで粉砕してる光景を見てそう思った。
「しかしこのダンジョンはずっとこの調子なのか?形は変わってるけど機械の奴しか出てこないけど」
「扉を越えたことないからわからない。多分、誰もこの先に足を踏み入れてない」
「なんでそんなことわかるんだ?」
「さっきの部屋で戦った大蛇モドキ……ダンジョンのアレが倒されればもう出てこないと聞いた」
ボスを倒せるのは一度だけってことか?ますますゲームじみてるな、このダンジョンは。
「なるほど……だからか」
俺は納得して呟き、動き出そうとするアウタルを手で制して後ろから走って近付いてくる奴を半身で躱し、裏拳で叩きのめす。
ナイフを持って俺を殺そうと突き刺しに来たみたいだが、あまりにも雑で酷い。ここに来るまでの魔物にやられなかったのが不思議なくらいだ。
そんな実力の奴がボス部屋を通過してここにいるということは、戦わずにいられたということだ。
俺が叩きのめした奴は魔族の男で、地面に突っ伏し白目を向いて気絶していた。
恐らくボスを倒した報酬を横取りしようとしたのだろう。不意打ちすれば奪えると……ありがちな浅ましい考えだ。
アイツにギリギリ勝って弱ったところを……というのならわかるけど、そうじゃない余裕を持った格上相手に挑むのは阿呆のやることだ。
そしてその阿呆はコイツ以外にもいるらしい。それぞれ町では見ない顔をしてる気がするけど、他の町から来た奴らか?
あの町にいた奴なら少なからず警戒するはずだけど、コイツらは俺たちを襲う気満々で引く気がない。
「おうおう、俺の仲間をやってくれちまったなぁ?これでお前は俺たちに殺されても文句は言えねぇぞ!」
体格の良い一人の男魔族がそう言って紫色の短剣を構える。
なんだコイツ、自分から仕掛けさせといて……面倒臭い当たり屋みたいなこと言いやがったな。
……いや、それよりも気になることがある。
「お前ら……その武器と防具はどうした?」
奴らが持っていたのは、さっき宝箱から出たものばかりだった。アレらはミミィたちが取れるように俺がそのまま放置したもののはずだが……
すると先頭の男魔族が笑い始め、周囲にいる奴らもゲラゲラと笑い声を上げる。
「ガキ共に譲って貰ったんだよ、『自分たちには分不相応なので差し上げます』っつってな!それと……」
俺じゃなくてもわかる嘘を口にする男魔族に吐き気を覚える。しかも奴らの中に見知った顔が混じってることにも気付く。
俺が言う前に取り巻きたちが彼女を前へ見せ付けるように突き出した。
「うぅ……!」
それはさっきまで一緒にいたとは思えないほど服を剥ぎ取られてボロボロにされたミミィだった。
「俺たちが欲しがったらこの嬢ちゃんも渡してくれたぜ?自分の身可愛さに泣き叫びながら逃げ出してなぁ……?」
俺魔族は下卑た笑いを浮かべると、視線をこっちに向けたままミミィの頬を味わうようにゆっくり舐める。
「つーわけで、お前が持って行ったもんも置いてけや。その女と一緒にな」
「その女」というのが横にいるアウタルのことだとすぐにわかる。
やれやれと思いつつ俺はそれを見て……ほくそ笑んだ。
「……何笑ってんだ!!」
「いやなに、絵に描いたようなクズでやりやすいなって思っただけだよ」
「な――」
奴らが何かをする前にミミィを掴んでいる魔族の顔を鷲掴みにする。そしてそのまま魔法を発動する。
ヴェルネが最初に俺へ使ったものと同じ、広範囲を凍らせた魔法を。
十人規模あった魔族たちは一瞬のうちに通路ごと氷塊に包まれ、ほとんどが全滅する。
残ったのは俺たちを脅してきた男魔族一人だけ。その男もバランスを崩してその場で尻もちを突く。
「ぐっ……足が動かっ、なんで……ッ!?」
足を動かせずにもがく男。それもそうだ、さっきの魔法で男の足も同時に凍らせていたのだから。
男はパニックになりながら逃げようとする。あぁ、そんなに動いたら――
――パキンッ!
「よ、よし、動けるように……アレ?」
動けるようになったことで逃げられると思った男は立ち上がろうとする。
しかし立ち上がれず違和感を覚えた男が自分の足を見る。その先にあった足は氷漬けになっていた箇所から千切れて分離してしまっていた。
その事実が奴の呼吸を乱していく。
「た、たすけ……」
完全に戦意喪失して、さっきまで殺そうとしていた相手に助けを求める男……ソイツの顔に手をかざす。
男は一瞬のうちに氷漬けになり、道を閉ざしていた氷が全て粉々に砕ける。
そこには元々何も無かったかのように氷の破片だけが残ったのだった。
アウタルがその魔物に向けて腕から何かを放ち、それが胴体を貫いた。
さらに先端部が釣竿の「返し」のように開いて引っ掛かる。
「フッ!」
アウタルは強引に引っ張り、機械ごと引き寄せて殴った。
普通機械とか硬いものを殴れば手を痛めるはずだけど、逆に機械の方が粉々に砕けてしまう。脳筋もここまでくると清々しいよね。
俺たちはボス部屋を後にして奥に進んでいた。もちろんミミィたちとは何も言わずオサラバしている。
宝箱を全て開くと部屋の奥に下り階段が出現したので、今はその降りたところにいる。
「……『コレ』凄くいい。カズの言う通りにしてよかった」
アウタルは腕に着けてあるものを見ながら言う。
彼女の腕に付いてるソレはさっき開けた六つ目の宝箱から出てきたもの。
――「フックショット……腕に着ける機械仕掛けのブレスレッド。遠くに飛ばして先端部を開いて引っ掛けることにより空中での移動が可能になり、逆に物を引き寄せることもできる。先端部のフックと繋ぐ紐は特殊な素材によりかなりの伸縮性があると共に強靭であり、引き千切れることはそうそうない。先端部は微量の魔力によって傘のように開閉することができ、射出時の貫通力は高く攻撃へ転用することも可能」
……と、少し長めの説明文だが要約すれば移動兼攻撃や攻撃補助することができる有能な道具……いや、もう立派な武器とも言えるな。
何より「微量の魔力によって」という文を見て、魔力を多く持たない特徴を持つ獣人でも扱えるんじゃないかと思ったのだ。
そしてその考えは的中したようで、身体能力が高いアウタルは早速使いこなせてるようだった。
「喜んでくれたようで何よりだ。それより時間があるならもう少し進んでもいいか?さっき一つは貰ったけど、せめてもう一つくらいはお土産にしたいからな」
「あぁ、付き合うぞ。こういう特別な間柄の男と女が出歩くことを「でーと」というのだろう?」
どこで覚えたのか微妙に違った知識を口にするアウタル。人の価値観によっては違うとも言い難いが、少なくとも俺はこんな殺伐としたダンジョンの中を探索することをデートとは呼びたくない。
アウタルがまた出てきた機械の魔物をワンパンで粉砕してる光景を見てそう思った。
「しかしこのダンジョンはずっとこの調子なのか?形は変わってるけど機械の奴しか出てこないけど」
「扉を越えたことないからわからない。多分、誰もこの先に足を踏み入れてない」
「なんでそんなことわかるんだ?」
「さっきの部屋で戦った大蛇モドキ……ダンジョンのアレが倒されればもう出てこないと聞いた」
ボスを倒せるのは一度だけってことか?ますますゲームじみてるな、このダンジョンは。
「なるほど……だからか」
俺は納得して呟き、動き出そうとするアウタルを手で制して後ろから走って近付いてくる奴を半身で躱し、裏拳で叩きのめす。
ナイフを持って俺を殺そうと突き刺しに来たみたいだが、あまりにも雑で酷い。ここに来るまでの魔物にやられなかったのが不思議なくらいだ。
そんな実力の奴がボス部屋を通過してここにいるということは、戦わずにいられたということだ。
俺が叩きのめした奴は魔族の男で、地面に突っ伏し白目を向いて気絶していた。
恐らくボスを倒した報酬を横取りしようとしたのだろう。不意打ちすれば奪えると……ありがちな浅ましい考えだ。
アイツにギリギリ勝って弱ったところを……というのならわかるけど、そうじゃない余裕を持った格上相手に挑むのは阿呆のやることだ。
そしてその阿呆はコイツ以外にもいるらしい。それぞれ町では見ない顔をしてる気がするけど、他の町から来た奴らか?
あの町にいた奴なら少なからず警戒するはずだけど、コイツらは俺たちを襲う気満々で引く気がない。
「おうおう、俺の仲間をやってくれちまったなぁ?これでお前は俺たちに殺されても文句は言えねぇぞ!」
体格の良い一人の男魔族がそう言って紫色の短剣を構える。
なんだコイツ、自分から仕掛けさせといて……面倒臭い当たり屋みたいなこと言いやがったな。
……いや、それよりも気になることがある。
「お前ら……その武器と防具はどうした?」
奴らが持っていたのは、さっき宝箱から出たものばかりだった。アレらはミミィたちが取れるように俺がそのまま放置したもののはずだが……
すると先頭の男魔族が笑い始め、周囲にいる奴らもゲラゲラと笑い声を上げる。
「ガキ共に譲って貰ったんだよ、『自分たちには分不相応なので差し上げます』っつってな!それと……」
俺じゃなくてもわかる嘘を口にする男魔族に吐き気を覚える。しかも奴らの中に見知った顔が混じってることにも気付く。
俺が言う前に取り巻きたちが彼女を前へ見せ付けるように突き出した。
「うぅ……!」
それはさっきまで一緒にいたとは思えないほど服を剥ぎ取られてボロボロにされたミミィだった。
「俺たちが欲しがったらこの嬢ちゃんも渡してくれたぜ?自分の身可愛さに泣き叫びながら逃げ出してなぁ……?」
俺魔族は下卑た笑いを浮かべると、視線をこっちに向けたままミミィの頬を味わうようにゆっくり舐める。
「つーわけで、お前が持って行ったもんも置いてけや。その女と一緒にな」
「その女」というのが横にいるアウタルのことだとすぐにわかる。
やれやれと思いつつ俺はそれを見て……ほくそ笑んだ。
「……何笑ってんだ!!」
「いやなに、絵に描いたようなクズでやりやすいなって思っただけだよ」
「な――」
奴らが何かをする前にミミィを掴んでいる魔族の顔を鷲掴みにする。そしてそのまま魔法を発動する。
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「ぐっ……足が動かっ、なんで……ッ!?」
足を動かせずにもがく男。それもそうだ、さっきの魔法で男の足も同時に凍らせていたのだから。
男はパニックになりながら逃げようとする。あぁ、そんなに動いたら――
――パキンッ!
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しかし立ち上がれず違和感を覚えた男が自分の足を見る。その先にあった足は氷漬けになっていた箇所から千切れて分離してしまっていた。
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