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集団襲来

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「ところで他のアマゾネスはどうしたんだ?」

 デク人形と戦い続けているフウリにそんな疑問を投げかけた。
 彼女がなんでもない立ち位置なら気にしなかったと思うが、一応一族を束ねる族長だったはずだ。
 たとえ本人が毛嫌いされていたとしても、勝手に抜け出せるような立場じゃないんじゃないか?

「そりゃあ何も言わず勝手に抜け出したし……ネッ!」

 パパパンッと軽快な音を出してデク人形と攻防を繰り広げていたフウリだったが、次の瞬間には腕の間接を使った投げ技をされてこっちの方へと投げ飛ばされ転がってきた。
 手の指などが無い代わりにそういう器用な技術をデク人形は覚えたようだ。まぁ、教えたの俺だけど。

「今頃次の族長を決めようとしてるんじゃないカ?もしくはボクの予想が正しければ……」

 フウリはでんぐり返しに失敗した奴みたいな状態のまま話し、その言葉の途中でジークが急いで屋敷の中へ駆け込んで行ったのが目に入る。
 その彼の思考を読み取ったフウリがそのままの姿で意味深に笑う。

「……どうやらボクの予想が当たったみたいだネ」

――――
―――
――


 ジークがヴェルネに報告したのは、町にやってきた者たちに対する対処についてだった。
 その「町にやってきた者たち」というのが……

「アマゾネス……しかも一族全員が町の入口に?」

「はい。数として二百五十から三百、アマゾネスなので当たり前なのですが全て女性。この町への移住を希望とのことです」

「獣人のアマゾネス全員が魔族の町に移住希望……?ダイス様になんて報告すれば……あっ、ダメ、また頭が痛くなってきたわ」

 ジークの報告にヴェルネが頭を抱える。なんとなくわかっていたが、やっぱり他種族を迎え入れるというのはそう簡単なことじゃないらしい。

「とりあえずフウリがここにいるんだし、ソイツらのとこに行って話をまとめるしかないんじゃないか?」

「そうよね、それしかないわよね……でもあんたにも来てもらうからね」

 ヴェルネが責めるような言い方をする。

「まぁ、元々ついてくつもりだったけど……理由があるのか?」

「何言ってんの、フウリがここにいるのが理由じゃない。他者を受け入れない閉鎖的なアマゾネスが強い奴の子を求めてやってきたってことでしょ?つまりあんたが原因」

 おい待て、なんで俺が悪いみたいになってんだ。勝手にソイツらが俺のストーカーしてるだけじゃねえか……

「本当なら部族全員が動くことなんてそうそうありえないんだけどネ。でもカウ・ホーンを一人で倒してしまえるような強くて魅力的な男を見付けちゃったら、アマゾネスとしては絶対に見逃す訳にはいかないシ……」

 妖しい笑みを俺に向けて浮かべるフウリ。そしてそれが気に入らないらしいルルアが俺に捕まっている腕に力が入り、圧を感じさせる笑みになる。

「ルルアたちからお兄ちゃんを奪うならみんな敵だね?」

 ルルアからやべー圧が発される。今まで俺に向けられてきた殺気や狂気とか向けられてきたけど、それらとは全くの別物に感じる。
 同じ殺気にも色んな種類があるのだと最近ルルアに出会ってから知りました……

「ちょっと。下手に手を出して事を大きくしないでよ?もうカズがやらかしたことで色々と手一杯なんだから……」

「俺がやらかしたってなんだよ?アマゾネスとは共闘して敵を倒しただけで何も悪いことは――」

「吸血鬼ん時に山をぶった斬ったでしょうがっ!」

 俺の言葉を遮って仕事机をバンッと叩いて怒鳴るヴェルネ。

「え……それと何の関係が……?」

「ただの山崩れだったら杞憂することは何もないけど、あの山は『明らかに何者かが斬った』って見ればわかる状態なのよ?そして近くに住んでいた吸血鬼たちのところで争いが起きてたことはきっと獣人たちの間でもう知り渡ってる……というか、もう吸血鬼の誰かが報告してるわよ。なのに熱も冷めてないうちにアマゾネスと争ったなんて話になったら、それこそ魔族全体の問題に発展しかねないわ」

 神妙な表情で説明するヴェルネ。種族全体の問題……

「つまり戦争になる可能性か?」

「そうよ。前の吸血鬼の件だって大まかな内容を見れば、こっちの方がかなりグレーゾーンなわけだし。『魔族領に侵入した獣人を人間が対処した』なんてどうしていいかわからないもの。しかもその人間を魔族領に住まわせてるからただの被害者にもなれないし……」

 なんとも耳の痛い言葉に俺はただ笑うことしかできなかった。
 そんな感じで憂鬱そうにするヴェルネと共に町の門のある方へと出向く。
 到着したそこには門兵と思われる魔族たちが内側の方に集まっており、外側に問題のアマゾネスの集団がいた。
 彼女たちはリラックスした様子で待機しているようだが、魔族たちは気が気じゃないような雰囲気をしている。
 そしてアマゾネスたちのその先頭には見覚えのある顔が。

「やぁ、アウタルじゃないカ。どうしたんだい、まるでアマゾネス全員で引越しするような騒々しさみたいだけド」

「とぼけるな。心を読めるあんたなら……いや、読まなくてもわかるだろ?同じアマゾネスなら、誰もが強い男を求める」

 アウタルがそう言って俺を見て、他のアマゾネスたちも意味深な視線を向けてくる。あー……っていうことはやっぱりコイツらもか。

「ここにいるアマゾネス全員、お前の子が欲しい」

「だが断る」

 アウタルの言葉に俺はハッキリと断った。するもその言葉に不満を持ったアウタル含めたアマゾネスたちが表情を歪める。

「なぜだ?」

「なぜって……そりゃ、好きな奴以外と子供を作りたいとは思ってるからな。『なぜ』って言葉が出てきてる時点で価値観が違ってると思うから言っておくけど、お前たちアマゾネスと違って俺たちは強さ関係なく気に入った特定の相手と結ばれたいと思うもんなんだよ。そんで俺にはもうその相手がいるわけだしな」

 そう言いつつヴェルネに目を向けつつ、未だに背中に張り付いているルルアの頭を撫でる。
 一般的な普通で言うなら二人と公認で付き合うことになってる今の状態の俺も十分異常なわけだが、だからといってハーレムを目指したいわけじゃないからアマゾネスたちを相手にする気はない。
 もしヴェルネたちよりも先に出会ってたら……なんて、今はもうありもしない「もしも」のことを考えてもしょうがないしな。

「そうか……それはそっちの事情であって、私たちがお前たちに合わせる気はない。アマゾネスは常に強い子を求め、そのための強い雄を探してる。餌が目の前にあるのに食い付かない獣はいないだろう……?」

 アウタルがそう言い、途端に彼女とアマゾネス全員が闘志を発する。まさかこの場で戦う気か?
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