最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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後悔の憂鬱さ

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☆★☆★
~リーシア視点~

「はぁ……」

 誰もいなくなったカウンターで背もたれのある椅子に座って思いっ切りもたれ掛かり、溜め息を吐いてしまう。
 疲れた……この職業柄疲れないなんてことはあまりないけど、今日は特にそんな気がする。
 ここの最高実力者であるジーちゃん……ジークフリートが今巷を騒がせている人間を連れて来た時、一体何を考えているのだろうという疑問がすぐに出てきた。
 たしかに実力は申し分ないどころか過剰だろう。さっき奴が難なく殺したローブの男だが、あれでもかなり強いはずだったのにも関わらず赤子の手をひねるように呆気なくやられてしまった。
 それにアタシだってアイツの動きを捉えることができず、簡単に詰みにされてしまった。
 これでも単純な技術で言えばジーちゃんと肩を並べられると思う。それでも不意を突かれた、なんてのは言い訳にもならないほど完敗だった。
 ああも簡単にやられてしまったのは久しい……いや、あそこまで完膚なきまでにやられたのは初めてかもしれない。 
 だがどれだけ実力があろうとアイツは人間。
 人間が魔族を手にかけるというのは種族同士の仲の悪さから考えればおかしいことではない。しかしその人間を手駒……戦力の一つとして数えるとなると話が変わってくる。
 魔族が魔族を殺すのに人間を使う、なんて知られたら……

「……いや、まだ慌てる話じゃないか。ヴェルネ様があの人間を受け入れているという話らしいし……」

 情報ではこの国の魔王、ダイス様にも滞在を認められているんだとか。
 なら人間をここで使ったとしても真っ先に咎められることはないはず。
 それにジーちゃんが連れて来たっていうのなら、でも信用できるんじゃないかと思ってる。
 もしあの人間が情に厚い性格なら、あたしたちが責められるより先に前に出て場をかき乱してくれるだろうと思うし。
 ただあの時、あたしたちが殺気を向けたことに対して向こうも尋常じゃない殺気を返してきた……彼は今までもあたしたちと似たことをしてきたと言っていたけれど、恐らく数えきれない人間を殺してきたんだろう。
 自分が相手の命を奪ったにも関わらず平然とした様子をしていたのがその証拠とも取れる。
 力だけじゃなく無慈悲さや残酷さもあたしたちと同等……いや、それ以上だ。
 でもなぜそれだけの人間が、人間の最も嫌う魔族と行動を共にしているのかがわからない。
 しかも向けられた殺気にも普通の人間が向けてくる嫌悪感や憎悪のようなものが含まれているようには感じなかった。本当に同じ人間なのかと疑うくらいだ。

あねさん、アイツよかったんですか?」

 懸念が頭の中を駆け巡る中、裏ギルドのメンバーの一人があたしに声をかけてくる。
 あたしを「姐さん」と呼んで慕ってくれる奴。
 長いウェーブの金色の長髪をした小柄な女。ここでの名はシェリル。
 ここでは基本顔や目の周りなどを隠す仮面などをするが、彼女は口を隠すだけのマスクをしているだけで長いまつげなど特徴的な綺麗な目がそのまま見えてしまっている。
 この職業柄、素顔がバレるようなことがあってはリスクが大き過ぎるのでできる限り隠してほしいのだけれど、彼女は自身の目がどれだけ特徴的か自覚していないらしく、「目だけでバレるはずないじゃないですかー!」と自信満々に言っていた。
 他の奴ならそう言っても「まぁ、そうかもしれない」と思うかもしれないけど、彼女に関してはそれが通らないほどだから理解してほしいんだけど……

「あんた的にはアイツがここに入るのは反対なの?」

「反対です。いくら実力があってジークさんの紹介でも、姐さんにあんな態度を取る無作法者の……『男』を仲間にするなんて、姐さんが許しても私が許しません!」

 シェリルは「男」を強調して反対する。どうやら奴のことが嫌いみたいだった。
 彼女は元々男を嫌う気質があるせいもあるだろう。

「流石に男だからって理由だけであたしまで否定するわけにもいかないけど、あたしもまだ引っかかってるから信用はできないんだけどね……でもアイツの強さはその目でちゃんと見たでしょ?」

「それは……」

 言葉を詰まらせて目を逸らすシェリル。
 あの場にいた者なら全員が感じていた圧倒的実力差。
 普通なら近接格闘と魔法を使う奴ではそれぞれ片方を極めようとしてもう片方が疎かになるのに、あの人間はどっちも異常だった。
 ジーちゃんは一体どこであんな人材を見付けてきたんだか……

「ともかく今は様子を見るしかできないわ。第一に前例がないしね、こんなこと……」

「前例ですか?」

「えぇ、普通ならこの場所の存在を知られたら仲間になるか死んでもらうかのどちらかになるけど、アイツを殺すなんて無理だもの。殺し専門のあたしたちが殺せない相手とか、とんだお笑い草だわ……」

 自分で言ってて少し落ち込んでしまう。
 現状、アイツにできることは限られてしまっている。
 一応「契約紙」で制限させるという選択肢もあるけど、それを素直に受け入れるとも考えられない。
 だとしたらもう放置するしかないじゃない。
 こっちにもプライドがあるけれど、だからと言って下手に手を打って機嫌を損ねたらどうなるかわからないし……

「どうしたものかしらね……」

「困り事か?」

 憂鬱さに溜め息を零していると、また別の奴に声をかけられる。でもこの声は……

「どうしたの、忘れ物?」

 声の主は今回の騒動の原因である人間だった。
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