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責任……取ってよね!
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ヴェルネと共にさらに道を歩き、木の少ない開けた場所へと出て町の壁らしきものが見えてきた。
「あそこがあんたの住んでる町か?」
「えぇ、そうよ。「リントヴルグ」比較的大きな町で多くの魔族が住んでるわ」
魔物がいる世界だからああいう城壁が町にあるのが普通なのか?城の周りに建てるなら見たことあるけど、町にっていうのは初めてだな。
「……はぁ」
するとヴェルネがあからさまに溜め息を吐く。
「どうした、良いことでもあったのか?」
「んなわけないでしょどうしたら溜め息吐いてるのが幸せそうに見えんのよ目が腐ってんじゃないの!?」
ヴェルネがスゲー早口でまくし立ててくる。出会ってからこの短い間で完全にツッコミ役が板についたなぁ……元々そういう性格か?
「むしろなんでこの状況で溜め息が出ないと思うのよ……ただでさえ人間を町に連れて行けば騒ぎになるってのに、それどころか――」
ヴェルネは憂鬱そうな視線を俺の後ろに向ける。そこには俺が先程倒したクレイジースコーピオンの死骸があった。
「こんなもの持って行っちゃったら町中が大騒ぎになるのは確定じゃない!そこんとこわからないわけ、このバカ!」
「バカて……まぁ、どうせそんな騒ぎになるのも一時的なもんなんだから気にすんなって」
「あんたが一番気にしなさいよ!」
今にもヴェルネからキーッ!という声が出てきそうなくらい勢いでツッコミをしてくる。会って短いが、彼女が苦労しそうな性格だというのは何となくわかった。
――――
―――
――
―
町に近付くにつれ、人々の声が段々と聞こえてくるのがわかる。
それは活気に満ち溢れている……のではなく、慌ただしい様子が見て取れた。
「早く実力に自信がある者をかき集めろ!遠距離を得意とするものは城壁の上で待機!戦えない者の避難所への誘導は終わったか!?」
その中でもテキパキと指示を出している者が一人。
長い青髪をポニーテールにまとめ、頭の左だけに黒い角を生やした男。
肌の色はヴェルネと違って褐色と人間に近い。青い肌が魔族の特徴ってわけでもないのか。
しかし目は黒く、瞳は緑色。人間でいう白い部分が黒いのは特徴の一つと捉えてもいいっぽいな。
そんな彼らに近付いていくと緊迫した様子で剣や弓などの武器を構えるが、向こうも俺たちの存在に気付くと困惑した表情を浮かべる。
構えているものが拳銃や大砲じゃない辺り現代っぽさの欠片も感じない。剣はともかくとして、達人以外で弓を主武器に使う奴はいないだろうしな。
と、考え事をしてる間にも歩き続け、ついには魔族が大勢いる門の前にまで辿り着いてしまった。
「待て……待て待て待て待て待て止まれ止まれッ!」
さっきまで指示を出していた男が動揺しながら声を荒らげて制止させようとしてくる。
止まらない理由、というか進む理由もないので素直に従い止まる。
「何者だ、お前!?」
「言われてるぞ、ヴェルネ」
「あんたよ!あんたのことに決まってんでしょ!」
まぁ、定番のネタを加えつつ男に向き直る。
「俺は柏木 和。一応人間だ」
「やはり人間……って、一応?」
城壁の上にいる奴も含めて緊張が伝わってくる中、男は理解が追い付かなそうに眉をひそめる。
「敵対するつもりはないらしいわよ、コイツ」
「ヴェルネさん……その言葉を信じるつもりなんですか?」
それなりに知ってる仲らしく、ヴェルネの名を口にしてそう聞いた。
「あたしだって最初は疑ったわ……というか今でも疑ってる。でもどっちにしてもコレを一人で倒しちゃうような奴相手にどうしようもないわよ」
「……は?コレって……クレイジースコーピオンを?一人でって誰が……」
大体わかっていたリアクションだったからかフィーナが男が話してる最中に俺を指差しできた。
「……は、ははは……ヴェルネさんでも冗談を言うんですね。コイツは災害級ですよ?町一つを簡単に壊すような化け物を一人で倒したなんて冗談――」
「目の前でコイツの甲殻を壊すのを見たわ。信じる信じないじゃなくて実証されたのよ。それにあたしが殺す気で放った魔術も全部避けられたし」
ヴェルネが相手の言葉を遮ってそう言うと男は信じられないと言いたげな顔で俺を見る。
「……それでどうするんですか、この人間。まさか町に入れる気ですか?」
「えぇ、それしかないわ。ちょうど身体能力だけじゃなく、コイツの頭もイカれてるっぽいし」
小さく溜め息を吐いて呆れたように言って俺を見るヴェルネ。
イカれてるとは酷い言い様だ。もしかして俺が別の世界から来たこととかのことを言ってる?
「正常なつもりなんだがな。まぁ、町に入れてもらって知識や常識が知れるならそれでもいいけどよ。とりあえずコイツどうすればいい?」
そう言うと男は困った顔でヴェルネと顔を合わせ、再び俺に視線を戻す。
「これを買い取るのは構わない。だがお前を町に入れるのは……」
男は周囲を見渡す。
そこには人間が相当憎いであろう魔族たちからの敵意ある視線が向けられていた。
「心配するな、ヴェルネが全部責任を取ってくれるから」
「そうそう、コイツが何かしでかしたらあたしの――ってなんでよ!?」
ノリツッコミまでしてくれるヴェルネ。おいおい、完璧かよ。
「おーい、この人間はヴェルネさんが全て責任を負ってくれるから問題ないそうだ!それとコイツを解体できる奴を呼んでくれ!」
「ちょっ……言ってない!言わない!前言撤回よ!コイツの責任なんて……って聞きなさいよぉ!」
必死に訴えようとするヴェルネだが、男が言った瞬間に緊張の糸が切れたらしくバラけてざわつき始める魔族たちの耳には届かなかった。
その様子にヴェルネは落胆し、手と膝を突いてしまう。
「なんでこんなことに……」
「ヴェルネ……」
俺はそんな彼女により、肩に手を置く。
「末永く宜しくな」
「うっさいわ!あんたなんて用が済んだらどっか行ってくたばっちゃえばいいのよ!!」
ヴェルネの怒りを含んだツッコミの声が今日1番に空へ響いた。
「あそこがあんたの住んでる町か?」
「えぇ、そうよ。「リントヴルグ」比較的大きな町で多くの魔族が住んでるわ」
魔物がいる世界だからああいう城壁が町にあるのが普通なのか?城の周りに建てるなら見たことあるけど、町にっていうのは初めてだな。
「……はぁ」
するとヴェルネがあからさまに溜め息を吐く。
「どうした、良いことでもあったのか?」
「んなわけないでしょどうしたら溜め息吐いてるのが幸せそうに見えんのよ目が腐ってんじゃないの!?」
ヴェルネがスゲー早口でまくし立ててくる。出会ってからこの短い間で完全にツッコミ役が板についたなぁ……元々そういう性格か?
「むしろなんでこの状況で溜め息が出ないと思うのよ……ただでさえ人間を町に連れて行けば騒ぎになるってのに、それどころか――」
ヴェルネは憂鬱そうな視線を俺の後ろに向ける。そこには俺が先程倒したクレイジースコーピオンの死骸があった。
「こんなもの持って行っちゃったら町中が大騒ぎになるのは確定じゃない!そこんとこわからないわけ、このバカ!」
「バカて……まぁ、どうせそんな騒ぎになるのも一時的なもんなんだから気にすんなって」
「あんたが一番気にしなさいよ!」
今にもヴェルネからキーッ!という声が出てきそうなくらい勢いでツッコミをしてくる。会って短いが、彼女が苦労しそうな性格だというのは何となくわかった。
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町に近付くにつれ、人々の声が段々と聞こえてくるのがわかる。
それは活気に満ち溢れている……のではなく、慌ただしい様子が見て取れた。
「早く実力に自信がある者をかき集めろ!遠距離を得意とするものは城壁の上で待機!戦えない者の避難所への誘導は終わったか!?」
その中でもテキパキと指示を出している者が一人。
長い青髪をポニーテールにまとめ、頭の左だけに黒い角を生やした男。
肌の色はヴェルネと違って褐色と人間に近い。青い肌が魔族の特徴ってわけでもないのか。
しかし目は黒く、瞳は緑色。人間でいう白い部分が黒いのは特徴の一つと捉えてもいいっぽいな。
そんな彼らに近付いていくと緊迫した様子で剣や弓などの武器を構えるが、向こうも俺たちの存在に気付くと困惑した表情を浮かべる。
構えているものが拳銃や大砲じゃない辺り現代っぽさの欠片も感じない。剣はともかくとして、達人以外で弓を主武器に使う奴はいないだろうしな。
と、考え事をしてる間にも歩き続け、ついには魔族が大勢いる門の前にまで辿り着いてしまった。
「待て……待て待て待て待て待て止まれ止まれッ!」
さっきまで指示を出していた男が動揺しながら声を荒らげて制止させようとしてくる。
止まらない理由、というか進む理由もないので素直に従い止まる。
「何者だ、お前!?」
「言われてるぞ、ヴェルネ」
「あんたよ!あんたのことに決まってんでしょ!」
まぁ、定番のネタを加えつつ男に向き直る。
「俺は柏木 和。一応人間だ」
「やはり人間……って、一応?」
城壁の上にいる奴も含めて緊張が伝わってくる中、男は理解が追い付かなそうに眉をひそめる。
「敵対するつもりはないらしいわよ、コイツ」
「ヴェルネさん……その言葉を信じるつもりなんですか?」
それなりに知ってる仲らしく、ヴェルネの名を口にしてそう聞いた。
「あたしだって最初は疑ったわ……というか今でも疑ってる。でもどっちにしてもコレを一人で倒しちゃうような奴相手にどうしようもないわよ」
「……は?コレって……クレイジースコーピオンを?一人でって誰が……」
大体わかっていたリアクションだったからかフィーナが男が話してる最中に俺を指差しできた。
「……は、ははは……ヴェルネさんでも冗談を言うんですね。コイツは災害級ですよ?町一つを簡単に壊すような化け物を一人で倒したなんて冗談――」
「目の前でコイツの甲殻を壊すのを見たわ。信じる信じないじゃなくて実証されたのよ。それにあたしが殺す気で放った魔術も全部避けられたし」
ヴェルネが相手の言葉を遮ってそう言うと男は信じられないと言いたげな顔で俺を見る。
「……それでどうするんですか、この人間。まさか町に入れる気ですか?」
「えぇ、それしかないわ。ちょうど身体能力だけじゃなく、コイツの頭もイカれてるっぽいし」
小さく溜め息を吐いて呆れたように言って俺を見るヴェルネ。
イカれてるとは酷い言い様だ。もしかして俺が別の世界から来たこととかのことを言ってる?
「正常なつもりなんだがな。まぁ、町に入れてもらって知識や常識が知れるならそれでもいいけどよ。とりあえずコイツどうすればいい?」
そう言うと男は困った顔でヴェルネと顔を合わせ、再び俺に視線を戻す。
「これを買い取るのは構わない。だがお前を町に入れるのは……」
男は周囲を見渡す。
そこには人間が相当憎いであろう魔族たちからの敵意ある視線が向けられていた。
「心配するな、ヴェルネが全部責任を取ってくれるから」
「そうそう、コイツが何かしでかしたらあたしの――ってなんでよ!?」
ノリツッコミまでしてくれるヴェルネ。おいおい、完璧かよ。
「おーい、この人間はヴェルネさんが全て責任を負ってくれるから問題ないそうだ!それとコイツを解体できる奴を呼んでくれ!」
「ちょっ……言ってない!言わない!前言撤回よ!コイツの責任なんて……って聞きなさいよぉ!」
必死に訴えようとするヴェルネだが、男が言った瞬間に緊張の糸が切れたらしくバラけてざわつき始める魔族たちの耳には届かなかった。
その様子にヴェルネは落胆し、手と膝を突いてしまう。
「なんでこんなことに……」
「ヴェルネ……」
俺はそんな彼女により、肩に手を置く。
「末永く宜しくな」
「うっさいわ!あんたなんて用が済んだらどっか行ってくたばっちゃえばいいのよ!!」
ヴェルネの怒りを含んだツッコミの声が今日1番に空へ響いた。
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