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第3章:天界と魔界
第30話:役割
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公式ガイドはともかく、アフレコ台本にも無かったサキの堕天と魔王化。
このゲームの攻略対象たちは、それを演じる声優たちの思考パターンをベースにした疑似人格を与えられている。
だからルウとケイが似た性格なのは納得なんだけど、サキとコージさんはどうなんだろう?
シナリオの分岐はプレイヤーと攻略対象たちとのやりとりで様々に変化する。
サキはもともとスキル習得スタイルがアレなので、主人公とのベッドシーン確率が高いキャラ設定だ。
でも、常に飄々としていて、裸で抱き合ったくらいでは好感度に変化は起きない。
サキと結ばれる目的で攻略していたとしても、通常はボスイベントが始まるシナリオ後半に好感度3くらいだと公式ガイドブックには書いてあった。
「どうやら、私に組み込まれていた魔王化プログラムが、サキに移行してしまったらしい」
ルウの部屋。
他の誰かに聞かれたりしないように、ルウは結界を張り、音声が漏れるのを防いで話している。
「他のキャラの好感度がルウよりも高くなった場合に、実行されるプログラムだよね?」
「そう、別名【闇落ちプログラム】だ」
「不幸しか見えないネーミングだなぁ」
「君のおかげで私は実行されずに済んだけどね」
ルウはもともとラスボスとして作られたキャラ。
シナリオ前半は天使長として天界にいる。
後半、四大天使の誰かの好感度が4を超えたとき、ルウがそれよりも低い場合は天界から姿を消してしまう。
その後、敵対する魔王として登場というのがメインの流れだ。
「堕天使になったサキを見たとき、もしやと思ったが、私の中からプログラムが消えているので、やはり間違いないと思う」
「僕は全キャラのシナリオを知っているけど、サキのシナリオにこんなの無かったよ」
開発段階では、ルウと結ばれるシナリオの先に現れるラスボスの名は【インビディア】。
ラテン語で「嫉妬」を意味する名前だ。
四大天使にそれぞれ相対する魔界の四天王がいるように、ルウに相対するのが魔王インビディアだ。
「俺はインビディアのCVでもあるから覚えているが、確かルウの好感度が4になると魔界に出現するんだったな」
「その後ルウよりも好感度が高いキャラがいる場合は、魔王の影と呼ばれる側近になるんだよね」
召喚獣として姿を現しているケイも言う。
僕たちはベッドに横並びに座っていて、僕の両サイドにルウとケイがいる。
「好感度4……私が5まで一気に上げてしまったから、インビディア出現タイミングが失われてしまったのか」
「メインシナリオを前半かなりショートカットしたものね」
ルウの中にケイが入り込むというイレギュラーなことがあったせいで、僕はチュートリアルが終わって間もなく天界へ招かれた。
本来なら経験するシナリオをスッ飛ばしたから、通常とは違った展開が多いのはもう分かっている。
でもまさか、魔王を倒すバトルで一緒にいる筈の四大天使が魔王化なんて想定外だ。
「インビディア、どっかにいないかな?」
「通常なら魔王城の召喚の間に出現するんだが」
「さすがにそんなところへ確認に行けないなぁ」
インビディアがこの世界に出現しているか否かは分からない。
ルウの代わりにサキが魔王になっているのなら、側近として現れているのかな?
「どちらにしろ、このシナリオをクリアするためには、魔王と戦うしかないだろうね」
「魔王戦は四大天使と主人公が必要だよね? 1人欠けてもクリアできるの?」
「足りないところは俺が埋めよう」
「ケイが?!」
「このシナリオに限り、召喚獣となったケイに光の大天使の位を与えよう」
「光の大天使……」
「ケイ・ルミエル。今よりエンディングまで、ケイのフルネームだ」
まさか、ケイがラスボス戦に加わるとは。
それは頼もしいけれど、僕の心は晴れない。
インビディア、今からでもいいから魔王になって。
サキ、天使に還って。
ウリと結ばれる幸せな未来があることを、教えてあげられないのが辛い。
多分今のサキにそれを話したところで、受け入れてはくれないだろうね。
「あと、ヒロはそろそろ服を着ようか」
すっかり忘れてたけど、僕はシーツを身体に巻き付けているだけで、その下は全裸だ。
世話焼きケイがクローゼットから衣服を出して渡してくれた。
そういえば、フェイオの水球に閉じ込められた後、服どうしたんだろう?
意識が戻った時には既に全裸だった。
溺れて気を失う直前までは着ていた筈。
サキに心肺蘇生してもらったあの部屋には無かったし。
そもそも、誰がサキのところへ僕を運んだ?
水に浸かってビショ濡れの服を脱がせたのは誰?
あの場にはフェイオしかいなかったから、あいつの仕業か。
「こいつは貰っていく」とか言っていたのは、魔王への貢物のつもり?
全裸で晒し者にしながら運ばれていないことを祈ろう。
「四天王のフェイオは? ファーは大丈夫?」
「ファーたちはヒロが攫われた後、すぐ天界へ報せに来たから戦闘にはなっていないよ」
とりあえずファーたちは無事で良かった。
このゲームの攻略対象たちは、それを演じる声優たちの思考パターンをベースにした疑似人格を与えられている。
だからルウとケイが似た性格なのは納得なんだけど、サキとコージさんはどうなんだろう?
シナリオの分岐はプレイヤーと攻略対象たちとのやりとりで様々に変化する。
サキはもともとスキル習得スタイルがアレなので、主人公とのベッドシーン確率が高いキャラ設定だ。
でも、常に飄々としていて、裸で抱き合ったくらいでは好感度に変化は起きない。
サキと結ばれる目的で攻略していたとしても、通常はボスイベントが始まるシナリオ後半に好感度3くらいだと公式ガイドブックには書いてあった。
「どうやら、私に組み込まれていた魔王化プログラムが、サキに移行してしまったらしい」
ルウの部屋。
他の誰かに聞かれたりしないように、ルウは結界を張り、音声が漏れるのを防いで話している。
「他のキャラの好感度がルウよりも高くなった場合に、実行されるプログラムだよね?」
「そう、別名【闇落ちプログラム】だ」
「不幸しか見えないネーミングだなぁ」
「君のおかげで私は実行されずに済んだけどね」
ルウはもともとラスボスとして作られたキャラ。
シナリオ前半は天使長として天界にいる。
後半、四大天使の誰かの好感度が4を超えたとき、ルウがそれよりも低い場合は天界から姿を消してしまう。
その後、敵対する魔王として登場というのがメインの流れだ。
「堕天使になったサキを見たとき、もしやと思ったが、私の中からプログラムが消えているので、やはり間違いないと思う」
「僕は全キャラのシナリオを知っているけど、サキのシナリオにこんなの無かったよ」
開発段階では、ルウと結ばれるシナリオの先に現れるラスボスの名は【インビディア】。
ラテン語で「嫉妬」を意味する名前だ。
四大天使にそれぞれ相対する魔界の四天王がいるように、ルウに相対するのが魔王インビディアだ。
「俺はインビディアのCVでもあるから覚えているが、確かルウの好感度が4になると魔界に出現するんだったな」
「その後ルウよりも好感度が高いキャラがいる場合は、魔王の影と呼ばれる側近になるんだよね」
召喚獣として姿を現しているケイも言う。
僕たちはベッドに横並びに座っていて、僕の両サイドにルウとケイがいる。
「好感度4……私が5まで一気に上げてしまったから、インビディア出現タイミングが失われてしまったのか」
「メインシナリオを前半かなりショートカットしたものね」
ルウの中にケイが入り込むというイレギュラーなことがあったせいで、僕はチュートリアルが終わって間もなく天界へ招かれた。
本来なら経験するシナリオをスッ飛ばしたから、通常とは違った展開が多いのはもう分かっている。
でもまさか、魔王を倒すバトルで一緒にいる筈の四大天使が魔王化なんて想定外だ。
「インビディア、どっかにいないかな?」
「通常なら魔王城の召喚の間に出現するんだが」
「さすがにそんなところへ確認に行けないなぁ」
インビディアがこの世界に出現しているか否かは分からない。
ルウの代わりにサキが魔王になっているのなら、側近として現れているのかな?
「どちらにしろ、このシナリオをクリアするためには、魔王と戦うしかないだろうね」
「魔王戦は四大天使と主人公が必要だよね? 1人欠けてもクリアできるの?」
「足りないところは俺が埋めよう」
「ケイが?!」
「このシナリオに限り、召喚獣となったケイに光の大天使の位を与えよう」
「光の大天使……」
「ケイ・ルミエル。今よりエンディングまで、ケイのフルネームだ」
まさか、ケイがラスボス戦に加わるとは。
それは頼もしいけれど、僕の心は晴れない。
インビディア、今からでもいいから魔王になって。
サキ、天使に還って。
ウリと結ばれる幸せな未来があることを、教えてあげられないのが辛い。
多分今のサキにそれを話したところで、受け入れてはくれないだろうね。
「あと、ヒロはそろそろ服を着ようか」
すっかり忘れてたけど、僕はシーツを身体に巻き付けているだけで、その下は全裸だ。
世話焼きケイがクローゼットから衣服を出して渡してくれた。
そういえば、フェイオの水球に閉じ込められた後、服どうしたんだろう?
意識が戻った時には既に全裸だった。
溺れて気を失う直前までは着ていた筈。
サキに心肺蘇生してもらったあの部屋には無かったし。
そもそも、誰がサキのところへ僕を運んだ?
水に浸かってビショ濡れの服を脱がせたのは誰?
あの場にはフェイオしかいなかったから、あいつの仕業か。
「こいつは貰っていく」とか言っていたのは、魔王への貢物のつもり?
全裸で晒し者にしながら運ばれていないことを祈ろう。
「四天王のフェイオは? ファーは大丈夫?」
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