66 / 99
第6章:作られた生命
第57話:セラフィ
しおりを挟む
記憶領域に閉じ込められた【アイオ】の救出のため、僕はセラフィを眠らせ、アルビレオの思念抽出プログラムを流し込んだ。
フィリウス殿下が興味津々の様子だったので、眠っているセラフィを抱っこさせてあげた。
自分のために作らせた子に拒否されるなんて気の毒だから、セラフィが考えを改めてくれるといいんだけど。
今はアイオの影響を受けているだけかもしれないから、それを抜き取ってどう変わるかを見てみよう。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
思念抽出プログラムによってセラフィの記憶領域から救い出された【アイオ】は、アルビレオ艦内医務室のベッドに横たえられた身体に戻された。
「おかあさん!」
「かあちゃん!」
「よかったぁ!」
医務室には子供たちが大集合していて、アイオが目を開けた途端に大騒ぎになった。
子供たちに抱きつかれてもみくちゃにされながら、アイオは嬉しそうに微笑む。
アルビレオの乗組員は、大人も子供もアイオを1人の人間として扱っている。
アイオは、それが嬉しかった。
一方、アルマ国の王宮では、セラフィがアイオからコピーしていた全データの消去が行われていた。
セラフィの脳はアイオが記憶領域に入る以前の状態に初期化され、自我だけが残されている。
「これでアイオや僕に関するデータは全て消えました。所有者データも無い初期状態です」
「アエテルヌムの英知に感謝します。ではしばし、セラフィと2人きりにさせてください」
フィリウスの要望で、セラフィは彼の私室へ運ばれる。
もしかしたら初期化状態なら最初に見た者を所有者として認識するかもしれない、というのがフィリウスの希望的観測。
それはジュリアやトオヤも同感で、セラフィが目覚めるまでフィリウスと2人きりにして隣室に待機した。
「上手くいくかしら……?」
「アルビレオの計算では確率70%くらいです」
侍女が淹れてくれたお茶を飲みつつ、ジュリアとトオヤはそんな話をしている。
隣の部屋では、フィリウスがベッドに寝かせたセラフィに寄り添っていた。
「この星での所有者登録は、本来どういう風にするんですか?」
「通常は人格形成プログラムをインストールした後、所有者になる人が設定した場所に触れながら名前を呼んで起動します」
ジュリアが言う方法の後半部分を、今まさにフィリウスが試している真っ最中だった。
人格形成プログラムが入っていないセラフィには、起動の設定はされていない。
それでフィリウスは、頭の先から足の先まで全身に触れながら、セラフィの名を呼んでみている。
「セラフィ、起きなさい」
眠り姫を起こすように接吻も試したけれど、少女が目覚める事は無かった。
フィリウス殿下が興味津々の様子だったので、眠っているセラフィを抱っこさせてあげた。
自分のために作らせた子に拒否されるなんて気の毒だから、セラフィが考えを改めてくれるといいんだけど。
今はアイオの影響を受けているだけかもしれないから、それを抜き取ってどう変わるかを見てみよう。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
思念抽出プログラムによってセラフィの記憶領域から救い出された【アイオ】は、アルビレオ艦内医務室のベッドに横たえられた身体に戻された。
「おかあさん!」
「かあちゃん!」
「よかったぁ!」
医務室には子供たちが大集合していて、アイオが目を開けた途端に大騒ぎになった。
子供たちに抱きつかれてもみくちゃにされながら、アイオは嬉しそうに微笑む。
アルビレオの乗組員は、大人も子供もアイオを1人の人間として扱っている。
アイオは、それが嬉しかった。
一方、アルマ国の王宮では、セラフィがアイオからコピーしていた全データの消去が行われていた。
セラフィの脳はアイオが記憶領域に入る以前の状態に初期化され、自我だけが残されている。
「これでアイオや僕に関するデータは全て消えました。所有者データも無い初期状態です」
「アエテルヌムの英知に感謝します。ではしばし、セラフィと2人きりにさせてください」
フィリウスの要望で、セラフィは彼の私室へ運ばれる。
もしかしたら初期化状態なら最初に見た者を所有者として認識するかもしれない、というのがフィリウスの希望的観測。
それはジュリアやトオヤも同感で、セラフィが目覚めるまでフィリウスと2人きりにして隣室に待機した。
「上手くいくかしら……?」
「アルビレオの計算では確率70%くらいです」
侍女が淹れてくれたお茶を飲みつつ、ジュリアとトオヤはそんな話をしている。
隣の部屋では、フィリウスがベッドに寝かせたセラフィに寄り添っていた。
「この星での所有者登録は、本来どういう風にするんですか?」
「通常は人格形成プログラムをインストールした後、所有者になる人が設定した場所に触れながら名前を呼んで起動します」
ジュリアが言う方法の後半部分を、今まさにフィリウスが試している真っ最中だった。
人格形成プログラムが入っていないセラフィには、起動の設定はされていない。
それでフィリウスは、頭の先から足の先まで全身に触れながら、セラフィの名を呼んでみている。
「セラフィ、起きなさい」
眠り姫を起こすように接吻も試したけれど、少女が目覚める事は無かった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる