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第6章:作られた生命
第56話:所有者登録
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困った事になった。
リベルタスの人工生命体、それも既に所有者が決まっている少女にアイオの思念が取り込まれている。
アイオが自分からそんな事をする筈がないから、この少女が自ら取り込んだのだろう。
でも、リベルタスの人工生命体は人格形成プログラム無しに行動出来ないという。
僕はアルビレオにアクセスして、状況の分析をしてもらった。
端末アイオとの接続が切れたアルビレオには、緊急時の情報収集源として僕の記憶を読み取らせている。
そして出された分析結果は、少女には元々自我が目覚めていたのではないか、という事だった。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
「……つまり、今まで人格形成プログラムを拒否していたのは、自我があったからという事ですか?」
「そうみたいですね。皆さん念願の【心】を持つ人工生命体の誕生ですが、アイオが取り込まれてしまった上に僕が所有者登録されているので、それを解決しなければなりません」
ジュリアと話すトオヤの腕には完全脱力したまま動かないアイオ、隣にはブランケットに身を包んだ少女がひったりくっついて座っている。
「とりあえず、殿下には事態を報告すべきですね」
一緒に話を聞いていたオルディニス少尉が言う。
納期が大幅に遅れた上に他人を所有者登録してしまったなんて、会社としては信用問題に関わる。
しかし、リベルタス初の【心】を持つ人工生命体の誕生を報せれば、反応は良くなるかもしれない。
惑星リベルタス、工業国アルマ。
オルディニス少尉から報告を受けた第二王子フィリウスは、ジュリア博士とトオヤを王宮へ招いた。
件の少女も連れてくるように言われ……言われなくてもトオヤについてくるが……同行させた。
抜け殻と化したアイオの身体はアルビレオ号の医務室へ運び、子供たちが見守っている。
「お前にはセラフィという名を付けようと思っていた。所有者登録を変更……」
「嫌です」
王子相手でも間髪入れずに拒否が入る。
セラフィと名付けられる予定の少女の隣で、ジュリア博士が青ざめていた。
「何故、嫌なのだ? お前は私のために作られた者ではないか」
「もっと素敵な方に出会ったからです」
フィリウスが興味深そうに問う。
この星の人工生命体なら普通は言わない事を言い出すセラフィに、ジュリア博士の胃がキリキリ痛んだ。
「さて、アエテルヌムの使者どの、どうしたらよいと思いますか?」
「差し支えなければ、この子は僕が買い取り、ジュリア博士たちには殿下のために新たな人工生命体を作って頂くのがよいかと思います」
フィリウスに話を振られ、トオヤは提案する。
セラフィが期待と喜びに満ちた笑顔になり、トオヤに抱きついた。
「でもその前に、この子の中からアルビレオの交流用端末人格【アイオ】を抜き取り、それでも僕を選ぶのか確認する必要があると思います」
「?!」
抱きついているセラフィの身体に腕を回すと、トオヤは所有者権限で彼女の脳に干渉する。
驚いたように一瞬だけ目を見開いた後、セラフィは意識を失う。
力を失って仰け反る少女を横抱きにして、トオヤはアルビレオの思念抽出プログラムを侵入させた。
リベルタスの人工生命体、それも既に所有者が決まっている少女にアイオの思念が取り込まれている。
アイオが自分からそんな事をする筈がないから、この少女が自ら取り込んだのだろう。
でも、リベルタスの人工生命体は人格形成プログラム無しに行動出来ないという。
僕はアルビレオにアクセスして、状況の分析をしてもらった。
端末アイオとの接続が切れたアルビレオには、緊急時の情報収集源として僕の記憶を読み取らせている。
そして出された分析結果は、少女には元々自我が目覚めていたのではないか、という事だった。
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「……つまり、今まで人格形成プログラムを拒否していたのは、自我があったからという事ですか?」
「そうみたいですね。皆さん念願の【心】を持つ人工生命体の誕生ですが、アイオが取り込まれてしまった上に僕が所有者登録されているので、それを解決しなければなりません」
ジュリアと話すトオヤの腕には完全脱力したまま動かないアイオ、隣にはブランケットに身を包んだ少女がひったりくっついて座っている。
「とりあえず、殿下には事態を報告すべきですね」
一緒に話を聞いていたオルディニス少尉が言う。
納期が大幅に遅れた上に他人を所有者登録してしまったなんて、会社としては信用問題に関わる。
しかし、リベルタス初の【心】を持つ人工生命体の誕生を報せれば、反応は良くなるかもしれない。
惑星リベルタス、工業国アルマ。
オルディニス少尉から報告を受けた第二王子フィリウスは、ジュリア博士とトオヤを王宮へ招いた。
件の少女も連れてくるように言われ……言われなくてもトオヤについてくるが……同行させた。
抜け殻と化したアイオの身体はアルビレオ号の医務室へ運び、子供たちが見守っている。
「お前にはセラフィという名を付けようと思っていた。所有者登録を変更……」
「嫌です」
王子相手でも間髪入れずに拒否が入る。
セラフィと名付けられる予定の少女の隣で、ジュリア博士が青ざめていた。
「何故、嫌なのだ? お前は私のために作られた者ではないか」
「もっと素敵な方に出会ったからです」
フィリウスが興味深そうに問う。
この星の人工生命体なら普通は言わない事を言い出すセラフィに、ジュリア博士の胃がキリキリ痛んだ。
「さて、アエテルヌムの使者どの、どうしたらよいと思いますか?」
「差し支えなければ、この子は僕が買い取り、ジュリア博士たちには殿下のために新たな人工生命体を作って頂くのがよいかと思います」
フィリウスに話を振られ、トオヤは提案する。
セラフィが期待と喜びに満ちた笑顔になり、トオヤに抱きついた。
「でもその前に、この子の中からアルビレオの交流用端末人格【アイオ】を抜き取り、それでも僕を選ぶのか確認する必要があると思います」
「?!」
抱きついているセラフィの身体に腕を回すと、トオヤは所有者権限で彼女の脳に干渉する。
驚いたように一瞬だけ目を見開いた後、セラフィは意識を失う。
力を失って仰け反る少女を横抱きにして、トオヤはアルビレオの思念抽出プログラムを侵入させた。
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