20 / 99
第2章:水の惑星
第15話:宇宙から飛来するもの
しおりを挟む
アクウァの王ルウカ様は、この惑星の子供たちを宇宙船に乗せてほしいと言う。
孤児を引き取ってほしいのかと思ったら、そうじゃなかった。
子供たちはちゃんと両親がいる。
それどころかルウカ様の末息子まで頼まれた。
アエテルヌムとの交流を求めてなら大人の使者を出すだろうけど、子供だけの移民とはどういう事なのか。
詳しく話を聞いたら、危機的な状況を明かしてくれた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
『この惑星の人たちは水が無いと生きてゆけないように見えますが、海から離れて大丈夫なのですか?』
『アエテルヌムにも海があるので移住そのものは可能ですが、道中は狭い範囲でしか生活出来なくて、子供には辛いと思います。コールドスリープを使いますか?』
移住に関して、トオヤは気になる事を聞いてみる。
アクウァの民はイルカそっくりな身体で、水の無い場所では移動すら難しいように思えた。
アエテルヌムの環境を知るアイオの見立てでは、移住そのものは可能らしい。
『アクウァの民は、このように変身する事が可能です』
そう言いながら、王は自らの姿を変化させた。
白く長いストレートの髪を水の中で揺らめかせる、水色の瞳と白い肌の細身の男性。
トオヤよりも少し年上に見える、地球人の青年に似た姿に変わった。
白いローブを着た青年は、耳だけが地球人と少し違って長い。
それは、おとぎ話に出てくるエルフを連想させる長耳だった。
『子供たちもこれと似た身体になって、長期の陸上生活が可能です』
『第三王子のカールです。異星の方、お願いします。僕たちに未来を下さい』
そう話す青年ルウカのところへ子供のイルカが泳いでくると、ルウカを若返らせたような人間の子供に変わる。
その耳もルウカほどではないが、地球人に比べて長い。
子供はアイオの見た目と同じくらいの年頃の少年だった。
『事情を、話してもらえませんか?』
何か必死な様子が感じられて、トオヤは聞いてみた。
彼が持つ超感覚的知覚、予知にも似た力が、この惑星に何かが起きると感じ始める。
ルウカは息子と顔を見合わせた後、真剣な表情でトオヤたちを見つめた。
『……この惑星の民は、あと30回ほどしか朝を迎えられません』
あと30日でアクウァの民は滅びる。と、ルウカは言う。
『空から巨大な火の玉が幾つも降ってきて、私たちは焼き尽くされてしまうのです……』
それは、大型隕石の飛来による大災害を予知するものだった。
トオヤの超感覚的知覚よりも先まで、ルウカは視る事が出来るらしい。
ルウカが伝えてくる未来の映像は、燃え上がる隕石が幾つも海に落下する光景。
そんなものが海に落ちたら、海水が高温になって生物は生きてはいられない気がした。
孤児を引き取ってほしいのかと思ったら、そうじゃなかった。
子供たちはちゃんと両親がいる。
それどころかルウカ様の末息子まで頼まれた。
アエテルヌムとの交流を求めてなら大人の使者を出すだろうけど、子供だけの移民とはどういう事なのか。
詳しく話を聞いたら、危機的な状況を明かしてくれた。
宇宙船アルビレオ号
艦長トオヤ・ユージアライトの日記より
『この惑星の人たちは水が無いと生きてゆけないように見えますが、海から離れて大丈夫なのですか?』
『アエテルヌムにも海があるので移住そのものは可能ですが、道中は狭い範囲でしか生活出来なくて、子供には辛いと思います。コールドスリープを使いますか?』
移住に関して、トオヤは気になる事を聞いてみる。
アクウァの民はイルカそっくりな身体で、水の無い場所では移動すら難しいように思えた。
アエテルヌムの環境を知るアイオの見立てでは、移住そのものは可能らしい。
『アクウァの民は、このように変身する事が可能です』
そう言いながら、王は自らの姿を変化させた。
白く長いストレートの髪を水の中で揺らめかせる、水色の瞳と白い肌の細身の男性。
トオヤよりも少し年上に見える、地球人の青年に似た姿に変わった。
白いローブを着た青年は、耳だけが地球人と少し違って長い。
それは、おとぎ話に出てくるエルフを連想させる長耳だった。
『子供たちもこれと似た身体になって、長期の陸上生活が可能です』
『第三王子のカールです。異星の方、お願いします。僕たちに未来を下さい』
そう話す青年ルウカのところへ子供のイルカが泳いでくると、ルウカを若返らせたような人間の子供に変わる。
その耳もルウカほどではないが、地球人に比べて長い。
子供はアイオの見た目と同じくらいの年頃の少年だった。
『事情を、話してもらえませんか?』
何か必死な様子が感じられて、トオヤは聞いてみた。
彼が持つ超感覚的知覚、予知にも似た力が、この惑星に何かが起きると感じ始める。
ルウカは息子と顔を見合わせた後、真剣な表情でトオヤたちを見つめた。
『……この惑星の民は、あと30回ほどしか朝を迎えられません』
あと30日でアクウァの民は滅びる。と、ルウカは言う。
『空から巨大な火の玉が幾つも降ってきて、私たちは焼き尽くされてしまうのです……』
それは、大型隕石の飛来による大災害を予知するものだった。
トオヤの超感覚的知覚よりも先まで、ルウカは視る事が出来るらしい。
ルウカが伝えてくる未来の映像は、燃え上がる隕石が幾つも海に落下する光景。
そんなものが海に落ちたら、海水が高温になって生物は生きてはいられない気がした。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
月宮殿の王弟殿下は怪奇話がお好き
星来香文子
キャラ文芸
【あらすじ】
煌神国(こうじんこく)の貧しい少年・慧臣(えじん)は借金返済のために女と間違えられて売られてしまう。
宦官にされそうになっていたところを、女と見間違うほど美しい少年がいると噂を聞きつけた超絶美形の王弟・令月(れいげつ)に拾われ、慧臣は男として大事な部分を失わずに済む。
令月の従者として働くことになったものの、令月は怪奇話や呪具、謎の物体を集める変人だった。
見えない王弟殿下と見えちゃう従者の中華風×和風×ファンタジー×ライトホラー
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる