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夢の内容を元に書いたイオ視点の話

第68話:スキル玉

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 この世界のダンジョンの魔物は、倒されると24時間後に再出現リポップする。

「魔物は繁殖しない代わりに、短期転生能力を持ってるそうだ」

 氷雪の洞窟のチキルートの奥へ進みながら、先生が教えてくれた。

 さっき倒した中ボスの大鶏も、明日の今頃には何事もなかったかのように転生するらしい。

「記憶とかは無くなってるんですか?」
「基本的に消えてるな」

 残念なような、それでいいような。

「そういえばイオ、さっき大鶏から何か渡されてたな? ちょっと見せてみろ」
「これです」

 先生に言われて、俺は異空間倉庫ストレージから白くて丸い玉を取り出した。

「スキル玉か。良い物を貰ったな」
「もしかして、何かスキルを使える系ですか?」

 スキル玉と聞いたら、そう期待するよね?

「使ってみれば分る。強く握って、浮かんだ起動言語キーワードを言えばいい」

 先生が使い方を教えてくれた。

 俺はひんやり冷たいスキル玉を握る。

 浮かんだ起動言語キーワードは……

「……白き翼エルブランシュ

 その言葉に反応して、ピンポン玉サイズの丸い玉が白い光に変わり、手の中に吸い込まれていった。

「翼? 空飛ぶスキルか?」

 モチが興味津々で覗き込んでくる。

「攻撃スキルだよ。さっきモチがビビってたアレ」
「!!!」

 スキル効果を教えたら、モチが鼻の穴広げて真顔になった。


「じゃあ、早速試してみてくれ」

 前方に現れた鶏魔物の群れを指差して、先生が言う。

防壁バリア!」

 察しのいい江原が、俺以外の人々を防壁バリアで包んだ。

「では、いきます」

 俺はスタスタと魔物の群れに向かって歩いて行く。

「「「「「…コケッ?」」」」」

 5羽の鶏たちが、なんだこいつ?って顔でガン見してくる。

「「「「「コケーッ!」」」」」

 俺が構わず近付くと、鶏たちは一斉に飛び蹴りを仕掛けてきた。

 スカッ☆、スカッ☆、スカッ☆……以下略。

 てな感じで、もちろん当たらない。

 俺は習得したばかりのスキルの発動イメージを立てた。
 このスキルは範囲型で、有効範囲を調節出来るから、鶏たちがいる範囲に限定しよう。
 イメージ出来たところで、起動言語キーワードを言う。

白き翼エルブランシュ!」

 初めて使ったそのスキルは、思ってたより派手だった。

 俺の背中にフワァッと白い翼が広がった後、バッ! と散って魔物たちを襲う。
 金属並みに硬くなった白い羽根が無数に突き刺さり、鶏たちはバタバタと倒れて動かなくなった。
 対象ターゲットを殲滅し終えたら、刺さっていた羽根はスーッと消え去った。

「このスキル、結構使い勝手いいかも」

 羽根はイメージした範囲にのみ刺さるらしい。

 後方の人々は誰も巻き込んでないんだけど……

「………」

 ……モチが鼻の穴広げっぱなしだった。

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