287 / 428
夢の内容を元に書いたイオ視点の話
第30話:タマ・ヌマタ
しおりを挟む
司書さんはレオ・ファンという名前の灰白フサフサ長毛の猫型獣人。
レオさんから頼まれて、俺は放課後に図書館を訪れた。
「あの時、君はモチ君やカジュちゃんと3人で来ていたよね?」
「はい」
整然と並ぶ本と本棚に挟まれた通路を歩きながら、声のトーンを下げて話す。
ここまで通って来た通路にあるのは赤や青の背表紙で、黒は無い。
「実はあの時、君がどこかへ行ってしまった~って2人が言ってたんだよ」
「え? 少し進んだ奥にいただけなのに?」
そんなに離れてなかったのに、見つけられなかったのは何故だろう?
それとも、俺が夢中になり過ぎてかなり離れていた?
でもあの時、2人が呼んでる声はすぐ近くから聞こえた。
それなら向こうにも俺と黒猫獣人の子の会話が聞こえてそうだけど、聞こえてなかったみたいだった。
「さあ、ここだ。君はこの通路の先に何が見える?」
レオさんが立ち止まり、通路の先を指差した。
その先には閲覧室と、黒い背表紙に金の文字が書かれた本が並んでるのが見える。
「閲覧室ですね。黒地に金文字の本も見えます」
「そうか。そこまで進んでみてもらえるかい?」
「はい」
レオさんの意味深な言葉に首を傾げつつ、俺は閲覧室まで進む。
あの子はいるかな?って見回したけど誰もいなかった。
残念、今日は来てないのか。
明日また来てみようと思いつつ、回れ右して帰ろうとした時……
「あれ? 読まずに帰っちゃうの?」
「!!!」
……あの子の声がした。
誰もいないと思ってた部屋の中で声がするのは、ちょっと心臓に悪いぞ。
「いるならいるって言ってくれよ…」
深呼吸して心と鼓動を落ち着かせつつ、声がした方を見ると黒猫獣人の子がいた。
黒いビロードの布地を張ったアンティークチェアに座って、ニコニコしながらこちらを見てる。
「ふふっ、ごめんごめん。君はボクが見える人だから、普通に声かけちゃった」
……ってなんか今、普通じゃないっぽい事言った?!
「ど、どういう意味かなっ? あと、名前聞いていい? 俺はイオだよ」
恐る恐る聞いてみる。
……もしかして、この子は……
「あれ? 見えるのに気付いてない? ボクはタマ・ヌマタ。禁書を守護する霊だよ」
ニッコリ微笑むタマ・ヌマタくん。
めっちゃ猫っぽい名前+下から読んでも同じ名前系キタ!
っていうか今、「霊」って言ったぞ。「禁書」って言ったぞ。
「……ヌマタくんは……この世のものでは……ない?」
「タマでいいよ。物質界のものではないのかと問われれば、そうだね」
……あ~、やっぱり。
在校生にはいないという小柄な黒猫獣人は、図書館に憑いた霊……というか守護霊だったのか。
「…なんで、霊気同調してないのに見えるの?」
ウッカリ霊を視てしまった事に多少動揺しつつも、聞いてみる事にした。
霊気同調っていうのは、霊が視えるように感覚を調整するスキル。
俺が生まれつき持ってる、日本では【霊感】とされるものの一種だ。
普段は霊が視えないけど、そのスキルを発動させると視えるようになる。
幼少期は無意識に使っていて、見た目が不気味な霊を視てはビビリまくって変な子だと言われたっけ。
そのスキルは、今は使ってない。
「話せば長くなるから、とりあえずそこへ座りなよ」
ってタマに言われて、向かいの席に座って話を聞く事にした。
レオさんから頼まれて、俺は放課後に図書館を訪れた。
「あの時、君はモチ君やカジュちゃんと3人で来ていたよね?」
「はい」
整然と並ぶ本と本棚に挟まれた通路を歩きながら、声のトーンを下げて話す。
ここまで通って来た通路にあるのは赤や青の背表紙で、黒は無い。
「実はあの時、君がどこかへ行ってしまった~って2人が言ってたんだよ」
「え? 少し進んだ奥にいただけなのに?」
そんなに離れてなかったのに、見つけられなかったのは何故だろう?
それとも、俺が夢中になり過ぎてかなり離れていた?
でもあの時、2人が呼んでる声はすぐ近くから聞こえた。
それなら向こうにも俺と黒猫獣人の子の会話が聞こえてそうだけど、聞こえてなかったみたいだった。
「さあ、ここだ。君はこの通路の先に何が見える?」
レオさんが立ち止まり、通路の先を指差した。
その先には閲覧室と、黒い背表紙に金の文字が書かれた本が並んでるのが見える。
「閲覧室ですね。黒地に金文字の本も見えます」
「そうか。そこまで進んでみてもらえるかい?」
「はい」
レオさんの意味深な言葉に首を傾げつつ、俺は閲覧室まで進む。
あの子はいるかな?って見回したけど誰もいなかった。
残念、今日は来てないのか。
明日また来てみようと思いつつ、回れ右して帰ろうとした時……
「あれ? 読まずに帰っちゃうの?」
「!!!」
……あの子の声がした。
誰もいないと思ってた部屋の中で声がするのは、ちょっと心臓に悪いぞ。
「いるならいるって言ってくれよ…」
深呼吸して心と鼓動を落ち着かせつつ、声がした方を見ると黒猫獣人の子がいた。
黒いビロードの布地を張ったアンティークチェアに座って、ニコニコしながらこちらを見てる。
「ふふっ、ごめんごめん。君はボクが見える人だから、普通に声かけちゃった」
……ってなんか今、普通じゃないっぽい事言った?!
「ど、どういう意味かなっ? あと、名前聞いていい? 俺はイオだよ」
恐る恐る聞いてみる。
……もしかして、この子は……
「あれ? 見えるのに気付いてない? ボクはタマ・ヌマタ。禁書を守護する霊だよ」
ニッコリ微笑むタマ・ヌマタくん。
めっちゃ猫っぽい名前+下から読んでも同じ名前系キタ!
っていうか今、「霊」って言ったぞ。「禁書」って言ったぞ。
「……ヌマタくんは……この世のものでは……ない?」
「タマでいいよ。物質界のものではないのかと問われれば、そうだね」
……あ~、やっぱり。
在校生にはいないという小柄な黒猫獣人は、図書館に憑いた霊……というか守護霊だったのか。
「…なんで、霊気同調してないのに見えるの?」
ウッカリ霊を視てしまった事に多少動揺しつつも、聞いてみる事にした。
霊気同調っていうのは、霊が視えるように感覚を調整するスキル。
俺が生まれつき持ってる、日本では【霊感】とされるものの一種だ。
普段は霊が視えないけど、そのスキルを発動させると視えるようになる。
幼少期は無意識に使っていて、見た目が不気味な霊を視てはビビリまくって変な子だと言われたっけ。
そのスキルは、今は使ってない。
「話せば長くなるから、とりあえずそこへ座りなよ」
ってタマに言われて、向かいの席に座って話を聞く事にした。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。
のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。
彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。
そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。
しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。
その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。
友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~
櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。
冷酷魔法騎士と見習い学士
枝浬菰
ファンタジー
一人の少年がドラゴンを従え国では最少年でトップクラスになった。
ドラゴンは決して人には馴れないと伝えられていて、住処は「絶海」と呼ばれる無の世界にあった。
だが、周りからの視線は冷たく貴族は彼のことを認めなかった。
それからも国を救うが称賛の声は上がらずいまや冷酷魔法騎士と呼ばれるようになってしまった。
そんなある日、女神のお遊びで冷酷魔法騎士は少女の姿になってしまった。
そんな姿を皆はどう感じるのか…。
そして暗黒世界との闘いの終末は訪れるのか…。
※こちらの内容はpixiv、フォレストページにて展開している小説になります。
画像の二次加工、保存はご遠慮ください。
俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~
榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。
彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。
それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。
その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。
そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。
――それから100年。
遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。
そして彼はエデンへと帰還した。
「さあ、帰ろう」
だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。
それでも彼は満足していた。
何故なら、コーガス家を守れたからだ。
そう思っていたのだが……
「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」
これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる