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前世編
第90話:完全回復薬と持続回復チョコ
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アイラ国、溶岩が煮えたぎるようにボコボコ泡立つ活火山の頂上。
「この中?!」
エカは鼻の穴広げて真顔になりつつ溶岩を見下ろす。
5つ目の魔王の心臓は、この溶岩と融合しているらしい。
エカたちは完全回避シーツのおかげで熱さは感じないし肌が焼ける事もないけど、生徒会の人たちはよくこんなところまで来れたなぁと思う。
「うん。先日の湖と同じで、溶岩ごと破壊だね」
ここを見つけたのはボクと同じ不死鳥キイを召喚獣に持つ、アサケ学園生徒会役員のカイという猫人。
召喚獣の影響で毛並みは赤い筈だけど、あまり目立ちたくないそうで本来の毛色の茶トラだ。
今回はカイが案内人、コッコは別の場所を探索中。
「危ないからカイもロコも山から離れて」
「わ、わかった」
「お城で待機するわ」
アズに言われて、カイとロコは下山していった。
「エカ、これ食べて」
そう言って、アズはエカの口にチョコレートを放り込む。
「ん、美味い……って、これ持続回復効果あるのか」
モグモグしてエカはすぐ気付いた。
チョコレートはエアが作ったものなんだろうね。
食べると一定時間持続的に生命力が回復するらしい。
「この規模だとエカ気絶するからね。死亡じゃないからフラムの蘇生は使えないし。完全回復薬を口移しで飲まされたくないだろ?」
異空間倉庫から完全回復薬入りの小瓶を取り出して見せつつ、いたずらする時みたいな笑みを浮かべるアズ。
「……」
動揺したエカが、鼻の穴広げて真顔になった。
完全回復薬は胃でも肺でも身体に入れば回復効果を発揮するから、意識が無い相手には口移しで飲ませる。
エカもアズも学校の救命授業でその方法は習ったけど、実際に飲ませた経験は無かった。
「トリアエズ、アレヲ片付ケマス」
「なんで片言なの?」
火山の火口を指差して変顔のまま言うエカに、吹き出したアズがツッコミを入れた。
「倒れるのは分ってるから先に抱えておくよ」
アズはこれから何が起きるか予測出来ているらしく、エカを抱え上げるとベノワに乗った。
「山1つ吹き飛ぶから。その後よろしく」
気を取り直して、エカは爆裂魔法を起動する。
対象は、魔王の心臓と融合している溶岩と火山そのものだ。
反応して出現した魔王の分身は、エカを片腕で抱き寄せつつ、もう片方の手で剣を振るうアズに倒された。
「爆破消滅!」
一気に生命力が減り、エカが意識を失ってグッタリと仰け反る。
山が消滅して空中に放り出され、2人を乗せたベノワが翼を広げて滑空を始めた。
「この状態をソナに見せたくないだろうから、ベノワしばらく飛んでて」
エカが落ちないようにしっかり抱きながら、アズがベノワに指示する。
持続回復が進んでエカの意識が戻るまで、ベノワはゆっくり空を飛んだ。
「クゥン?」
アズの懐からルルが顔を出し、横抱きにされているエカの顔を見て首を傾げる。
まだ起きないの? って聞いてるみたいだ。
「そろそろ起きると思うよ」
アズが答えるのと同時くらいに、エカが目を開けた。
「おはよう。もうちょい遅かったら完全回復薬を飲ませるところだったよ」
「……!」
冗談に反応して鼻の穴広げて真顔になるエカの口に、アズが回復菓子を放り込む。
生きているならどんな状態でも全快させる、世界樹の花の砂糖漬けだ。
「今回は使わなかったけど、必要になったら迷わず飲ませるから、そのつもりで」
って言ってるアズは多分、それしか方法が無かったらやるだろうね。
エカみたいに瀕死からの回復より死亡からの蘇生の方が早いなんて考えは、アズには無いから。
砂糖漬けをモグモグゴックンして、エカはコクコクと頷く。
命大事にしない子だけど、この忠告は凄く効果があるみたいだよ。
「この中?!」
エカは鼻の穴広げて真顔になりつつ溶岩を見下ろす。
5つ目の魔王の心臓は、この溶岩と融合しているらしい。
エカたちは完全回避シーツのおかげで熱さは感じないし肌が焼ける事もないけど、生徒会の人たちはよくこんなところまで来れたなぁと思う。
「うん。先日の湖と同じで、溶岩ごと破壊だね」
ここを見つけたのはボクと同じ不死鳥キイを召喚獣に持つ、アサケ学園生徒会役員のカイという猫人。
召喚獣の影響で毛並みは赤い筈だけど、あまり目立ちたくないそうで本来の毛色の茶トラだ。
今回はカイが案内人、コッコは別の場所を探索中。
「危ないからカイもロコも山から離れて」
「わ、わかった」
「お城で待機するわ」
アズに言われて、カイとロコは下山していった。
「エカ、これ食べて」
そう言って、アズはエカの口にチョコレートを放り込む。
「ん、美味い……って、これ持続回復効果あるのか」
モグモグしてエカはすぐ気付いた。
チョコレートはエアが作ったものなんだろうね。
食べると一定時間持続的に生命力が回復するらしい。
「この規模だとエカ気絶するからね。死亡じゃないからフラムの蘇生は使えないし。完全回復薬を口移しで飲まされたくないだろ?」
異空間倉庫から完全回復薬入りの小瓶を取り出して見せつつ、いたずらする時みたいな笑みを浮かべるアズ。
「……」
動揺したエカが、鼻の穴広げて真顔になった。
完全回復薬は胃でも肺でも身体に入れば回復効果を発揮するから、意識が無い相手には口移しで飲ませる。
エカもアズも学校の救命授業でその方法は習ったけど、実際に飲ませた経験は無かった。
「トリアエズ、アレヲ片付ケマス」
「なんで片言なの?」
火山の火口を指差して変顔のまま言うエカに、吹き出したアズがツッコミを入れた。
「倒れるのは分ってるから先に抱えておくよ」
アズはこれから何が起きるか予測出来ているらしく、エカを抱え上げるとベノワに乗った。
「山1つ吹き飛ぶから。その後よろしく」
気を取り直して、エカは爆裂魔法を起動する。
対象は、魔王の心臓と融合している溶岩と火山そのものだ。
反応して出現した魔王の分身は、エカを片腕で抱き寄せつつ、もう片方の手で剣を振るうアズに倒された。
「爆破消滅!」
一気に生命力が減り、エカが意識を失ってグッタリと仰け反る。
山が消滅して空中に放り出され、2人を乗せたベノワが翼を広げて滑空を始めた。
「この状態をソナに見せたくないだろうから、ベノワしばらく飛んでて」
エカが落ちないようにしっかり抱きながら、アズがベノワに指示する。
持続回復が進んでエカの意識が戻るまで、ベノワはゆっくり空を飛んだ。
「クゥン?」
アズの懐からルルが顔を出し、横抱きにされているエカの顔を見て首を傾げる。
まだ起きないの? って聞いてるみたいだ。
「そろそろ起きると思うよ」
アズが答えるのと同時くらいに、エカが目を開けた。
「おはよう。もうちょい遅かったら完全回復薬を飲ませるところだったよ」
「……!」
冗談に反応して鼻の穴広げて真顔になるエカの口に、アズが回復菓子を放り込む。
生きているならどんな状態でも全快させる、世界樹の花の砂糖漬けだ。
「今回は使わなかったけど、必要になったら迷わず飲ませるから、そのつもりで」
って言ってるアズは多分、それしか方法が無かったらやるだろうね。
エカみたいに瀕死からの回復より死亡からの蘇生の方が早いなんて考えは、アズには無いから。
砂糖漬けをモグモグゴックンして、エカはコクコクと頷く。
命大事にしない子だけど、この忠告は凄く効果があるみたいだよ。
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