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前世編
第75話:黒髪の少年
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「この子は異世界人ではないニャ」
エカから受け取った捕獲玉を検査用の魔道具に乗せて調べながら、王様は言った。
今ここに来ているのはエカとソナだけ。
アズは来てないけど、ここでのやりとりはボクがベノワとの念話を通して伝えている。
お城にある魔道具は学園にあるものよりも性能が良い、上位タイプの魔道具らしい。
種族検査用の魔道具は、この世界の鳥や動物や魔物だけでなく、異世界の生き物に対応する機能もあるんだ。
「?! ……デブネコめ! 僕をこんなところに閉じ込めて何をする気だ!」
捕獲玉に収納された黒髪の少年は、検査を開始してすぐ目を覚まして、王様を睨んで怒鳴る。
「……。検査の邪魔だから静かにするニャ」
一瞬、無の表情になった後、王様は捕獲玉を置いている検査器具のボタンを押す。
玉の中に白い霧が満ちて、少年が虚ろな表情に変わって倒れた。
多分、睡眠効果がある霧かな?
冷静を装ってるけど、デブって言われて王様ちょっと怒ってるみたいだよ。
王様、一応体型を気にしてるのかな?
そんな様子を後ろで見ながら、エカとソナが苦笑した。
王様は魔道具の操作を続けて、魔道具の文字表示パネルに出た説明表示を見て溜息をつく。
「やっぱりニャ……この子は魔王の分身ニャン」
「「えっ?!」」
告げられて、エカとソナが驚く。
王様が指差した表示には、それを表す文章が出ていた。
───黒い果実の分身。
様々な姿で作られ、偵察用に使われる。
闇属性が非常に高く、放つ魔法は闇に染まる───
「黒い火球は、魔王の分身が使う魔法ニャ」
王様はエカたちから少年を捕獲する経緯を聞いて、正体を察したらしい。
「王様、この子どうするの?」
「何もしなくても、魔王が……」
ソナの問いに王様が答えかけたところで、その答えは明らかになった。
倒れている少年の身体が炭のように黒くなり、ボロボロと崩れて消滅した。
「……気付いたみたいだニャ」
王様は特に驚いた様子はなく、冷静に呟く。
こうなる事は予想してたらしい。
「殺されたの?」
「死んだワケではないニャン。魔王が影を消しただけニャ」
灰も残らず消えた少年をちょっと憐れんだソナが聞くと、王様はそれが生物とは違う物だと教えてくれた。
「アズが連れている仔犬の状態も調べておいた方がいいニャン」
王様の言葉を、ボクが念話でアズに伝える。
「じゃあ迎えに行ってきます」
アズはお城へのフリーパスを持ってないから、エカが迎えに行った。
連れて来られたアズは仔犬を心配して庇うように抱き締めている。
「アズ、その子をここに乗せるニャン」
王様が検査用の魔道具を手で示しても、アズは躊躇ってすぐには従わない。
「魔王が消せるのは分身だけニャ。その子は魔族なら消滅させられる事は無いニャン」
「ルルは、いい子なんです。魔王の手下なんかじゃない、俺の大事な子です」
「それは分ってるニャン。ルルが今どういう状態なのか、アズは護る為に知る必要があるニャ」
「……わかりました」
王様の説得で、ようやくアズはルルの検査に応じた。
エカから受け取った捕獲玉を検査用の魔道具に乗せて調べながら、王様は言った。
今ここに来ているのはエカとソナだけ。
アズは来てないけど、ここでのやりとりはボクがベノワとの念話を通して伝えている。
お城にある魔道具は学園にあるものよりも性能が良い、上位タイプの魔道具らしい。
種族検査用の魔道具は、この世界の鳥や動物や魔物だけでなく、異世界の生き物に対応する機能もあるんだ。
「?! ……デブネコめ! 僕をこんなところに閉じ込めて何をする気だ!」
捕獲玉に収納された黒髪の少年は、検査を開始してすぐ目を覚まして、王様を睨んで怒鳴る。
「……。検査の邪魔だから静かにするニャ」
一瞬、無の表情になった後、王様は捕獲玉を置いている検査器具のボタンを押す。
玉の中に白い霧が満ちて、少年が虚ろな表情に変わって倒れた。
多分、睡眠効果がある霧かな?
冷静を装ってるけど、デブって言われて王様ちょっと怒ってるみたいだよ。
王様、一応体型を気にしてるのかな?
そんな様子を後ろで見ながら、エカとソナが苦笑した。
王様は魔道具の操作を続けて、魔道具の文字表示パネルに出た説明表示を見て溜息をつく。
「やっぱりニャ……この子は魔王の分身ニャン」
「「えっ?!」」
告げられて、エカとソナが驚く。
王様が指差した表示には、それを表す文章が出ていた。
───黒い果実の分身。
様々な姿で作られ、偵察用に使われる。
闇属性が非常に高く、放つ魔法は闇に染まる───
「黒い火球は、魔王の分身が使う魔法ニャ」
王様はエカたちから少年を捕獲する経緯を聞いて、正体を察したらしい。
「王様、この子どうするの?」
「何もしなくても、魔王が……」
ソナの問いに王様が答えかけたところで、その答えは明らかになった。
倒れている少年の身体が炭のように黒くなり、ボロボロと崩れて消滅した。
「……気付いたみたいだニャ」
王様は特に驚いた様子はなく、冷静に呟く。
こうなる事は予想してたらしい。
「殺されたの?」
「死んだワケではないニャン。魔王が影を消しただけニャ」
灰も残らず消えた少年をちょっと憐れんだソナが聞くと、王様はそれが生物とは違う物だと教えてくれた。
「アズが連れている仔犬の状態も調べておいた方がいいニャン」
王様の言葉を、ボクが念話でアズに伝える。
「じゃあ迎えに行ってきます」
アズはお城へのフリーパスを持ってないから、エカが迎えに行った。
連れて来られたアズは仔犬を心配して庇うように抱き締めている。
「アズ、その子をここに乗せるニャン」
王様が検査用の魔道具を手で示しても、アズは躊躇ってすぐには従わない。
「魔王が消せるのは分身だけニャ。その子は魔族なら消滅させられる事は無いニャン」
「ルルは、いい子なんです。魔王の手下なんかじゃない、俺の大事な子です」
「それは分ってるニャン。ルルが今どういう状態なのか、アズは護る為に知る必要があるニャ」
「……わかりました」
王様の説得で、ようやくアズはルルの検査に応じた。
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