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前世編
第59話:紙包みの中身は?
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左右に灰色の石壁がある道で、5人の子供たちが話していた。
子供たちはみんな女の子で、1人は可愛らしい絵柄の紙包みを大事そうに抱えている。
紙包みを抱えている子と話す子供たちの中に、エカやボクがよく知っている女の子もいた。
といっても、年頃は今よりも幼い。
「そろそろだよね?」
「うん」
女の子たちがそんな話をしていると、道の向こうから歩いてくる人影が見え始めた。
「あっ、来たよ!」
「がんばってね」
そう言って、紙包みを持った子だけそこに残して、女の子たちは離れてゆく。
そして4人は、石壁に隠れられる十字路の曲がり角に潜んだ。
歩いて来る人影は、彼女たちと同じ年頃の子供。
サラサラした黒髪、整った顔立ちの男の子だった。
「あ、あの……、これ、もらって下さい!」
1人で立っていた女の子が、顔を真っ赤にしながら持っていた紙包みを差し出しす。
男の子は一瞬キョトンとしただけで、差し出された物には手を伸ばさなかった。
「悪いけど、君には興味ないから」
ちょっと酷くない? と思うような冷たい言い方で拒否された紙包みと女の子。
男の子は呆然とする女の子から離れて歩き始めた。
それだけなら世界問わずよくある、告白失敗の光景なんだけど。
男の子は十字路まで歩いてくると、まるでそこにいるのを知っていたかのように4人に近付いて来た。
「えっ?」
「あ、あの……」
「私たちはその……
「応援してただけ……」
気まずさでしどろもどろになる4人。
男の子はその1人の腕をつかんで、自分の方へ引き寄せた。
「僕が欲しいのは、君だよ」
微笑んでいるのに、何故か嫌な感じがする。
男の子は引き寄せた女の子の顎に片手を添えた直後、抵抗する間も無くその唇を奪った。
『ブッ飛ばす!!』
エカがブチ切れたのが分る。
でも、男の子をブン殴ろうと実体化しようとしたところで、急に夢の外へ引っ張り出された。
「ふぇぇん、エカぁ……」
ソナが、目を覚まして泣いている。
「えっ?! 目が覚めたの?!」
「あいつ嫌い……わたしを、汚した……」
多分ソナは、唇を奪われたショックで目が覚めちゃったんだろう。
汚したっていうのは、大人の言い方なら「穢された」という意味かな。
「大丈夫、すぐブッ飛ばして消してやるよ」
「……うん……」
エカが抱き締めて頭を撫でてあげたら、ソナは少し落ち着いたみたい。
「じゃあ、魔力を注ぐからね」
「額じゃなくて、こっちがいい」
「?!」
いつものように額に口付けしようとしたエカ。
ソナはエカの顔を両手で挟んで、額じゃない場所に口付けさせた。
変顔になる余裕すら無いほど驚くエカの唇が触れているのは、ソナの唇だ。
『今は額ではなく、そこから魔力を注いであげなさい』
『えっ……?!』
傍観している創造神までそんな事を言う。
エカは一旦ソナから顔を離し、深呼吸して気持ちを整えた。
額へのキスは家族でもするから、そんなに抵抗は無い。
唇へのキスは家族ではやらない。エカにとってさっきのが人生初だ。
「わたしはエカのもの。あいつのものじゃない」
ソナは呟くと、エカがキスしやすいように目を閉じる。
少し頬が赤くなりつつ、エカの腕に身を委ねて微笑みを浮かべた。
「あんな奴、俺の魔法でブッ飛ばしてやるよ」
エカは気持ちが定まり、ソナに告げると唇を重ねた。
ふわりと飛んできた緑の葉が1枚、ソナの中に吸い込まれてゆく。
再び、ソナが意識を失うと同時に、エカの精神魔法が発動した。
子供たちはみんな女の子で、1人は可愛らしい絵柄の紙包みを大事そうに抱えている。
紙包みを抱えている子と話す子供たちの中に、エカやボクがよく知っている女の子もいた。
といっても、年頃は今よりも幼い。
「そろそろだよね?」
「うん」
女の子たちがそんな話をしていると、道の向こうから歩いてくる人影が見え始めた。
「あっ、来たよ!」
「がんばってね」
そう言って、紙包みを持った子だけそこに残して、女の子たちは離れてゆく。
そして4人は、石壁に隠れられる十字路の曲がり角に潜んだ。
歩いて来る人影は、彼女たちと同じ年頃の子供。
サラサラした黒髪、整った顔立ちの男の子だった。
「あ、あの……、これ、もらって下さい!」
1人で立っていた女の子が、顔を真っ赤にしながら持っていた紙包みを差し出しす。
男の子は一瞬キョトンとしただけで、差し出された物には手を伸ばさなかった。
「悪いけど、君には興味ないから」
ちょっと酷くない? と思うような冷たい言い方で拒否された紙包みと女の子。
男の子は呆然とする女の子から離れて歩き始めた。
それだけなら世界問わずよくある、告白失敗の光景なんだけど。
男の子は十字路まで歩いてくると、まるでそこにいるのを知っていたかのように4人に近付いて来た。
「えっ?」
「あ、あの……」
「私たちはその……
「応援してただけ……」
気まずさでしどろもどろになる4人。
男の子はその1人の腕をつかんで、自分の方へ引き寄せた。
「僕が欲しいのは、君だよ」
微笑んでいるのに、何故か嫌な感じがする。
男の子は引き寄せた女の子の顎に片手を添えた直後、抵抗する間も無くその唇を奪った。
『ブッ飛ばす!!』
エカがブチ切れたのが分る。
でも、男の子をブン殴ろうと実体化しようとしたところで、急に夢の外へ引っ張り出された。
「ふぇぇん、エカぁ……」
ソナが、目を覚まして泣いている。
「えっ?! 目が覚めたの?!」
「あいつ嫌い……わたしを、汚した……」
多分ソナは、唇を奪われたショックで目が覚めちゃったんだろう。
汚したっていうのは、大人の言い方なら「穢された」という意味かな。
「大丈夫、すぐブッ飛ばして消してやるよ」
「……うん……」
エカが抱き締めて頭を撫でてあげたら、ソナは少し落ち着いたみたい。
「じゃあ、魔力を注ぐからね」
「額じゃなくて、こっちがいい」
「?!」
いつものように額に口付けしようとしたエカ。
ソナはエカの顔を両手で挟んで、額じゃない場所に口付けさせた。
変顔になる余裕すら無いほど驚くエカの唇が触れているのは、ソナの唇だ。
『今は額ではなく、そこから魔力を注いであげなさい』
『えっ……?!』
傍観している創造神までそんな事を言う。
エカは一旦ソナから顔を離し、深呼吸して気持ちを整えた。
額へのキスは家族でもするから、そんなに抵抗は無い。
唇へのキスは家族ではやらない。エカにとってさっきのが人生初だ。
「わたしはエカのもの。あいつのものじゃない」
ソナは呟くと、エカがキスしやすいように目を閉じる。
少し頬が赤くなりつつ、エカの腕に身を委ねて微笑みを浮かべた。
「あんな奴、俺の魔法でブッ飛ばしてやるよ」
エカは気持ちが定まり、ソナに告げると唇を重ねた。
ふわりと飛んできた緑の葉が1枚、ソナの中に吸い込まれてゆく。
再び、ソナが意識を失うと同時に、エカの精神魔法が発動した。
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