251 / 330
本作の元になった夢の話
真冬の夜の夢⑧
しおりを挟む俺とモチが男子寮の1階通路に着くと、カジュちゃんがいた。
カジュちゃんは扉にもたれるようにしながら立っていた。
俺たちの足音に気付いたカジュちゃんは、振り向いて笑顔になる。
「やっと帰ってきたのねっ」
ホッとした様子のカジュちゃん。
でも俺たちは、その付近の異様な光景に目が釘付けになった。
廊下には、しばき倒された巨大ヘビが大量に転がっている。
天井には、頭をめり込ませた巨大ヘビたちがぶら下がっている。
もちろん、壁にもヘビが複数、頭から刺さっているぞ。
「……そのヘビ、どうしたの?」
また青ざめながら、モチが聞いた。
一体ここで何があったんだろうか?
「あ、これ? ブラックTの手下なの。うちのユズが食べられそうになったから夢中で倒しちゃった」
カジュちゃんの肩には、ペットの手乗りインコ「ユズ」がとまっている。
ヘビたち、こんな小さな生き物を食べようとしたのか。
食べるとこ少ないのに。
っていうかそれを全部1人で倒したのか? カジュちゃん。
「も~大変だったのよ、大量にヘビが現れて。倒せるだけ倒して残りはブラックTと一緒に部屋の中に封印したら疲れちゃった。あたし、か弱いから」
だって女の子だもん♥ と、恥らうカジュちゃん。
「か弱い……?」
「……かな?」
顔を見合わせる俺とモチ。
か弱い女の子のパンチで、巨大ヘビが天井や壁に刺さるかな?
「敵はこの部屋の中よ」
そう言って、カジュちゃんは扉の前から退いた。
「毒ヘビもいるけど、2人とも元気だから噛まれても大丈夫よね」
にっこり微笑むカジュちゃん。
彼女にしばき倒されたヘビの中には、巨大コブラも混じってるぞ。
「「……いや死ぬって」」
俺とモチはハモりツッコミを入れた。
「大丈夫大丈夫♥ ほら、入って入って」
容赦無いカジュちゃん。
俺たちはグイグイ背中を押されながら部屋に入らされた。
中には、まだ倒される前の巨大ヘビがドッサリいるけど!
「げ…」
モチが顔を引き攣らせる。
暖房の効いた室内でくつろいでいたヘビたちは、侵入者に気付いた途端に一斉に襲いかかってくる。
俺たちは慌てて魔法を使おうとしたけど、その必要はなかった。
「きゃ~っ、やだ~っ、来ないで~~っ!」
俺たちの背後にいたカジュちゃんが飛び出して、魔法で出した巨大ハンマーを手に、悲鳴を上げながらヘビたちをしばき倒してゆく。
わずかな時間で、ヘビは全滅した。
これ、俺たちいなくてもよくね?
「あ~怖かったぁ」
倒し終えると、カジュちゃんは俺たちの背後に逃げてきて言う。
「「……どっちが?!」」
同時に振り返り、俺たちはまたハモりツッコミを入れた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ヒトリぼっちの陰キャなEランク冒険者
コル
ファンタジー
人間、亜人、獣人、魔物といった様々な種族が生きる大陸『リトーレス』。
中央付近には、この大地を統べる国王デイヴィッド・ルノシラ六世が住む大きくて立派な城がたたずんでいる『ルノシラ王国』があり、王国は城を中心に城下町が広がっている。
その城下町の一角には冒険者ギルドの建物が建っていた。
ある者は名をあげようと、ある者は人助けの為、ある者は宝を求め……様々な想いを胸に冒険者達が日々ギルドを行き交っている。
そんなギルドの建物の一番奥、日が全くあたらず明かりは吊るされた蝋燭の火のみでかなり薄暗く人が寄りつかない席に、笑みを浮かべながらナイフを磨いている1人の女冒険者の姿があった。
彼女の名前はヒトリ、ひとりぼっちで陰キャでEランク冒険者。
ヒトリは目立たず、静かに、ひっそりとした暮らしを望んでいるが、その意思とは裏腹に時折ギルドの受付嬢ツバメが上位ランクの依頼の話を持ってくる。意志の弱いヒトリは毎回押し切られ依頼を承諾する羽目になる……。
ひとりぼっちで陰キャでEランク冒険者の彼女の秘密とは――。
※3日おきに投稿予定です。
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さん、「ネオページ」さんとのマルチ投稿です。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
スーパーと異世界に行くのはどうですか?
トロワ
ファンタジー
ある日仕事が終わり帰ろうとしていた浅倉大輔と諸星星矢だったが謎の光が二人を包み込んだ
目が覚めるとそこは違う世界だった
だが転生したのは二人だけではなくスーパーハピネスの社員みんなだった。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
転生料理人の異世界探求記(旧 転生料理人の異世界グルメ旅)
しゃむしぇる
ファンタジー
こちらの作品はカクヨム様にて先行公開中です。外部URLを連携しておきましたので、気になる方はそちらから……。
職場の上司に毎日暴力を振るわれていた主人公が、ある日危険なパワハラでお失くなりに!?
そして気付いたら異世界に!?転生した主人公は異世界のまだ見ぬ食材を求め世界中を旅します。
異世界を巡りながらそのついでに世界の危機も救う。
そんなお話です。
普段の料理に使えるような小技やもっと美味しくなる方法等も紹介できたらなと思ってます。
この作品は「小説家になろう」様及び「カクヨム」様、「pixiv」様でも掲載しています。
ご感想はこちらでは受け付けません。他サイトにてお願いいたします。
異世界でハズレスキル【安全地帯】を得た俺が最強になるまで〜俺だけにしか出来ない体重操作でモテ期が来た件〜
KeyBow
ファンタジー
突然の異世界召喚。
クラス全体が異世界に召喚されたことにより、平凡な日常を失った山田三郎。召喚直後、いち早く立ち直った山田は、悟られることなく異常状態耐性を取得した。それにより、本来召喚者が備わっている体重操作の能力を封印されずに済んだ。しかし、他のクラスメイトたちは違った。召喚の混乱から立ち直るのに時間がかかり、その間に封印と精神侵略を受けた。いち早く立ち直れたか否かが運命を分け、山田だけが間に合った。
山田が得たのはハズレギフトの【安全地帯】。メイドを強姦しようとしたことにされ、冤罪により放逐される山田。本当の理由は無能と精神支配の失敗だった。その後、2人のクラスメイトと共に過酷な運命に立ち向かうことになる。クラスメイトのカナエとミカは、それぞれの心に深い傷を抱えながらも、生き残るためにこの新たな世界で強くなろうと誓う。
魔物が潜む危険な森の中で、山田たちは力を合わせて戦い抜くが、彼らを待ち受けるのは仲間と思っていたクラスメイトたちの裏切りだった。彼らはミカとカナエを捕らえ、自分たちの支配下に置こうと狙っていたのだ。
山田は2人を守るため、そして自分自身の信念を貫くために逃避行を決意する。カナエの魔法、ミカの空手とトンファー、そして山田の冷静な判断が試される中、彼らは次第にチームとしての強さを見つけ出していく。
しかし、過去の恐怖が彼らを追い詰め、さらに大きな脅威が迫る。この異世界で生き延びるためには、ただ力を振るうだけではなく、信じ合い、支え合う心が必要だった。果たして彼らは、この異世界で真の強さを手に入れることができるのか――。
友情、裏切り、そしてサバイバルを描いた、異世界ファンタジーの新たな物語が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる