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本作の元になった夢の話

真冬の夜の夢⑤

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 心身ともに凍る思いでスケートリンクを飛び出し、俺たちが次に飛び込んだのは、M本先生が管理する【武道館】。
 といっても、ミュージシャンがコンサートを開いたりするアレとはデザインが違う。
 ローマとかギリシャとか、あそこらへんの円形闘技場《コロッセオ》に屋根がついたみたいな建物だ。

「よし、来たな」

 腕組みして仁王立ちで待っていたM本先生が言う。

「授業を始めるぞ」

 武道やスポーツが得意なM本先生は、カジュちゃんから連絡を受け、俺たちをしごく為に待っていたらしい。
 陸上部メンバーから密かに【鬼】と呼ばれるM本先生のトレーニングは、俺たちの想像より斜め上のものだった。

「戦いには素早さも大事だ、しっかり走れ」

 ストップウォッチ片手に彼は言う。
 そこまでなら、一般的な陸上部と変わらない。
 違うのは、後ろから追いかけてくるヤツがいるって事だ。

「ブギィッ!」

 何故か、イノシシがいる。
 しかも、追いかけてくる。

「うわぁぁぁ!」

 イノシシにターゲットにされたモチが、必死で逃げる。
 2つの直線コースと2つの曲線コースからなる角丸長方形、いわゆる小判型の走路、陸上競技でトラックと呼ばれる場所を、1人と1匹がグルグル回り出した。

「なんでイノシシがいるんスかっ!」
「その方が全力で走れるからな。ほれ、お前も走ってこい」

 M本先生と話してた俺にも、イノシシがついた。
 そのまま走路に加わり、2レーンで人とイノシシの疾走が続く。

「でぇぇぇっ!」
「ひぃぃぃっ!」

 必死の形相で走る俺とモチ。
 何周走らされたか分からないけど、力尽きて2人でバッタリ倒れたら、イノシシは興味を失ったように離れて去っていった。

「スピードはこのくらいでいいか」
 どうやら達成したらしい。
 先生の言葉の後に、そろそろ聞き慣れたファンファーレが響いた。

   LEVEL UP!
 モチ&イオの「素早さ」が上がった。

 ホッとしていたら、これで終わりじゃなかった。

「筋力も必要だ。しっかり漕げ」
  「「ぬぉぉぉぉっ」」

 続いてペダル式ボート(スワン)を漕がされる俺たち。
 進行方向と逆にロープで繋がれ、推進を妨げようとするのはゾウだ。
【像】じゃなくて【象】、鼻の長いあの巨大生物だよ。

 何故、武道館に池があるのか?
 何故、動物園でもないのにゾウがいるのか?
 この世界で、細かい事は気にしてはいけないんだろうな。
 多分、ここは何でも有りなんだ。

「筋力もまあこんなもんだろう」

 先生の言葉の後、このエリアで2回目のファンファーレが鳴った。

   LEVEL UP!
 モチ&イオの「筋力」が上がった。

 さんざん鍛えられてヘトヘトな俺たちに、M本先生は食事を出してくれた。

「腹へっただろ、もりもり食え」

 グルメなM本先生は、世界各地から様々な食べ物を集める趣味を持っている。

「いただきまぁす♪」

 遠慮なく食う俺とモチ。
 美味なる物の数々に、疲れは一気にフッ飛んだ。
 多分、HP・MP全快したんだと思う。

 ……が。

「……先生、納豆とチンジャオロースは一緒にしない方がいいと思います」

 たまに、ハズレもあったりする

「時には珍味もいいだろ? 遠慮せず食え」

 笑って言うM本先生は平然と食べている。
 何故かここでまたファンファーレが鳴った。

   LEVEL UP!
   モチ&イオの「体力」が上がった。
   モチ&イオの「根性」が上がった。

 メシ食ってステータスが上がったらしい。
 ハズレメシの効果が多分、根性値を上げたな。

「じゃ、次へ行ってこい」

 M本先生がマッチョな片腕をブンッと振ったら、最大瞬間風速100m/sくらいの暴風で、俺たちはフッ飛ばされた。
 次はどこだ?
 もう少々の事では驚かないかも。
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