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転生者モチ編

第55話:双子の絆(画像あり)

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 俺は、もしもイオが来てくれなかったとしても、フラムに蘇生してもらいながら爆裂魔法を使えば、なんとかなるだろうと思っていた。
 生命力が尽きるまで爆裂魔法を使った後、フラムの力で蘇生した俺は、次の魔法を放つことはできなかった。

 衝撃と共に、背中から胸まで貫いたのは1本の剣。
 瞬時に背後に移動してきた1人の魔族は、俺を蹴り倒して剣を引き抜いた。
 俺の背中と胸から大量の鮮血が噴き出して、地面を覆う。
 出血と共に生命力が急激に下がり、俺は爆裂魔法を撃つどころか倒れたまま動くこともできない。

『エカ!』
「不死鳥を攻撃しろ! 力を使わせるな!」

 フラムの念話と、魔族と思われる男の声がする。
 仲間の魔法に巻き込まれないように上空へ飛び去る男を、俺は朦朧としながら眺めていた。

 攻撃を受けても、フラムにとって大したダメージにはならない。
 しかし魔族たちの狙いはフラムを倒すことではなく、蘇生の力を使う余裕を無くすことだった。
 俺を蘇生できなくなる時間まで妨害し続ける気か?
 この世界では、不死鳥の力でも蘇生薬でも、生き返せるのは24時間以内だ。

 このまま心臓が止まって24時間過ぎてしまったら、俺の命は終わる。
 せっかく転生して、現世モチが身体を譲ってくれたのに。
 ソナとリヤンをまた悲しませてしまうじゃないか。
 まだ、終わりたくない。

 アズがいてくれたら……。

 前世では、俺が単独で魔族の群れを相手に立ち回ることは無かった。
 いつもアズがいて、護ってくれていた。
 でも今、アズはこの世にいない。

 イオは、嫌いな相手を助けに来てくれるのか?

 現世モチの記憶は、イオなら必ず助けにくると云う。
 でも、親友の身体を乗っ取った俺なんか、助けに来ないんじゃないか?
 会話も拒むほど嫌われているのに。

 辛うじて保っていた意識は、寂しさと悲しさに埋もれるように沈んでいった。





『やっぱり、本質は同じだね』

 意識の浮上と共に、フラムが誰かと話す【声】がする。
 硬い地面に横たわっていた筈の俺は、誰かの腕に抱かれていた。

 このぬくもりを、俺は知っている。
 前世で俺を護ってくれていた者と同じ温かさを感じた。

 意識が鮮明になると同時に、見えたのは青い髪の少年。
 懐かしさが込み上げる。
 来てくれたんだ、という嬉しさで心が満たされる。
 俺と目が合ってホッとしたような表情を浮かべる彼に、普段の突き放すような冷たさは感じられない。

 俺は安心すると同時に、ふと気付いた。
 穏やかな眼差しで俺を見つめる少年の、口元に血が付いている。
 前世でも同じことがあったぞ。
 完全回避をもつ彼が、怪我をする筈がない。
 俺を抱き起こしたくらいでは、あんなところに血は付かないだろう。

 口の中に、血の味と共に残るこの甘苦い味は……?
 まだ意識が朦朧としていた時、温かくて柔らかいものが口を塞いでいたような?

「……まさか……飲ませた……?」

 身体を起こして問いかけてみると、相手はキョトンとしている。
 俺は彼の口元に付いた血を指先で拭って見せた。
 青い髪の少年は、それを見て俺の問いかけが何のことか理解したようだ。

「致命傷だったから」

 しれっと答える奴。
 前世と同じじゃないか。
 その平然とした様子も、あの時と同じだ。

 前世で俺は一度だけ致命傷を負ったことがある。
 その時、双子の弟は迷わず俺に完全回復薬エリクサーを飲ませた。
 俺は気を失っていたから、口移しで。
 吐血した後だったせいで、俺の血が互いの口元に付いていたのを覚えている。

 まさかまた同じ状況になろうとは。
 そういえばこいつ以前「相手がモチならできるよ」とか言ってたな。
 モチを助ける予定で買った完全回復薬エリクサーを俺に飲ませたのか?
 この身体を乗っ取った俺を恨んでるんじゃなかったのか?

 感情が昂ぶり、涙となって溢れ出た。

「うわぁぁぁん! アズの馬鹿野郎!」
「ちょ! 俺はアズじゃない!」
「おんなじだぁ! うわぁぁぁん!」

 号泣しながら抱きつく俺を、彼は拒まなかった。
 赤ん坊でもあやすみたいに、抱き締めて背中を撫でている。
 その優しさと温かさが嬉しくて、しばらく涙が止まらなかった。
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