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転生者モチ編

第48話:俺の話を聞け(画像あり)

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 イオの馬鹿野郎。
 加速魔法の無駄使いしやがって。

 俺は心の中で愚痴りながら、自分の荷物を異空間倉庫ストレージにポイポイ放り込む。
 お互い荷造りしながら話すつもりだったのに。
 イオは俺が学園長と話している数分の間に、学園長室がある本館を出て寮の建物まで移動、部屋の荷物を片付けて出ていってしまった。

 でも、学園には通うのなら、放課後に行けば会えるかもしれない。
 イオが放課後に図書館へ行く日課は、現世モチの記憶で知っている。

 俺は学園長に事情を話して、在学生でなくても学園敷地内への立ち入り許可をもらった。
 母さんにはイオの好物が肉じゃがであることを伝えて、夕飯の1品に加えてもらうと、放課後のイオを目標に絞った。



 禁書閲覧室には入れないけれど、そこに至る通路は知っている。
 張り込んでいたら、青い髪の子供が行き止まりの壁の中からスッと現れた。

 きた!

 逃げる前に声をかけよう。

「おい! 肉じゃが!」
「へ?」

 やらかした!

 俺は慌て過ぎて、言葉を大幅に省略してしまった。
 本当は「おいイオ、そろそろ帰ってこい。母さんが肉じゃが作って待ってるぞ」って、言うつもりだったのに。

「か、帰ってこい。みんな待ってるから」

 俺はイオがキョトンとして立ち止まっている隙に、言葉を継ぎ足す。
 これでどうにか用件は伝わった筈。
 しかしイオは、また困ったような笑みを浮かべた。

「悪いけど、人違いだよ」
「え?」

 今度は俺がキョトンとした。
 イオは何を言ってるんだ?

「アズは、ここにはいない。君のように復活することは無い」

 6歳児の容姿には不似合いな、諭すように静かな口調でイオは言う。
 責めているわけじゃないのは分かる。
 でも俺は、押し寄せる罪悪感に何も言えなくなった。
 泣いてる場合じゃないのに。
 頬から顎へと伝って落ちる雫を止められない。

「俺のことはもう忘れて、君は家族と幸せに暮せばいいよ」

 そう言って、イオはまた忽然と消えた。
 馬鹿野郎。
 言うだけ言って逃げるんじゃねぇ。
 母さんがせっかく肉じゃが作ってくれたのに、無駄にする気かよ。
 取り残された俺は、悔しいのか悲しいのかよく分からないまま、服の袖で涙を拭って実家へ転移した。
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