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転生者モチ編
第44話:違う道へ(画像あり)
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「父さん、母さん、ただいま!」
「エカ?! 前世を思い出したのか?!」
「戻ってきてくれたのね!」
青年の姿になった俺が扉を開けて入った瞬間、父さんと母さんはそれが誰かすぐに気付いた。
2人にとって、最後に見た【エカ】はこの姿だから。
俺が変身魔法で加工した衣服が、前世でよく着ていたものだったからかもしれない。
20年ぶりの再会は、【モチ】として逢った時よりも、感動が大きかった。
「ソナが持っていた指輪に、記憶と心を残しておいたんだ」
「そうだったのか」
「嬉しい、エカが還ってきたのね」
泣いて喜ぶ両親と俺は、しばし抱き合って再び逢えた感動に浸る。
子供の身体になってしまったけど、戻ってこれてよかった。
身体が成長するまでは、変身魔法で成人後の姿を維持しておこう。
気持ちが少し落ち着いたところで、俺たちは部屋の隅にいる子供に気付いた。
いつの間にか帰ってきていた転生者は、6歳児の姿のままポツンと佇んでいる。
俺はその様子を見て、そこにいるのは前世ではなく現世の人格だと分かった。
もしも前世の人格であれば、感動の輪の中にさりげなく加わる筈だから。
「アズは? 前世の記憶は戻った?」
「ここで生まれ育った事は、思い出せたかい?」
ハッと気付いた母さんと、一緒に振り返る父さんが問いかける。
転生者は首を横に振った。
「アズールの霊は、アサギリ島に残るそうです」
幼少期のアズそっくりの姿をした転生者は、静かな声でそう告げた。
現世の記憶によれば、彼がそういう話し方をするのは感情を見せたくない時だ。
「つまり、俺が彼の記憶と心を継承する事はありません」
「……そんな……」
その宣告に、父さんと母さんは泣き崩れた。
嗚咽する母さんを抱き締めながら、父さんも涙を流し続ける。
転生者は、申し訳なさそうな顔でそれを見つめていた。
「アズ、なんで戻らない?」
呆然と呟く俺は、自分の頬を涙が伝う涙を止められない。
あの日、世界樹の根元に集まった時、アズはアサギリ島に記憶と心を残すと言った。
俺はそれを真似て、指輪に記憶と心を残したんだ。
転生者はベノワにアサギリ島へ連れて行かれたんだろう。
そこでアズの記憶と心、すなわち【霊】といえるものと遭遇した筈なのに。
どうしてアズは、還ってきてくれないんだ?
家の中に、両親と俺のすすり泣く声だけが響いた。
やがて少し気を取り直したように、父さんが俺を見て微笑む。
「エカ、ソナたちが待っているだろう? 家に帰ってあげなさい」
「今夜はこっちで寝るよ。ソナには念話で伝えるから大丈夫」
俺を自宅へ帰らせようとする父さん。
でも俺は、今はここに居たいと思った。
母さんが食事を用意してくれたので、4人で夕食をとった。
いつもならソナとリヤンも呼ぶところだけど、今日は4人だけで。
メインのオカズは魚の煮つけ。
それは俺とアズの大好物で、学生寮に住んでいた頃でも魚の煮つけを作る日は実家に帰ったほどだ。
「お口に合えばいいのだけど。今度、アズの好きな物を教えてね」
「美味しいです。……えっと、俺のことは『イオ』と呼んでもらえますか?」
少しぎこちない雰囲気の中、転生者は自分の呼称を「アズ」ではなく「イオ」にしてほしいと告げた。
「エカ?! 前世を思い出したのか?!」
「戻ってきてくれたのね!」
青年の姿になった俺が扉を開けて入った瞬間、父さんと母さんはそれが誰かすぐに気付いた。
2人にとって、最後に見た【エカ】はこの姿だから。
俺が変身魔法で加工した衣服が、前世でよく着ていたものだったからかもしれない。
20年ぶりの再会は、【モチ】として逢った時よりも、感動が大きかった。
「ソナが持っていた指輪に、記憶と心を残しておいたんだ」
「そうだったのか」
「嬉しい、エカが還ってきたのね」
泣いて喜ぶ両親と俺は、しばし抱き合って再び逢えた感動に浸る。
子供の身体になってしまったけど、戻ってこれてよかった。
身体が成長するまでは、変身魔法で成人後の姿を維持しておこう。
気持ちが少し落ち着いたところで、俺たちは部屋の隅にいる子供に気付いた。
いつの間にか帰ってきていた転生者は、6歳児の姿のままポツンと佇んでいる。
俺はその様子を見て、そこにいるのは前世ではなく現世の人格だと分かった。
もしも前世の人格であれば、感動の輪の中にさりげなく加わる筈だから。
「アズは? 前世の記憶は戻った?」
「ここで生まれ育った事は、思い出せたかい?」
ハッと気付いた母さんと、一緒に振り返る父さんが問いかける。
転生者は首を横に振った。
「アズールの霊は、アサギリ島に残るそうです」
幼少期のアズそっくりの姿をした転生者は、静かな声でそう告げた。
現世の記憶によれば、彼がそういう話し方をするのは感情を見せたくない時だ。
「つまり、俺が彼の記憶と心を継承する事はありません」
「……そんな……」
その宣告に、父さんと母さんは泣き崩れた。
嗚咽する母さんを抱き締めながら、父さんも涙を流し続ける。
転生者は、申し訳なさそうな顔でそれを見つめていた。
「アズ、なんで戻らない?」
呆然と呟く俺は、自分の頬を涙が伝う涙を止められない。
あの日、世界樹の根元に集まった時、アズはアサギリ島に記憶と心を残すと言った。
俺はそれを真似て、指輪に記憶と心を残したんだ。
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そこでアズの記憶と心、すなわち【霊】といえるものと遭遇した筈なのに。
どうしてアズは、還ってきてくれないんだ?
家の中に、両親と俺のすすり泣く声だけが響いた。
やがて少し気を取り直したように、父さんが俺を見て微笑む。
「エカ、ソナたちが待っているだろう? 家に帰ってあげなさい」
「今夜はこっちで寝るよ。ソナには念話で伝えるから大丈夫」
俺を自宅へ帰らせようとする父さん。
でも俺は、今はここに居たいと思った。
母さんが食事を用意してくれたので、4人で夕食をとった。
いつもならソナとリヤンも呼ぶところだけど、今日は4人だけで。
メインのオカズは魚の煮つけ。
それは俺とアズの大好物で、学生寮に住んでいた頃でも魚の煮つけを作る日は実家に帰ったほどだ。
「お口に合えばいいのだけど。今度、アズの好きな物を教えてね」
「美味しいです。……えっと、俺のことは『イオ』と呼んでもらえますか?」
少しぎこちない雰囲気の中、転生者は自分の呼称を「アズ」ではなく「イオ」にしてほしいと告げた。
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