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転移者イオ編
第17話:異世界の歩き方(画像あり)
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遂に薄い本を読み終えた。
本の主人公は元の世界、日本へ帰っていった。
異世界で慕ってくれる人々がいても、日本に帰るんだな。
同じ転生+転移でも、元の世界に戻りたいと思わない俺とは対照的だ。
「じゃあ、次はこれだね」
「うん」
俺は、タマにオススメされた本を手に取る。
黒い布張り表紙に金の文字。
それは禁書棚にある他の本と同じだけど、この本はそれに加えて金色の魔法陣が描かれている。
タイトルは【異世界の歩き方】。
著者名が表記されていないのは、他の禁書と同じだ。
目次を見ると、見覚えのある世界名がある。
◆チキュウ
創造神については不明。
民族によって言語が違い、世界名も異なる呼び名が複数ある。
民族によって信仰するものが違う。
転移者が多いニホンという国では、神ではなく「ホトケ」と呼ぶものを信仰する人が多いらしい。
魔法は架空のものとして扱われている。
とても多くの国家と言語が存在する世界。
文明が発展する代償として自然界が蝕まれており、大気汚染が酷い。
過去にナーゴの民がチキュウに転移して、汚染大気に耐えられず死亡する事故が発生した。
ナーゴの民の転移は不可、転生は可。
チキュウ人のナーゴとの往復転移なら健康に問題く出来る。
◆アーシア
創造神アーシアに創られた世界。
魔法や精霊などが存在する。
完全記憶を持つ聖女が、転生を繰り返しながら世界を浄化し癒やしている。
聖女には双子の兄がおり、勇者として人々を護り続ける。
チキュウからの転移者が多く、食文化や魔導具開発に貢献している。
自然環境はナーゴと同程度で、大気も澄んでいる。
ナーゴの民の転移・転生が可能。
◆エルティシア
創造神エルランティスに創られた世界。
魔法という概念は無い。
妖精が存在し、人間に力を提供する事で魔法に似た現象を生み出す。
瑠璃色の瞳を持つ者は、全ての妖精に愛される聖者として人々からも慕われる。
他世界からの転移者は少ない。
大気や水や土壌は、【聖なる力】によって定期的に浄化されている。
ナーゴの民の転移・転生は理論上は可能。
「薄い本の世界って実在するの?」
俺は本からタマに視線を移して訊いた。
エルティシアが実在なんて予想外だ。
薄い本の舞台となる異世界が実在しているとは思わなかった。
だって、奥付を見たら20世紀の作品だし、作者はナーゴが初めての異世界転移だったみたいだし。
あれはてっきり創作の世界だと思ってたよ。
その問いにタマが答える前に……
「在るよ」
……って。
背後からタマとは違う声がして、俺は驚いて勢いよく振り返った。
この場所に来れる者は限られている。
アサケ王家の王族か、タマの姿が視える者しか、ここを見つけられないし中に入れない。
「え? 誰?」
黒髪、黒い瞳の少年がいた。
優しそうな顔立ちは、女の子っぽくも見える。
服装は日本の中高生に定番の黒い詰襟学生服だ。
年頃は日本人なら中学生くらいかもしれない。
「翔、久しぶり」
ってタマが言うから知り合いか。
俺みたいにタマの姿が視える人っぽい。
「久しぶり、タマ。初めての読者サービスに来たよ」
翔と呼ばれた日本人中学生ぽい子が微笑む。
読者サービスって何?
サインでもするの?
謎の言葉に俺の疑問追加だ。
「良かったねイオ、読者サービスだって」
「ど、どうも」
タマも微笑んでるけど、俺は何がナニヤラで困惑しかない。
日本に住んでいた頃に雑誌などで見かけた読者サービスは、オリジナルグッズが多かったな。
この子も日本人らしいから、何かキャラクターグッズでもくれるんだろうか?
俺はそんなことを思いつつ、歩み寄って来る黒髪の少年を見上げる。
しかし、彼が言う読者サービスは、グッズなどではなかった。
「ちょっと失礼」
「へ?」
「じゃ、行こうか」
「って何処へ?!」
閲覧室の椅子に座っていた俺に近付くと、翔はヒョイッと俺を抱き上げた。
なんか何処かへ連れて行くらしい。
どういう読者サービスだ?
「勿論、エルティシアだよ」
「異世界転移はもうお腹いっぱいだけど?!」
「帰りたい時は元の世界へ帰れるから安心して」
「そういう意味ではなく……」
薄い本を読破すると、異世界エルティシア御招待が読者サービスのようだ。
妖精たちが住まう、古代ギリシア風の異世界へ転移させるのか?
日本に住んでいた頃の俺なら、大歓迎したかもしれない。
しかし今はもうナーゴに転移済みで、異世界スローライフ満喫中だ。
ファンタジーな世界はナーゴで充分味わってるから、今更また異世界転移する気は無いぞ。
それにこう見えても忙しいんだ、呑気に異世界見物している暇は無い。
「遠慮しないで、さあ行くよ」
「いってらっしゃい。お土産はアムルの実でいいよ」
「俺は行くとは言ってな~いっ!」
翔が俺を抱っこしたまま、ニコニコしながら足元に転移魔法陣を展開し始める。
タマは全く止める様子は無く、そちらもニコニコしながらお土産リクエストなんかしてくる。
2人とも、俺の話を聞け!
俺の意志は完全無視で、異世界に招待される。
はい、拉致られ経験2回目。
エカに捕まった時もそうだけど、身体が小さいと拉致しやすいんだな。
6歳児の姿、そろそろやめた方がいいだろうか?
本の主人公は元の世界、日本へ帰っていった。
異世界で慕ってくれる人々がいても、日本に帰るんだな。
同じ転生+転移でも、元の世界に戻りたいと思わない俺とは対照的だ。
「じゃあ、次はこれだね」
「うん」
俺は、タマにオススメされた本を手に取る。
黒い布張り表紙に金の文字。
それは禁書棚にある他の本と同じだけど、この本はそれに加えて金色の魔法陣が描かれている。
タイトルは【異世界の歩き方】。
著者名が表記されていないのは、他の禁書と同じだ。
目次を見ると、見覚えのある世界名がある。
◆チキュウ
創造神については不明。
民族によって言語が違い、世界名も異なる呼び名が複数ある。
民族によって信仰するものが違う。
転移者が多いニホンという国では、神ではなく「ホトケ」と呼ぶものを信仰する人が多いらしい。
魔法は架空のものとして扱われている。
とても多くの国家と言語が存在する世界。
文明が発展する代償として自然界が蝕まれており、大気汚染が酷い。
過去にナーゴの民がチキュウに転移して、汚染大気に耐えられず死亡する事故が発生した。
ナーゴの民の転移は不可、転生は可。
チキュウ人のナーゴとの往復転移なら健康に問題く出来る。
◆アーシア
創造神アーシアに創られた世界。
魔法や精霊などが存在する。
完全記憶を持つ聖女が、転生を繰り返しながら世界を浄化し癒やしている。
聖女には双子の兄がおり、勇者として人々を護り続ける。
チキュウからの転移者が多く、食文化や魔導具開発に貢献している。
自然環境はナーゴと同程度で、大気も澄んでいる。
ナーゴの民の転移・転生が可能。
◆エルティシア
創造神エルランティスに創られた世界。
魔法という概念は無い。
妖精が存在し、人間に力を提供する事で魔法に似た現象を生み出す。
瑠璃色の瞳を持つ者は、全ての妖精に愛される聖者として人々からも慕われる。
他世界からの転移者は少ない。
大気や水や土壌は、【聖なる力】によって定期的に浄化されている。
ナーゴの民の転移・転生は理論上は可能。
「薄い本の世界って実在するの?」
俺は本からタマに視線を移して訊いた。
エルティシアが実在なんて予想外だ。
薄い本の舞台となる異世界が実在しているとは思わなかった。
だって、奥付を見たら20世紀の作品だし、作者はナーゴが初めての異世界転移だったみたいだし。
あれはてっきり創作の世界だと思ってたよ。
その問いにタマが答える前に……
「在るよ」
……って。
背後からタマとは違う声がして、俺は驚いて勢いよく振り返った。
この場所に来れる者は限られている。
アサケ王家の王族か、タマの姿が視える者しか、ここを見つけられないし中に入れない。
「え? 誰?」
黒髪、黒い瞳の少年がいた。
優しそうな顔立ちは、女の子っぽくも見える。
服装は日本の中高生に定番の黒い詰襟学生服だ。
年頃は日本人なら中学生くらいかもしれない。
「翔、久しぶり」
ってタマが言うから知り合いか。
俺みたいにタマの姿が視える人っぽい。
「久しぶり、タマ。初めての読者サービスに来たよ」
翔と呼ばれた日本人中学生ぽい子が微笑む。
読者サービスって何?
サインでもするの?
謎の言葉に俺の疑問追加だ。
「良かったねイオ、読者サービスだって」
「ど、どうも」
タマも微笑んでるけど、俺は何がナニヤラで困惑しかない。
日本に住んでいた頃に雑誌などで見かけた読者サービスは、オリジナルグッズが多かったな。
この子も日本人らしいから、何かキャラクターグッズでもくれるんだろうか?
俺はそんなことを思いつつ、歩み寄って来る黒髪の少年を見上げる。
しかし、彼が言う読者サービスは、グッズなどではなかった。
「ちょっと失礼」
「へ?」
「じゃ、行こうか」
「って何処へ?!」
閲覧室の椅子に座っていた俺に近付くと、翔はヒョイッと俺を抱き上げた。
なんか何処かへ連れて行くらしい。
どういう読者サービスだ?
「勿論、エルティシアだよ」
「異世界転移はもうお腹いっぱいだけど?!」
「帰りたい時は元の世界へ帰れるから安心して」
「そういう意味ではなく……」
薄い本を読破すると、異世界エルティシア御招待が読者サービスのようだ。
妖精たちが住まう、古代ギリシア風の異世界へ転移させるのか?
日本に住んでいた頃の俺なら、大歓迎したかもしれない。
しかし今はもうナーゴに転移済みで、異世界スローライフ満喫中だ。
ファンタジーな世界はナーゴで充分味わってるから、今更また異世界転移する気は無いぞ。
それにこう見えても忙しいんだ、呑気に異世界見物している暇は無い。
「遠慮しないで、さあ行くよ」
「いってらっしゃい。お土産はアムルの実でいいよ」
「俺は行くとは言ってな~いっ!」
翔が俺を抱っこしたまま、ニコニコしながら足元に転移魔法陣を展開し始める。
タマは全く止める様子は無く、そちらもニコニコしながらお土産リクエストなんかしてくる。
2人とも、俺の話を聞け!
俺の意志は完全無視で、異世界に招待される。
はい、拉致られ経験2回目。
エカに捕まった時もそうだけど、身体が小さいと拉致しやすいんだな。
6歳児の姿、そろそろやめた方がいいだろうか?
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