魔女の憂鬱、勇者の願い、

しまだ

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 厳かな音楽とともにフィアは顔を上げた。
 眼前にはこの国の王であるカランデュラ・ローツ・アルベルトと王妃のルーリアが穏やかな笑みをたたえている。謁見の間であるこの部屋のステンドグラスは今日も色とりどりの光の糸を紡いでいた。
「フィア、本日をもってそなたはこの国の侯爵となった、あくまでも仮だが」
「わかっておりますわ。貴方のご厚意を無駄にすることのないように今日から心機一転侯爵としても生きていきます」
 その言葉を聞くとアルベルトは大きくうなずく。
 フィア・ローレンス、現魔王である彼女は今ほとんど魔力を持っていない。魔力を自ら生み出せない、しかも外部からの補給は波長の合うものが少ないため基本できない、という致命的な欠点は、ついこの間ようやく打開策が見つかった。
 そう、波長の合う魔力を持つ人間と魔力を自由自在に生み出せる人間のコンビをようやく見つけたのだ。
 そのせいかこの頃、いつもなら受け流しているサイのきつい冗談などを上機嫌でフィアは返している。
「何か困ったことができたら、遠慮なく言ってくれ」
「光栄なお言葉、ありがたく頂戴するわ」

 にこりと微笑む彼女をパッと見ただけではその容姿から魔王などとは安易には想像できないだろう。しかしその瞳を見れば、その芯の強さがうかがえる。燃えるような真紅の瞳はいつでも迷いなどないかのようにまっすぐだ。
 フィアはヒールの高い真っ赤な靴で、大理石を響かせ軽快な気分で部屋から出た。
 もう昼過ぎなのか日は高い。廊下の窓から差し込む光は柔らかく、最近の穏やかな日常を表しているようだ。
「フィア様」
 出てすぐのところで、フィアは待ち構えていた有能な部下、サイに話しかけられた。よく見れば走ってきたのか息を切らしている。魔術の使用が王城では基本禁止されているため、慣れない”運動”をしたと見える。
「どうしたの? 」
 その慌てる様子や緊迫した表情からただ事ではないとすぐに感じ、フィアにも緊張が走った。
「例のあやつが動きました」
「そう……」
 フィアは最後まで聞き終わる前に大きなため息をはくと遠くを見た。
 とうとうあの男も動き出したらしい。猶予はもうない。明日にでもリツを呼び出し魔力をもらわなければならないだろう。
「どうしますか」
「視てて頂戴、今のところそれだけよ」
 フィアの瞼の裏に浮かぶのは褐色の肌の少年だ。遠い遠い昔の、フィアだけの、記憶の中の少年である。
「明日にでもリツからいただくわ。取り急ぎ約束をつけておいて」
 浮かんだ少年の姿を振り払うようにかぶりを振って、フィアは自室への歩みを始めた。
 どうしてこうなってしまったのか。それはフィア含め誰にもわからなかった。


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 リツの寝顔をのぞきながら私はそっとため息をはいた。
 王都に借りた部屋に二人で住んで早二週間が経とうとしている。
 情事の時のリツは格好良くて、別人みたいだった。なのに優しいところとか根本的なところはやはり私の好きなリツに変わりはなくて、いろいろ戸惑いながらも何回も求めてしまった。
 しかしとろけるような甘い時間を過ごし、幸せな気分に満たされていたのはつい先日までだ。
 思えば魔力の受け渡しの際にそういうことをしなければならないのなら、フィアさんともリツはそういうことをするということになる。それに気づいてしまった今は、もう幸せな気分になど浸れるはずがなかった。
 代わりに胸に広がったのはもやもやとした醜い気持ちだ。嫉妬というひどく汚れた気持ちである。
 この間までは、リツにもう一度会えるならそれで良いと思っていた。そのあとに全人類のために死んでもいいと思っていたのに。
 それなのに一緒にいる時間が長くなればなるほど、私は欲張りになっていった。一目でいいから会いたい、そばにいたい、私だけを選んでもらいたい……。エスカレートしていくそれは不安定で、ひどく苦いものだ。
 こんな気持ちになる私はなんて器が小さいんだろうと思った。恋とか、愛とか知らなければこんな気持ちにも、状態にも、自己嫌悪することもなかったのだろうか。
 そこまで考えてもう一度ため息をはく。にじむ視界に必死に抵抗を試みるもあっさりとそれは零れ落ちた。
 これ以上一緒にいることなど、辛すぎてできない。自分勝手なのはわかっているがこの気持ちが冷めるまで、リツへの想いが変わるまで、平静を保ち傍にいることはできなかった。
 私の代わりとなる強力な魔力を生み出せる人物に当てはある。彼女ならば、きっとリツともフィアさんともうまくやってくれるだろう。
 嗚咽に代わる前に泣き止もうと思うのに、涙は止まってくれない。
「ごめん、リツ……無責任で、リツの気持ち裏切って、自分勝手でごめん……」
 健やかな寝息をたてて眠る彼にそっと口づける。この瞬間を最後に時間が止まってくれればどんなに嬉しいか。しかしそんなことは事実無理であるのだから仕方ない。
 あと少しで夜が明ける。一週間という準備期間は十分な長さだった。もともと荷物も少ないし所持金も多いとは言えない。荷物をまとめるのに手間はかからなかった。
 きょうからリツは隣町へと三日間泊まり込みで騎士団の任務へあたる。今日のお昼前にも出ていけばおそらく当てのあるトリエの町に明日つくことは可能だろう。彼女は転移魔方陣を作り出すことができるし、リツが帰ってくる頃には私の代わり含め、すべてがそろう算段だ。
 
 今日私は、隣国へと向かうためリツの下を離れる。
 


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「あ~!!三日もマオと会えないなんて死ぬ!」
「そんなこと言ってないで。またすぐに会えるでしょう? 」
 後ろから私を抱きかかえるリツは今すぐにでも家を出なければならない時間だ。待ち合わせ時刻に遅れてはならないとあれほど団長から念を押されているのに、リツはいまだ重い腰を上げていなかった。
「あーマオいい匂い」
 首元に顔を埋められるのさえとても恥ずかしいのに、その上すんすんと匂いを嗅いでこられると恥ずかしさで顔が熱くなる。それをリツに悟られるのはこれまたすごく恥ずかしいことなので、私は必死に抵抗を試みていた。
 しかし男女の力の差は大きい。どう足掻いても敵わない。これ以上くっつかれると決心が揺らいでしまう、そう感じた私に、助け舟を出すかのように出発の時刻を告げる鐘が鳴り響いた。
「ほら、リツ。遅れちゃう」
「はぁ……行きたくねぇなぁ。マオとイチャイチャしてたい」
 ぶつくさとリツは文句をたれていたが、さすがに団長の雷を直撃したくはなかったのだろう。渋々私を離すと後ろ髪ひかれるように何度も振り返りながら家を出て行った。
 私は見納めになるであろうリツの背中を見えなくなるまで見送ると、ベッドの下からトランクケースを引っ張り出した。
 小さなトランクには数日分の着替えと、これまでに貯めた旅費が入っている。ほんの三月くらいしか保たないだろうが、新しい仕事を探し、新居に移るための前金・二ヶ月分の家賃くらいは払える額である。何とかなるだろう、というよりこれで何とかしなくてはならない。
 リツに貰った指輪をはずし、その横に手紙を置いて私はため息をひとつ吐いた。
 手紙には本当のことは書けなかった。本当のことを書くことは、リツを一番苦しませることだと思ったからだ。
 ただこちらから気持ちがなくなったと、他に好きな人ができたからだと記してある。そして信頼のおける人が私の代わりに魔力を受け渡してくれるとも綴った。
「ありがとうリツ……ごめんなさい」
 誰に言うでもなくそう呟いて私は玄関のドアを開けた。
 出発を祝う気はさらさらないと言うかのように、曇天が笑っていた。

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 これから立ち去る家の門の階段を降りていた時に、それは私を引き留めた。
「やあ、マオさんではないですか」
 にこやかな笑顔の中に何か冷たいものを持つ雰囲気を与えるその男性は、手を振りながら近づいてくる。どこかで見たことがあると記憶が訴えているにも関わらず、なかなか思い出せない私に、男性は眉を下げた。
「フレッドですよ、フレッド・アンダーソン。叔母がいつもお世話になっております」
 そこまで聞いてようやく私は彼が誰だか思い出した。
  
 隣のアンダーソン未夫人の甥である。彼は、子供のいない彼女のお気に入りだった。なんでもなくなったご主人の弟さんの子供だそうで、整った顔立ちと切れ長の目が印象的なのを覚えている。
「すみません、ぼーっとしていました。お元気でしたか?」
「ええ。ところでご旅行でも? 」
 そこでようやく今自分がこっそりと家を出ていたことに気付く。あまり人目に付きたくはなかったが、あってしまったならば仕方がない。ここは速やかにこの場を去るべく、言葉を探した。
「はぁ、まぁそんなものです」
「ご結婚されるそうですね。おめでとうございます。でもおかしいな、旦那様は今出張中では?おひとりで?」
 そこまで言われる筋合いはない。それになぜそんなことまで知っているのかも不気味だったが、それは深く追求しない方が幸せかもしれない。
 仮にも母親のように慕っている人の甥である。あまり強いことも言えない。
「ちょっと、荷物を取りに家に戻るだけです」
「家を引き払ったのに?」
 そう言われてさすがに気持ちが悪くなってきた。どこまでこの人は知っているのだろう。思わず一歩下がると彼は口角を上げた。
 その笑みに言われなのない不安を覚え、私はその場を去るため走り出す。しかしそれはすぐに彼によって阻まられた。
「彼に、今すぐ伝えましょうか?」
 つかまれた腕を振り払おうとするも、びくともしない。フレッドを睨みあげると彼は穏やかに脅迫の言葉を吐いた。
「もう少し端的に言いましょうか。彼に、今すぐ俺と駆け落ちしたいと貴方が迫ってくると伝えましょうか?」
 そんな、信じないに決まっている。それでも一部は手紙に書いたこととつじつまが合うことから誤解される可能性はある。そして何より、今家を出ることがばれてしまえば、この計画は失敗に終わるし、今後も動きにくくなってしまう。
 誤解されるのは承知の上なのに、いざ具体的に疑われるのは嫌だなんて自分勝手ではあるけれど。
「離して」
 私は詠唱時間がほとんどない、しかしこの場を切り抜けるには十分な威力の魔術を使うべく魔力を手に集中させた。
 しかしそれはあっけなく、強制的に抑え込まれてしまう。一般の人では使えないような、高度な魔術によって。
「あなた、誰?」
「察しがいい女は好きだよ」
 そうフレッド、いや目の前の人物は答えると強引に私の腕を引き、転移魔方陣を瞬時に描く。七色の光があふれ、そこら中を駆け巡った。
「ゲームの始まりだ、フィア」
 男のブラウンの目はいつの間にか金色へと変化していた。 
 ---------------------------
 
「ここにある物は全て君のために用意した。どう使ってくれてもかまわない」
 私は目の前で淡々と話す男の真意が読めず、眉をしかめた。
 転移魔方陣を使っていきついた先は、独房でもなければ塔の最上階でもなかった。こぎれいに片づけられたそこには、きちんと洗濯されたシーツがひかれたベッドとアンティーク調の机といす、鏡が備え付けられている。更に奥に続く扉を開ければそこは書庫となっており、一生かかっても読み切れないほどの大量の分厚い本が棚に並んでいた。
「あなたは、何が目的なの?」
 思わぬ高待遇だが両手を上げて喜ぶことは流石にできない。相手の意図が読めない限り危険なことに変わりはなかった。
「お気に召さないかい? 頑張ったつもりなんだが」
「そうじゃなくて、私にこんな部屋を用意してあなたは何がしたいの?」
 おどけたように大げさに肩をすくめる彼を睨むと、微笑をたたえて男は何ともなしに言った。
「魔王フィアに、いやリツ君の代わりに、俺に魔力を分けて欲しいのさ」
「っなんで……それを? 」
 このことは私のほかに国王とその王妃、そしてリツとフィアさん、サイさん以外は知らないはずである。それをなぜこの男が知っているのか。
「なんで? そんなの関係あるかい? それに知らない方が君も幸せだ」
 そう口にした彼にその大きな手を腰にまわされ引き寄せられる。そしてそのまま顎を掴まれ、彼の顔が近いた。まっすぐで強い意志を秘めた視線は何処か見たことがあるものだ。何処でだかは思い出せない。しかしそんなに遠くもない昔、見たことのあるものだった。
「あなたになんて、渡さないわ」
 そう必死に言うと、自分がいかに弱いか思い知らされる、そんな思いを抱かせる彼の視線がふと緩んだ。代わりにからかうような視線を向け、ニヤニヤとおかしそうに笑んでくる。
「な、なにがおかしいのよ!」
「いや、旦那以外の男は知らないってカンジだからさ」
 その言葉に思わず頬が熱くなってしまう。確かにリツとしかそういうことはしたことがないけれど、それは別にこの男とは関係のないことではないか。
「いいでしょう! 別に!! 」
 耳まで真っ赤にしている自分が鏡に映っているが、それはひとまず無視しよう。私は男の腕からすり抜けるとドアめがけて走り出した。ここがどこかはわからないが、長く居たい場所でないことはわかる。さっさと逃げ出してしまおう、そう決意しドアを開けた瞬間、驚きに声を上げた。
「っ!! どういうこと? 」
 ドアを開けた先に続いているはずの地面は見えない。ただ眼下には白い雲がふわふわと漂っているだけだ。所々隙間から見える豆粒のようなものは人の住む家々なのだろう。眼下では鳥たちが群をなして飛んでいた。
 目視できる範囲で判断したとしてもそこは、雲の上だったのだ。
「ああ、言い忘れていた。今君は僕の魔術で雲の上にいる。そうだな、場所で言うとカーサの町の上あたりかな。当然、逃げようと思っても無駄だよ」
 危うく落ちるのを免れた私はあまりのことにそれ以上声を出せずにいた。宙にものを浮かすこと、それもこんなに大きなものを高く浮かすことはよほど高度な魔術が使えないとできない。それをこの男は何の道具も使わずに、しかも平然とやってのけている。
 先ほどの転移魔法陣の件からただ者ではないと思っていたが、どうやら予想以上である。
「あなた、本当に誰なの? 」
 思わず壁際へ一歩下がった私との間合いを彼はいともたやすく詰めると、口角をあげた。そしてそのまま壁際へ私を追いつめ顔を近づける。妖艶な笑みはマオの心をざわつかせた。
「俺? 未来の旦那にひどい言いぐさだな。俺はただの悪魔だよ」
 彼の金色の瞳は、全く笑っていなかった。

 -----------------------------

「で、マオがそこで……」
「もういい、マオマオうるさいわ!」
 騎士団の副団長を務めるジェームズ・ビハインドは、先ほどから続くリツの長い話に終止符を打とうと試みた。
 あたたかい日差しは心地よく、穏やかな風は頬を撫でる。隣町に行くためにリツと彼は乗り合い馬車に乗っていた。こんな日はがたごとと心地良いリズムを刻み進むそれ上で昼寝をするに限ると彼は思う。それなのに、いったいどうして自分はリツののろけを先ほどから延々と聞いているのだろうか、それが今の彼の一番の疑問だった。
「なんだよ、なんで不満なんだよ」
 唇を尖らせ文句を言うリツはなぜこんな簡単なこともわからないのだろう。どうかしていると思う。
 彼はジェームズ・ビハインド34歳。がっしりとした体が特徴の男で、リツとともに魔王討伐隊に所属していた経歴を持つ”屈強な戦士”という言葉が似合う人物である。
 そして同時に年齢=彼女なし歴という寂しい(と彼は思っていなかったが)独身童貞男であった。
 リツとは魔王討伐隊に所属していたころからの付き合いで、当時は童貞組合なるものをふざけて作り、よく一緒に騒いだものだ。
 ところが、リツは魔王を封印し王都へ帰った途端ジェームズの童貞仲間ではなくなってしまったのだ。なんでもずっと思いを寄せていた幼馴染の女性とうまいことやったらしい。
 もちろん友達なら祝いの言葉を言うべきなのかもしれない。しかし未だに心から祝えないのはやはり裏切られたという思いがあるからだろう。
「不満も何も、毎日毎日お前の嫁の話ばっかり。少しは俺にとって有意義な話ができないのかお前は」
「できない」
「即答かよ!!!」
 涙目でリツをジェームズは睨んだが、花をとばしてながら浮かれているリツにその視線が届くはずがない。案の定彼はぼんやりと宙を見つめ夢見がちに話し出す。
「ああマオ……昨日の夜もすっげー可愛かったなぁ。あっ、これ以上は言わんぞ。マオのあんな姿をお前に報せるわけにはいかないからな」
「別にいいわ! はぁ、もう勝手にしてろ。お前の病気は治らなそうだしな」
 ジェームズは呆れたようにため息をはくと空を見上げた。鬱々とした気持ちで見ているせいか、吸い込まれるほど青い空まで独り身童貞のジェームズをあざ笑っているかのようだ。
「はぁ……どっかから可愛くて綺麗で優しくて巨乳のお姉さんでも落ちてこないかな」
 そんなことを言っても落ちてくるわけでないことは重々承知している。それでもくだらないことを言いたいくらい心はやさぐれていた。第一リツにできてジェームズにできないのは神の采配が悪いとしかいいようがないと思う。
 その時だ、一羽の鳥がリツとジェームズに近づいてきた。幸せの蒼い鳥の別名をもつそれの羽は、縁起がよいとしてよくアクセサリーになる。ここは縁起担ぎでもしようとジェームズが手を伸ばし触れようとした。
「待て、ジェームズ。おかしいぞ」
 ところがそれは寸でのところでリツによって阻まれる。何が気にくわないのかリツは眉をしかめ、鳥を睨むばかりだ。
「こいつから微量だが魔力の匂いがする……こんな自然の鳥からすることはないんだ普通」
 そしてようやく開いた口から出てきたのはとんでもない言葉だった。
「それってそいつがペットだったってオチじゃないだろな? 」
「それもありうるけど……なんかこう、腑に落ちないというか」
 尚も難しい顔をしているリツの勘はよく当たる。勇者時代のころからそうだ。奴の野生の勘とやらだけは頼りにして良いとジェームズは思っている。
 彼は再び青い鳥を調べようと視線を鳥に戻した。そこで彼は度肝を抜かれることになる。なぜならその鳥が先ほどとは比べ物にならないほど膨らんでいたからだ。
「おっ、おいリツ!! 鳥が! 」
 言っている間も膨らみ続けた結果、その言葉が最後まで言われないうちに、鳥はものすごい音をたてて爆発した。
「ジェームズ!! 」
 しかしあまりの大きさの音に目を瞑った二人の前に次に現れたのは、なぜか予想していたむごいものではなかった。
 それは舌を出したびっくり箱の中身のような、みそぼらしい鳥の人形だったのだ。
「なんだ? これ」
 恐る恐る鳥の人形を手に取る。そしてくるくる回し四方から眺め、その背中に書いてあった文字にジェームズとリツは驚きのあまり固まってしまった。
「これは……」
 その文字はジェームズとリツが三年間毎日のように見ていた、また今は魔王が封印されたとによって使われなくなったはずの、魔族が使う文字だったからだ。
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