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城の応接室でレナート様から今後の事をもう少し父と話し合うからと言われて、アンナ様、ホノカさん、セオドールさんと一緒に馬車で移動し、とうとうエマはシルヴィオ家のタウンハウスへとやってきた。城から移動にかかった時間は、多分30分も経っていなかったように思う。
馬車の中で揺られながら、これから会う予定のシルヴィオ子爵との面会のことが頭から離れず、緊張でよく分からなかったからだ。時間的には日付前には余裕がある時間帯だと思うが、正確な時刻はエマには分からなかった。
シルヴィオ子爵にこれから会う。
かちこちに固まっているエマの傍に、ずっとホノカさんがいてくれたことが心強かった。
スピードが落ちて馬車が止まり、目的地へ到着した。タウンハウスと聞いていたが、まずその大きさに目を見開いた。マクリーン家の城館よりも大きかった。
階数こそ二階建てだが、窓の数が多く部屋数が多いことは一目見れば分かった。
転ばないように馬車から降りると玄関ホールに当主と思われる人の姿があった。奥さんであるアンナさんがいるからかもしれないが、わざわざ出迎えに来てくれたらしい。後ろには数人の使用人の姿もあった。
エマは早くなる鼓動を手で押さえながら、ホノカさんと共に玄関ホールまで歩いた。
シルヴィオ当主はレナート様とよく似た面差しで、金錆色の髪で、鼻の下に髭を蓄え、がっしりとした体躯だった。鋭い目つきを向けられたエマはびくりと肩を縮めた。
「エマ・マクレーンです。初めまして。夜分遅くにお邪魔いたしまして申し訳ありません」
最初が肝心と念を唱えながら、エマはスカートをつまみ挨拶をした。震えることなく無事に出来た。
「ボードワン・シルヴィオと申す」
ボードワン様から渋く落ち着いた低音で挨拶を受けた。声のトーンから怒っておられるわけではなさそうだつた。
「いや、こちらこそエマさんにはお礼を言わねばならん。息子がようやく嫁を貰う決意をしてくれたこがどれだけ嬉しいか。エマさん、よくぞ息子を受け入れてくれてくださった。ようこそ、挙式こそまだだが今日からエマさんをレナートの嫁として歓迎する。是非自分の家のようにゆっくりとして欲しい」
柔らかな眼差しに変わり、シルヴィオ当主にエマはあっさりと受け入れられた。
こんなにあっさりと受け入れられるとは・・・。
傷のことも、足の悪さにも気が付いているだろうが何も言わないでくれた。確かにホノカさん達からは、絶対大丈夫とは言われていたが、実際、簡単だったことに拍子抜けした。
「そんな、こちらこそ有難うございます。それではお世話になります」
緊張の初顔合わせが終わると、アンナ様が今夜はもう遅いから詳しいことは明日にして休みましょうと言ってくれた。
エマはほっと肩の力が抜けた。正直立て続けに色んなことがあった上に、緊張も続き疲れていたからだ。
ホノカさんから彼女付きの侍女バディアさんを紹介してもらうと、エマに用意されているという部屋へと案内してもらった。
***
ホノカさんと共にバディアさんに案内された一室は広い客室だった。二人部屋の客室というだけあってかなりの広さがあった。艶やかな調度品に、淡い暖色系で品よくまとめられた部屋だ。暖炉には火も入り部屋はすでに温められている。
ここにエマ一人が泊まるのかと思っていたら、今晩はホノカさんも一緒に泊まるのだという。聞けば、アンナ様が知らない場所で一人だと、よく眠れないでしょうと言って、計らってくれたらしい。
襲われかけたエマが心細いだろうからという理由もきっとあったのだろうと思う。正直、初めての場所で一人きりというのは寂しいと思っていた。エマはその心遣いを有難く受け取った。
エマは手荷物も何一つない。白のドレスを着ている以外着替えや下着ななども含め一枚も持っていなかったから、体格がほぼ同じホノカさんから新しい下着を貰い、部屋着を借りた。
着慣れない白いドレスから部屋着に着替えると、ようやく呼吸が出来た気がした。ずっとコルセットで締め付けられていたから部屋着一枚だとこんなにも楽なものなのかと思えた。
お古でごめんね~とホノカさんから言われたが、飾りのないシンプルなドレスは肌触りがよく、落ち着いた薄水色と落ち着いた色合いが私好みだった。
バディアさんに運んでもらい部屋でホノカさんと軽い夕食を頂いた後、シルヴィオ家の浴槽へと案内され湯浴みまで頂いた。家ではそんなに浴槽に入ることがなかった為(普段はたらいにお湯)エマにとっては広すぎる浴槽を見て目を見張った。恐る恐る手を入れてみれば、丁度いい適温だった。
ゆっくりと体を沈めた。体を伸ばしてもまた余裕のある広い浴槽には精油が入れられているのか、いい香りがした。お湯に入ったものの、落ち着けず早々に上がってしまった。それでも借りた部屋着を着ると体はほこほこして暖かかった。
「エマさん、はいこれをどうぞ。新品なの。私とお揃い~」
風呂から戻るとホノカさんから新たに服を渡された。
「有難うございます」
後は寝るだけだからきっと夜着だろうと思いながら、渡された服を手に取った。
「お揃いのパジャマ着て、一緒に眠ろうね♪」
エマは首を傾げた。聞きなれない言葉だった。
「ぱじゃま」とは、何でしょう?
馬車の中で揺られながら、これから会う予定のシルヴィオ子爵との面会のことが頭から離れず、緊張でよく分からなかったからだ。時間的には日付前には余裕がある時間帯だと思うが、正確な時刻はエマには分からなかった。
シルヴィオ子爵にこれから会う。
かちこちに固まっているエマの傍に、ずっとホノカさんがいてくれたことが心強かった。
スピードが落ちて馬車が止まり、目的地へ到着した。タウンハウスと聞いていたが、まずその大きさに目を見開いた。マクリーン家の城館よりも大きかった。
階数こそ二階建てだが、窓の数が多く部屋数が多いことは一目見れば分かった。
転ばないように馬車から降りると玄関ホールに当主と思われる人の姿があった。奥さんであるアンナさんがいるからかもしれないが、わざわざ出迎えに来てくれたらしい。後ろには数人の使用人の姿もあった。
エマは早くなる鼓動を手で押さえながら、ホノカさんと共に玄関ホールまで歩いた。
シルヴィオ当主はレナート様とよく似た面差しで、金錆色の髪で、鼻の下に髭を蓄え、がっしりとした体躯だった。鋭い目つきを向けられたエマはびくりと肩を縮めた。
「エマ・マクレーンです。初めまして。夜分遅くにお邪魔いたしまして申し訳ありません」
最初が肝心と念を唱えながら、エマはスカートをつまみ挨拶をした。震えることなく無事に出来た。
「ボードワン・シルヴィオと申す」
ボードワン様から渋く落ち着いた低音で挨拶を受けた。声のトーンから怒っておられるわけではなさそうだつた。
「いや、こちらこそエマさんにはお礼を言わねばならん。息子がようやく嫁を貰う決意をしてくれたこがどれだけ嬉しいか。エマさん、よくぞ息子を受け入れてくれてくださった。ようこそ、挙式こそまだだが今日からエマさんをレナートの嫁として歓迎する。是非自分の家のようにゆっくりとして欲しい」
柔らかな眼差しに変わり、シルヴィオ当主にエマはあっさりと受け入れられた。
こんなにあっさりと受け入れられるとは・・・。
傷のことも、足の悪さにも気が付いているだろうが何も言わないでくれた。確かにホノカさん達からは、絶対大丈夫とは言われていたが、実際、簡単だったことに拍子抜けした。
「そんな、こちらこそ有難うございます。それではお世話になります」
緊張の初顔合わせが終わると、アンナ様が今夜はもう遅いから詳しいことは明日にして休みましょうと言ってくれた。
エマはほっと肩の力が抜けた。正直立て続けに色んなことがあった上に、緊張も続き疲れていたからだ。
ホノカさんから彼女付きの侍女バディアさんを紹介してもらうと、エマに用意されているという部屋へと案内してもらった。
***
ホノカさんと共にバディアさんに案内された一室は広い客室だった。二人部屋の客室というだけあってかなりの広さがあった。艶やかな調度品に、淡い暖色系で品よくまとめられた部屋だ。暖炉には火も入り部屋はすでに温められている。
ここにエマ一人が泊まるのかと思っていたら、今晩はホノカさんも一緒に泊まるのだという。聞けば、アンナ様が知らない場所で一人だと、よく眠れないでしょうと言って、計らってくれたらしい。
襲われかけたエマが心細いだろうからという理由もきっとあったのだろうと思う。正直、初めての場所で一人きりというのは寂しいと思っていた。エマはその心遣いを有難く受け取った。
エマは手荷物も何一つない。白のドレスを着ている以外着替えや下着ななども含め一枚も持っていなかったから、体格がほぼ同じホノカさんから新しい下着を貰い、部屋着を借りた。
着慣れない白いドレスから部屋着に着替えると、ようやく呼吸が出来た気がした。ずっとコルセットで締め付けられていたから部屋着一枚だとこんなにも楽なものなのかと思えた。
お古でごめんね~とホノカさんから言われたが、飾りのないシンプルなドレスは肌触りがよく、落ち着いた薄水色と落ち着いた色合いが私好みだった。
バディアさんに運んでもらい部屋でホノカさんと軽い夕食を頂いた後、シルヴィオ家の浴槽へと案内され湯浴みまで頂いた。家ではそんなに浴槽に入ることがなかった為(普段はたらいにお湯)エマにとっては広すぎる浴槽を見て目を見張った。恐る恐る手を入れてみれば、丁度いい適温だった。
ゆっくりと体を沈めた。体を伸ばしてもまた余裕のある広い浴槽には精油が入れられているのか、いい香りがした。お湯に入ったものの、落ち着けず早々に上がってしまった。それでも借りた部屋着を着ると体はほこほこして暖かかった。
「エマさん、はいこれをどうぞ。新品なの。私とお揃い~」
風呂から戻るとホノカさんから新たに服を渡された。
「有難うございます」
後は寝るだけだからきっと夜着だろうと思いながら、渡された服を手に取った。
「お揃いのパジャマ着て、一緒に眠ろうね♪」
エマは首を傾げた。聞きなれない言葉だった。
「ぱじゃま」とは、何でしょう?
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