CLOVER-Genuine

清杉悠樹

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62 土産

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「ひとつだけだよ?」
 金色の実を食べたそうに見上げていたスノーベリーを見つけた私は、立ち上がり一粒だけ採ってあげた。
 もう一度しゃがみ込み目の前に置いて上げた。くんくん匂いを嗅いだ後、しゃくしゃくと齧り始めた。
 余程おいしかったのか、食べるスピードが今までで一番早かった。
「そんなに美味しいんだ?」
 うまー、とでも言いそうなほどに目を細めて、尻尾をふりふりして美味しそうに食べている。それを見た他の聖獣達も自分にも頂戴と目で訴えていた。
「はいはい、皆1つずつだからねー」
 スノーベリーだけ特別待遇して喧嘩になっちゃうと困るからね。それぞれに金色の実をあげると、スノーベリーが食べ終わる前に食べ終えてしまっていた。
「早いねー」
 一回り大きなサイズだったというのに、相変わらず丸呑みしたハルジオンに仰け反るどころか、感心した。
 ・・・今度動画撮ってお姉ちゃんに送ってみようかな。爬虫類って嫌いだったような気もするけど。
 今日の分のメールに取り敢えず聖獣の姿を添付して驚かせてみようと、小さな企みを思いついた。
「という訳でー、スノーベリーが食べ終わってからでいいから、ハルジオンも魔力貰ってもいーい?」
 和やかな空気の中、自分の聖獣にお願いをしている所に、セオドールと一緒に木を見上げていたレナートから雷が落ちた。
「こらーっ!穂叶、何やってるんだ!」
「ひゃうっ!?」
 な、何っ!?
 いきなり怒られて私は耳を押さえて縮こまった。
「勝手に実を与える奴があるかっ!まだどんな効能があるのかも分かっていない新種を与えるなんてっ」
 怒鳴り声が終わって、恐々と上を見上げれば腕組をして見下げているレナートの姿があった。

「あげちゃ、駄目だったの?」
「当たり前だろう。こんな見た目が全然違うものを勝手にホイホイやるなっ。万が一、体質と合わないものだったらどうするつもりだっ」
 言われてはっとした。何にも考えずに食べさせてしまっていた。
「欲しそうにしてたから、つい」
 レナートさんに指摘され、落ち込んだ。元の実と多少色や形が違っていたとしても、大した違いは無いと勝手に思っていた。そうだよね、自分の聖獣じゃないマートルやランタナにまであげちゃったもんね。
「聖獣は食べれないものを欲しがるとは思えないが、念のためだ。頼むから、こういう時は絶対に相談してからにしてくれ」
「ごめんなさい」
 レナートは勿論、セオドールにも謝った。
「次からは気を付けます」
「よし」
 しょぼんと項垂れている私の頭を、レナートさんは撫でて許してくれた。直後、セオドールにも撫でられた。

 聖獣達の食事か終わったので、今度は自分達の食事に行く事にした。
 家の中へ入る前に、午後にはシルヴィオ家を出発する予定だから、レナートさんは新種のマレサの実を検査するために幾つかサンプルを採った。
「この木の実は、結果が出るまで採らない様に父に言っておかないとな」
「そうですね、その方がいいでしょう」
 セオドールも同意した。
「でも、なんで今回は金色になったのかなー。もしかして、聖獣のせいってことはない?実は携帯の充電もスノーベリーとハルジオンの魔力を貰ったら出来たんだよね」
 前回魔法を使って木を育てた時と、今回と違うことと言えば、違う聖獣から貰ったということだけ。
 まだそのことを伝えていなかったから、レナートさんは目を見張った。
「何っ、『充電』が出来た!?そう言う事はもっと早く言えっ!」
「ご、ごめんなさい。昨夜の出来事だったから」
 またレナートさんに怒られた。以前に充電を試したくてランタナに魔力を貰ったことがあるから、主のレナートさんも出来なかったことは知っていた。
「聖獣の違いか。・・・穂叶、食事が終わったらもう一度だけ、また新たなマレサの木を育てて貰えないか?今度はマートルとランタナと一緒に」
 私が強い魔法を使った後は、必ず空腹になることを知っているから、レナートさんからそう頼みごとをされた。
「いいですよ、でも一つ条件があります」
「なんだ?」
「また魔法を使ったらお腹が空くので、おやつを用意して欲しいです」
 これくらいなら言っても許されるだろう。
「なんだ、そんなことでいいのか。なら出発するまでに馬車に入りきらないくらいおやつを用意するよう伝えておこう」
 馬車に入りきらないくらいって・・・。
「そんなにいっぱい、要らないですよ。そんなに沢山あったら帰ることも出来なくなるじゃないですか」
 いくら何でもそんなに食べないよ。
「はは。入りきらないは言い過ぎとしても、シシリアームのお土産として既にいくつか用意されているおやつの中から、好きなだけ食べればいい」
「お土産?」
 シシリアームのお土産ってどんなのだろう。
「木の実を使った焼き菓子が有名なんだ。夕食後にも出ていただろう。薄く焼いたクッキーだ」
「ああ、あれ!」
 サクサクしたクッキーに砕いた木の実が数種類入っていて、いいアクセントで美味しかったなぁ。
 私は食べた時の味を思い出し、喜んだ。
「一応、ダンには追加を頼んでおくから」
 レナートさんは笑いながら私を見てそう言った。

 だからそんなに食べませんってば!
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